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四十九匹目 試合開始

1週間で投稿するって言って2週間かかったのはどこのどいつだぁ?

僕です…滅多なこと言うものではないですね。


「ねえ、お母さん…本当に良かったの?」


「いいのですよ…そもそもアベンさんがここに来ること考えつきませんし」


「たしかに」


「明日からエマ頑張るんだからね…沢山食べるよ!」


「うん!」

アベンさん達と別れた後、私達はとあるお店にやってきていた。それは、あの…名前を忘れたキザったい人に連れ回されている時に見つけたお店。

そう、それは…

「ご注文はお決まりでしょうか?」


「「ケーキ食べ放題セットお願いします!」」





「たまにはこうやって何も考えずに食べるのもいいですよね〜」


「…お母さんお腹周り気にしてるって」


「エマ、言っていいこととね、悪いことはあるよ?」


「ご、ごめんなさい…」


「それに今からどうせ歩くんだし、あの変な奴に付き纏われるのだし…頑張る自分への前倒しのご褒美ってことでね?」

トレラとか言う紳士は取り敢えず放っておこう。今は二人だけの時間なのだから。

「そう言えばさ、お母さんってお父さんのどんなところが好きなの?」


「ゴフッ…ゲホッゲホッ!え!?」


「せっかく再開したんだもん聞いておきたかったの。だってお父さん陰では私のことクソガキって言ってるしお母さんもたまに見捨ててたし。私、お父さん好きだけど…お母さんはなんであの人選んだんだろって」


「う、うーん…たまに優しいんですよ?それに守ってくれるし。あと、私のことを標本みたく見つめてくる目はなんかこう…ね?」


「変態だー」


「私はいいの!」


「よくないと思うなー」

どうにか話を逸らそう。

「あ、チーズケーキありますよ?」


「む?話逸らしても無駄だよ。だいたいお母さんは…」


「チョコレートケーキもありますよ」


「!!!」


「ほらほら、沢山食べましょうね」





「明日から楽しみだね。私の本気。やっとお父さんとお母さんに見せられる!」


「この間は?」


「あの時は嬉しくて気を抜いちゃってたからダメダメ。今度は2人の為に頑張って本気で戦う!」


「うーん?私の為と言うよりはアベンさんと竜の為ですかね。卵狙いですし」

甘い物は別腹とは良く出来た言葉だと今日ほど思った日はない。

明日体重計に乗るのが怖くなるほど食べてしまった。

エマは動くからいいにしろ自分は少し考えたほうがいいかもしれない…

それに今回も何も役に立てずに事が終わってしまっては申し訳なさが残る。

そう考えると武器屋にでもいってナイフの一つでも持っていた方がいいか?あの人の役に立てないなど生きている価値も無いに等しい。

「ミストみたいな子が沢山?」


「…よりは性格柔らかい子もいますよ。幼体?もいましたし。中には羽毛のある子もいましたよ。冬になるとあの辺りは雪が降るそうなんです。知ってますか?雪って降るものなのですよ?」


「知ってるー。昔ドクターにバレないように外に出たら降ってたの。白い埃」


「なら、魔物だけの国はどうです?」


「そんなの無いよ。本にも地図にも無かったし」


「でも、アベンさん行ったことあるらしいですよ?」


「本当!?じゃあ、あるね!」


「アベンさんの話なら信じるんですね…」


「お父さん色々なところ行ってたから。ずっと見てたんだよ」

植え付けられた記憶がどこからのものかは知らないが、多分自分よりアベンさんのことは知っているだろう。

「ちゃんとお母さんが捕まっちゃった時も見てたよ。偶に変なことしてたけどお父さん助けに来てた」

上手い具合に作られてる記憶だ。いずれ彼女が本当の記憶を思い出したらどうなるのか?

