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六十六匹目 接触

本ッッッ当に投稿遅れてごめんなさい。スランプ?状態だったみたいです。多分、おそらく、きっと、

3日ほどひたすら御者をしていた。隣に座るエマも最初こそ見たことない景色に目を輝かせていたが今は陽気な天気に当てられ船を漕いでいる。クロウも昼間は影の中で眠っているようだし。ママレードとはあれから1度も話してない。ただ、行き先が一緒だからだと念を押され、バルバトスに来た時同様に御者をしているのだから当たり前か。エマの飯を用意してくれるだけ有難い。もちろん俺のは無いが。というかこの馬車飛行船に積んでいたのだろうか?そんな格納スペースがあったのか?

「…くぅ……」


「…落ちても知らねえからな」


「……」

そんな事を呟くと無言で肩にもたれかかってくる。重いからやめてもらいたい。

「……暇だな」

バルバトスを出て世界の眼の潜伏場所に向かっているのだが…何もない。魔物も一切いなく確実に近づいてはいるはずなのだが特にない。こう言う時にカルミアがいると延々と話を続けてくれるので助かる。話し半分でぼーっとするのには丁度いい。まあ、そのカルミアを今助けに行くところなのだが。

「…会ったらなんて話しゃいいんだ?」


「取り敢えず謝りなよ」


「起きてたのか」


「ふふふ、お父さんは考え事した後に独り言を言うことが多いからね。何を言うのかなって」


「そうか…しかし、謝る?何故だ?」


「えぇ!?本当はお互いに愛し合ってるのに喧嘩しちゃったんだよ!?普通は真っ先に謝るでしょ!」


「喧嘩してねえし愛し合ってもねえよ」


「愛憎って言葉もあるんだよ?それに本気でぶっ殺すとか言ってたくせにー」


「言葉の綾だ」


「むぅ。でも、兎に角謝るのー!それから仲直りして暫くゆっくりしよ?」


「ふむ。だが謝るとしてどうすればいい?」

そんな事を言うと驚いたような顔をされた。何言ってるんだって。

「普通にすまなかったでいいじゃん。お父さん口悪いし性格悪いし性根が腐ってるけどさ、なんだかんだでお母さんは大切にしてるし、お母さんだってこんな人好きになるくらい物好きで気狂いでチョロいんだから適当に言葉並べても多分喜ぶけど取り敢えず、ね?」


「お前たまに凄い口悪くなるよな」


「可愛さはお母さん譲りで口の悪さはお父さん譲りだよ?」


「そうか、来世はマトモな親だといいな」


「えへへ、来世もお父さんとお母さんの子供がいいな」


「二度も会いたかねえよ」


「私が死んだらちゃんと悲しんでね。失って初めて気づいた…そうか…俺はお前の事が…って掠れるような声で呟いてね」

何アホなこと言ってんだ?

「まあ、死体は有効活用させてもらう」


「え?もしかして。死か…」


「お前ちょっと黙ってろ」

くだらない会話をしていると飯の時間だと馬車から、たしか…レイスのエルダー個体が顔を出す。正直もう興味ないのでどっちがどっちなのか覚えてないが。

「エマー、ご飯だよ。あ、てめえのはねえからな」


「脳筋と死んだ事に気付かないバカの手料理なんざ食うんだったら馬の糞でも食ってる方がマシだ」


「…ケッ、本当にいい性格してるよな」


「だろ?シーナのお墨付きだ。あ、いっけねえ。手前らはシーナのこと知らねえもんな。悪い悪い。大切なご主人様の姉を知らかったなんざ余程信頼されてるみたいだなぁ。人間もどき」


