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夏だからって何か進展するのは間違いだと思います(切実

城下町の大衆食堂【グレンツェン】は今日も大盛況の大賑わいだ。


今は夏を前にした時期で日差しもなかなかに強い季節。少し汗ばむ肌と照り付ける日差しから逃げるようにやって来たお客さんがいそいそと席に着いては昼食を注文して、手早く出て行く。


ここ、グレンツェンでは定番のお昼の光景だ。


「おまちどうさま~。冷やし豚しゃぶ豚肉の冷製ピリ辛つけ麺、トマトと刻みオクラトッピングでーす」


手慣れた感覚で両手に乗せたお盆を持ちながら、ひょいひょいとお客さんとテーブルの間を縫って歩き、目的のテーブルまで無事に配膳を終える。


注文されたのはいわゆる今日の日替わりランチメニュー。


おばさんが早朝の市場で仕入れた新鮮で美味しい食材を、世界中の料理が食べられた俺の故郷の話と、おじさんの抜群の料理センスでとびっきりに旨いのが毎日日替わりで提供されるんだ。


今日の日替わりランチは氷水で締めた豚しゃぶと、同じく冷やした太目のパスタ。それをピリッと辛い特製のつけ汁につけて食べる洋風つけ麺だ。


お好みで粉チーズを振りかけて風味をプラスするも良し、このお客さんみたいにトマトやオクラと言った野菜をつけ汁に薬味として突っ込むも良し。

味にうるさい常連さんも旨さに笑顔が出ること間違いなしの自慢の一品に仕上がっている。


「おぉ、来た来た。いやぁ、アユムちゃんが来てから料理のレパートリーが増えて毎日来るのが楽しみだぜ。今日のメニューも旨そうだ」


「にししし、俺の故郷にあった料理からおじさんがヒントを貰って作ってんだ。不味いとは言わせないぜ」


「おーい、俺達にもそれくれー」


「こっちにもだー!!」


「はいはい、注文用紙に書いといてくださーい」


常連の獣人さん、猪の獣人なのだけど気さくでお喋り好きなおじ様と軽くお喋りをしてると新規で入ったお客さんから追加のオーダーが入る。


ランチタイムは近場の職場からお昼休憩にやって来たお客さんで沢山だ。夜のお客さんがゆっくりとお酒も交わしながら比較的長い時間滞在するのに対して、ランチタイムはとにかく人の回転が早い。


夜は夜で注文量が凄いけど、お昼はお昼で凄い量の人が来るから捌くだけでもてんてこ舞いなんだよね。

だから早く新しいバイト雇ってほしい。


「おじさーん!!1、6、14卓から日替わりね!!」


「だははは!!今日は人一倍盛況だなぁ!!こりゃ夏のメニューのレギュラー入りか!!」


「くっちゃべってないで手を動かしな!!まいどー!!席はちょーっと待っておくれ!!」


三人で必死こいて回してるけど厨房もホールもやっぱり人が足りてないって!!バイト雇おうよ~~!!


そんな感じでひーひ―言いながら駆けまわっていると、見兼ねたお客さんの一部が自分で食器を片づけたり、テーブルを綺麗にしてくれたり、外のお客さんを整理してくれたりしている。

うひゃーごめんなさい。


「いっつもごめんなさい!!」


「良いってことよ!!安くて旨い飯食わせてもらってんだからな」


「常連の店の手伝いくらいはしねぇと母ちゃんにド突かれちまうぜ!!」


オメーんちはちげぇねぇと手伝ってくれたお客さんから笑い声が上がりながら、何とかホールで配膳をしていると、今度は食事を終えたお姉さん達が食器をまとめて厨房の方へと持って言ってくれている。


「わーごめんなさい!!そこ置いておいてください!!後はやるんで!!」


「私達もちょっとくらい手伝わせて頂戴な。食器洗いくらいは私達も日頃からやってるもの」


「そうそう。お店が大変なのは分かってるし、こういうのはお互い様ってことで」


洗い場借りるわよ~と、おじさんに声を掛けながら、お姉さんたちはテキパキとなれた様子で食器を洗っていく。た、確かに俺より明らかに手慣れてる綺麗だ。ぐぬぬぬ……。


「ま、またお客さんに手伝わせてしまった……!!」


「手伝ってくれるならやらせておくのがウチの流儀さ!!アユムは真面目過ぎるんだよ」


そうじゃないと思うんだけど、実際手伝ってもらわないとお店が回らないのは本当なのでありがたい。


こんな緩い感じで、城下町で一番人気と名高い大衆食堂【グレンツェン】は今日も元気に営業中である。


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