六十三匹目 覚悟
あ、今回。最後の方若干閲覧注意ですー。
自己進化型都市リリウム。それはつい先日までいた地下都市のことだ。あそこに接続。つまりはナターリアの仕業か或いは元々そう言う設定をしてあったのか。真相はともかくエマの口からは普段と違ってまったく感情は感じられず、淡々と現在自分の身に起きていることを話していた。
「報告します 現在機械仕掛けの偽神の記憶領域内部にて書き換えられた不要な記憶の再生が開始されました 命令を受諾 再度記憶領域内部のアベン、カルミア、及び関連している全ての記憶の書き換えを開始します」
「わーお、全部忘れちゃうのかな?」
「わーお、大切なこと全て捨てちゃうのかな?」
「さあな。ところでここ、いつになったら出れるんだ?」
「「ところでじゃなーい。どうにかして」」
「……」
どうにかしろと言われても。生憎人を壊す事に関しては得意だが治すとなると…ましてや旧時代の科学技術によって作り出されたエマの体ははっきり言って手のつけようがない。
「失敗 再度記憶力な、なな内部、おと…警告 機械仕掛けの偽神の意識レベル上昇 自己進化型リリウムとの接続を、いじ、いじじい…警告 警告 警告」
「…何もしなくても良さそうだな」
「とりあえず殴られる覚悟はしといてやるよ」
「とりあえず罵倒される覚悟はしといてやるよ」
「珍しいな、そこまで人間に肩入れするのは」
「「だって、貴方の娘でしょ?だったら私【僕】の家族だよ?」」
………
「変なものでも食ったか?」
「「ふむ…強いて言えばさっき食ったエルダー個体がものすげー不味かった」」
「ああ、そう」
そうこうしているうちにエマの瞳に光が宿り何時も通りの純粋で汚れを知らないような色に戻っていた。
「警告 警こ…く…………エラー 自己進化型都市リリウムとの接続が…解、じょ…ああ、もううるさい!頭の中で話さないでよ!」
頭をぷるぷる震わせ今度こそエマが起きる。
「…ッ!敵だ!私達の敵だ!」
「さっきはすまなかった。アベンは多少家族の情を知ったぞ」
「さっきはすまなかった。アベンは多少人間らしくなったぞ」
「えー…うん!いいよ!」
変なテンションになってるがなんだ?大丈夫だろうか?
「あ、お父さんおはよー!」
「だから俺は…」
「お父さんはお父さんじゃん。血は繋がってなくたって家族は家族だし。それにどれだけ酷い事言われても私はお父さんのこと大好きだよ?」
「…」
「うははは!ガキに言いくるめられてら!」
「うははは!嫁さんの言葉よりガキの言葉とかロリコンかよ!」
「「まあ、嫁も大して年齢変わんねえがなぁ!しかも照れてらぁ!」」
「エマ、其奴ら許すのは別として餞別に一発思い切りやっとけ。ああ、気にするな。そいつら硬いから。それにケジメってのは必要だからな。
あとお前の他の新技も是非見てみたいからな。特に必殺技とか」
「!!本当?じゃあ私本気でやるよ!2人とも竜だもんね、よっしゃ行くぞー!」
「ちょい待てや」
「ちょい落ち着けや」
「「というか、餞別って!」」
「やれ」
珍しくサーカスの狼狽える姿が見えるからまあ…今回は許してやろう。
それにしても本当に心にあったつっかえが外れた気がする。右腕がこんなになってからはずっと頭の中で呪詛の声が聞こえるし身体中が軋み、右腕がゆっくりと肉体を侵食していく感覚がわかったが…気分が晴れた。今ならカルミアにも優しくしてやれそうだし大老にも謝れそうだ。
「形態機構!轟砲ッ!」
「「アベン、貴様ァァァァァァッ!!」」
エマの義手が見たこともない形になる。フライパンを逆さまにしたような、おそらくは轟砲と言ったから音を広げる形状なのだろう。そして真横にいるし何よりもここは液体の中。避けようがない。とっさに耳を塞いだが意味なんてない。
轟音がエマ以外のここにいる者全てに攻撃を行う。音だけで骨が軋み、心臓も止まりかけた。だがこれは遠距離攻撃よりは近接攻撃で叩き込んだ方が良いのでは?
