四十一匹目 機械仕掛けの偽神
いや、あの…2.3日ペースで出すとか言って出してなくてごめんなさい。やることがががが…
気を付けます
轟音と怒声響き渡るの地下都市の一角。とある建物の屋上には人影があった。ある者は何も感じずある者は楽しげに、また、ある者はあまり興味は無さげに。
暴れ回る巨獣を興味深げに。
「獣人ってなんなのかわかるか?」
「うーん…動物と人間の子ですか?」
「はいはーい!エルダーの進化けい!」
「エマが正解だ」
なぜこんな話をしてるのか。簡単だ。出口が見つからなかった。言われた通りの場所に行ったにも関わらずあるのは壁だけ。どうしようもない。
しょうがないから見晴らしのいい高い建物に乗り暴れまわっているアリシャを観察している。
「エルダーって大老さんと同じ名前ですけど…なにか関係があるんですか?」
「魔物がある一定以上生きたり強くなると上位個体になるよな?さらにその上の状態がエルダーだ。能力が高くなるのは勿論だがエルダー個体になると知性が生まれる。統率の取れた魔物は簡単に街一つ滅ぼす」
「じゃあ大老さんも?」
「あれは生まれながらに上位個体だ。まあ、ブラックと名乗るか大老と名乗るかだったら性格的に大老って選んだんだろうよ。頭良さそうじゃしなとか言って」
「お父さん、私当たったよ!褒めて!」
「そうだな」
「え?じゃあ、アリシャさんのあの状態もエルダー個体になったって事ですか?」
「エルダー個体になった魔物が更に進化して魔族なんて呼ばれ、動物が獣人なんて言われてんだ。だからあれは先祖帰りって言った方が正解か」
『ガアッ!』
勢いよく振り下ろされた腕は簡単に都市部を壊す。ゴガンッと重い音を響かせると人の一部が飛んだりしている。
巨獣となったアリシャは味方だろうが容赦なく殺していく。
「学者が言うには普段から魔物を殺す人間を見て真似て同じ姿になったって話だが…実際獣人や魔族の先祖が何かなんてのは本人達にもわかってないんじゃないのか?」
「でも、獣人も魔族も歴史を見ればそれこそ大老さんと並ぶくらいですよね…」
「まあ、とにかくだ。あれは中々に興味深い結果だ。高く売れるぞ…名前は何にするかな」
「あんなの誰に売るんですか…」
「獣人奴隷扱ってる奴とかだな。ほら、化け物同士の殺し合いなんていい余興だろ?」
やはり帝国の精鋭達だな。先程まで押されていたのに関わらず何度か攻撃を当てられるようになってきている。
図体がデカくなり攻撃の振りも遅い。魔法による牽制をされ、銃による攻撃。
傷はどんどん増えていく。血の色は赤らしく辺りが染まり始めている。
「奴隷…あんまり私は同意できません」
「同意なんて求めてない。結局人間はそんなもんだ」
「お母さん大丈夫?」
「大丈夫だよ。エマは優しいね」
「えへへ」
勝手にアベンの手を掴み自分の頭を撫でさせていたが今度はカルミアの方へ抱き着く。
『ガッ……オォォアアァァッ!』
「ん?終わったみたいだな」
どうやら暇潰しは終わってしまったようだ。さて、どうしたものかな。ここから出るには…穴でも掘るか?何年かかるやら。じゃあ、どうすればいいか…
だが、それは運良くというか悪くというか好機はやってきた。
「対象を確認 最最最優先殲滅対象機械仕掛けの偽神 最優先殲滅対象アベン 殲滅を開始」
「ッ⁉︎お母さん、私の後ろに!」
右半分が金属的光沢を持つ流動体になったアルファが様々な武器を作り出し攻撃してくる。
エマは義手を剣に変え、アベンは擬態した5号で受け止める。しかし流動する右半身は予想以上に自由に動かせるらしい。受け止めたにも関わらず更に複数の武器がこちらを狙う。
「ア、アベンさん!」
「手前のことだけ考えてろ。じゃなきゃ死ぬ」
「そんな…もう金属を操る装置は破壊したんだよ!」
「殲滅 殲滅 殲滅 殲滅」
やはりナターリアの子孫が作ったからか、あるいは偶々か。どちらにせよこいつを壊さなければ考えることもできない。
「ゲホッ…被害はどうなってる!」
「死傷者5名、重傷者2名、その他負傷者多数です」
「…そうか」
辺りに血の匂いが漂う。地下都市に突如現れた化け物は今はもう動かない。文字通りの血の池に倒れ込んでいる。
しかしやはり作られた生物なのか既に体が腐敗し始めている。やはりナターリアの作った生体兵器なのか?
『ガ…ァ…』
「まだ生きてやがるのか…」
「テルミュードさん。どうしますが、こいつ?持って帰ります?」
「たしかに戦力増強にはなるが…どう見ても理性なんてなさそうだな。腐る前に皮膚片だけでも…」
近づいて採取しようとすると一瞬意識が飛びそうになる。異常なまでに早く腐る体は腐敗臭を留まらせより臭いものとなっている。
それでもなんとか近づくと皮膚を採取し試験管へ入れる。しかし、見れば見るほど醜い化け物だ。片方の目はなく傷の影響と腐敗の影響か内臓のようなものを溢れている。
「テルミュードさん。どうやらアリシャの部隊なんですが…」
「ん?どうし…」
ドガァァァァンッ!
