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俺に何があったのかの話

そうやってセーロと談笑していると、よしっと何やら力強い声が隣から上がってきた。

そっちに視線を向けるとなにやらおじさんが決意に満ちた視線で腕を組み、うんうんとうなずいている。


『……どうしたんです?』


『いや、なに、話を聞いて色々考えて、俺なりに結論が出たってだけさ』


『はぁ……』


その割には随分と大きな声だったように思うけど、それは突っ込んだら負けなんだろうか。

いや、おじさんが普段からうるさいだけかも知れない。たまにいるからなぁ、声のめちゃくちゃ大きなおっさん。


そんな失礼なことを考えていると、おじさんは改まった様子で俺と向き合い、こう言った。


『歩。俺はお前を引き取ろうと思う』


……はい?。


あまりに突然すぎて、俺は声に出すことも出来ないまま固まるしか出来なかった。

いや、話が急過ぎて本当によくわからない。引き取る?どういうことだ?と頭に?を大量に浮かべていると、おじさんは再び口を開く。


『俺には難しい話はよく分からん。ただ、お前が大変なことをやり遂げて、その結果が理不尽な目に合う結果になった、ってことだけは分かった』


『あー、うん。概ねあってるね』


本当にざっくりだ。ざっくばらんすぎて本当に話を理解しているのか不安になるくらいには大雑把な説明だけど、一応本人なりの理解はした、ということだろうか。ちょっとその辺不安だ。


おばさんの方も苦笑いしている。ただ、苦笑いするだけで止めないということは、こういうのは割と普段からあるのかもしれない。


『そして、お前が故郷に帰れなくなっちまったことも分かった。本当は帰りたいって思ってることも分かってるつもりだ。だからこそ、俺はあえてお前に提案したい』


表情は本当にまじめだ。おじさんなりに考えた、というのは事実なんだろう。

一体、おじさんが何を思い、何を考え、俺に何を伝えようとしているのかを真摯に受け止めるべく、俺は黙っておじさんの目を見る。


『歩、お前、ウチの娘にならねぇか?』


変わらず腕組をして、俺の目を力強く見返しながら、おじさんは言葉を改めて俺にそう伝えてきた。


『……それは、俺に元の世界は諦めろってこと?』


『そうじゃねぇ。帰りたいと思ってるのは分かってる。本当ならお前は故郷に帰って、自分のやりたいことをやるのが本当は一番なんだろう。だけど、現実としてそれが難しい。それは、わかるな?』


『……そう、だね』


おじさんの言うことは残酷なまでの現実だ。俺は現実に戻る手段も方法も、戻ったところで自己の証明も出来ない立場にある。


そんなおじさんの非情なまでの現実を突きつけられても、俺は案外冷静に受け答えをすることが出来た。

まだ、しっかりと現実として頭の処理が追い付いていない、というのはあるかもしれない。


ただ、取り乱したりしないのは、今の段階で言うなら都合が良いようにも思えた。


『だから、なんだ、気休めかも知れん。お前に無情な現実を突きつけてるだけかもしれん。それでもだ、俺はお前に【帰る場所】をちゃんと与えたいと思った』


『帰る、場所……』


そうだ、とおじさんは大きくうなずいて答えて見せた。


帰る場所。俺が本来帰る場所は元の世界。この世界で言うなら、王城の自室だと思う。

俺はこの両方を失った。おじさんはその帰る場所を俺に与えると言っているらしい。


『帰る場所があるってのは、思っている以上に大事だ。帰る場所があるから、頑張ろうと思うし、帰る場所が大事だから守ろうとする。それは家だったり、場所だったり、街だったり、人でもいい。ちゃんとした、自分の居場所があるってのは、すっげぇ大事だと俺は思う』


例えば、俺の帰る場所はコイツのところだと、おじさんは恥ずかしそうにおばさんのことを指す。


おじさんの帰る場所は、おばさんのいるところ。あるいはおばさんの隣、ということのようだ。案外、おじさんはロマンチストな部分があるっぽいなと思いつつ、俺は再びおじさんの言葉に耳を傾ける。


『すぐにそうはならねぇのは分かる。当たり前だ、なんせ俺らがこうしてちゃんと顔を突き合わせて喋ったのはこれが初めてだ。そんな関係なのに、今すぐ俺たちのところが帰る場所になるとは思わねぇ』


『うん』


『ただの同情かも知れねぇし、本当の意味ではそうなれねぇかもしれねぇ。でもよ、それでも、お前を放っておこうとも思えねぇ』


『うん』


『今すぐに、とも言わねぇ。今すぐになれるとも思わねぇ。それでも、俺たちがお前を娘として迎えることが出来れば、ここがお前の帰る場所になれるんじゃねぇかと思った』


どうだ?とおじさんは最後にそう一言言って締めくくった。あまり上手な言い回しではなかったし、おじさん自身もまだ上手くまとまっていないように思う。


ただ、おじさんなりに考えて、会ったばかりの俺のことを考えて言ってくれてるのはよくわかった。


だから、俺は……。


お待たせしました。少々忙しかったりして時間が取れなかったのですが、ぼちぼち再開します


時折更新が止まるかもしれませんが、出来るだけ更新したいと思うのでよろしくお願いします

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