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第2話 入学

「い…一本!」

試験官が声を上げる。

私の目の前に剣を飛ばされ座り込んでいる金色の髪が印象的な男子がいる。

何でこんな状況下になっているかというとこうだ。



王都に着いて一週間後が士官学校の試験兼入学式の日になる。

格式より実力主義を貫いている士官学校では試験の結果によってクラス分けを行うことになっている。

裏口編入などもあるが、そこはこの際無視しよう。

セイに見送られて試験会場でもある士官学校についた私を待っていたのは奇異、侮蔑の視線だった。

午前中は筆記試験、午後からは実技の試験になるのだがこの実技試験での出来事だ。

「人魔族がいるぞ?おい、人間様の格式に敵うと思ってんのか?」

そういって早速喧嘩をふっかけてきた男子とその取り巻きらしい何人かの生徒がニヤニヤして近づいてきた。

「人魔族だろうが、人間と扱いは変わらないのんじゃなかったか?」

「はっ!変わるに決まってんだろ。人間の出来損ないのくせに」

「ふーん」

特に興味もなかったのでやり過ごしたかったのが、こいつはさらに突っ込んきた。

私の服の胸ぐらを掴むと顔を近づけて睨んできた。

「興味なさそうにするんじゃねぇよ、人魔族が」

「おい、そこなにやってる!」

試験官の男が近寄ってきた。

喧嘩をふっかけてきた男子がそれをみて胸ぐらから手を離した。

「なんでもありませーん」

「………そうか、以後気をつけるように」

明らかに気づいてるけど流した態度だった。

多分、こいつは貴族の中でも上の爵位の子息なんだろうな。

「よかったなぁ?お前みたいなのは下位クラスで前線に放り込まれるのが落ちだろうけどな、ははは」

「言いたいことはそれだけか?」

「あぁん?また生意気なこと言ってるな。なんなら実技試験でわからせてやろうか?」

というのがこれまでの経緯だ。

で、私は今この調子にのっていた馬鹿を見下ろした形で立っているわけ。

「くそっ!もう一回だ!たまたまだ」

傍に落ちていた剣を拾い上げて再度構えてくる。

拾い上げてすぐに斬ってかからなかっただけでも評価してやろうかな。

流石に前世で剣士をやってた私は、10歳の身体とはいえ、そこいらの習いごとの剣には負ける気はない。

とはいえ、勝負がついているのにまた挑んでくるこいつには、二度と楯突かないよう躾をしておく。

相手の剣に向けて横一閃。

その後には半分の長さになった剣が彼の手に握られているだけだった。

試験なので木でできた模擬刀なのだが、これは効果があったようで、その場でへたり込んで動かなくなっていた。

「はい、お終い」

それだけを告げて次の受験者のためにコートを後にした。


その後は淡々と試験が終わっていき、私はSクラスと結果が出た。

クラスにはS〜Fまでのクラスに分けられていて、このクラスは最高位のクラスだった。なので、基本貴族の位も高い奴らが多い。

「お…おいお前」

試験のときにフルボッコにした男子が目の前に立っていた。

あ、あれだけ不様に負かしてやったのにSに入れたのか。

「ん?私に負けたお前もこのクラスか」

「ふん。人魔族には負けたくないんだよ」

「負けたろ?」

そう言ってやったら顔を真っ赤にしてきた。

「ああ負けたよ!完敗だった!だから俺の近衛騎士にしてやるよ」

何言ってるんだこいつは。

今私の顔は失笑で顔が歪んでいるだろう。

「意味わからん」

「俺がこういってるんだから一貴族が断る道理がないだろ!」

「断る」

そう言って踵を返したら、にこにこした表情で長身の男子が立っていた。

「まぁまぁフルート嬢、殿下は貴女が気になってるんですよ」

「クルトォ!!」

言うが早いかクルトと呼ばれた男子に向かって突進していた。

「殿下?」

「殿下名乗ってませんでしたからね。このお方はジュダン・アルバラン様です」

アルバランということは王族一族ということか。こういうのが王だと国は衰退するな。こいつが継承権何番くらいかによるけど。

「ふーん、ここでは爵位や王族だろうが関係ないはずだろ?興味ない」

「まぁ、そうですね。しかもこのボンクラは喧嘩売ってましたしね。駄目ですよ殿下、美しいとはいえあんな喧嘩の売り方は…」

「黙れぇぇぇ!!」

クルトに向かってジュダンがストレートを放つがクルトは軽くそれを避けるとジュダンを捕まえて連れて行った。

そしてタイミングよく教室の扉が開いた。

「さて、騒がしいのも終わったな?これから半年お前たちの教官になるシテンだ」

入ってきたのは筋肉隆々のいかにもな男が入ってきた。短く揃えた赤髪に右眼の上には袈裟斬りにあったであろう切り傷があった。

というより聞いてて入ってこなかったのかよ、こいつ。

「何で半年なんだ?」

7年制のこの士官学校で半年というのは中途半端な気がする。

「半年後にはクラス下位5名の総入れ替え戦がある。そこで勝てばよし、負ければそいつらはAクラス行きだな」

シテンがにやりとしている。

そして一枚のでかい紙を板書に掲示した。

「これが総勢25名のこのクラスの試験結果だ、よくみとけよ」

名前と名前の隣には数字が記載されていた。


1、ロゼ・フルート

2、ジュダン・アルバラン

3、クルト・ウィンデイン 


あいつ、あの弱さで2位って大丈夫か?

あ、10歳を対象にしたテストだから過去の経験がある私がおかしいだけか。

その後は、来週からはじまる授業の説明と教本を配布されただけで終了した。



ーーーーーーー



「しかし驚いたな」

「シテン教官でも驚くことがあるんですね」

シテンの言葉に隣に座っている眼鏡をかけた華奢な男が反応する。

「Sクラスに王族と警護役がいるのはわかるだろ?」

「ええ、基本彼らの腕はずば抜けてますからね、そもそも落ちこぼれは士官学校に通わせず自宅で軟禁か闇に葬るかですからね」

「物騒なこというなよ……まぁいい、そいつら圧倒して抜かしたやつがいるのは聞いたか?」

「ええ、聞いてますよ。というより見てました。人魔族の候爵嬢ですよね」

言って、机の上にある資料に目を落とす。

そこに書いてあるのは試験での個人の成績表である。

「学科は普通なんだがな、剣技は異常。魔法力もやばいときたもんだ」

「その魔法力の試験官は私なんですけどね、まさか聖域の枝を細切れにしてくるとは思いませんでした。調達が……ふふふ」

さっきまでの調子が嘘のように顔を青くして笑っていた。

「まぁ、その休日返上で頑張ってくれ…」

シテンも同情の声をかけた。

「シテン教官も一緒ですよ!!クラスの生徒なんですから」

「なんだと!?嫌に決まってるだろ!」

大人の休日返上を賭けた争いは教頭から二人で調達してきなさいと言われたことで終息した。

もちろん二人とも落胆した様子でこの日は帰路についた。

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