しかし懸念とは逆に攻撃の対象だったサーカスは全身を殴打されたかのような真新しい傷を残し水死体のように浮かんでいた。こっちも全身ボロボロだが。
「こんちくしょうが…」
「どちくしょうが…」
「ははっ、笑える」
「えっ!?お父さん笑った?ねえ、笑ったよね?もっかい見せて?ねえ、ねえねえねえ!」
クロウやミスト等の戦闘に特化した個体ではなくても竜の人間態にあれだけ傷付けるのはやはりと言うかナターリアの技術力には脱帽する。帽子被ってないが。ああ、そうだ。後でナターリアにも謝りに行こう。今なら罵られても目の前で研究資料燃やすくらいで許せる気がする。
「むぅー…ねえ、やっぱりお父さんはこんな化け物より普通の女の子の方が好き?こんな汚れた手より綺麗で純粋な方がいい?私思い出したんだ。あのね、ずっと昔にね…」
「知るかよ。だが少なくとも手前は同年代のガキの知り合いが出来りゃ父親と一緒で化け物って罵られるし、手が汚れてるってならそれ以上汚くなっても後から付いた汚れは目立たねえよ」
「えへへへ。化け物親子だね」
「三世代な」
視線をサーカスに移すと親指を立てて満足気な表情を浮かべている。どうでもいいからここから出せ。
『やあやあやあ、こんにちはわたしはサーカス』
『やあやあやあ、こんにちは私はサーカス』
『やあやあやあ、こんにちは僕はサーカス』
『やあやあやあ、こんにちはボクはサーカス』
初めて会ったときのことを今でも鮮明に覚えている。と言うか忘れられるわけもない。大老が何処からか連れてきた首もなく申し分ない程度に生えた3枚の小さな羽を持つ蛇らしき生物は大老に促されるままに人間態になると4人に分裂し、俺の周りを囲みジーッとアリの穴に指を突っ込もうとしているガキのような、何だこれはと興味深げな視線を向けてきた。
『…何だこれ』
『何だこれとは何だ、もっと驚け人間』
『何だこれとは何だ、もっと感情を出せ人間』
『何だこれとは何だ、もっと言う言葉はないのか人間』
『何だこれとは何だ、もっと人間らしくアホみたいに騒いで楽しませろ人間』
『おい、大老さん…』
『呼び捨てにせい。
あー…取り敢えずお主らの仮の名はサーカスじゃ。今からそう名乗れ。む、しかし4人じゃし…』
『いいよ別に、私はサーカスだし』
『問題ないよ、わたしはサーカスだし』
『呼び方なんてどうでも良いよ、僕はサーカスだし』
『人間に合わせてやる名前ならその程度の適当な名前でいいよボクはサーカスだし』
『『『『あと1020人増やせるけどそれも全部サーカスだし』』』』
ポコポコと音を立てて4人が8人に、8人が16人に16人が…
『ええい、増えるな!せめて2人じゃ!4人も相手しきれぬわ!この戯けが!』
『本当にあんたら竜ってどいつもこいつもバケモンだよな。精神がそれだけ分裂しても元に戻るのかよ』
『まあ、人間には理解できないさ。ねえ、サーカス』
『まあ、人間には難しすぎるさ。ねえ、サーカス』
初めて会った時からいつも楽しそうだった。いつだったか俺を笑わせてやるなんて言ってたが…まあ、覚えてねえだろう。
『よろしく、サーカス達』
『違えよ、私はサーカスだ』
『違えよ、僕はサーカスだ』
『は?』
コイツらは2人いようが1024人いようが単一の個体だとその後散々言われた。
「見てお父さん!紫色の空に大っきな鉄の鳥が飛んでるよ!」
「あの液体には若干の幻覚作用と」
「あの液体には若干の精神安定剤が含まれてるぜ」
「「大丈夫、中毒性はないからそのうち治る」」
「何つうもんの中に入れてんだ手前ら…」
液体の中から出ると外では液体内程時間が経ってなかったのかピエトロ達がどうするかと話し合ってるところだった。本当にデタラメな生き物だ。
「…仲直りしたんですか?」
「ん?ああ、吹っ切れた。エマが」
ピエトロがそう言って指差したのは楽しそうに笑ってると思ったら急に泣き出したら情処不安定ながらもしっかりと白衣の袖を強く掴んでいるエマだった。縫ったばかりなのにまた破かれそうだ。
「…そうですか」
「言いてえことがあんならさっさと言えよ」
「助けに行くと言うならば、今この国での貴方の行動全てに目を瞑り、私は貴方とこの国で会っていません…が、行かないのなら…」
「手前はまず目の前の敵に対して仕事をしろ。阿保」
