警官の訪問
神社に帰ると、ハルカ達が出迎えてくれた。
「ロキシス様、エリナ様、ご無事ですか?」
「車とかに当たりませんでしたか?」
「でしたか?」
「あぁ、大丈夫だ。頼まれていたものを買ってきたぞ。」
「良かったです。もう外も暗くなっていましたので、何かあったのかと。リナを向かわせようかと思っていましたので。」
「大丈夫ですよ。夕方位なのに周りは明るかったから。」
「そうですか。しかしエリナ様、服は買われなかったのですか?」
「えぇ。ロキシスが作ってくれる事になったから。」
「…なるほど。」
「ほど。」
「ロキシス様、余り露出は控えるようにお願い致します。」
「あのなぁ…俺を何だと思っているんだ?普通の服を作るさ。」
街で見てきた服を作られる様ですね、安心しました。」
「まあ、オリハルコンで作るから、エリナの着たい服に変わるようにするだけさ。エリナも色々見てきたから、何とかなるだろう。」
「でも、心配ですね。」
「ですね。」
「「?」」
「オリハルコン製の服…盗まれたりすると、厄介ですよ?」
「大丈夫、そういった事にも対処した服を作るから。」
「ロキシス様がそう仰られるのでしたら…」
「ミカ、リナ。もう良いでしょう?ロキシス様、エリナ様、お疲れでしょう?お風呂に入って下さい。その間に、食事の準備を致しますので。」
「申し訳ありません、ロキシス様。」
「ありません…」
「いや、大丈夫さ。エリナ、先に風呂に入ってくれ。俺は後で入るから。」
「解ったわ。」
エリナは風呂へ向かい、ミカとリナは食事の準備の為にキッチンへと向かった。
「…どうかされましたか?」
ふと、ロキシスにハルカが聞いた。
「いや、今日街で早速絡まれたんだ。」
「!」
「大丈夫、殺してはいない。それに聞いていた警察とかいう人間が介入してくれて、理由も説明したが…もしかするとここに話を聞きに来るかもしれない。」
「そうですか。でもご安心下さい。何があろうとも、ロキシス様とエリナ様に不利益になるようなことには致しませんので。」
「もう暫く、街を2人だけで歩くのは心配だ。」
「そうですね。我々も思慮不足でした。」
「ただし、何かしたいから、何かあったら用事を言ってくれ。」
「畏まりました。」
そう話して、ロキシスは部屋へと戻っていった。ハルカは、
「うーん、神様に仕事を頼むのも心苦しいですが、お2人にしていただく事か…考えてみるしか無いですね。」
そしてハルカもキッチンへと向かった。
それから二日後の事、ロキシスは割り振られている部屋に籠もって、エリナの服を作っていた。
「よし、一着は完成したな。」
そう一人愚痴っていると、扉がトントンと叩かれた。
「どうぞ。」
ロキシスがそういうと、一拍置いてエリナが入って来た。
「ロキシス、大丈夫?」
「あぁ、エリナ。無事に一着出来たから、今から呼びに行こうと思っていたんだ。」
「もう出来たの?」
ロキシスはエリナに服を渡した。
「それに着替えて、思う服をしっかりと考えるんだ。どんな服にも変わってくれる。前に渡した下着のようにな。」
エリナは服を受け取り、部屋に戻って着替えた。そして3分ほどして戻ってくると、上はセーター生地、下はスカートという姿で現れた。
「どう…かな?」
「よく似合っているよ。」
ロキシスも微笑ましく見つめた。すると、ハルカ達がやって来て、
「エリナ様、よくお似合いです。」
「わぁ、綺麗です。」
「ですです。」
「それはそうとロキシス様、少し宜しいでしょうか?」
「ハルカ、何かあったのか?」
「実は先日お話していた、警官がお会いしたいそうです。」
「今来ているのか?」
「はい。」
「わかった、面倒なことにならなければ、会って話そう。」
そういうと、ロキシスは居間に向かう。エリナも着いていき、一緒に入った。暫くして、
「やぁ、久しぶりだね。」
警官の姿の2人がやって来た。
「先日は世話になったな。」
「こんにちは。」
ロキシスとエリナもそれぞれ挨拶すると、テーブルにそれぞれ着いた。
「さて、自己紹介が遅れたな。私は進藤拓也という。そしてこっちが…」
「中山敬介です。2人とも警官をやっています。」
