夏だからって何か進展するのは間違いだと思います(切実
顔を真っ赤にさせながら追及を逃れていると、別室に籠っていたアデューラさんとカテリーナさんが戻って来た。
身体の大きなカテリーナさんにその逆の小さな体のアデューラさんが抱えられて登場したのは何ともおかしな光景でインパクトが強い。
「なに?なんか言いたそうだけど?」
「なんでもないです」
どうして抱っこされているのか不思議そうに眺めていたら噛みつかれた。どうやら抱えられていること自体は不服らしいけど、本人の意思ではどうにもならないみたいだ。
逆にカテリーナさんは上機嫌なので、少々無理矢理カテリーナさんに抱っこされたのだとは思う。
「おーお帰り二人とも。意外と早かったね」
「とりあえずデザインの原案だけだからね。後はある程度時間を掛けて詰めるからお店もあるし、一旦休憩もしようと思って」
「それにそろそろアユムさんのヘアメイクも終わったころだろうと思っていたので。ナイスタイミングだったみたいですね」
俺としても、話題が反れたのでナイスタイミング。
まじまじと見つめる二人に少し気恥しさも感じるけど、あんまりうじうじしたらアデューラさんにどやされそうなので我慢する。
それでも視線は下がり気味になってしまうのは許して欲しい。
「良いじゃない。かなり可愛くなった。服がまだやぼったいけど、それはこれから適当に見繕うとして、芋っぽさは消えたわよね」
「そうでなくても元が良いですから、お化粧とヘアセットをするだけで本当に見違えますね。正直、少し嫉妬してしまうくらいには」
「ふ、2人の方がきれいだと思うんだけど……」
やたらと褒めて来る二人に、気恥しさからつい反論したのだけど、それを聞いてアデューラさんは当たり前でしょう。と鼻を鳴らしながら答える周囲も苦笑い気味だ。
何かしただろうか。
「私達はアンタみたいに、ベースがめちゃくちゃ可愛いわけでも、綺麗なわけでもないの。そもそも化粧とか髪型とか、服装とかで誤魔化して、ようやくまともに女子として戦える訳。それがノーメイクで服装もダサいのに、元がピカイチだから周囲から目を引くだけのアンタに負けて堪るもんですか」
「あはは~、ちょっとアデューの言い方はきついけどぉ。私らは昔から努力してるからぁ。まだまだアユムには負けないってだけだよぉ」
そう言われて申し訳なくなる。彼女たちは昔から女性として自分を磨いて来た人達だ。
それが文字通りポッと出の、女子歴半年の奴にいきなり並ばれるほど、彼女たちのレベルは低くない。
何しろ、彼女たちはオシャレやデザインなどで生計を立てているその道のプロ。
俺より綺麗は当たり前だし当然なのだ。その努力を軽く見ている発言だったと反省する。
「ごめんなさい」
「あぁ、もう、別に気にもしてないわよ。そんなにしょげられても困るわ」
「アデューラさんは昔から当たりが強い方ですから。逆に初対面からこうして素で接されてる方が少ないので、アユムさんを気にかけてる証拠ですよ」
「ちょっとカテリーナ」
「ふふふ、だってそうでしょう?」
謝る俺に、一々謝るなと機嫌悪そうに返すアデューラさん。それを見て俺が更に縮こまる様子を見て、カテリーナさんが見兼ねたのか、助け船を出してくれた。
アデューラさんは不服そうだけど、ありがたい話ばかりだ。この半年は目の前の事で手いっぱいだったので、これからの事に目を向けて色々やっていったり、考えをまとめて行くにはいい機会なのかもしれない。
「まぁまぁ、とりあえずヘアメイクは終わったんで服と下着を見繕った方が良いんじゃない?これだけバッチリメイクで服がコレってのはちょっとアンバランスだし」
「そうね。どうせお金はココリネおばさんがまとめて後払いだし」
「でしたらお金に糸目は付けない方がよろしいですね。機能性もデザインも上のランクの物で揃えましょうか」
考え事をしている内に、何やら話が怪しい方向に進んでいる。あれ?これで解散じゃないの?まだやるの?俺のHPはもうゼロだよ???
「じゃ、まずは下着からね。カテリーナのお店に移動しましょうか」
死刑宣告に聞こえたのは、俺だけじゃない筈だと思う。




