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第二章 7.プラーナの操作

 ダーバ様の言葉を聞いてやる気に満ちたそのままに、僕は〈再生〉のギフトの修練をすることになった。

 もう土器の修繕はとっくに卒業していて、最近は鍋や包丁などの修繕をするようになっていたが、今日からは神殿の庭に咲いてる花の中から、盛りを過ぎて萎れてきたものを選んで、ギフトで元気にする修練を教わるのだ。


「よいかダルタよ、先ずは己のギフトを信じることから始めるのじゃ。理屈は抜きでブッダ様の慈悲で必ず治ると信じるのじゃ。」


「はい、〈再生〉のギフトはブッダ様の御慈悲ですね! ちゃんと信じてます!」


「次にこの萎れた花の元の綺麗な様子を頭に思い浮かべ、元気を取り戻すよう祈るのじゃ。そうして自分の体内からプラーナを、この花に慈雨の如く注ぎ込むことを意識してみよ」


 治れー! 治れー!

 僕の体の中のプラーナを雨のように注ぐんだ!


 あれ? プラーナって何だっけ? ギフトの修練はオドを通すんだって前に教わったんだけど、 今までのギフトの練習ではプラーナなんて意識したこと無かったよね?


「ふむ、プラーナの操作はまだ教えてなかったな。そなたがまだ幼かったゆえ、正式に神殿入りしてからと思い、後回しにしておったのじゃ」

「僕はもう正式な神官見習いですよね? 教えてください、お師匠様!」


「ああ、神官見習いのラハン見習いじゃな。よいか、プラーナとは天地に満ちる目に見えぬエネルギーじゃ。その力は大地を隅々まで巡って命を育て、天に噴き出して星々を動かすのじゃ」


「おおー! すごいですねお師匠様!」


「大地の中と同様に、生命あるもの全てにプラーナは巡っておる。だが修練をしておらぬ一般人のプラーナの気脈は糸のように細い。意識して体内のプラーナを巡回させることで、徐々に気脈は太くなる。やがて達者となったならば、自在に大地のプラーナを吸い上げて体内を満たし、天地の力を思うがままに操ることが出来るようになる!」


「早く教えてください、お師匠様!」


「では胡座をかいて地面に座るがよい。両手は腿に軽く置き、背筋を伸ばして肛門をきつく閉め、静かに呼吸をしながら会陰から大地のプラーナを吸い上げるよう念じるのじゃ」


 大地に尻を着け、ぎゅっと肛門をすぼめて呼吸を繰り返すうちに、会陰にだんだん熱が籠ってくる。これが大地のプラーナらしい。


「どうじゃ? 大地に接した会陰部分が熱くなってきたじゃろ? そこには大地のプラーナを吸い上げる〈地〉のチャクラがある。チャクラとはぐるぐる回る輪じゃ。ぐるぐる回せ、小さな火の蛇がとぐろを巻いていると思い浮かべるのじゃ!」


 蛇、蛇、火の蛇! 炎の蛇がぐるぐるぐるぐる!


「その火の蛇をクンダリーニと言う。クンダリーニが感じられるようになったなら、今度はそれを臍の少し下辺りまで持ち上げてみるのじゃ。そこに〈風〉のチャクラがある。体内には血管のように気脈が張り巡らしており、なかでも背骨沿いには太めの気脈が脳天まで通じておる。その気の道を通って火の蛇を臍下の〈風〉のチャクラに納めるのじゃ」


 上がれー、上がれー、臍まで昇って来い、僕の火の蛇!

 下腹部に滾るマグマのような火の蛇が、徐々にゆっくりと動きだし、気脈を焼き広げうねりながら臍まで上がってくると、急にすーっと熱が消えて霧散してしまった。あれ? 火の蛇はどこにいったの?


「お師匠様、火の蛇がいなくなってしまいました。せっかくお臍まで持ってきたのに……」


「臍の辺りがすーすーするじゃろ? そこに〈風〉のチャクラがあって風車のようにくるくる回って、火の蛇クンダリーニを外に吹き飛ばしてしまったのじゃ。まあ初めてでそこまで出来れば上等じゃな。あとは繰り返し修練して、火の蛇が一気に消えてしまわないように抑えながら、少しずつ〈風〉のチャクラから外に放射し、萎れた花に注ぎ込んでやるとよい」


「わかりました、そうやって花を回復させてあげるのですね。お師匠様も花を元気にさせることが出来るんですか?」


「いや、ワシは〈再生〉のギフトは持っておらんからの。ワシがプラーナを注いでやっても、そのままこぼれて大地に戻ってしまうわい」


 プラーナを操れても〈再生〉のギフトがなければ対象を癒やすことは出来ないみたいだ。


「最初は座ったままプラーナを吸い上げて〈風〉のチャクラから注いでやるとよい。次第に慣れてくれば地面に尻をつけて座っていなくとも、大地のプラーナを吸い上げることが出来るようになる。修練せいよ」


 そのまませっせとプラーナを吸い上げては放出する練習を続けて、その日のうちに萎れた花を再生させることが出来るようになったよ。

 すごい! 魔法みたいだよね!



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