「私、役に立つってところお父さんに見せるんだ!」


「…頑張ってくださいね」

やっぱりナイフくらい買っておこうと思った。




ゆらゆらふらふら、探し物を探す。揺れる視界とレンズ越しの曇った世界をただ、ただ見つめながら。

美味しそうな肉が辺り一面に転がっている。我慢しないと、探さないと。

暗いところ行こう。狭くてジメジメ。にいさんと同じクズがたくさんいるる。こいつらを腹の足しにしよう。

「つつつまみぐぅい」

お腹が空いた。向こう側から美味しそうな肉がやってくる。

少しくらい食べてもいいだろう。母に諭され数年ぶりに森から出た。ヨダレも出てきた。

「おい、痛い目見たくなけりゃ金目の物…!?」


ドタン


「じゅるる…」


「か、体が動かねえ!ひぃっ!」




「きるぅえいなお花、花…カルミア。いもーと。探ささなきゃ。ゲェップ」

まだ足りない。でも、探さないと。カルミアは弱いから俺が守らないと、兄さんと一緒にに

「そこまでです」


「んぃー…美味しくなさそう」

真っ黒なお肉。焦げてる、スカスカ。不味そう。

「この街は貴方の食事場ではありません。蠱毒竜ヴェノ、本来なら今すぐにでも貴方の首を跳ね飛ばしたいところですが…」


「けぷっ…お前だわぁれ?」


「名乗る程の者ではありません。ですが貴方に会いたいと言う方がいます。宜しければ付いてきてください」


「んー?いひひひひ。お前不味そうなのわかっとぅあ。女なのに女じゃない。いひ、いひひひひひ。腹の中掻き混ぜられとぅあ?」

擦り寄っても身動き取らない。つまらないし不味い。こいつはなんだ?

「……。」

カルミア見つからない。でも、こいつからおおれと同じ臭い。竜の匂い臭い。ここのエライ人の部下?たまご盗んだ奴?にいさんの為に知らないと知知知知知知。

「後片付けはこちらの者が行います。それにとても美味しい料理でもてなしますよ?」


「美味しい?にいさんとの約束、美味しい、にいさんとのやくすぅおく…」


「きっと、アベン殿も許してくださりますよ。後で探せばいいって」


「そうだ。にいさんにににいさん。美味しいもの。付いてく。いひひ」


「こちらです…」


「いひひひ」




「え?ヴェノさんが?」


「ああ。お前のこと探しに行くって別れたが会ってないのか」

宿に戻り夜の帳が下りてきた頃カルミア達が帰ってきた。手にナイフを持っていたのでてっきり殺しにきたのかと思ったが護身用らしい。物騒な世の中になったものだ。

そして、昼間は何をしていたのかと聞いてきたので大方話終わったところだ。

「はい…あの、因みに人間態ってどんな感じでしたか?」


「俺の顔があの顔面になっただけだ」


「うわ、すっごくわかりやすい」


「第一あんな格好してりゃ嫌でも目立つだろ。見つからなかっただけだ。そのうち会う」


「そうですね…それで、あの…」

今自分はベットの上に座っている。もう寝ようと思っていたからだ。別にそれはいい。カルミアが言い辛そうにしているのはエマのせいだ。このガキは部屋に入ってくるなり人のベットに寝転がり既に寝息を立てている。

「私も…いいですか?」


「お前らの部屋借りるぞ」


「あっあっ、一緒に寝ましょうよ!」


「嫌に決まってんだろ」


「いいじゃないですか!家族サービス!」


「次その言葉使ったら首撥ねとばす」

脅しをしようと5号を鉈に変化させると物凄い強さで腕を掴まれる。

いや、バキッと小気味良い音で折れた。

「お父さん…寝よ?」


「……」

嫌な汗が背中を伝った。寝たふりしてやがった。それよりも聞かれた。どう来る?記憶を思い出したか?いや、襲ってこなかったり質問してこないところを見ると大丈夫か?

「…狭いだろ」


「大丈夫!私小さいから!」

そういう問題じゃあない。


「ね?」

言い返そうとしたが出来なかった。首筋に違和感を感じる。振り向けばいい笑顔をした擬態した4号がいた。

手に注射器を持っている。「強制睡眠導入薬」つい先日作り出した新薬であり、竜も眠らせる自身のあった代物だ。

急激に意識が遠のいていく。

「昨日の仕返しさ。可愛い半身のちょっとした悪戯」


「て…めぇ…」


「ナイスですよーちゃん!」


「明日に備えてゆっくりと休んでくれ。僕らも寝るとするよ。良い夢を、お二人とも」


「おやすみなさい」


「…」


「あれ?もう、エマ寝てるし」





バルバトス闘技大会。この国一番の催しであり世界中から観戦者が或いは出場者が訪れる。しかし今年は例年以上に盛り上がりを見せていた。

それは人々の前に置かれると時折動き、時折薄く輝く卵。

1度目にすればその美しさ、殻の中に眠る逞しき命が人々を魅了した。

優勝商品である竜種の卵。

ある者は力を、またある者は名声を求め遂にその大会は始まる。


『レディィィズアンドジェントルメェェンズ!今年もこの祭りを開始するぞッ!!!』


「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」


『出場者は過去最多!なんと今年は予選まで開き!より強き者を集めた!そう!誰もがこの竜の卵を求めて!!』


「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」


『大会は6日間!54人の猛者達の白熱したバトル!最後に栄光を手にするのは誰だ!?』


「「俺だぁぁぁぁ!!!」」


『その言葉よしっ!では、ここに国王ロビン=バルバトスが!第91回バルバトス闘技大会を開催する事を宣言する!己が持つすべての力を使い勝利せよ!!』


「「オオォォォォォォッッッ!!!」」




「頭が割れるように痛い。なあ、何故かわかるよな?」


「…本当にごめんなさい」

開会式と言う名の国王の演説が終わりアベンは42番の選手だと腕輪を嵌められた。どうやらこれが選手の証であり代替えの選手を出場させないようにする魔法道具らしい。無理やり外そうとすれば利き腕を吹き飛ばす。負けるか優勝するまでは外せない。

