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女性の気を損ねてはいけません!

正直、ちょっと気が重い。


「国王さまに放って置かれて、おかしくなった人なのよね?」


私の質問に、リュシアンは頷く。


「だが、陛下が亡くなられて、今は少し落ち着かれたという噂だ。怒りのやり場がなくなった感じなのだろう」


それもそうかと、私は思った。

泣こうが、喚こうが、もう二度と国王が側妃を訪れることはない。

怒りの原因が消去して、側妃はガックリしたのかもしれない。




「それとも……、犯人は側妃で、計画通り国王を殺せて満足したって可能性もあるわよね?」


それもあながちないとは言えないことだった。

ただ――――


「側妃さまは、私と同年代の女性なのよね?」


続けて、私は、そう聞いた。

側妃は、十八歳。

私のような年頃の女性が、殺人――――それも、密室殺人なんて、できるのだろうか?


(痴情のもつれでケンカして、カッ! となって発作的に殺しちゃったってことなら、まだわかるんだけど……密室殺人には、計画が必要よね?)


密室という、普通であれば不可能な殺人を、考えて計画し、しかもそれを冷静にやり遂げなければならない。

なおかつ、相手はこの国の頂点である国王だ。


十八や十九の女の子に、そんなことが可能だなんて、思えない。


(少なくとも、私にはムリだわ)


そう思って悩んでいれば、リュシアンが「……同年代?」と、不思議そうに首を捻った。


「私は、十九歳よ。ひとつ年上だけれど、立派に同年代でしょう?」


もうすぐ誕生日で二十歳になるが、まあ、それは横に置いておく。一歳差なら、同年代と言ってもいいはずだ。


「――――君の世界では、二十歳が成人で、大学というのは成人後でも学ぶ場だと言っていなかったか?」


「そうよ。大学は、普通十八歳で入って、二十二歳まで学ぶの。まぁ、院でもっと学ぶ人も多いけど。年齢制限は、ないかな?」


有名なタレントで、七十三歳で大学に入った人もいる。学ぼうという意志さえあれば、大学入学は、何歳になってもチェレンジできるはず。


「成人後も学べるけど、成人前に学べないと、言った覚えはないけれど?」


私の言葉を聞いたリュシアンは、不自然に黙りこんだ。


私は、ピン! とくる。



「……ちょっと、私をいくつだと思っていたの?」



ジロリと睨めば、リュシアンは狼狽(うろた)えた。


「あ……いや。女性の年齢に関する質問については、黙秘する」


あからさまに目をそらす。


「絶対、もっと上だと思っていたでしょう!?」


問い詰めれば、降参というように、両手を上に上げた。


「美春は、落ち着いているから」


つまり、上だと思っていたわけだ。

本当の年齢より上だと思われて嬉しい女性はいないだろう。

当然、私もだ!




「明日は、私とポールだけで、側妃さまのところに行くから」


ツンとして、宣言すれば、リュシアンは焦った声を上げた。


「なっ!? 待て! 美春、危険だ!」


「今日の正妃さまのところでも、何もなかったんだもの。平気よ。……失礼な怪我人は、ベッドで、一人で、寝てなさい!」


「もう怪我は、大丈夫だ。寝ている必要はない!」


「治りがけが一番大切なのよ。安静にしてなさい」


「できるか! 第一、君が俺を置いていく理由は、怪我人だから心配なんじゃなく、年齢を上に思っていたのを怒っているからだろう!」


図星である。


「私は、落ち着いているそうだから、大丈夫よ」


フン! と、私はソッポを向いた。

リュシアンは、困り果てた顔で、近づいてくる。


「悪かった。美春。……この通り、謝る。謝るから!」


深々と頭を下げた。


「謝ってもらわなくて、結構です」


意固地になれば、今度は、大きなため息をつく。


「言っちゃなんだが……絶対、ポールだって、お前が十九歳だなんて思っていないぞ」


「だったら、私一人で行くわよ!」


ついには、リュシアンは頭を抱えた。


「頼む! どうしたら、許してくれるんだ?」


懇願するように、私の顔をのぞきこんでくる。

その様子は、とても情けなかった。――――はっきり言って、カッコ悪い。


そんな彼の姿に、私は、……少し怒りをやわらげた。

甘いかもしれないが、元々私は美形に弱いのだ。美形の困り顔は、どんなにカッコ悪くても、ご馳走である。


私の変化を感じたのだろう。ホッと息を吐いたリュシアンは、言い訳をはじめた。


「悪かった。……でも、側妃に会ってみれば、わかってもらえると思うが、……この国の若い女性は、美春とは少し違うんだ」


何が違うというのだろう?

そういえば、私はここで若い女性に会ったことがない。

単純に、そんなに若い女性が王宮で働くことがないからだと思っていたのだが。


(この国の成人って十五歳だったわよね。その後、男女共に働くっていう話だったわ)


だとしたら、王宮みたいな大人数の職場に、十代後半の女性がいないのは、おかしいかもしれない。


(そうよ! それに、そういえば、可愛いメイドみたいな子供は、いたじゃない!)


私が食事をするときに、用意をしてくれる中学生くらいの女の子がいるのだ。

あの子は、きっと十五歳くらいだろう。


そう思っていれば、リュシアンもその子のことを言ってきた。



「君の世話をしている彼女は、二十歳だ」


私は、ポカンと口をあけた。


「二十歳?」


絶対、どこからどう見ても、中学生以上には見えない! 頑張って高校生だ。


(童顔にしたって、ほどがあるでしょう!)


「彼女は、異常でも何でもない。この世界では普通の外見だ」


なのに、リュシアンは、そんなことを言ってくる。


十五歳の外見の彼女が二十歳。――――では、十九歳の外見の私は?




……どう計算しても、二十四歳だ。


「加えて、美春は、図太――――落ち着きがある。どう見ても十代とは思えなかった」


今、聞き捨てならぬ言葉が、チラッと聞こえた気がしたが、まぁスルーしてやろう。

それより……



「てことは、合法ロリ?」



私は、そう叫んだ。


拙作「チート転生者は双子の弟でした!」が発売されました!

◇◇◇

ある日、異世界召喚されたヒロイン。

彼女を召喚したのは、18年前に命を落とし異世界でチート転生を果たしていた双子の弟だった!

「お姉ちゃんは、僕が生涯かけて幸せにするからね! 一緒に幸せになろう」

宣言する弟は、超のつくシスコン。

ヒロインの運命は――――

◇◇◇

というようなお話です。

よろしければ、ぜひぜひお手に取ってみてください!

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