声に被されるように破壊音のようなものが聞こえてくる。そちらに目をやれば土煙のようなものが上がっており何やら戦闘を行なっているようだ。
まさか、もう1匹いるとでも言うのか?
そんな最悪の事態を考えていると上空になにかが舞い上がる。
「あ、あれ!」
「機械仕掛けの偽神か?」
「はい!アルファと戦闘状態のようです」
「わかった。動ける者は俺と来い!アルファを支援するぞ!」
「「了解!」」
呻き声さえ上げなくなった化け物を放置し先を急ぐ。どうやらアベンは予想以上に自分のことやこの都市のことを知っているらしい。これ以上あんな化け物を目覚めさせられたら全滅するのも時間の問題だ。
「殲滅 殲滅 殲滅」
「なあ、さっきこいつ最最最優先殲滅対象エマって言ったよな?」
「…はい」
「お父さん、危ない!」
エマに蹴り飛ばされギリギリでアルファの攻撃をかわす。先程からずっとエマとカルミアを無視しこちらばかり攻撃をしてくる。何故だ?
蹴り飛ばされた先で受け身を取るが既に目の前には複数の刃物が迫っていた。
しょうがなく左手でガードするが簡単に貫通され更には腕に巻き付かれ、地面へと叩きつけられる。
「お父さんを離せ!」
「警告 機械仕掛けの偽神内部に高エネルギー反応あり 即座にアベンの殲滅を開始」
「やあぁぁぁっ!」
「回避行動を優先」
アルファは軽くエマの攻撃を避けるがエマもアルファの右半身と同じように叩きつけた腕から複数の剣が射出される。
本当になんでもありだな。
「んー…全身の骨が砕かれた」
「い、いーちゃん!お願いします!」
「じぇり!」
「お父さん、逃げよ!」
「俺はいいからカルミアを守れ」
「わ、わかった!」
まずいな。これ以上ここにいたら帝国の連中が。
しかし悪い方向へ考えたことは大抵その通りになる。左大腿を異物が貫通する感覚がする。痛みはなくても真っ赤な液体は止めどなく溢れでてきて同時に足に力も入らなくなる。
「撃て!誰一人逃すな、機械仕掛けの偽神以外は殺せ!」
「再度目標の殲滅を開始」
「エマ、そっちは頼んだ」
「大丈夫!もう少しで倒せそうなこと思いつきそうだから!」
「俺らのこと舐めてんのか!」
エマに指示を出すと待っていたかのように顔面を蹴られる。
全くなにが気に食わないのかわからない。別に俺には戦闘センスやズバ抜けた能力なんてない。一つ一つ言わないと行動も移せない。
「しかしまあ、自己進化回路は凄いな」
「はぁ?」
ギロリとテルミュードが睨んでくる。なんだ、もしかして知らないのか?
「エマに内蔵されてる…なんかこう…あれだ、凄いやつ。よくはわからないが常に自己を最適化させる」
「ふん。なんだそれは?ハッタリか?先程は負けていたが偶々だ。結局はアルファの方が強い」
「まあ、死んだら死んだらで色々と使い道があるしな。で?お前はなにそんなに怒っているんだ?」
「なに…?」
明らかに別人とも思えるような言動や行動になっている。それとも元々こういう性格なのか?
荒っぽいことは間違いない。もしや、先程のナターリアのことをまだ怒っているのか?自分達は愛されてなかったってことが認められない?
「獣人部隊が…全滅していた。全員がミンチになっててな。あの化け物はお前が目覚めさせたんだろ?ナターリアの作り出した生物兵器か何か、とてもじゃねえが自然発生したものじゃない」
「ああ、アリシャの居場所か?あいつの死体だけ無かったら、それは不思議になるよな?で、俺に八つ当たりか?」
「答えろ!アリシャ君はどこに…」
「死んだよ。さっきな」
「なんだと…?」
そんなに驚かなくてもいいじゃないか。こちらまで驚いてしまう。第一に巨獣かしたアリシャは見た目こそあれだが鳴き声は少し似てたから気付いてると思ったが…
「現実見ろよ。似たような毛の色、声、魔力はまあ知らないが…大体あんなのがいるわけないだろ。融合生物学なんてのは最近になってできたものだ。ナターリアと言えどあんなの作れるわけがない」
「じゃあ、なんなんだ!お前がやったって言うのか⁉︎」
「ああ、そうだ。素晴らしいな彼女は。普通なら成功せずに体の中身がひっくり返って死ぬのに見たか?あの元気な姿を…今回はいい薬が出来たと自負してる」
テルミュードが胸ぐらを掴んでくる。
そもそも今回の原因はお前にもあると思うぞ?仮にも半覚醒者なんて呼ばれる化け物になりかけの人間を作り出すような奴相手に無用心すぎる。だからこんなことになるんだ。
ポロポロと涙を流しながらもその目には憎悪の感情が見える。やはり理解出来ないな。テルミュードとアリシャはどんな関係だったのか?部下と上司か?それとも恋仲であったとか?どちらにせよ、たかが他人の為に何を熱くなっているのだろうか?