それを付けられた所為もあるのかアベンは目に見えて怒っていた。表情は変わらずしかし胸倉を掴まれたカルミアは今回ばかりは本当に捨てられるのではないかと恐怖で震えていた。

「誰のせいだと思ってやがる糞女?手前の身勝手のせいでこっちは死にかけてんだよ。家族ごっこがやりてえなら2人でやってやがれ」


「うっ…」


「蒸籠の中に4号置いてきたせいでよ、もう既に負けそうなんだよ。あ?どうすんだ手前?死ぬか?いや、死ね。今すぐ死ね。痕跡も残さずこの世から消え失せろ」


「……ごめんなさい」


「今回何があっても手前のこと助けねえからな。それが罰だ。せいぜい奴隷商人にでも気を付けんだな」

突き放されるとそのまま選手入場口へと行ってしまう。

上の観客席ではエマとママレード、それに何故かピエトロも待っている。取り敢えず上に向かうとしよう。

「はぁぁぁ……あーー…エマ来てからあんまり相手してくれなくて、私だって寂しいんですよーだ…」


『さあ、記念すべき第一回戦!!選手の紹介です!』


「…早く上行って応援しよっと」





『まずは42番!昨日、街の中でその戦いぶりを見た方も大勢いるでしょう!今回初参戦、実力も未知数であり!王国が誇る兵器血濡れのピエロを相手に引けを取らず相打ちとなった男!アベンの登場だぁぁぁぁ!!!』


「ヒュー!!」


「おい!しっかりと闘えよ!」


「惨めに負けんじゃねえぞ!」


「やべえ、視界も揺れてきた」


『さあ、そして8番!!前回大会での圧倒的な戦績!優勝こそ出来なくとも今大会の優勝候補の1人!その姿を視界に捉えた瞬間には全てが終わっているほどの俊足!神速とは正にこの男の為の言葉!スピル選手!』


「スピルー!!」


「今回も大暴れしちまえ!」


「きゃー!!スピル様ー!」


「いい歓声だ」


『さあ、両者共にリングに上がりました!!

ここでもう一度ルールを確認します!降参、もしくは死んだ時点で負けになります。それ以外なら金的、目潰し、他なんでもありです!ただしリング外からの攻撃、補助魔法は認められません』


「君がかの血濡れのピエロと相打ちになったと…へえ、僕の目には随分と弱く見えるがね」


「あー…悪い。話しかけないでくれ。薬のせいで気分まで悪くなってきた」


「ほう、ドーピングか?構わない。薬を使おうが使わまいが僕の方が強いことに変わりないからね」


『それでは第1回戦!開始ッ!!』


「うっぷ…おぼしゃァァ…」


『おおっとこれは!?アベン選手吐きました!緊張によるものか!?それとも恐怖か!?しかし、降参するか死ぬまでリングを出ることは許されません!さあ、どうするのでしょう!』


「悪いが即座に終わらせてもらうよ」

吐いて少し気分は良くなったが気付けばスピルの姿が見えない。

あたりを見回そうした瞬間に後頭部が吹き飛ぶほどの一撃を食らう。

顔面から自分の吐瀉物に突っ込みながら5号を鉈に擬態させる。

危うく意識が飛びかけたがこの程度では特に支障はない。

『耐えました!一撃必殺のスピルの攻撃を耐えました!しかしアベン選手、手も足も出ない!』

呑気に話してるつもりはないらしい。

一撃で倒れないなら二回、三回と攻撃を行ってくる。

しかも一方向だけでなく全方向からも。

まあ、痛覚もないし体の傷は即座に治しているので耐えるだけだ。ピエトロと比べれば大したこともない。

「とどめだ!」

全方位からの殴打に死角からのナイフによる刺突。しかも、残像すら見えない様な加速状態でだ。普通なら死ぬ。しかし、もう遅い。その動きは既に覚えた。


ギィンッ!