前々から思ってはいたのだが本当に気まぐれな奴だ。流石にここまで長い期間、側で行動していたのは初めての話ではあるが国の仇敵をここまで野放しにしているのもどうかと思う。
「…まあ、私にも色々とあるのですよ」
「へえ…さて、クロウ。ミアの場所を教えろ。それと連中の場所は他言無用にしといてくれ。色々と面倒くさくなるからな。特に大老」
「ふむ、契約者同様に妙にカルミアを気に入っているからな…おそらく場所がわかったと知れば速攻動き出す」
「大老がいれば負ける事は確実にないが…火力が高過ぎる。助け出す前にミアが消しとばされる可能性もあるからな。サーカスも頼んだぞ」
「安心しろ、情報操作はお手の物だ」
「安心しろ、情報撹乱は得意分野だ」
「助かる。ピエトロ、手前は取り敢えず国に戻ったらミアのいる場所の近くまで部下連れて来い。世界の眼は俺と同様に世界的な犯罪者連中なんだろ?連中は皆殺しにするが死体はやるよ。原型を留めているかは保証しないがな」
なぜ俺が指揮を取っているのかは謎だが…まあいいか。カルミアを助けに行こう。今の心が変わる前に、水面に浮かぶ泡の様な感情はいつ無くなるかもわからない。次はいつ人間らしい心が戻ってくるかわからない。早く行動しなければ。
「ねえ、私たちは?」
「手前はさっさとメイド連れて国に帰れ。正直足手纏いだし邪魔だ」
「はぁ?悪いけど私もレイもオーも強いからね?」
「手前がどんだけ威勢良くてもな。手前の従者を見ろ。サーカス共に齧られただけじゃねえ。どうせ手前のわがままな旅路で疲れてんだろ」
「そ、そんなことありません!」
「お、おう!別にどうって事ない!」
「んじゃー言わせてもらうが。貴重なエルダー個体を連中がみすみす逃すと思うか?捕まえられて隅々まで研究されてホルマリン漬けにでもされていいってなら来てもいいけど」
あと単純に人数が多いとその分見つかりやすくなるし何よりもの理由がコイツらの相手が面倒だし、何の能力持ってるかもどんな事を出来るのかも全く知らない。興味もわかない。
「だったら竜もそうでしょうが!それにエマちゃんも!」
「だって手前も手前のメイドも竜に勝てないし多分エマにも勝てねえぞ?第1に手前、人殺せるのかよ?」
「それは…だったらエマちゃんは人殺せるの!?」
「殺せるよ?だって私はドクターの実子の肉体から作り出された生体兵器、機械仕掛けの偽神でお父さんの娘エマだもん。それに見た目が子供でも中身は…ただの化け物だから」
そういや記憶戻ったとかいってたな。まあ、短時間で自己進化するし常に最適な状態でいるのだ。ましてやリリウムに接続されて前の様に記憶を消されかけたのだ。うっかり前の記憶が戻ってきてもおかしくはない…と思う。実際に竜同様に訳の分からない構造してるのだ、何しでかしてもおかしくはない。
「化け物って…アベン、貴方こんな小さな子に何吹き込んだのよ!」
「いい加減にしてくれ。何でもかんでも俺のせいにすんな」
「ああ、もう、ストップ!ストップです!アベン君もママレードさんもそこまで!」
殴り合いに発展しそうだったがピエトロに止められる。いい加減にこの国出て、カルミアを助けたいのだが…こんな所で無駄な時間を消費したくないのだが。
「人間って見てて飽きないな」
「人間って見てて楽しいな」
「サーカス。黙っておけ。こういう時の人間はひたすらに面倒くさいのだ。黙って楽しめ。それといい加減にヴェノムを放してやれ。撫で過ぎて首がもげるぞ」
「「はーい」」
「あばばばば」
「…兎も角です。喧嘩する必要ないじゃないですか。手伝ってくれると言ってるのですから好意は素直に受け止めるべきですよ」
「好意?どうせ何かが欲しくて食い下がんねえ、違うか?それに手前らの言うそれは人間同士をくっつけるタチの悪い接着剤みたいな物だろ?阿呆らしい」
「私が何かを欲してカルミアさんを助けたいと思ってわけ!?それこそ貴方がアホなだけじゃない!いい?人はね人同士…いえ、もっと沢山の種族ともだけど助け合わなきゃ生きていけないのよ!」
「だったら俺は人じゃねえな。生憎だが人間を都合のいい道具にしか思えねえしな。竜も人も俺を父と呼ぶコイツも拉致されたミアも。全部道具だ。道具が盗まれたら取り返しに行くのが道理だろ?違うか?