2人がそれぞれ名乗った。
「そうか。俺はロキシス、で、こっちは妻の…」
「エリナです。」
ロキシス達もそれぞれ挨拶をする。
「失礼ですけど苗字は?」
敬介がメモを取りながら聞いた。
「…バーンシュタイン。」
「ロキシス…」
仕方なくロキシスはそう名乗ると、エリナも複雑そうな顔でそれを聞いていた。
「ふむ、2人とも外国の人か。」
「…まあ、この国の人間では無いよ。」
「そうなんですね。ロキシス・バーンシュタインさんに、エリナ・バーンシュタインさんっと。」
「で、ロキシスさん。先日の男達の件について何だが?」
「あいつらか。その後どうなったんだ?」
「事実証明の為に聞きたいんだがな、何故2人を気絶させたんだ?」
「俺達の国では、いきなり声をかけて、掴みかかって来るような奴らは、殺されても仕方ないと言われている。気絶程度で文句を言われる筋合いは無いんだがな。」
「なるほど…な。取りあえず事情は解った。」
「うーん、あの人達から言われていたこと、伝えますか、先輩?」
「いや、必要ないだろう。どう考えても悪いのはあいつらだ。」
「…?」
エリナが首を傾げると、拓也がつけ加えて言った。
「実は、損害賠償を請求すると言って来ていたんだが、まあ払う義理など無いだろう。この国の人間では無いのだから。」
「そうですね。お二人、特にロキシスさんは何というか…凄い人のような気がします。」
「ほぅ…気配で解るのか?」
「武道を少々やっているので、相手の力量はある程度は。」
「ブドウ?」
「戦い方の一つですよ。何か?」
「なるほど。聞き慣れない言葉だったんで、気になってな。済まない。」
「いえいえ。でも2人とも気をつけて下さいよ?2人とも美しいんですから。」
「ん?」
「え?」
「…敬介。お前、ロキシスさんをどう考えているんだ?」
「え?あぁ、男性に美しいはおかしかったですね。失礼しました。」
「まあいいさ。女みたいとはよく言われるからな。」
「そうか…では、聴取は終わりにして、我々は帰ります。」
「おや、もう帰られるのですか?」
ハルカ達が居間の入り口に来ていた。
「折角お茶を入れたんですが…?」
「折角ですが、我々は一般の方々のそういった好意を受け取れないのです。」
「そうですか。」
「では失礼させて頂く。敬介、行くぞ。」
「はい、先輩。では失礼します。」
そうして、拓也と敬介は帰っていった。
「やれやれ、律儀な人達だったな。」
「そうね。あっ、ハルカさん、お茶を頂いて良い?」
「勿論です、エリナ様。」
「でも、大丈夫でしょうか?」
「でしょうか?」
「え?何が?」
ミカとリナが心配そうな顔をしていたので、エリナがお茶を飲みながら言った。
「何か面倒なことが起きなきゃいいのですけど…」
「ですけど…」
「まあ、大丈夫だろう。」
ロキシスはあっけらかんとしてそう言った。そして再び自室に戻り、作業を始めた。エリナはその間も、ハルカ、ミカ、リナに世界の事を聞いていた。
家を出た拓也と敬介は、
「…」
「先輩、あれで良かったんですか?」
「…」
「先輩?」
「うーん、どうにも…おかしい。」
「…何がです?」
「あの2人、外国人に思えるか?」
「2人とも黒髪でしたからね。でも、外国の人でも普通にいるんじゃ無いですか?中国とか、アジア系なら普通でしょ?」
「馬鹿、見た目の話じゃねぇよ。」
「え?」
「2人とも流暢に日本語を話していただろう?最近来たって言っていたのに、不思議と会話できていた。」
「あ…でも、今時普通に日本語喋る外人も多いですよ?」
「…お前、やっぱり馬鹿だな。」
「酷いな、傷付きますよ?」
「あの2人、口の動きと、言葉が一致していなかったんだ。」
「えっ!?でも、普通に話していたじゃ無いですか!?」
「だから不思議なんだよ。…こりゃあ、何かあるだろうな…」
「うーん…」
「まあいい。それ以外は普通の人なんだ、気にする必要は無いかもな。」
「…一応、身辺をあたってみます。」
「お前のそういうときの能力、俺は結構期待しているぞ。」
「はい、任せておいて下さい。」
そんな話をしながら、拓也と敬介は、歩いていった。
読んで下さっている方々、有難う御座います。