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第二章 4.ルマン様

 お師匠のダーバ様は、ラハンになりたいという僕の希望を叶えるために、ラハン職の神官のルマン様の指導を受けられるよう口添えしてくださることになった。昔、ダーバ様がまだラハンだった頃の後輩だった神官様らしい。


 神殿に住み込みを始めた翌日の朝のお勤めのあとに、ダーバ様に連れられて、ラハン様たちが普段暮らして訓練などもしているラハン棟に連れてこられた。


「ルマンよ、この子が以前に話しておいたワシの弟子のダルタじゃ。なかなか優秀な〈再生〉のギフト持ちでな、ラハンにも向いておると思う」


「おお、紹介してもらえるのを楽しみにしてましたぞ、ダーバ様。この子は裏庭でよく泥団子を捏ねてましたな」


「よろしくお願いします、ルマン様」


 ルマン様は僕の父さんよりも少し年輩のがっしりした体格のラハン様で、神殿の門や御神体の丘の入り口の警護に当たっているのを見かけたことはあったけど、こうして言葉を掛けて貰うのは初めてだった。ラハン様は仕事中はあまり喋っちゃいけないらしい。


「そなたは遠目にもピカピカ光って見えたからな。前から気になっておったわ」


「やはり、わかるか? この坊主は不思議なことにトゥルパの基礎が出来ておるようでな」


「ダーバ様、トゥルパって何ですか?」


「トゥルパとはな、簡単に言えば自分のオドを分け与えて作る使い魔よ。頭の上辺りで何か蠢くものを感じてはおらんか?」


「ええーっ! ダーバ様はこの金魚が見えてたんですか?」


「ほほぉ、すでに形まで成しておったか。普通はな、自分のトゥルパは他人には見えぬ。だが、オドを練り長年かけて育て上げたトゥルパは実体化も出来て、周囲の人間にも見えるようになると言う。まあ、そこまで育てられる達者は、ラハンたちの中にもなかなかおらんのじゃがな」


「これは将来が楽しみですなダーバ様。私がこの子を一人前のラハンに育てて見せましょう」


「うむ、よしなに頼む」


 こうして僕はラハンのルマン様の指導も受けることとなり、神殿で過ごす半分の時間はラハンの修行になった。朝晩のお勤めはダーバ様の元で行い、それ以外の時間はルマン様の指導を受けるラハン見習いとなったのだ。


「ダーバ様の元で格闘術の手解きは受けたのだな。なら次は棒術、それから剣術だな。ラハンはその任務上やむを得ず他者を害することもある。本来なら神官には許されぬ行いだが、その業を己の身に刻み体に実感させるため、弓や槍などの遠間で戦う武器は使わず、拳や剣を使う。または刃のついてない棒で戦うのだ」


「僕の父さんが十歳の誕生季祝いに、僕がラハンになれば必要になるからと剣を作ってくれました。父さんは鍛冶場で働いているんです」


「ほお、では次回からその剣を持ってくるが良い。今日は棒術から始めるとしよう。棒術は護身の技よ。相手に深傷を与えることなく無力化するのが目的でな。まず己の身長より頭ひとつ長い棒を選んでだな――」


 両手の拳を身幅一つ分くらい離して棒の中程を握る。右手で持つ方を上にして棒を体の前で斜めに持ち、左足を前に出した左半身で構え、右足を前に踏み出すと同時に右手を伸ばして右上から棒を振り下ろす。


 次に左足を踏み出しながら、右手を引いて左手を伸ばし棒の左端を下から上に突き上げる。

  さらに右足を踏み込みつつ棒を右上から振り下ろし、次にはまた左足を踏み込んで左下からの打撃を繰り出す。


 右上からの打撃と左下からの打撃を一歩一歩交互に足を踏み出しながら延々と繰り返す。


 ラハン棟の脇の修練場でお昼の時刻になるまで、汗だくになって腕が持ち上がらなくなるまでやらされたよ。

 うー、疲れたー!



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