ああ、そうだ。手前のくだらねえ感情論で話すなら今この国の道端で泣いてるガキいるからしっとり教えてやったらどうだ?母親を亡くしたガキならママ〜って抱きついてくるかもな」
本当にコイツとは馬が合わない。話してるだけで吐き気がしてくる。よくもまあ数年前は共に行動出来たなと思う。利害の一致というのは恐ろしいな。
その言葉を聞き終えた直後からからママレードは顔を真っ赤にしていた。なるほど怒っているのか。いいなぁ、こんなどうでもいい事で腹を立てられて。幸せな環境で育ってきたのだなぁ。本当に吐き気がする…わかってる。あんたの妹をそんな悪く思うつもりはない。ただ、何も知らない癖に口を挟んで欲しくないだけだ。ただ、たかが数日の付き合いだけで大して価値の無い連中相手に命を張ってほしくないだけだ。
「アベン君!言い過ぎですよ。貴方の言い分もわかりますが…ですが彼女は本当にカルミアさんのことを助けたいのですよ!?」
「ああ、そう。じゃあ是非とも肉壁になって頂こうかな。きっと手前の活躍をミアが聞いたら泣いて悲しんでくれるさ。まあ次の日にはきっと「ああ、そんな人達いましたね」って言うと思うぜ?アイツはそういう女だ」
「…本っ当に最低最悪の屑よね。貴方」
「脳脊髄液がメープルシロップで出来てる手前にだけは言われたくないな。是非とも次に会った時は私の脳みそはシロップ漬けなのって言ってくれないかい?」
「…レイ、オー。帰るわよ」
「お、お嬢様ー!」
「待ってー」
まあここはママレードの病室なのだが、思ったより傷の治りが早かったのか叫んで本調子に戻ったのか。と言うか頭に血が上りすぎて出血しなかったのだろう。2人に肩を借りながら出て行った。
「お父さん…大丈夫?」
「気にすんな。ああ、少なくともミアを助けるまでは父親でいてやれるようにする。その後はよく話し合え。手前らがいなくなっても精々夜中に小煩い話し声がなくなる程度だ。クロウ」
「やっとか。ふむ。まず居場所だが…最後に特定出来たのは王国…キラレイスから南西に約60キロ程度…ピエトロ。貴様らが死の都と呼んでいる場所に近しい。そしておそらくだが世界の眼の隠れ場所とでも言うべきなのか…施設は地下にあると思われる」
「酷く曖昧ですね?」
「我の影を消滅させられた。恐らくは嘗ての盟友バロールの魔眼を持つ者だ。流石に分散され更に距離も離れていれば弱体化した死見の魔眼程度でも殺られる様だな」
「ああ…幹部の…なんだったかな名前」
「もう、お父さんそういうのはちゃんと覚えててよ。テルミュードでしょ?」
「いや、それは帝国にいるナターリアの子孫だ…ええと…」
「ヘムリスですよ。ヘムリス=アウグステス」
「ああ、それだ。
だが虫が視界内に入るだけで能力が分散される雑魚にやられるなんて珍しいな」
クロウはその言葉を聞くと苦虫を噛み潰したような表情となる。
「あの眼は言わば我にとっての天敵だ。我が創造主たるバロールの力…あの魔眼の前ではたとえ宿主が違えど我や我同様にバロールに創造された者達は負ける。だから我との相性は最悪だ。死にはせずともかなりの痛手を負う」
「へぇ…手前に死なれちゃ困るからな。ヴェノムだけ連れて行くか」
「ま、魔眼くり抜いとぅえ、ころころころころ、飴玉ぁ」
「む、ヴェノムだけでなく我も行くぞ。奴に出くわさ無ければ良いだけだからな」
「ああ、そう。サーカスは大老の機嫌取りを頼んだぞ。そうだな…今度謝るついでに食事でもどうだとでも伝えといてくれ。ああ、あとカルミアは魔眼の連中じゃなくてただの奴隷商人に捕まったって事でな」
「合点承知」
「委細承知」
「「それじゃあ、またな」」
そう言い残し体が膨らんでいくとパンッ!と音を立ててサーカスは紙吹雪を残しこの場から消える。相変わらずよくわからない連中だ。
