飛行
不意にロキシスは眠っていたところから覚醒した。エリナはロキシスに膝枕をしながら眠ったらしく、ロキシスの頭はエリナの膝の上だった。
(短時間かな…?)
そんなことを考えていると、ハルカがやって来て、
「ロキシス様、エリナ様、お食事の用意が出来ました。」
と言った。
「済まない。…何時間眠っていたんだ?」
ロキシスがそう聞くと、ハルカはクスクス笑いながら、
「ほんの30分程ですね。」
そう答えた。
「大分お疲れの様子でしたが、大丈夫ですか?」
「あぁ。エリナ、起きてくれ。」
優しく声をかけると、エリナも目を覚まして、
「おはよう、ロキシス。」
と、声をかけてきた。
「おはよう。ハルカ達が食事の用意が出来たそうだ。」
「そう…ハルカ、有難うね。」
「いえ、大したものはありませんが…」
そう話して、3人で食堂へと向かう。ミカとリナはあくせくと食事の準備を続けていた。
「ロキシス様、大丈夫ですか?」
「ですか!?」
「少し疲れていただけだから、大丈夫さ。ゆっくり眠れたしな。」
そう話して、皆で席に着き、食事をする。食事をした後、ロキシスは皆に昨晩あった事を話した。
「それで、この星の代表者を連れて3日後に話し合いをする事になってな。」
「そうですか…3日…」
「何かあるのか?」
「いえ、私達は問題ありませんが、そのぅ…」
「…?」
「この星の代表者の方が問題なのです。」
「なのです!」
そこまで話をしていると、玄関のチャイムが鳴った。ハルカが応対に行き、その間にミカが続けた。
「別の大陸にいる上に、会うための手続きとかが大変なのです。」
「なのです!」
「どっかの国王なのか?」
「忙しいとか言って、会ってくれないと思いますよ。」
「ますよ…」
「会ってみなけりゃ解らんがなぁ…」
そこまで話した時、ハルカが戻ってきて、
「ロキシス様、拓也さんと敬介さんが来ていますよ。」
「…解った。居間に通してくれるか?」
「解りました。」
「ロキシス様?」
「警察なら、更に詳しく教えてくれる事もあるだろう。悪いがお茶の用意を頼む。」
そういって、ロキシスとエリナは居間に移動した。直ぐに拓也と敬介が入って来た。
「ロキシスさん、お久しぶりですね。」
敬介が軽く挨拶をしてきた。直ぐに拓也も敬介も座り、お茶が出された。
「我々が来た理由は解っているようで…」
「まあなんとなくな。」
「あの声の主はなんと言っていたんですか?」
「…そこからか。説明してやるよ。」
そう言って、ロキシスは昨日あったことを2人にも話した。
「そんな…」
「これは…参りましたね。」
「何とかこの星の代表者と会わなくちゃならない。誰か適任者がいるか?」
「国際連合の長が適任だが…」
「いきなり会ってくれる人じゃ無いですね。」
「俺が直接話をする。居場所は何処だ?」
「行くためには海を越えなきゃならないし、今から飛行機に乗って行っても3日はかかる。」
「そうですね…とても間に合う距離ではありませんよ。」
「居場所は知っているんだろう?」
「それは知っているが…」
そこまで話をして、ロキシスは縁側から外へ出た。そして、
「来い、フェニックス!」
と、召喚魔法でフェニックスを召喚した。
「こ…これは!?」
「ロキシス様、お喚びでしょうか?」
「悪いが、大陸を横断しなけりゃならない。力を貸してくれ。」
「畏まりました。」
「ただ、いつも通りのスピードを出すと、2人が落ちる可能性があるから、それなりのスピードで頼む。」
「解りました。」
「ロキシスさん…これは?」
「俺の従者のフェニックスだ。背に乗って運んで貰う。」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ご心配なく。先ほどロキシス様が仰った通り、ゆっくり飛んで行きますから。」
「さあ、乗ってくれ。」
そう言うと、フェニックスは頭を垂れて乗りやすくしてくれた。ロキシス、拓也、敬介が乗ると、フェニックスはゆっくりと上昇をはじめた。
「エリナ、ロキ。悪いが行ってくる。何かあったときは…」
「気をつけてね。」
(何かあったときは任せておいて。)
そう告げられて、ロキシスは笑顔になり、飛び立っていった。
ロキシス達が飛び立って1時間ほど経った頃、
「拓也、こっちであっているのか?」
ロキシスが拓也に聞く。
「我々の国、日本から西へ向かってこのスピードだ。もうそろそろ見えるはず何だが…」
「ん?あれか?」
下を見ると大陸があった。
「上から見るのは初めてだから確証は無いが、アメリカ大陸の筈だ。」
「で、ここにその代表者がいるのか?」
「あぁ。少し待って貰えるか?敬介…」
「は、はい。確かにいるんですけど…」
「どうした?歯切れが悪いな。」
「いや、フェニックスさんのスピードが速すぎて…少し酔ってるんです。」
「…仕方ない。フェニックス、もう少しゆっくりと飛んでやってくれ。」
「畏まりました。」
更にスピードを落とすフェニックス。実はスピードを落とすのはこれで3回目なのだが、それでも既にアメリカ大陸の上を飛んでいた。
「で、どの辺なんだ?国際連合とやらがあるのは?」
「今調べたら、後5分で着く街の中にあるみたいです。」
敬介は気持ち悪くなりながらも、機械を操作して現在地と目的地を調べていた。
「…お前、飛行中に調べ物なんかしたら、余計に酔うだろう?」
「先輩がやって下さいよ、そう思うんなら…うぅ…」
「くだらんことをやっているうちに、もう見えてきたぞ。あれがそうか?」
ロキシスがそう言うと、大きな街が見えてきた。
「フェニックス、少し離れた場所に降りてくれるか?いきなり姿を見られるのはまずい。」
「了解です、ロキシス様。」
そうして、街から少し離れた場所にフェニックスは降りた。降りたと同時に敬介は木陰に入って吐いた。仕方なく拓也は背中をさすってやっていた。
「あのぅ…大丈夫ですか?」
「あぁ。お前の背中で無くて良かった。」
「そうですね。ではロキシス様、私は帰りますね。」
「悪いが、もう一度屋敷に戻って、エリナ達の事を頼めるか?」
「勿論です。ロキシス様、お気を付けて。」
そう話してフェニックスは来た道を帰っていった。
「仕方ないな…キュア。」
ロキシスは拓也と敬介に魔法をかけると、それまでの気持ち悪さが消えたのか、2人ともいつもの顔に戻った。
「これも…魔法か?」
「出来れば吐く前にやって欲しかった…」
「まあ酔うなんて事は俺達の世界じゃそんなに無いからな。それより、早く行くぞ。」
そうして3人で街へと入っていった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。