一話
今回初めて投稿させていただきますので、拙い文章かもしれませんが、この小説を楽しんで頂けたら、作者として、これに勝る喜びはありません。
夕日の差す部屋にパラリパラリと紙を捲る音とシュッシュッとスマホを操作する音だけが響く。二人の男女が同じベットに座り肩を寄せ合いながら小説を読んでいた。
男の方は俺 玖珂一樹で女の方は、幼馴染の 甲斐澄玲だ。
「なんか最近幼馴染ざまぁ多くね?」
「えっ」
小説投稿サイトの現代恋愛の部門のランキングを眺めていた俺は一位から十位までを幼馴染ざまぁが占めているのを見て自然と口から感想が溢れてしまった。
「いっくんはそんなことしませんよね?」
不安げな瞳を浮かべながら小説を澄玲が訪ねてくる。そんなことしませんよねって言われても、そもそもそういう関係じゃないからな。
「俺は幼馴染ざまぁをして他の女とイチャイチャできるほど強メンタルじゃない。」
やけに不安げなので安心させるためにそう言っておく。
群青の瞳が纏っていた重苦しい空気は無くなり、歓喜の色で満たされる。
「そうですよね‼︎異常なまでにいっくんは幼馴染ざまぁを嫌いますからね。」
「違う。俺がおかしいんじゃなくて、主人公達がおかしいんだだいたいなんでこんなに可愛い幼馴染がいるのに他の女を選ぶんだよ。いろんなイベントは経験済みだからドキドキしないだぁ。成長して昔とのギャップがいいんだろ。頭使えよ。」
「可愛い......なんだかとても恥ずかしいですね。」
「あっ、いやそういう意味じゃなくて、可愛いのは事実だけど、あのなんて言うかその〜。」
「分かってますよ。いっくんは幼馴染属性大好きですからね。」
「よくお分かりで。」
「これだけ一緒に居れば分かります。」
さすが幼馴染理解が早くて助かる。
「でも、『可愛いのは事実だけど』ですか、それは嬉しかったですよ。」
女子の憧れのシミひとつない白磁のような頬を仄かに赤く染めた姿は夕日指す部屋の雰囲気と相まって、とても神秘的で美しかった。それは普段から見慣れている俺ですら見惚れてしまうほどの破壊力があった。
恥ずかしくて目を背けるとそろそろ女の子が一人で歩いて帰るには心配な時刻を指していた。
「そろそろ時間だな、送っていくよ。」
数十メートルしかないが、一人で帰らすとナンパされまくって、遅くなってしまうからだ。
「ありがと。」
二人並んで歩けばいかに自分の幼馴染が可愛いかよく分かる。周りの男どもは、じろじろ不躾に眺めているし、女性陣は、憧れの人を見る目で見ている。
「どっか寄っときたい所あるか?」
「じゃあスーパー寄って貰えますか?明日の夕飯は私が作ることになっているので。」
「あれ、おじさんとおばさんはどしたの?」
甲斐家では両親が料理好きなので、基本的に澄玲が作ることはないからだ。
「明日は友人の結婚式に行くそうです。兄さんは友人と食べてくると言ってますし、御幸はその日友達の家に泊まるそうなので、明日は一人なんです。そうだ、いっくん明日家に来ませんか?ちょうどおすすめしたい小説があって。ついでに一緒に夕飯を食べて行きませんか?」
ちなみに、御幸とは、澄玲の妹で現在中学二年生である。基本的にちゃんとしてる子なので、悪い友達には近づいて行かないだろうし、余り心配はしていない。
「あーそうだな、じゃあお邪魔してもいいか?」
「はいっ、ぜひ来て下さい。」
この気軽さも幼馴染属性の長所だよなぁ。
「これで全部か?」
「はい、ありがとうございます。持ってくれて。」
「別に感謝されるほどのことじゃない。このくらい。」
これ以上話しているとホントに遅くなり過ぎるので、荷物を持ち上げ歩き始める。
「半分渡してください。」
正直に言うと恥ずかしいので、適当なことを言っておこう。
「別に、周りから見たら、男が半分も持たせるなんて、って感じだろ?」
「相変わらず素直じゃ無いですね。」
「うるせーほっとけ。」
「明日お邪魔するなら、おじさんとおばさんにも言っといたほうがいいか。」
「そうですね、ちょうど帰ってきてるみたいですし、親しき幼馴染にも礼儀ありですからね。」
話ながら澄玲は、扉を開ける。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
荷物を持ったまま靴を脱ぎリビングへ歩いていく。高校生になってから澄玲の家に来たのはだいぶ久しぶりな気がするな。
「あら〜一樹くんじゃない。久しぶりね〜。」
「ご無沙汰してます。」
この人は澄玲の母で甲斐未琴近くの小さな病院で看護師をしている。
「明日誰も居ないから、いっくん呼んで、小説のおすすめしたいなって思って。」
「いいわよ。」
「ありがとうございます。」
「何よ〜、そんなに遠慮しなくていいのよ?あっでも、子供できちゃう様な事はしちゃダメよ。」
この人のセクハラ発言には、二人とも慣れているので、普通にスルーしていく。
「じゃ明日お邪魔します。さよなら。」
「じゃあね〜。今度は私達もいるときにゆっくりして行きなさいよ〜。」
「また明日ね。」
澄玲のご飯はとても美味しいので、明日が楽しみだ。
いかがだったでしょうか?これからも少しづつ投稿していきますので、よろしければ、続きも読んでみて下さいませ。