「んだと、てめぇッ!」


「わあ!お腹すいたー!レイさん早く食べよう!」


「…チッ。ほら、早く入りな」

やっと静かになった。毎度毎度突っかかってくるのをいい加減にやめてもらいたい。まあ、一番うるさいのを飯の時間と寝るときだけ遠ざけてくれるので有難い限りだが。

「…あっ、そうだ。クロウ、クロウ起きてるか?」


『…ん?なんだ?我は暇だからな、かつての様に惰眠を貪っていたのだ。出来ればもう少し寝ていたい』


「暇だろ?ちょっといいか」


『ふむ?』

ずるりと影からクロウが顔を出す。こちらを見てニヤリと笑い影から出て隣に座る。今の行動に何の意味があったのかわからないが背負っていた籠から混ぜ合わせた絵の具の様な色をした奇妙な箱を取り出す。

「…なんだ、その冒涜的な箱は」


「えーと…竜殺の…バー…バー…バーバリアンだったかな。そいつの使ってた呪いの防具と言う名の竜の…なんだこれ?」


「おそらくだが子竜の爪や鱗を触媒にして作った呪いの武器だろうな。それを使っていた人間と同化していたのだろう?」


「たしかそうだったな。で、これ誰だかわかるか?わからないなら親とかでもいい」

クロウはその箱を手に持つと多方面から見て「知らぬ」と一言だけ言って箱を放り投げてきた。

「分離は可能か?」


「無理だな。ここまで行くと既に肉体の同化によって下手に分ければ生体機能が停止し死ぬ。それに此奴らを見てわかった…親はもういない」


「あ?どう言うことだ」


「簡単な話だ。どうやったかは知らぬが汝がそのバーなんたらとやらから分離したことにより無くなっていた自我が再び芽生えた」

なるほど?

「だがな、言うなればこれは生きる武器だ。全ての要素が混ざって初めて機能する。東洋の呪いの小箱にも似ているがな」


「つまりなんだ?どう言うことだ?」


「この箱に子竜を喰わせる毎にその親の竜の血で武器を強化していったと言えばわかるか?

元々竜は子を成す…産卵において雌はほとんどの魔力を卵に持っていかれ疲弊、雄は常に雌が腹を空かせぬ様に普段よりも多く狩りを行う。子が生まれた時が一番の弱点なのだよ。慈悲深く、愛情深い竜という生き物は。そこをつけ狙われたという訳だ」


「へえ…」

箱を見ると中にいるのか混ざり合った竜達が口々に嘘だと叫んでいる。というか何で声が聞こえるんだ?

「我も一つ汝に質問したいんだが?」


「うん?何だ?」


「戻してどうする?」


「あ?」


「森の竜ならいざ知らず、ソレは森の外の連中のだ。我らの家族ではない」


「ああ…」

まあ、なんとなくで口約束したから絶対に戻してやりたいとは思ってはいないが。

「そもそも、あの森の竜はな。外の連中。その箱になった者達の親や他の竜達から爪弾きにされた者達だ。竜としては異形だったり、竜王を筆頭に強すぎる力。逆に弱すぎたりとな。そう言った類の彼らの言う気高き竜という存在にとって邪魔な者達が彼処には大勢いるのだよ。何よりも群れるという行為。竜にとってはそれが一番嫌いな事だ。だが、我らは森で竜王の庇護下に入り、汝を長兄に家族となった。一つの大きな群れとなった」


