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やると決めたら……

リュシアンに案内された私は、部屋を出て、ドキドキしながら廊下を歩く。

これから行く先に、自分が地球に帰れる装置があるのだと思えば、ドキドキするのも当たり前だ。


しかし、そのドキドキは、あっという間に終わった。


三十メートルくらい歩いた先に、行き止まりの部屋があり、なんと目的地は、そこだったのだ。

地球に帰れる装置は、私のいた部屋の目と鼻の先。同じ階の部屋だった。


「……こんな近くに」


なんとも言えない気持ちで、ドアノブを回す。

入った部屋の奥には、丸くて低い台があった。入り口近くに、四角い機械が置いてある。


「その台の上に君が乗って、その後こちらの装置を二回操作するんだ。一回目は、君をこの世界から切り離す操作。その後が、君を送り返す操作で、それで君は元の世界に帰れる」


――――某SF作品、スター〇レックの転送装置に似ている部屋の様子に、私は立ち竦む。

ミステリーのみならず、SFも大好きな私は、実は、スター〇レックの大ファンだ。

何を隠そう、ス〇ックさまが、私の初恋である。




「……それが、本当だという証拠は?」


内心の興奮を、出来る限り隠して、私は聞いた。


「ないよ」


あっさりと、リュシアンはそう答える。

しかし、嘘だという証拠もなかった。


「今、私を帰してくれるつもりは?」


「そんなことをしたら、俺はたちまち死刑だ」


今度は、リュシアンは肩をすくめる。

確かに、国王殺しの第一容疑者を逃がしたりしたら、間違いなく死刑になるだろう。


私は、「う~っ」と唸った。

装置を睨みながら、考え込む。




「……犯人を見つければ、私は間違いなく帰れるのね?」


「魔族の機械は、優秀だからね。君が、この世界に落ちた瞬間に、時間を戻して帰すことも可能だと聞いているよ」


それは、たいへん魅力的な言葉だった。


ゆっくりと、私は機械に歩み寄る。恐る恐る台の上に乗った。

その後、分かりきったことなのだが、そこから機械に手が届くか確かめる。

どんなに伸ばしてもダメだと確認してから、台を降りた。


今度は、機械に近寄って、機械そのものが移動できないか確かめる。

据え置き型の機械は、どっしりしていて、押しても引いてもピクリとも動かなかった。


(どのみち、世界を切り離してからの動作が必要なら、一人で操作できるはずもないけれど)


私は、ガックリ肩を落とす。


リュシアンは、しばらく面白そうに私を見ていたが、……やがて、動かなくなった私に声をかけてきた。



「納得したかい?」


したくないけど、仕方ない。


「大丈夫だよ。俺を信用して」


非常に胡散臭い笑みを浮かべて、リュシアンはそう言った。

私は、ギリギリと歯がみする。




「……わかったわ」


最終的に、私は、しぶしぶとそう答えた。

出会った時から親切で、私を助けてくれると言ったリュシアン。しかし、それは無私の好意ではなく、彼には彼の事情があったから。

きっと場合によっては、この人は、嘘でもなんでもつくのだろう。


(少なくとも、全てを教えてはくれなかったわ)


それでも、今の私には彼しか頼る者はない。



「犯人を見つけるわ!」



私は、宣言した。

それしか帰れる方法がないのなら、やるしかない!


(出来るかどうかは、二の次よ!)


そう思った。

そうと決まれば、私の心に迷いはない!


(まずは行動よ! 動きもしないで、結果を心配しても仕方ないわ)


そう思う。


「その意気だ。俺も頑張ろう」


リュシアンは、機嫌良く笑った。

そんな彼を、私はキッ! と睨む。


「その言葉、忘れないでね!」


私の言葉に、リュシアンは、はじめて動揺したような表情を見せた。


「えっと、美春……何をするつもりかな?」


「宰相様から上がってくる書類の検証に、決まっているでしょう! 膨大な報告がくるんだから、グズグズしている暇はないわ! さっさと、部屋に戻るわよ!」


鼻息荒く、私は叫ぶ。

綺麗なリュシアンの顔が、大きく歪んだ。


「まさか、本気で上がってくる資料の全てを見る気でいたのかい?」


言いながら、リュシアンは一、二歩後退(あとじさ)る。


「当たり前でしょう!」


彼の腕を、ガッシッ! と掴みながら、私は大きく頷いた。


「逃がさないから!」


おどろおどろしい私の声に、リュシアンが、天を仰ぐ。


彼の、その様子に、私は、ようやく溜飲を下げたのだった。

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