十一話
家族以外の人間と会わんと、なんか頭がどんどん固くなっていってる感じがする。
「さーて、どこにあるかなー。」
「キョロキョロすんな。紘基、田舎モンだと思われるぞ。」
「学校で田舎モンもクソもねぇだろ。」
「あっ、あったよ。えーと、一樹と澄玲は......おー、一樹八位、澄玲四位で澄玲の勝ちだぁー。」
「ちっ、さすがに八位じゃ勝てんかー。」
「じゃあ帰りにちゃんと本買ってくださいね。」
「異次元の戦いだなー。」
「あーあ、負けっちたかぁー。」
「いつまでもここにいても邪魔だし、そろそろ帰るぞ。」
「でー?何が欲しいの?」
「そうですね。井納学園先生の新刊がそろそろだったと思うんですけど、それにしてもらおうかと思います。」
「構わんぞー、っていうか罰ゲームだから致し方ない。」
「じゃあ帰りに。」
これで日頃の感謝を伝えたいけど、......「うーん、どうすりゃいいもんかねー。」
罰ゲームとして、あげても、お礼にはならんよなー。
「どーかしたのか?」
そう一樹に尋ねたのは影野だった。
「いや、あれだ。日頃澄玲には世話になってるからお礼がしたなーって思ってな。」
「うんうん......一樹おっお前お礼なんてできたのか!」
「殴ってもいいか?」
「冗談に決まってるだろう。まあ、お礼をするのは大事だろう。澄玲は小説が好きだし、お前のおすすめをお礼の言葉と一緒に渡せばいいんじゃないか?」
「いやそれだと、気づかれるからなぁー。」
「ふむ、なら先にコソッとレジを通しておけばいいんじゃないか?それなら返される事はないだろう。」
「そうだな。助かった。」
「おう、頑張れよ。」
「ぐ腐腐。あそこの2人何を話してるんですかねぇー。」
BでLな妄想をしていた百合本の姿があったとか。
ホームルームが終わり、部活動生が部活へと向かう。
ちなみに、戸星がサッカー部で影野が野球部、百合本が美術部で城本が帰宅部である。
そして、俺と澄玲は文芸部に所属している。
「澄玲、今日部活行くか?」
「一応涼風先輩にも話を通してから休んだ方がいいですよねー。ちょっと行きましょう。」
「おう。」
うちの高校の文芸部は3人しかおらず、実質同好会扱いなので、気軽に休めるのだ。
ちなみに涼風先輩というのは、その文芸部の部長である。
「もう部室にいる時間だな。さっさと行ってさっさと帰ろう。」
教室とは別の校舎にある、図書室の隣の小部屋が文芸部の部室だ。
「せんぱーい、今日本買いに行くんで、俺と澄玲は帰りますねー。じゃあー失礼しまーす。」
.
..
...
「ちょっと待てこらぁー。」
「なんすか?」
「私の可愛い後輩をひっかけていこうなんて、お天道様が許しても、この私が許さないわよ。」
この少々頭が残念な美少女が涼風零子先輩だ。
「前回のテストの結果で勝負をして、俺が負けたから、本1冊買うことになったんですよ。」
「わざとね。わざと負けたのね。そうやって、澄玲ちゃんを捕まえるなんて卑怯よ。」
しかもこの女外面は完璧な美少女だから扱いずらい。もし仮に無理に逃げようとしたら、
『なんか知らんけどあの残念イケメンが悪いんだろ、確保ー』とか言って逃げるのを妨害するバカに心当たりがありすぎるので、選択肢から除外される。
「今回は接戦だったんで、有り得ませんね。」
「澄玲ちゃん、一樹君が何か変なことしてきたらすぐに連絡しなさいよ。」
「ふふっ、その時は頼らせてもらいますね。」
「澄玲さぁーん?何を仰っていらっしゃるのですかぁー?」
「分かってますよ。一樹くんはそんな事しないって。」
「あーはいはい、イチャイチャするならさっさと帰ってどうぞ。」
この女俺と澄玲が会話していると5分の3位の確率でこれを言ってくるのだ。
「いや、あんたもその気になりゃすぐ彼氏作れるくせに、作らないだけだろ。」
「好きでも無い奴と付き合ってなんになるのよ。じゃあさっさと本屋行ってきなさい。あんまり遅くならないようにね。」
この女......たまにちゃんと先輩ムーブしてくるから、侮れん。
「えーと、これか、井納学園先生の新作。」
「そうですね。先生このペースで新作出してるなんて、もう化け物ですよね。」
「その上あのエゴサ量だろ、マジで頭おかしい。」
澄玲の好きな井納学園先生と、俺の好きな長 なじみ先生はラノベオタからエゴサの神とまで呼ばれるほど、エゴサが半端では無いのだ。
例えば、SNSで、その2人に関する呟きをすると最短で10秒最長でも10分以内に反応するという圧倒的エゴサなのだ。
「他に買っときたいものありますか?無いなら帰って読みたいので。」
「俺は、こん前手を出してなかった幼馴染ヒロインの新作を買ってくるから、先に行っといてくれ、ああ、それいくらだっけ?お金渡しとく。」
「税込で660円です。」
「はい。」「ありがとうございます。」
さてさて首尾よく澄玲と別行動に移れたので、予め探しておいた、澄玲好みの作風で、澄玲が読んだ事無いと思われる本と、幼馴染ヒロインの新作を手に取り、レジに向かう。
「じゃあお互い目当て物を手に入れたし帰るか。どっか寄ってきたい所あるか?」
「いいえ、もう大丈夫です。じゃあそろそろ帰りましょう。」
澄玲の家が視界に入る。
そろそろ、渡さんといかん。......あれ?なんで俺こんなに緊張してんだ。昔もこんな事よくやってたのに。
いや、それは今考える事じゃない。
「っ......。」
「いっくん?どうかしましたか?」
ええいままよ。
「ちょっと渡したい物があってな。」
「なんですか?」
「いや、あのこれ。」
キョトンとした様子で、こちらを見つめて来る。
「ほら、日頃の感謝を形にするのって大切だろ?だからまぁ、ほらよ。」
ずいっと手を伸ばし、澄玲の眼前に差し出す。
「あっ、ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだよ。」
「いえ、いっくんがこういう事するのって珍しいなって。ほら、普通は、言わなくても伝わるって思ってるタイプですよね?」
「いやまあ、1ミリも否定出来んけど、まあ成長したんだよ。」
「ふふっ、じゃあこれ楽しませて貰いますね。」
「おう、是非そうしてくれ。じゃあ俺はそろそろ帰るな。」
「さようなら。」
「じゃーな。」
詳細は活動報告に書いてるんですけど、ちょっとの間こっちの更新を不定期にして、息抜きに新作を書くことにしました。次のこっちの更新の時にリンク貼っときます。異世界恋愛系になる予定です。
それとは別件ですが、こっちのタイトルの略称を考えて欲しいです。活動報告か、こっちの感想の所に、書いてくれると、ありがたいです。
エゴサの神達はこれからもちょくちょく出てくるかもしれないです。