「つまり、なんだ?他所の連中なんぞに関わりたくないと?」


「そうだ」

というかあの森の連中にそんな経緯があったのか。知らなかった。まあ、大体当てはまってる連中は想像が付くし、妙に腕っ節?の強い連中が多いのもそういうことか。

しかし強すぎて?ああ、仲間内からも化け物扱いされてるのか。

「どちらにせよ、それは既に竜ではない。竜の力を宿しただけの意思を持つ武器だ。残留思念が生前の姿を思い描いているだけだ。放っておけ」


「断る。非常に便利だしシーナの能力と相性がいい。それに今は5がいない。手数は多いほうがいいだろう?」


「…まあ、そうだな。汝からすればそれも便利な道具か」


「そうだ。使えなくなったら捨てるが使えるうちは取っておく。何度も言うが今の俺は小手先だけの搦め手しかできない弱者だ。武器の一つでも持ってないと安心できねえよ」


「よく言う。この世界で竜王を挑発出来るものなど愚者か汝くらいのものだ」


「お褒めに預かり光栄だ」

ふっと鼻で笑われた。どうやら自分なりのジョークだったが伝わったようだ。皮肉だとか思われてそうだが。

「しかし汝も随分と変わったな。己が身を投げ打ってまで惚れた女を助けに行くとは」


「惚れた?冗談だろ?あれも道具だ。手前らと一緒でな」


「くく、そうか。そう言うことにしておくとしよう。ああ、それと今回はあまり手出しは出来ぬが構わぬか?」


「あ?まあ、いいが」


「あまり暴れていると王にバレるからな。そうなった場合には色々と、な?」

確かにバレたらまずいな。

「まあ、そのうち謝りに行く」


「早くしてもらえると助かる。へそを曲げた王は面倒くさい」

もう一度会えたらな。地面に額を擦り付けて頭蓋が擦れるまで謝り通してやるさ。

「む……汝、もしや兄弟はいるか?それにエマ嬢も」


「さあな。俺は捨てられてたから知らねえが、エマに関してはナターリアの記憶通りならいねえはずだ。で、何でだ?」


「ふむ…汝とエマ嬢と全く同じ魔力を持つ者がこちらに向かっている。ほかに思い当たる家族はいるか?いや…何だこれは…僅かな差もなく汝やエマ嬢なのだが」


「へぇ…どうなってんだそりゃ?」


「多分クローンだよ。そう言えばね、試験機アルファっていたじゃん?あれは兄妹って括りにすれば一応はお弟だよ。私の細胞?っていうのから培養された私のクローンでじせだいきだって言ってたよ。まあ存在忘れてたけど」

クロウと2人揃ってびくりと肩を震わせる。後ろを向くとエマが座っていた。

「…よく噛まないで食うと太るって言うよな」


「運動してるもん!」


「親子喧嘩は後にしてくれ。それよりもエマ嬢それとこれとがどう関係している?」

御者の席は空いているのにエマはわざわざ膝の上に座りむふーと踏ん反り返る。叩き落としてやろうか。

「あのね、クローン?って言う…えーと、えーと…なんか凄いそっくりさん作るみたいな?」


「あ?」


「だから!私の髪の毛とかから私をもう1人作り出すの!」


「それが何だってんだよ」


「ねえ、お父さん頭悪くなってない?」


「元から俺はこんなものだ」


「なるほど…そのクローンとやらを仮に魔眼使い達が使えるとするなら」


「そうそう、流石クロウさん!機械と本人の体の一部さえあれば誰でも出来るし地下都市にも何台かあったから多分それ使ってるんだと思うよ?」

クロウの探知に引っかかったのがそのクローンとやらということか?

「クロウ場所は?」


「余程自身があるのか正面から汝が6人、エマ嬢が6人。それと恐らくだが眼に他と違う魔力を感じる者が3人。魔眼使いだろう」


「本当に便利だな、手前は」


「なに、今回はサポート役に徹するのだ。それくらいどうと言うことはない」

馬車を止めたので何事かとエルダー個体の…オーガの方が顔を出す。エマに説明させれば大丈夫だろう。聞こえるように舌打ちされたが。

「んー…よし、さっさと行くか」

箱に話しかけると先ほどの泣き喚いてたのとは打って変わって人を殺せると歓喜の声が聞こえてくる。まあ使わないので籠にしまい、籠を2に食わせる。

「なんだと?」


「人間が殺したくて殺したくてたまらねえってよ。エマ、行くぞ」


「あっ、待って…」


「待ちなさいよ」

と、そこでママレードが顔を出す。俺に話しかけているのかと自分を指差すと頷いてくる。くだらない説教か?