「色々と言いたいことがありますがね…取り敢えず私は国に戻り騎士を集めます。カルミアさんを助けるためです。今回だけは手を組みましょう」
「せいぜい場を乱す新人や正義感に溺れる間抜けに足引っ張られないようにしとけよ」
「ええ、ええ。少し短い休暇でしたがね…それに基本的に私を抜いた騎士団のメンバーで陣形を組むので。問題ないでしょう」
「なんだ、国からだけじゃなくて部下にも省かれてんのか。お笑い種だな。ははは」
「はははは!次に会った時には真っ先に首狙うので覚悟しといてくださいね」
お互い笑顔だけで取り繕ってはいるが内心はどちらも殺してやるとしか思っていない。エマがやっと正気に戻り出しピエトロと笑い合ってるいのがどういう状況かわからないと言わんばかりに困惑しているのでそろそろやめておくとしよう。
ああ、後で一応ママレードにも謝っておこうと考えているとピエトロがそっと耳打ちしてくる。
「体のこと…エマさんには話したのですか?」
「話してねえが?」
「だったら話しておきなさい。家族なんでしょう?認めたのでしょう?だったら尚更です。貴方はもう…」
「…まあ、もしもの時は2人のこと頼んだぞ」
「ええ、絶対に貴方みたいな奴にはさせない自信はありますよ」
クロウ達に話す必要はない。コイツらからすれば俺は俺なのだ。肉塊になっても化け物になっても生きていればそれは俺なのだから。だがエマは違う。アベンという個体が認識できるうちは其れをアベンとして扱う。
「エマ、ちょっと残れ」
「え、え?何?」
「大事な話だ。作戦なんて考える頭を俺は持ち合わせてねえからな。クロウはピエトロともしあるなら作戦を話しておけ。ああ、それとヴェノムはピエトロについて行ってくれ。もしもの時の為の保険だ。んじゃ、ピエトロ。後は頼んだぞ」
「ふむ…わかった。なるべく早く済ませるのだぞ?」
「兄さん、あひ、あひひひ。いつもと違ってきらきら、つやつや、綺麗な眼しとぅえる」
「…ええ、また後で」
眼が覚めると真っ暗だった。いや、視界を遮るように何かが置いてある。アイマスク?そして2人ほどだろうか?男達の話し声が聞こえてくる。
どれくらい気絶していたのかはわからない。ここがどこなのかも…四肢の感覚はある。服は着ていない!裸!?。周りからは男性の声しか聞こえてこない。つまりそういうことなのか?ああ、最悪だ。兎に角現在の状況を考えよう。服のことは後でもいい。元々ボロ布一枚で何年も過ごしてきたのだから。自分は今硬い所に寝かされているようだ。だがどうにか動こうにもきつく縛られているために身をよじる程度にしか動けない。
「お、目覚めたか。調子はどうだい?感覚は?聴覚は?」
「あ、貴方誰ですか!」
「ふむ…元気そうで何よりだね。それじゃあ早速始めようか」
ガチャンと音がなり視界を遮っていたものを取り払われると強い光に当てられ眼をすぼめてしまう。しかし直後に無理やり瞼を開けられ装置で固定されてしまう。
「検体名は…カルミア=フォリナス。15歳。ノルド族。へえ、魔法適正がないのか。成る程イカれ野郎が好きそうな奴だ。あの薬馬鹿は何でもかんでも薬の材料になると思っている。本当に頭の中空っぽで何考えてるかわからない馬鹿だね。まあ、あの程度の薬なんて僕からしてみれば簡単に作れるし、あんな魔眼を持たない凡人のを買う必要は元々無いと思ってたけどね」
「痛ッ!離してください!」
「眼?ああ、ずっと開けてると乾燥して痛いよね。まあ、大丈夫。もう痛がる必要もなくなるから」
涙で滲んだ視界の先に見えたのはゴム製のドーム型の器具。痛がる必要がない?なんで?どうしてそれを私に近づけてくるの?どうしてそれを眼孔に差し込んでくるの?
