遂に来た
事件解決から1週間後、
「お願いします、ロキシスさん。」
「どうして断るんですか?」
拓也と敬介がアマテラス神社を訪れて、ロキシスに頼み事をしていた。
「だから、表彰されるようなことは何もしていないと言ってるだろう?」
どうやら先の倉庫での事件の解決者であるロキシスに感謝状を贈りたいと言ってきていた。しかし、ロキシスからすれば、特に何もしていないようなものだったので、突っぱねていた。
「余り目立つようなことはしたくないし、どうでもいいし、遠慮させて貰う。」
「解りました…今回は見送ります。でも、次に何かあったらその時は受けてもらいますからね。」
拓也がそう言った。
「…解ったよ。」
ロキシスのその返事を受けて、拓也達は帰っていった。
「やれやれ…」
この世界に来てまだ間が無いというのに、色んな事がありすぎている。文化、風習の違い、変な男達に絡まれる、そして今回の事件等、暇なように見えて、ロキシスもエリナも色んな事に巻き込まれていた。
「しかし、いつになったら侵略者は来るのやら…」
1人愚痴るロキシスだった。と、そこへ…
「ロキシス様、少し宜しいですか?」
ハルカが声をかけてきた。
「どうした?」
「実は、この間事件解決を解決したじゃ無いですか?」
「あぁ。」
「あれ以来、失せ物探しの依頼が殺到していまして…私達3人では手に負えないのです。」
「やはりまずかったか…」
「ある意味では。」
「それで、俺の力が必要なのか?」
「それもあるのですが…そのぅ…」
「何だ?遠慮無しに言ってみろ。」
「私達にこの間の魔法を教えて貰えませんか?」
「サーチの魔法をか?」
「お恥ずかしいですが、我々の探索魔法は余り精度が良くありませんので…」
「充分普通の人より優れているのにか?」
「それでももっと精度を上げたいのです。」
「解った。俺の探索魔法を教えてやるよ。」
「本当ですか!?」
そうして、3人に探索魔法を教えた。元々初歩の探索魔法は使えたので、3人ともあっさりとロキシス並みに探索魔法が使えるようになった。
それから3日後の事、
「何だ、この人だかりは…」
神社の境内に人だかりが出来ていた。
「あ、ロキシス様!」
「助けて下さい!」
「下さい!」
「何なんだ、一体?」
「皆失せ物探しの方々なんです。どうにも手が回らなくて…」
「…仕方ないな。俺も加わるよ。」
精一杯話を聞いて、何とか状況を打破した。
「いやぁ、まさか噂が噂を呼んで、あそこまで人が来るとは…」
「来るとは…」
夕方になって、ようやく人がいなくなって落ち着いたアマテラス神社。取り敢えずお茶を飲みながら、ひと息ついた。
「一体、どんな噂を流したんだ?」
「そうよ、ミカ、リナ。貴方達にお願いしたらこんな事になって…」
「うぅ、ごめんなさい。どんなものでも見つけますって題をうっただけなんですけど…」
「ですけど…」
「しかし、どんだけ失せ物があるんだよ、この世界は。」
「そうですね。まさか婚約指輪探しから、人捜しまでさせられるとは…」
「皆、お疲れ様。」
と、そこへエリナが料理を持ってやって来た。
「もう夕食の時間だから、料理を作ったよ?」
「そう言えば、お腹が空いたな。」
「エリナ様、済みません!?」
「良いのよ、偶には料理とかしてみたいと思っていたから。」
(因みに今日のメニューはカレーライスよ。)
「そう言えば、俺も元の世界で広めたことがあったけど、こっちの世界じゃ簡単に作れるんだったな。」
(そうね。色んな香辛料を混ぜた物が売られているからね。)
「まあそんなことはどうでも良いから、早く食べよう?」
「そうだな。頂きます。」
「「「「頂きます!」」」」
5人で美味しく食べた。
その日の夜、ドーンっと突然爆発音が鳴った。
「何だ?」
ロキシスは驚き、起きて縁側に出た。
「ロキシス、何だったの?」
寝ぼけ眼でエリナも起きてきた。そして縁側から街の方を見ると、炎が上がっていた。
「まさか、侵略者が来たのか?」
「ロキシス様、エリナ様!」
ハルカ達も起きてやって来た。
「ハルカ、ミカ、リナ、侵略者か?」
「はい。上空を見て下さい。」
そう言われて上空を見ると、巨大な飛行船が空を飛んでいた。
「でかいな…」
「えぇ…」
暫くすると、ロキシス達の耳に声が聞こえてきた。
“愚かなこの星の住民共よ、聞こえるか?“
「…やたらとでかい声だが、どうやってるんだ?」
「ロキシス様、解るんですか?」
「あぁ。お前達には理解できないか?」
「はい…お恥ずかしながら…」
「解った。」
そう言うとロキシスは魔法を発動させた。すると、ハルカ達にも声の主が何を言っているのか解るようになった。
“1時間、猶予をやろう。それまでに我々にこの星を寄越すかどうか、決めるが良い。“
「なっ!?」
「いくら何でも時間がなさすぎです!」
「ですです!」
「…ここでそんなことを言っても無駄だ。奴等は解っちゃいない。侵略するにしろ、相手と話が出来て初めてそれが成り立つって事が。」
肩を竦めて、ロキシスはそう言うと、縁側から庭へと出た。
「ロキシス様…?」
「阿呆の相手はしたくないが、アマテラス様との約束だからな。奴等と一旦会話してくる。」
「解りました。」
「お願いします。」
「します!」
「ロキシス、無茶はしないでね。」
(この場所や、街の方は心配しなくて良いわ。)
「ロキ?」
(エリナ、私に体を貸して頂戴。魔法で障壁を張ってあげる。)
「うん!」
「エリナ、ロキ、頼むぞ。ハルカ、ミカ、リナ、2人の傍から離れるなよ?」
「「「はい!」」」
そうしてロキシスはフライの魔法を発動させて、巨大な飛行船に向かって飛んでいった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。