第一章 7.新しい家族
妹が生まれた。春に咲く花にちなんでアマリと名付けられた。ぽわぽわと生えた薄い頭髪は父さん似の黄色い髪で、目の色は母さんに似た明るい茶色をした赤ちゃんだ。ちなみに僕は黒髪に父さんと同じ褐色の瞳をしている。
アマリはとても元気な赤ちゃんで、おっぱいを飲んでない時と眠ってない時はいつでも「わうわうわぉぎゃあー」と顔を真っ赤にして泣いていた。
その声を聞いていると僕も「ワウワウワウワーン」となんだか吠えたくなってくる。
でも僕は妹を可愛がってちゃんと守るって約束したんだ。だから夜も何度も起きてアマリにおっぱいを飲ませてる母さんがお昼寝できるように、毎日の神殿での鍛練が終わると日が高いうちに急いで帰って来て、夕飯の支度を始めるまでの間は、僕が寝籠に入ったアマリを預かって毎日子守りをしてるんだ。
「ほら、アマリ、お日様は暖かいね。みんながぽかぽか暖まって良い気持ちになれるように、ブッダ様がお日様を作ってくれたんだよ。」
「わうわうわぁー?」
「もうすぐあのお日様が西の空で赤くなるよ。お日様がお休みの挨拶をしてるんだよ」
「わうわうふぁー、うぅふわぁ!」
「アマリはお利口だね、もう泣かずにおしゃべりができるみたいだねえ」
「ほわぁ! あー、まー、びぅわー!」
「アマリは金魚が見えるのかな? これは捕まえられないんだよ?」
「わうわうぎゃうわー!」
「はいはい、ちょっとまってね、我慢だよ、すぐにオムツを替えてあげるからねー」
アマリがのちょっとぐずついた声が聞こえたのか母さんが起き出してきた。
「ダルタありがとうね。オシメは母さんが替えてあげるわ」
「母さん、もうお昼寝はいいの? ゆっくり寝てていいんだよ?」
「ダルタがアマリの世話をしててくれたので、母さんはゆっくり休めたから大丈夫よ。オシメを替えたら晩御飯の支度を始めるから、すまないけどこのオシメを水桶に漬けて洗っておいてちょうだい。ダルタが洗ってくれると布が長持ちするんだもの」
「えへへ、最近はギフトの扱いが上手になったってお師匠様にも褒められるんだ」
「オシメにはくたびれて擦りきれてた古い布を使っていたのに、ダルタが洗濯をしてくれるようになってから、だんだん布がしっかりしてきたのよね。汚れもよく落ちてるし、ダルタのおかげで助かるわ」
「うん、綺麗になれー、綺麗になれーって思いながら洗うと汚れもよく落ちるみたいだし、古布も再生していくみたい」
「でもあまりやり過ぎないでね。赤ちゃんの肌に当てるには、使い込んで柔らかくなってる布の方がいいから」
「そっか、じゃあ今度は柔らかくなれー、って思いながら洗ってみるよ」
お兄ちゃんは家族皆のために頑張るよ!
第一章はこれで終了です。
第二章は翌零時より投稿します。