硬い鉄同士がぶつかり合う音ともにスピルの姿を視認する。無理やり体を捻じ曲げたせいで力を込めにくいが関係ない。

「確か視界に捉えたら全て終わっているんだったよな?終わったか?」


「っ!!」

距離を取ろうと後方へと飛ぶ。まあ、もう遅いが。

鉈に擬態した5号に触れた時点で勝ちは確定している。

もう帰って寝るとしよう。耐薬体質の筈だがこれ程まで体調を崩したのだ。何年振りにだ。他同様にやはり希釈しないと使い物にならないだろう。それに勿体無いし。

こちらはもう動く気は無いがスピルは再び視界から消える。加速したのだ。もう負けているというのに。

『なんとっ!?これは一体どういう事だ!!スピル選手が再び視界から消えたと思ったら氷漬けになってしまった!?不肖、実況である私もこれには動揺を隠せません!何が起こったのでしょうか!?』


「刻印魔法、速さ。それに刻印強化。蓋を開けてみれば魔法による身体強化だ。生憎と優秀な半身は刻印の彫り方を知っている。しかし便利だな魔力を流すだけで掘った文字の通りに力が宿るというのは」


『勝負ありッ!!一回戦を制したのは42番!アベン選手だ!!』

特に拍手等も起こらない。観客の殆どがなにが起こったかわかってないからだ。まあ、俺も半身伝っての情報なので良くわかってはいないが。

しかし誰かが「卑怯な手を使った」などと言うものだから段々とそれは広がり会場中が卑怯者コールだ。

ルール上持てる力全てを出して戦えと言っておいて自分の応援していた者が何処かの馬の骨に負けるのは気にくわないらしい。本当に醜い連中だ。

取り敢えずトドメにもう1発思い切りスピルの顔面を蹴り飛ばしといた。




「あ、お父さーん!」


「エマか。どうした?」


「どうしたって次、私の番だよ?」


「ああ…そう言えば」

たしか勝ち進んで行けば3日目に戦う筈だ。嫌だ。

「観客どもの声に耳傾けんじゃねえぞ。どうせ短い命だ。今だけは喚かせておけ」


「大丈夫だよ。お父さんバカにした奴全員覚えたから」

冗談に聞こえない。

「いいか、まだだ。事を荒立たてるな?物事には順序ってのがあるんだ。先ずは…」


「あ、試合始まる!行ってきまーす!」


「…」

まあ、いいか。どうもあのガキ相手だと強く言えない。ナターリアの野郎もしかして直で会った時に何かしら仕掛けてきてたのか?洗脳、催眠に耐性はあるが魔法には一切耐性がない。じゃあそういうことか。あの頭なら魔法を擬似的に作り出すことも可能だ。

だとしたら1号が気づく筈だが…

「先の戦い、見事な刻印書き換えであった」


「ああ…えーと…」

巨人が話しかけてきた。おかしい。巨人に知り合いはいなかった筈だが…

「フロストだ。昨日会ったであろう。それに明日闘技する者であるぞ?」


「うん?じゃあ手前がエマの相手か?」


「…貴殿、そこにトーナメント表あるだろう。見ていないのか?」


「ああ、これか…なんだ手前、今日闘わないのか。俺と…あの、なんだっけか…スピル?とか言うので潰しあって次は手前か」


「戦った相手の名前くらい覚えておいた方がよいぞ?」


「記憶に残るような戦いをしてくれるならな」

面倒くさいしさっさと宿に戻って寝るとしよう。これ以上時間をかけると4号が本当に死にかねないし。

「明日は本気で闘技出来るのであろう?」


「あ?」


「服の下の住人達だ。昨日より1人足りないぞ?」


「お説教中だ。明日からまたこき使ってやるさ」


「楽しみにしている」

そう言って観戦席へと行ってしまう。しかしデカイから威圧感が凄い。あれが種としているのだから北の方は興味深い。

そう言えばあいつの故郷もあっちか。

『さあ!リングの片付けも終わりました!次いで第2試合!今大会最年少!可愛い少女はどのような闘技を見せるのか!?43番エマ選手!!』


「可愛いー!」


「おい!親父みてえなみっともねえ試合すんじゃねえぞ!」


「くそッ!どうやったらあんなのからこんな可愛い子が生まれてくるんだ!?母親似か!」


「お父さーん!お母さーん!私、頑張るよー!」


『神速の動きならスピル選手!ですがもう1人神速の名に恥じぬ選手がいる!その…』

会場でも再び実況が始まった。もうこれ以上ここにいたら、また吐きかねない。試合だけ見て帰ったと言うことにしておこう。

闘技場を出て宿へ向かう道中、場内に入れなかった者が空に映し出されている映像水晶の映像を見ていた。別に見る必要性もない。壁にめり込んだ相手選手を数人がかりで引っこ抜いてる所だ。

適当に言い訳を考えながら宿に着き、眠りに着く。

起きたのは陽が傾いた頃。そして、4号はこれでもかと言うほど萎んでいた。

「なんだ、意外と耐えたな」


「じぇ…る…」

悲痛な声を上げていた。

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