「…また人殺しする気?」


「そうだが?」


「…そう。ねえ、本当にあんたみたいな屑を姉さんが育ててたの?今頃あんたのそんな姿見たら草葉の陰で泣いてるわよ」


「だから何だ?死人は喋らねえし、泣きもしねえし叩いてきたりしねえぞ?」


「死になさいよ屑が」


「手前がなクソビッチ」

罵倒しあってる場合じゃない。エマの首根っこを掴み振り向かずにさっさと歩いていく。これ以上はもう知らん。付いてきて巻き込まれて死んだとしても見て見ぬ振りしよう。




しばらく歩いていると反対から武装した集団が現れる。

しかし見れば見るほど気持ち悪いな。全く同じ顔が大勢並び俺のクローン?とやらも敵意剥き出しでこちらを睨んでいる。

「ふむ…何と言うべきか…あれだな。汝やエマ嬢があれだけいると気色悪い」


「同意見だ。そもそも鏡で自分のツラ見るのも嫌いだ」


「いや、別に汝の顔が悪いと言うわけでは…どこにでもいる普通の顔だぞ?」


「そうかよ」


「あー、お父さん今ちょっと自分のクローンから目をそらして私のクローンと目があったでしょ」


「そうだな。あれだけいるなら本物がどれかわからなくなってきそうだ…あれ?お前もしかしてクローンか?」


「ねえええ!!」

アホ抜かしてるとお揃いの真ん中に巨大な目の書かれたローブを着た男達が2名前に出てくる。奥のは指揮官か?動こうともしない。

病魔を招く者(ペストウォーカー)それに機械仕掛けの偽神(デウスエクスマキナ)だな?我々の悲願のためにお前達を拘束させてもらう。無駄な抵抗はするなよ?痛い目にあいだだだだだだ が、ぎゅ、ぺ……」


「は…?き、貴様ァっ!」


「話がしてえならそこらに生えてる花にでも話しかけてろよ」


「〈形態機構 大爪〉あははは!よっわ」

久し振りに投擲したが腕は鈍っていないようだ。それはそうとてそろそろ薬補充しないとまずいな。無くなっちまう。まあ、それは後にするとして一瞬のうちに腐った肉片と挽肉にされた魔眼使いは別にどうでもいい。元より言葉を発するだけの案山子みたいなものだ。問題は他の連中、俺のクローンは各々が手に得物を持ち魔眼使い達が潰されたのを見ていたのに対しエマのクローンの方は目を逸らしていた者もいた。個体差とかあるのか?このガキと同じなのだろう?嬉々として人の潰れるところとか見てそうだが。

「ん?おわっと。考え事してる時に攻撃してくんのやめてくんない?」


「黙れ、お前さえ…お前さえ死ねば俺たちは自由なんだ。偽物の俺たちが本物のお前になれるんだ」


「へえ。俺死んだら手前らが本物になるのか。凄いなクローンって」

簡素な作りで魔力強化された剣で斬りつけてきた俺?はそんな事を言っていた。魔力操作とかできるのか?俺より便利だな。しかしどういう原理で入れ替わるのだろうか?

「入れ替わらないよ。お父さんはお父さんのまんまだしその人達が仮にお父さんになったとしてもそれはお父さんじゃないから」


「????」


「エマ!俺だ!君の父だ!俺が本物だ!」


「うわっ、キモっ」


「あっちの根暗そうなクローンくらい手前も静かならな…あれ?もしかしてあの前髪で顔見えなくなってるのが本物だったか?愛おしく見えてきたな」


「…怒るよ?」


「汝、我影に戻っているな…その、なんだ…無理」


「俺も連れてけよ」

冗談のつもりで言ったのではないのだがふっと鼻で笑われクロウは影の中に消える。

しかし見れば見るほど気色が悪い。獅子蟻(ミュルメクス)の巣に入った時のことを思い出す。あちらは虫もどきなので殆ど見た目一緒だがまさか自分の顔でこのような事になるなど考えたこともなかった。ましてや、彼奴らはお互い認識できるのにこっちは出来ないのだ。尚更タチが悪い。

