アマテラスとの対話
その後1週間は何事も無く、ロキシスは作業に没頭し、無事にエリナのために7着の服を完成させた。
「ふぅ、ようやく終わった…」
「有難う、ロキシス。」
「ロキシス様、どのような機能をつけたのですか?」
「ん?気になるか?」
「勿論です。」
「ですです!」
ハルカ、ミカ、リナも興味があるようだった。
「まあ、強制的に脱がされたり、破壊されたりしない様にプロテクトを常時発動するようにした。」
「元々頑強なオリハルコンに、更に魔法で強化ですか!?」
「甘いな、例えオリハルコンでも、体を露出しているところには意味が無いんだ。それを補うためのプロテクトなんだよ。」
「下着にも付けてますよね、プロテクト。」
「勿論だ。抜かりは無い。」
「…恐ろしい事になってますね。」
「まあな。でも、エリナを守る為なら何だってするし、やらずに後悔するのは嫌だからな。」
「そうですか…」
「あっ、そうそう!」
「そうそう!」
「どうしたの、ミカさん、リナさん。急に大声出して。」
「あ、忘れてました。」
「何だ?ハルカまで。」
「実は、アマテラス様が、お二人に会いたいと…」
「そうか、会ってみたいと思っていたんだ。丁度いい。今からか?」
「宜しいのですか?」
「勿論です。神様を待たせる訳にはいきませんよ。」
「お二人も神様なのに…」
「なのに…」
「何か手土産でも用意しておくべきだったか?」
「いえ、それでは居間にお越し下さい。」
そういうと、そそくさとハルカ達はロキシスの部屋から出て行った。
「どんな神様なのかしら?」
「ロキ、会ったことはあるのか?」
(うーん…会ったことは無いけど、いい神様だって聞いているわ。)
「そうか…」
そういうと、2人で、居間に向かった。居間に到着すると、少女が1人、椅子に座っていた。
「あれ?この子誰だろう?」
エリナがそう言うと、ロキシスは傅いて、
「お初にお目にかかります、アマテラス様。少し遅れてしまったこと、お詫び申し上げます。」
と、丁寧な言葉遣いで言った。
「えっ、アマテラス様!?」
「うむ、その通り。妾がアマテラスじゃ。ロキシス殿、それからエリナ殿、お初にお目にかかるのじゃ。」
少女は立ち上がると、2人に挨拶をした。
「どうした、エリナ殿?」
「いえ…失礼ながら、お若いと思いまして…」
「ホッホッホッ、なるほどのぅ。これは失礼した。太陽神である妾がこの世界に降臨するとき、この姿で無いと地上に迷惑がかかるのじゃ。本来の姿は…」
「大丈夫です、アマテラス様。エリナは神となって間もないですから、認識できていないだけです。私とロキは認識しています。なぁ、ロキ。」
(えぇ。アマテラス様、姿を見せられず申し訳ありません。)
「良いのじゃ、ロキ殿。しかし…ここまで女性に近い神も珍しいのぅ、ロキシス殿。生まれ持ってその姿なのか?嫉妬するのじゃ。」
「そうですね…女性に間違われるのは慣れましたが、余りいい気はしません。」
「そうか…いや、話が脱線したのぅ。2週間近く経ってから、お主達に会いに来てしまったこと、申し訳ないのじゃ。」
深々とアマテラスが頭を下げた。
「いいえ、その間ハルカ達にはこの世界の事を聞いたりしていましたから、良い時間が得られたと思っています。なぁ、エリナ。」
「はい。何も解らない私達に、ハルカさん達は優しく接してくれましたし…」
「それは何よりです。」
ハルカ達がお茶を持って現れた。そして全員椅子に座り、話し合いが始まった。
「それで、アマテラス様。アテナ様から承った内容は、他の星から襲撃を受けるとのことでしたが?」
「うむ。これは他の神から聞いた話での。」
「何処の誰ですか?」
「アポロン殿じゃ。」
「ぶっ!」
ロキシスはお茶を噴き出した。
「なんじゃ、大丈夫か、ロキシス殿?」
「いえ、あのアポロンが…?」
「ロキシス、知り合いなの?」
「昔、その眷属と対決したことがある。」
「そうじゃったのか。」
「それで、アポロンはなんと?」
「うむ。アポロン殿は妾と同じ太陽神でのう。実力的には妾よりも劣るのじゃが、その子供と言うべき彼の担当している星から、どうやら妾のこの星、地球に侵略する計画が挙がっていると聞いたのじゃ。」
「そんなことが…」
「人間とは欲深き者じゃ、自分の星でやることが無くなると、他星にまで侵略しようと考えてしまうようでの。其方達の星ではそういうことは無かったかの?」
「規模は違うけれど、確かにありましたね。」
(そうね。私は元々余り星の管理をしたくなかったから、アテナ様に頼んで土地を分けて貰っていただけだし…それでも侵略する事はあったわね。)
「そうなの?」
(思い出してみなさい、エリナ。貴方もデミール族に攫われた事があったり、ヒューミルに襲われそうになったことがあったでしょう?)
「あぁ…」
(その規模が、もっと広大になったと考えるの。恐ろしいでしょう?)
