夏だからって何か進展するのは間違いだと思います(切実
言われた通り大体30分経った頃に戻って来たアデューラさんは後ろにぞろぞろと何人かの女性を引き連れて来ていた。
全員綺麗で可愛い女の人だ。オシャレだし、スタイルも良い。
「私のファッション業界の仲間たちよ。今日からビシバシ指導するから覚悟しなさい」
「えっ、今日だけじゃないんですか」
いつのまにか話の日数が伸びている件について思わず驚きの声を喘げたけど、アデューラさんは当たり前でしょと鼻を鳴らす。
「アンタみたいな芋っぽいのが、いきなりオシャレを一日限りで叩き込んだって身に付かないのは知ってるからね。少なくとも髪の手入れと化粧の仕方を覚えるまでは通ってもらうわよ」
「お、お手柔らかにお願いします……!!」
もう完全にロックオンされている。アデューラさんの目が猛禽類や猛獣のそれだ。
俺は獲物の小動物、逃げる術も助かる術もなくこれから蹂躙されるのだと思うと身のすくみ上る思いだ。
そもそも歳の比較的近い女性とすらあまり話をしたことが無いのだから、こうして女性に囲まれたことなどこれまでの人生で一度も無い。
……男だったら、ハーレムとでも思えたのだろうか。
「まま、あまりビビらせても良いことないよアデュっち。どうせなら仲良く、ね?」
「こんな良い素材が燻ってるのが許せないのは分かるけどぉ。それの改善も含めて、ココリネのおばさんも私達に預けたっぽくなぁい?」
「そうねぇ。あのココリネおばさんならやりかねないとは思うけど。兎も角はこの子の大改造計画を私達の手で進めるのは、とっても楽しそうだわ」
ふんっ、と鼻を鳴らすアデューラさんを宥めるように、その後ろにいた三人の女性がそれぞれ口を開く。
「んじゃ、手早く自己紹介と行こうよ。まずはウチからね。ウチはアンナって言うんだ。メイクとヘアアレンジが得意なんだ。よろしくね、アユっち」
「は、はぁ、よろしくお願いします……」
そうやって元気溌剌に自己紹介をして来た女性はアンナ、という名前らしい。
種族はヒューマン。この国の人間らしく、色白で淡い栗色の髪の毛とグレーの瞳を持った女性で、身長は俺より頭半分大きいくらい。
ヘアアレンジとメイクが得意とだけあって、髪型はこの中で一番凝っていて、大きく編んだ三つ編み?が特徴的なおさげが目立つ。メイクもほんのりと自然な感じだ。
「んじゃ次は私っすねぇ。私はクララって言うっすよぉ。主に美容とオシャレの情報を取り扱ってるっす。美容に関しては、エステティシャンの免許も持ってるんでぇ、綺麗になりたかったり、流行りの情報を知りたいならぁ、私に聞いてねぇ」
間延びした口調が特徴的なのはエルフと思われる女性。名前はクララと言うらしい。
エルフらしからぬ黒い肌と、パーマの掛かった金髪は今まで出会って来たエルフの印象とは真逆だ。
所謂街育ちのエルフ何だろうか。聞くのも中々野暮だから、聞くに聞けない。
「ではわたくしも。わたくしはカテリーナ。下着や肌着と言った物を主にデザインする職に就いていますの」
ゆったりと、頭を下げて一礼する彼女がカテリーナさん。
彼女の体は大きい1m80は超える身長だろう。他の部分も色々とビッグサイズなのだけど、その身体の大きさを見るに、恐らく巨人族の血か、大型の獣人の血が混じっていそうだ。
赤茶けた髪と、同じように赤っぽい瞳もまた特徴的だ。
「えっと、アユムです。よ、よろしくお願いします」
「さて、早速アユムの改造計画を練るわよ。アユムも3人も準備はOK?」
アデューラさんの言葉に、思わずダメですと言いそうになったけど絶対怒られるので踏みとどまった俺は偉いと思う。




