第4話 圧倒
「さて、いこうか、お姫様」
「……」
私はこれ以上ないくらい嫌悪の表情をしていることだろう。
その日の授業が終わった後、逃げようとしたがすでに廊下にバルトがいやがった。
「おい、ジュダン、お前の兄上が呼んでるぞ」
「この場で女はお前しかいないから…」
ジュダンのツッコミを無視して身を翻して逃げようとした。
すでに後ろにはクルトが待機していた。
「フルート嬢、流石に甘いですよ」
「お前いつからあいつの味方に…」
「元々王族の護衛ですよ?味方も何も当然です」
「ということであきらめろ」
私は項垂れるしかなかった。
さっさと帰ってセイの作ってくれた夕餉を食べたかったんだけどな……
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「……えーと、フルート嬢?」
「何ですか?雑魚2号」
連れて行かれた先は士官学校の中庭だった。
先を潰した剣を渡されて、バルトと一騎討ちをすることになった。
数秒で剣をふっ飛ばして、剣先を突きつけてやったところだ。
「ぷっ」
「ジュダン様。笑ってますが1号は貴方様ですよ」
「なんだと!?」
ジュダンが吹いたが、クルトはすぐに言葉の意味を理解したらしい。
普通に考えたらわかるけどね。
「いやー、これは強いわ。まさか俺で秒殺されるとは」
「は?兄上手を抜いたんじゃ…」
「確かに虚をつかれたのは認めるが、手を抜く以前に瞬殺だからな」
バルトは後ろ手で頭をかきながら起き上がる。
ジュダンに近づくと耳打ちをしていた。
耳打ちの後、いつものようにジュダンが叫んでいたが、煩わしかったので無視して鞄を担ぎあげる。
「もう終わりましたよね。夕餉を食べたいので帰りますね」
「ああ、悪かったよフルート嬢。ジュダンをこれからも頼むよ」
「丁重にお断りします。その雑魚1号はそちらで見ていてください」
バルトとクルトは爆笑していた。
ジュダンが何か叫んでいたけど、聞かないようにして士官学校を後にした。
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「お嬢様、最近機嫌がよさそうですけど、学校でいいことでも…はっ!まさか気になるお相手が」
夕餉を食べているとセイが茶化してきた。
気になる相手なんかいるわけがないが、いないといないでその内婚約話でもでてくるんだろうな。
「最近、絡まれてるのが嫌になってるんだけど、機嫌よくみえる?」
逆質問してみたら、セイは勢いよく頭を縦に振っていた。
どこをどうみたら機嫌よくみえるのか、今日も王族に絡まれてうっとうしいったらありゃしない。
「ちなみに誰に絡まれてるんですか?公爵ご子息ですか?同じ侯爵でも可です」
「ジュダンってのと今日その上のバルトっていうのに絡まれたけど、うっとうしいんだけど」
名前を口にしたらセイは冷や汗をかきながら手に持っていたトレイを落としていた。
「えっと…ロゼ様、今なんと…」
「だからジュダンとバルトって…」
「そのお二方の名字ってアルバランですよね?」
「あー、確かそんな感じだったはず」
正確にはバルトの名字は知らないけど、ジュダンの兄上だから同じだろう、多分。
「…旦那様に連絡してきます」
そういってセイは部屋を後にしていった。




