俺に何があったのかの話
ザックリとだけど俺の身の上話をしておこうと思う。
俺の今の名前はアユム・ルス・ブリジャール。元の名前は東城 歩。
歳は20。元居た世界だと成人したばっかりで都内のそこそこの大学の二年生。
ごく普通に実家から大学に通ってて、召喚されたあの日も普通に大学から帰って来て、そろそろバイトに行こうかなって思ってた頃だったと思う。
自室のベットでスマホを弄ってたら、急に視界が真っ白になって、気が付いたらスプリングの効いたベッドから、つるつるでかったい大理石の上で寝そべっていた。
何が起こったのか分からず、ポカンとする俺になんだか仰々しい格好をした人が話しかけて来て、こう言った。
『私たちを助けてはくれないか』
って
いや意味わからん。とりあえず何を喋ってるのかはわかるけど、中身が空っぽで意味が理解出来ない。
助けてくれと知らない人に言われて助ける程お人よしでも無いし、そんな度胸も無い。ましてやここはどこだって話だ。
まずは状況の説明が先だと思う。
その旨を相手側に伝えると、大変失礼したと、大慌てで別室に用意をするとのことだった。
話の通じる人で良かったと思う。
で、何が起こったのかと、俺に何をしてほしいのかと言うと、おおむねこんな感じだ。
・勇者召喚と言う古来から伝わる儀式で、他の世界から今世界に起きているトラブルを解決できる人材を呼び出した
・それがたまたま俺だった
・召喚に成功したので、協力してもらえるものだとばかり思っていた
・依頼したいのは急増する魔物。その原因の調査と解決
・強い魔物はいるけど、魔王みたいなヤベーのは御伽噺に出て来る古代の勇者が倒した
・それほど強く無い魔物が、どこからか無尽蔵に湧き出ているので、それの原因を突き止めたい
大体こんな感じ。説明してくれたおじさんはその勇者召喚を含めた古代の魔法を研究しているらしく、日頃からお弟子さんに指導しているおかげか、凄く分かりやすかった。
ともかく、俺に依頼したい殆どの事は戦うことよりも調査らしい。実際、ほとんど学者さんと一緒に各地を回りながら、調査調査の繰り返しだったしね。
で、俺はその依頼を受ける前に一番重要なことを確認した。
『俺、帰れるの?』
と
そりゃそうだ。勝手に呼び出しておいて帰れませんはどんな人でも怒ると思う。俺だって、あの時帰れないと言われたら、研究者のおっさんをぶん殴ってる自信があった。でもまぁ、帰ってきた答えは最善ではなかったけど良い答えだった。
『古代の勇者様は元居た世界にご帰還なさったと伝わっている。まだその方法の解析は50%と言ったところだ。だが、必ず貴方を元居た世界に帰そう。それが、呼び出した我々の責任だ』
すっごい真剣な目で、そう言ってくれたのを今でも覚えてる。あのおじさんからして、演技ってことは無いってのは今だからこそ分かるけど、そうでなくても信じられるくらいの気迫と言うか、本気さを感じた。
だから俺は、条件付きでその依頼を受けると返した。
条件は至極当たり前の内容だと思う
・命の保証をすること
・必要な経費はそちら持ち
・衣食住の確保
・必要な訓練と知識を身に着けてからじゃないと活動は始めない
・成果毎に報酬の支払い
こんな感じだ。なんたってこちらは使えもしないスマホしか手元にない。万能アイテムのスマホだって、電波が無ければただのガラクタ。事実上、俺はこの身一つでやって来ている訳だし、勇者召喚で呼ばれたとはいえ、中身はゆとり世代の大学生。
スポーツなんてギリギリでインターハイに出られなかった程度の実力の陸上くらいだ。足の速さにはそこそこ自信はあるけど、それが何の役に立つのかと言われれば首を傾げるしかない。大学だって、いわゆる文系の大学。
これが理系や工学系の学部なら色々出来るのかも知れないけど、残念ながら俺は理数系の頭じゃなかった。
そんな奴がいきなり呼び出されて、何か成果を上げられるのか?正直、野垂れ死ぬだけだと思う。
呼び出した側の責任、と言うやつもあるだろうし、多少厚かましいかも知れないけど、俺はこの条件じゃなきゃ絶対に協力しないと伝えた。
研究者のおっさんも真剣に聞いてくれて、王様に聞いてみると言ってくれた。
そうして数時間後、王様と謁見した俺は王様と誓約書を交わし、正式に勇者として活動することに決まったのだった。
とりあえず序盤は毎日更新。その後は更新できる日に更新って感じにするつもりです。
のんびり、呑気に、よろしくお願いします