「どうする?お父さん?」


「いやまあ…どうするったって」

のんきに話してる間にそれぞれの連中に囲まれた。奥では先ほどまで黙っていた魔眼使いがローブを上げ左目を輝かせる。

「腕の1.2本なら別に構わん。生かしたまま捕らえよ。そうすれば価値無きお前らは自由だ」

何の魔眼かは知らないが…特にこちらに影響はない。エマもピンピンしてる。何なのかは知らないがまあいいか。




自分を殺すというのは案外楽なものだと実感した。相手は多少訓練を積んでいたのだろうがなんというか…自分だからなのかどう攻撃してくるかわかる。

「オォッ!!」


「ああ、凄えな。外面は見分けがつかねえ」

先程から突っ込んできてる俺の頬を殴打すると不快な音を立てながら膨らみ赤い液体と個体を撒き散らしながら爆散する。まだ使える。まだ戦える。まだ自我はある。

「お、お前!自分なんだぞ!」


「あ?まあ、そうだが。だからどうかしたか?手を抜いてくださいってか?殺さないでください〜ってか?阿呆らしいなぁっ!けひゃ、ヒャヒャヒャヒャヒャッ!腹ねじ切れて死んじまいそうだよ!なあ!」


「パパー!」

殺して俺の代わりになるという割には随分と腑抜けたことを言うものだと嘲笑していると背後から抱き付かれる。見ればいつもよりも活発そうな二つ結びのエマがいた。

「私パパの娘だよね?あんな怖い子より私を選ぶよね?」


「シラネ」


「へ?」

趣味は悪いと思った。俺は別に構わない。死んでも良いような人間だし多くの人間からすれば仇であり敵なのだから。まあ、それでも俺が殺ったわけじゃないが…落ちる肉片を見て多少は心に来るものはあった。

「パ…ァパ…」


「汚ねえ手でお父さんに触れ…痛ァッ!!待って、今まで一番痛い!何でチョップするの!」


「いや、何か手前が手前殺して手前の血で白衣染まった挙句に口の悪い手前に…」


「ごめん、手前手前五月蝿い」


「あ?」

口喧嘩はしながらこんがらがってきた頭で考える。先程抱きついてきたエマは呆気ないものだった。およそ戦意などない寧ろ純粋に自分を父と慕い、ここから連れ出してと言わんばかりに見つめてきた。まあ、それも叶わぬ夢となったが。

エマの鋼糸は糸と言えど義手の一部。射程もかなりあるが自在に動かせるそれは抱きついてきた二つ結びエマをバラバラにするには十分過ぎた。しかし、もうちょい穏便に済ませられないのだろうか?流石に娘のバラバラ死体見せられるこちらの身になってもなってほしい。あの澄んだ瞳が一瞬で絶望に染まり暗く淀むのは早々見たくもない。

「…お父さんの言いたいことはわかるから言わせてもらうけど自分はいいの?何で私だけダメなの?」


「そりゃあ原形とどめてるかとどめてないかで違うだろ?」


「わかった!次の私は粉微塵にするね!」

と、笑顔を向けられて改めて自分と対面すると自分の1人に殴られた挙句に馬乗りされる。何ともまあ暴力的なものだ。

「お前…お前仮にも作られたとしてもだ!てめえの娘が死んだんだぞ!何とも思わねえのかよ!」


「思ったら何だ?救われるのか?そこの切り分けられた肉塊は感謝でもしてくれるのか?きゃー、私のために思ってくれるてありがとうパパって?」


「ッッッ!!??!」

生まれて初めて鏡ごしにではなく自分の怒った顔を見た。そんだけ顔を歪められて、そんだけ誰かの為に怒りを露わにして、心を痛められるのか。俺よりも感情豊かで俺よりも人間らしいじゃないか。