「えぇ…どうしたらいいのかしら…」
「そこで、最初ゼウス殿に話を持っていったのじゃ。妾はゼウス殿と同等の神なのでな。」
「最上の神様!?」
「うむ。アテナ殿に聞いておらんのか?」
「ロキシス、知っていたの!?」
「いや、だが魔力のような雰囲気、それがゼウス様に匹敵しているからな。」
「うむ。我々は霊力と呼んでいるがの。」
「しかし、アマテラス様の力があれば、楽に人間を助けられるのでは?」
「妾と姉弟達、まだ会わせてはいないが妾には2人の姉弟がいての。月読と素戔嗚尊というのじゃが、2人と相談して直接人間と関わることの無いようにしておるのじゃ。」
「…?」
「余りに強大な力は身を滅ぼす。その事が解っている人間はおらん。従って、傍観を決めていたのじゃがな、流石に他星の介入は一大事じゃし…そこでゼウス殿に話したところ、アテナ殿の所にまで話がいって、元人間であるロキシス殿にお願いしようということになったのじゃ。」
「つまり、他星からやってくる奴らの進行を食い止めればいいのですね。」
「うむ。しかし、この星の人間は元々好戦的での。自分達でも何とか出来ると思っておる。しかし、アポロン殿の星の戦力も解らぬし…途方に暮れておるのじゃ。」
「解りました、何とかします。」
「ロキシス殿…」
「まあその代わり、ここでの生活は自由にさせて貰います。」
「勿論じゃ。ハルカ達には2人の事を任せておるし、必要な物は何でも行って欲しいのじゃ。」
「今のところ、必要なことは…そうだ、一つありました。」
「なんじゃ、ロキシス殿?」
そう言うとロキシスはカグラを異空間から取り出した。
「おぉ、カグラでは無いか?」
「やはり、ご存じなのですか?」
「うむ。妾は三種の神器という物を持っておってな、そのうちの一つ、天叢雲と呼ばれている剣がある。その天叢雲の模造品がそのカグラよ。しかしなぁ。」
「?」
「余りに出来が良かったので、かつてゼウス殿に渡したのじゃが、何故お主が持っておるのじゃ?」
「理由は解りませんが、私が…」
「そうそうロキシス殿、普通に話してくれればよい。畏まらなくて大丈夫じゃぞ?」
「…解った。俺達の星の、ある国に封印されていたのを封印を解いて手に入れたんだ。」
「ふむ…アテナ殿の星にか…ゼウス殿も一言言って欲しかったのぅ。」
(アマテラス様…?)
「おぉ、やはり喋りおるか。」
「声が聞こえるので?」
「まぁ、かつての持ち主でもあるからのぅ。しかし、何千年も前に作った上に、その存在を今まで忘れておった。じゃが良い主を見つけたようじゃな。」
「オリハルコンをも容易く切り裂く、一体何で出来ているのか、聞きたくてね。まさか作った本人とは思っていなかった。」
「当たり前じゃ。オリハルコンをも超えると言われた伝説の金属、ヒヒイロカネで作ったからの。」
「ヒヒイロカネ?」
「神のみ作り出せる伝説の金属じゃ。必要ならば、作り方を教えるが…?」
「いや、今は必要ない。」
「何故じゃ?」
「少なくとも、アマテラス様やゼウス様に匹敵する程、見聞を広めてからが良い。たかが20年と少しの元人間が手を出して良いものじゃない。」
「…ホッホッホッ、流石じゃのう。」
「…?」
「もし教えてくれと言われておったら、偽物を教えようと思っておった。じゃが、自分の力に慢心せずにおるようじゃ。ロキシス殿、気に入ったぞ。」
「それはどうも。」
「エリナ殿とロキ殿もじゃ。良い婿を貰った様じゃな。」
「はい。」
「しかしのぅロキシス殿、少なくともお主はヒヒイロカネを手にしておる。しかも2つな。」
「え?」
「1つはカグラ、もう1つはお主の心臓にある。」
「…そこまで見抜くか。流石ゼウス様と同格の神。」
「うむ。レーヴァテインじゃろう?もし良ければお主達の話も聞かせておくれ。」
「あぁ。」
掻い摘まんでロキシスとエリナはアマテラスとハルカ達に生い立ち等を聞かせた。
「ほぅ、一番驚いたのは、あのゼウス殿に勝ったか…」
「あの時のゼウス様は本気じゃ無かったからな。」
「いやいや、その若さで勝ったのならば、誇って良いのじゃ。なんせ、我々は何歳なのかも解らぬほど生きておるでな。」
「そうですね。」
「ますます気に入ったぞ。ロキシス殿に任せて大丈夫そうじゃ。」
「そうですね、アマテラス様。」
「まあ何があるか解らないけど、任せてくれ。」
「うむ。おっと、話が長くなりすぎたのぅ。妾は神界に戻らねばならぬ。」
「忙しいのにわざわざ会ってくれたんですもんね。」
「うむ。ロキシス殿、エリナ殿この星の事を宜しく頼むのじゃ。」
「解った。」
「解りました。」
「では失礼するぞ。ハルカ、ミカ、リナ、しっかりと2人の世話をするのじゃぞ。」
「はい!」
「畏まりました。」
「ました!」
そう告げて、アマテラスは神界に帰っていった。
「相違や、神界って何処なんだ?」
「え?ロキシス様、ご存じ無いのですか?」
「アマテラス様やゼウス様、最上の神のみが住む場所です。」
「ですです!」
「そうか…あの場所が…天界には住んでいたが、まさかその上があるとはな。」
(ご免ね、ロキシス。教えてあげておけば良かったわね。)
「いや、聞かなかった俺が悪いんだ、ロキのせいじゃない。」
「ロキシス様、エリナ様、食事にしましょう。」
「あぁ、腹ペコだ。」
「ふふ、そうね。」
そうしてハルカ達が作ってくれた料理を食べて、来たる戦いに備えるロキシスとエリナだった。
読んで下さっている方々、有難う御座います。