つぷん ぐりゅん
「アッギャアァァァァッ!!!あぎぃ、ががいやぁぁあああ!!!」
「あっ、もうちゃんと抑えてよ。竜魔眼が傷付いたら僕がバロム様に怒られんだから。しっかりしてよね」
がちゃがちゃがちゃ、ぐりん、ずぽん、
「いだ、な、なんで!なんでいだぁあ、ぎぃぃ!」
「あっ、口に詰め物しといて煩いし舌噛み切られたら竜魔眼も死んじゃう。バロム様に移植するまでは生かしとかないと」
理解出来ない。なんでこんなことになってるのか、この人達がなんなのか。視界に映るのは今自分から眼球を抜き取り眼孔から伸びる神経を切断してうっとりとした表情になっている年端もいかない少年。それを囲む数人の男達。
アベンさんの笑顔を見たから?不幸になったの?なんで、私ばっかりこんな目に会わなきゃいけないの?何も悪いことしてないのに。私は何も悪くないのに。
「それじゃあもう片方も行くよ?あ、死ななきゃ何しても大丈夫だからね?さっきカテーテルで君の尿は取り出しといたし糞も装置で吸い出しといたから。やっぱさ人間って雑食だから臭いよね。それがたとえ見た目がいい女でも、街角でキャーキャー言われてる顔のいい男でも。笑っちゃうよ。まあ、同士の1人がマニアックな趣味持ってたお陰ではした金にはなったけどね。
それに光栄な事なんだぜ?君みたいななんの人的魅力も才能もない凡人以下の屑の魔眼が僕たち魔眼使いの未来を照らす光になるんだ。胸を張って生きなよ。まあ、君健康状態の検査したけど随分と他の同年代の女性と比べて貧相な体つきしてたけどね。ちゃんとご飯食べてるの?まあ、そんな醜い姿じゃあ誰も君も愛したりはしてくれないだろうけどね、体中傷だらけだし、そう言えば元奴隷何だっけか。毎日殴られてたのかな?毎日犯されていたのかな?考えるだけで吐き気がするね。まあその過程でずっと腹部を殴られてたでしょー?子宮の機能がおかしくなってたよ?多分一生子供産めないね。まあ、君の血を引く子供なんて可哀想なだけの凡人だけど。それな僕には何の関係もないんだけどね。さっ、もう一つの方も行こうか」
「ヒッ…あは、あはははははッ!ッ!や、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!助けてアベンさん!エマ!いや…嫌だぁぁぁっ!!」
「おおい、ちゃんと詰め物しとけって。吐き出しちゃったじゃん。え?なに?いきなり汚い物取り出したと思ったらそれ突っ込むの?噛みちぎられても知らないよ?悪いけど僕再生医療の方の技術は持ってないからね。刺激を求めるってならいいと思うけど。
ああ、後で口内の洗浄しといてよ?君が性病でも持ってて検体に移したら大変だからね。あと下は絶対ダメだよ?え?僕が?ないない、こんな汚ったない体の女なんて金払われても抱きたくないよ。単純な話だよ。こんな貧相な女抱くなら世界が僕らのものになった後に絶世の美女を抱けばいいだけさ。だから今は我慢してね。それにほら、涙と鼻水と血でぐしゃぐしゃの顔。惨めで不細工で魔眼を持たない奴の末路だ。それに言うこと聞かなきゃ殺すよ?君らみたいなのは幾らでも補充できるからね。
さっ、お話が長くなるのは僕の悪い癖だ。ささっと終わらせたらダストボックスに投げ入れるから安心してね。どうせ明日にはバロム様に移植するし」
つぷん
ぐりゅん




