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第二章 6.ラハン棟にて

「よろしくな、ダルタ。私のことはジークと呼んでくれ」


「そんな、ラハン様を呼び捨てになんて出来ませんよ」


「なーに、同じラハン職になるんだから気にするな。年が離れていていきなり呼び捨てが難しいなら、ジーク兄と呼んでくれよ。ラハン職はみんな家族みたいなものだからな」


「わかりましたジーク兄さん、それではお昼ご飯の支度を手伝いますね」


「ああ、そこに洗った野菜があるから刻んでくれないか。さっきまで井戸端で根菜や葉野菜を洗ってたんだ。これから刻むとこだったんだが、今日からは手伝いが増えると聞いて楽しみにしてたんだよ」


「ずいぶんたくさんあるんですね。一度にこんなにたくさん作るんですか?」


「ああ、十人前だからな。これでも鍋で煮込めばかなり嵩が減るんだぜ」


「野菜ゴロゴロスープを作るんですね」


「朝は麦粥と蜂蜜入りミルク。昼飯は季節の野菜のスープにパンと炙ったベーコンを添えれば終了だ。夜は所帯持ちが帰って人数が減るから、肉と少しの酒も出るけどな」


「神殿ではお肉やお酒は駄目なのかと思ってました」


「別に禁止されてはないぜ? 酔っぱらうほど飲むのは駄目だけどな」


「そうなんだぁ、ダーバ様の房の食事は野菜とパンや粥ばかりだったから禁止なのかと思っちゃった」


「ダーバ様は菜食主義だからな。育ち盛りのダルタにはきついだろ? 今日はベーコンを多めに切ってやるからな」


「ありがとう、ジーク兄さん!」


 やがて昼時になりラハン様たちが集まってきた。何人かとは修練場で顔を合わせていたが、給仕をしながら改めて全員に挨拶をする。

 うん、挨拶は大事って、経典にも書いてあった。

 全員に食事を用意してから自分もジークの隣の席に着いて食べ始める。ベーコンたっぷりで嬉しい!


 もぐもぐやってると、ルマン様が食堂に遅れてやって来たので、あわててルマン様の分の料理を皿に盛り付けて出した。


「おお、すまんな。料理の手伝いは大丈夫だったか?」


「はい、ジーク兄さんにも親切に教えて貰えましたし、実家でもよく料理の手伝いはしてますから」


「そうか、ジークとも仲良くなれたようで安心だな。ここは年輩の者が多いから、気安く話せる相手が少ないかもしれん。何かあったらなんでもジークに相談すると良い。もちろん私に言ってきてもいいんだぞ?」


「ありがとうございます」


 ルマン様もジーク兄さんも親切な人ばかりでうれしいなあ。


「それと、私は今週は午後の門番だから、午後からはダーバ様のとこで指導を受けるように。明日も午前中はここに来て武術の修練をして、昼飯を食べたらまたダーバ様の房に戻ってあちらで指導を受けるがよい」


 僕は昼食の片付けを手伝ってからダーバ様の房に戻った。朝晩のお勤め以外の時間は、各自修練や研究に充てることになっているので、トンボさんは若手神官が集まる儀式の研究会に出掛け、セトさんは神殿付属の農園で畑仕事をしながらギフトの修練をすることになってて、二人ともダーバ様の房には居なかった。


 マリガさんは従者番で房に残っていたが、机の上に経典や辞書を何冊も開いて、時折何かを紙に書き付けながら、ダーバ様を放置して一心不乱に研究に没頭しているようだ。本当に学問が好きなんだなぁ。


「ただいま戻りました、お師匠様。ルマン様の棒の指導で今日は横打や突きも習ってきました。ルマン様は午後から門の警護に立つそうで、こちらに戻るよう言われました」


「おお、そうか。そなたはラハンを目指すのだから、神殿のお勤めや仕事は最低限だけ覚えて、あとは武術とギフトの修練を積むといい」


「〈再生〉のギフトはラハン職にも役立つのですか?」


「〈再生〉のギフトで武具の修繕は勿論じゃが、修練を重ねることで、ちょっとした怪我や病を癒やすことも出来るようになるのじゃ。セトが再生のギフトで野菜の鮮度を保つ工夫をしておるのを聞いたじゃろ? あれと同じようなものじゃな」


「すごい! 怪我が治せるなんて魔法みたいじゃないですか!」


「そうじゃの、ブッダ様の慈悲を体現したかのようなギフトじゃから、頑張って修練を続けるがよい。修練を重ねて技量を磨き、やがて癒しの技の達者になれた者は、皆から〈再生〉の魔術師と呼ばれて尊敬されておるぞ」


 魔術師とかカッコイイ! 僕、一生懸命に修練して父さんや母さんやアマリが病気になっても治してあげるんだ!




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