「エマ。抵抗する奴は殺してもいいけど逃げ出したり戦う気がしねえ奴は放っておけ」


「えー、何で?」


「少なくともこんなのが父親と思い込んでるような連中だ。可哀想だろ?」

言い終わったのと同時に拳が顔面に刺さる。何度も何度も。飽きないものだ。同じ事を何度も繰り返す。痛みは無い。

「お、おい俺!流石にオリジナルが死んじまう!」


「うるせえ!殺すんだよ!オリジナルだとかクローンだとか関係ねえ!此奴は…こいつは生きてちゃ無い奴なんだよ!」


「おい、だからって!」


「んー…口の中血の味しかしねえや」

首をへし折るつもりで掴む。止まっていたから。考えるまでも無い。どちらにせよシーナほど上手くは使えないので加減など知らないから死なせてしまうが。

「ギィッ…ゲ、ゴゴゴガ」


「何でもない、ただ肺に肉詰め込んだだけだ。呼吸出来なくなって苦しんで死ね」

喉を掻き毟りこちらを見る。死にたくないと、生きたいと。まあ別にそもそもの話命令無視して逃げだしゃ良かったのに突っかかってくる方が悪い。

「さあ、次はどの俺だ?ああ、ああ。とてもややこしいな」


「…ッ!」


「まあ、最初の爆散した俺の時点で仕込みは終わってたけどな。いやー、しかしなんともまあ…最悪の気分だよ」

パチンと指を鳴らす。まあ別に合図みたいなものだ。これで終わりだと見る必要もない。ただ背中越しにくぐもった悲鳴と断末魔が聞こえてきただけだ。パンッと小気味のいい音がして取り敢えず俺は俺自身を守り抜けた。


「凄いよお父さん。きっと魔眼の研究者さん優秀だよ?」

私がそんな事を話しかけると「そうか」といつも通りぶっきらぼうに言葉を返してきた。私対私はお父さんの様な圧勝ではない。相手もまた形態機構を使ってきた。背中に大きな背嚢を背負い左手の義手を私と同じ様に作り変える。

「お願い私、変わってよ。私だって…お父さんに褒められたい。お母さんに甘えたい」


「少なくともお父さんはそうそう褒めてくれないよ?この人に褒めるなんて優しいことは出来ないし」


「…まあ、いいや。じゃあ俺死体漁りでもしてるから適当に本物決めてくれ」


「え、ちょっと」

そう言うと無視して本当に爆破した自分の死体を漁っていた。金品とかが目的じゃなくて多分構造とか調べてるんだろ。凄い楽しそうに自分だったものの臓器を手に取って眺め始めている。

「…一応聞くけどあれがいつも通りのお父さんだけど?」


「知ってる。でも、それでもいい。私を私と認めてくれるなら。オリジナルの貴方を殺して貴方になれるのなら」

そんなことあるわけないだろうと思った。しかし、あの人の事だから仮に私が死んで誰か1人残ったとしたらソレを私扱いするかもしれない。無性に腹立たしい事だし容易に想像出来る。

そんな事を考えていると残り5人は各々の義手を変えじりじりとにじり寄ってくる。

「この人数差よ?諦めたら?」


「そうだよ。貴方が死んでも今度は私たちが殺しあって本物を決めるんだから」


「じゃ、邪魔だよ」


「一応聞くけどさ、お父さん今の私どれが本物かわかる?」


「え?あー……………お、この俺の脳みそ中に変な装置みてえなの入ってたな。なんじゃこりゃ」


「え、冗談でしょ?」

驚きと同時に5人全員が飛びかかってくる。瞬時に義手を巨大な剣に変え受け止めるが後方に回り込まれてしまう。

「やぁっ!」


「とりゃあ!」

避けられない。背骨を守っていた外骨格を普段なら飛行用の翼だが今回は攻撃に転じ背中から剣を出し対応する。それでも本来は衝撃を吸収するものなのだ。下手すれば斬られてしまう。

目の前で散る火花と人数差によって徐々に押され更には前後から押し込まれる。キツイ。

「自分の剣で首切り落とされそうな気分はどお?」


「最悪に決まってるじゃん」

鼻先にまで迫った剣を睨みつけどうしようかと考える。落ち着け。戦闘の時ほど思考は纏まり最適解を導き出すのだ。まずは周りの確認だ。前の3人。それぞれ爪、剣、剣。力は自分より少し弱め。考えなしに力でごり押してくるつもりなのか変わらずに得物で押さえつけてくる。そして後方。此方は多少は知恵があるのか何度も多方向から斬りかかってくる。そのせいか後ろにばかり気を取られる。運がいいのは今だに命令してきた奴が奥で踏ん反り返って偉そうに此方をみていることだ。どんな魔眼かは知らないが形成逆転される可能性もある。今は此方を舐め腐ってもらってたほうがありがたい。

父は飽きたのか死体を燃やし始めた。鼻の奥に形容しがたい臭いがこびり付く。クローンのうちの1人が顔をしかめた。確かこの子は目を逸らしていた個体だ。自分を殺そうとしてるのによくもまあそんな顔ができたものだ。

前の3人は脳筋、後ろは多少の知恵持ちと断定する。何かあったら父に頼もう。そうしよう。

「形態機構 〈小型武装機(アームドビット)〉」

受け止めていた義手の形態機構を解除し力を込めていたせいか3人が体勢を崩した。それをギリギリで避けると背中の翼を分裂させ4匹の鉄の鳥に変化させる。ここからだ。まずは冷静に分析していたのか後方にいた2人が来る。今度は本気だ。父相手だったからほんの少し手を抜いていた。万が一でも傷付けてしまったらと心の何処かで考えていたからだ。まあ、そんな物必要ないとは思っているが。

「魔奏脚!」

足に装着した鳥は膝下まで広がり穴の開いた鉄の靴へと姿を変える。

「っ!?」


「ごめんね。恨みはないんだけど…お父さん完全に飽きてるから」

ちらっと視線をずらせば今度は自分のクローンの骨でトランプタワーみたいな事を始めていた。倫理観とか無いのは知ってるけど本当に頭おかしいと思う。

先に斬りかかって来た方の顎を蹴り上げ更に1発腹に打ち込む。もう1人は勢いのままかかと落としで地面に頭をめり込ませた。我ながら何とも言えない気持ちになる。

「自分なんだよ?どうしてそんな酷いこと出来るの?」


「そんなの決まってんじゃん…あなた達だって同じことしようとしたわけだし」

残り3人。蹴り飛ばした私は口元を抑えて胃の内容物を吐いている。そんなに食べてなかったのだろう透明だ。まあ、どうでもいいけど。

「じゃあ、次行ってみようか?」

足から離れた鳥は今度は両腕に装着され形を変える。それは爪。巨大だったり細かく振動していたりはしない。ただ、ただ硬く鋭いだけの物だ。

「小型機構 〈惨爪(ざんづめ)〉」【ざんづめ】

手を閉じることは出来ない。関節部位なんてない。後先考えずに突っ込み引き裂き殺す。それが例え自分のクローンだとしても。

「死ね」


「いやっ…!」

近づくと必死になって義手を振り回し対抗してくる。まあ、私と言えど所詮紛い物の装置だし。金属の質も悪いのだろう。〈惨爪〉に当たるといとも簡単に折れてしまう。

そのまま爪を腹部へと差し込み伝わってくる人間の暖かさと左右へと引き裂くと目の前に広がる赤々とした臓器。込み上げてきた物を飲み込み臓器を先ほど目を逸らした私へと投げつける。

「うっ…ゴポッ…おエェェッ!」

お父さんの様に簡単に人を殺せともこれは無理だ。飲み込んだものは出てきてしまった。やめとけばよかった。

「わ、私はこんなところで…し、死にたくない!いや、いやァァァァァァ!!」


「大丈夫だよ?私は優しいから1発で仕留めるから」

右に装着された鳥は姿を戻し左手に装着されると再び変化する。ボウガンの様な見た目で矢はさらにもう1匹の鳥が装填され矢となり今逃げ出した1人に狙いを定める。


カチャン ガンッ!

腹部を貫き血を撒き散らしながら倒れた。もう逃げることもできないだろう。

「これ以上…私を殺させてたまるか!」


「いつまで遊んでんだよ」

ボウガンを放った瞬間に斬りかかってきた最後の私に対応しようとしたがその前にポンと父の手がクローンの私の肩に手を置く。

「お、お父さん?」


「ん?ああー…手前エマじゃねえのか。悪い悪い」


「へ?」


「あそこでゲロまみれで楽しそうに笑ってんだろ?あっちが娘で手前は違う。だろ?」


「そ、そんなことない!私もエマ!エマ=フォリナス!」


「ん?」


「わだっ!」

お父さんに変なこと吹き込まれる前に顔面を貫いた。これで…最後の1人だ。

不快で今すぐにでも物に当たりたい気持ちで一杯だ。鳥は背中の外骨格に戻り顔に穴の空いた私と辺りに転がる私だった肉塊達…言い表せない気持ちと何故か止まらない涙を拭いているとじっと父が顔を見つめてきて「やっぱこれが本物だよな?」と雑にタオルを投げつけてくる。安堵感など無い。心の底から後悔の念の様なものが溢れてくる。

「…6分と39秒。こんなにも処理に時間がかかるとはな。噂では人の心なんて持ち合わせてないと聞いていたが…所詮は魔眼を持たない劣等人種か」

ぱちんと懐中時計の蓋を閉めると奥で見ていた世界の魔眼の構成員の1人がこちらへと歩み寄ってくる。進行方向にあった私を蹴飛ばし態とらしく唾を吐きかける。恐らくは反射や攻撃を受けることによる発動する魔眼なのだろう。輝く瞳には余裕が見える。握りしめた拳から血が垂れる。

「どんな気分だった?人間の手で作られた兵器ども?自分達と寸分狂わずに同じ形の人形共を相手にするのは楽しかったか?悍ましき劣等種共」


「……」


「答えくらい寄越してくれないか?つまらないだろう?ああ、所詮はガラクタになりかけの兵器か。受け応えも出来ないらしい。そっちの近代兵器…病魔を招く者だっか?お前はど…ぎゅ」

余裕ぶっていたからだろうか。或いは此方を余りにも舐めていたからだろうか?父の鼻先までアホみたいに近付いてただで済む筈もない。どこに隠し持っていたのか鋭い骨を耳にぶっ刺すと鼻から血を吹き出して目を白黒させ始めた。即死しないのは魔眼の影響なのか?

「いぎゃ!あ、げっげけげげ」


「…命を弄びたいのはわかるぜ?まあ、単純によ。これじゃあつまんねえだろ?自分の手で感覚を味わうんだよ。切って、殴って、抉って、潰して、捻って、砕いて、殺す。これで精神攻撃のつもりなのか?馬鹿らしい

ああ、あと。そもそも魔眼使いなんざ魔眼が無けりゃ一般人以下のカスだ。何気を抜いてんだ?アホなのか?」

転げ回る魔眼使いの目に新たに尖った骨を指すと腹に更に何本も刺し動かなくなると眼球を引きずり出し落ちていた石ころを無理やり詰め込む。

「カヒュ、げ、が、や、やげ…げひ」


「エマ。君の目ん玉はこいつらのより上等で普通のノルドの様に魔力の流れとか見れるだろ?見れねえなら見れるようにするといいさ。それにこういう馬鹿は…」

もしかしたら父は怒っているのかもしれない。いつもより荒々しいし雑だ。

何度も何度も頭を踏みつけ眼孔に石がめり込み見えなくなると新しく拾ってきて詰めては何度も踏みつける。過度な暴力を超えたその行為は見ているだけで再び吐き気を催す。この人は根本的に私と違うと頭で理解できた。

やがて魔眼使いの頭部がぐちゃぐちゃに潰れ、内側から真っ赤に染まった石ころが見える様になった頃再び口を開ける。

「あー…なんか言おうとしてたが忘れちまったわ。悪いな」


「…なんかお父さん変だよ」


「変で悪かったな。ほら、これ以外の肉塊拾ってきな。生きてんのはクロウに回収させるとするさ。あとは地面に穴掘って石でも乗せておけ」


「…?わかった」

埋葬するのはわかった。ただ、いつもと違う。そんな気がする。気のせいなのかもしれないし勘だけど…

「どうかしたかい?」


「変な話し方」


「そろそろ時間が残ってねえんだろうよ。混ざってきてる証拠さ」





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