「お前には罪悪感が無いのか?」
「とっくの昔に家出した」
「ふざけるな!命は、そんな簡単に消していいものじゃない!命は…」
「腹の中にガキでもいたのか?なら、ナターリアも喜んでるだろうな。最高のショーだっ…」
「ッ⁉︎このクソ野郎が!」
バキィっと音が響きアベンが地面に倒れる。
思い切り殴られたせいか歯が折れた。まあ、すぐに治るからいいか。
「テ、テルミュードさん⁉︎」
「はぁ…はぁ…くそッ!こいつは生かしていたらダメだ。今すぐに殺して…」
「殺すなら私ごと殺してください」
そう言って物陰に隠れていたカルミアがアベンの前に両手を広げ立つ。
流石のテルミュードも若干敵意を緩めたが再度銃を構える。それに合わせ周りの連中も一斉に。
「カルミアさん、悪いが俺はその男を殺さなければならない…死にたくなかったらどけ」
「断ります。私はこの人の役には立てません。大老さんに頼めば目は治ります。だけど視力が戻っても私自身はなんの役にも立たない。なら、肉盾くらいにはなります」
「正気か⁉︎そんな男のどこに助ける価値がある!あんたもいつかは裏切られるぞ!無残な死を迎えることになるぞ⁉︎」
「それがどうかしましたか?私はそれで構いませんよ。どんな形であれアベンさんの役に立てたのなら嬉しいです」
「狂ってやがる…」
「そりゃあ、私元奴隷ですし?もう何が正しいのかなんかわかりませんよ」
ね、アベンさんと後ろを振り向くと既に彼の姿は無くなっていた。
ほら見たことかテルミュードが何かを言いかけると周りの帝国兵たちが次々と倒れていく。
「囮ご苦労。早速役になってくれたな」
「なッ⁉︎」
「もっと褒めてくださいよー!」
「何をした!」
「お前が薬をどのように考えてるかは知らないがな。例えばある生物の血は解毒作用がある。さらに別の生物のは傷を治しやすくする。それを混ぜるだけでも簡単に薬はできる」
「何を言って…」
「だがまあ、人を殺す薬ってのは簡単に作れるよな。毒なんてそこら中に転がってるし」
巨獣化したアリシャと同様に腐敗臭を撒き散らしながら兵士達が溶けていく。
「これは俺が一番最初に作った薬。腐敗薬。見ての通りだが…まあ、どうでもいいよな?」
「……」
「どうやってもお前に勝ち目はない。だが俺は今、大金が入ったからお前は見逃してやろうと思う。大人しくしてろよな」
そう言い残しエマの戦ってる方へとカルミアを連れ歩いていく。
何もできなかった。それどころか見逃された。
「アリシャ君…みんな…」
「おりゃあ!」
「回避を優先 回避 回避 回避」
巨剣で斬りつけるが簡単に避けられてしまう。先程から自分の攻撃が読まれ始めてる。だが、あともう少しだ。もう少しで…
体内に魔力炉を作成開始 完了まで残り37秒 次いで肉体への魔力耐性を付与 完了 魔力炉の完成とともに自己進化を完了
「そうだ、魔法を使えばいいんだ!」
咄嗟に思いついたことを実践する。少し離れた場所にいるアルファに向けて右手を向ける。動きを止める。ただ一点に集中して
「警告 機械仕掛けの偽神内部に高魔力反応あり 脅威度引き上げを開始します」
「止まれ!!」
その言葉共にアルファの足元が凍りつく。しかし使いこなせてないのかアルファ自身は凍っていなく避けられてしまった。
「殲滅 せんめ」
「それしか言えないのか?」
上空から戦鎚で地面へと叩き落される。あまりダメージは見られないがいいだろう。あとはエマに任せよう。
「アベンさん、アベンさん。やっぱり科学は魔導工学じゃないですか」
「は?」
なんの話だ?脈絡がなさ過ぎる。
「エマの体内に魔力反応がありますよ。それどころか今、義手に集まっていってます」
「…エマ、アルファを壊せるのか?」
「うん!あとちょっとだけ待って!そしたらできるから!」
魔法まで作り出すとは確かにテルミュードには申し訳ないがナターリアは天才なのだろう。彼の作った自己進化回路がまさにそれだ。
アルファもエマを無視して相変わらずこちらばかり狙ってくる。こいつには自己修復機能でも付いているのか勝手に傷が治っていっている。まあ、首を落とそうとしても死なないのだから当たり前か。生半可な攻撃じゃ即座に回復される。
「チッ。これだからすぐに再生する奴は嫌いなんだよ」
「対象アベンを確認 再度殲滅を開始」
「そうかよ。だが、俺を狙う前にもっと狙うべき奴がいたな」
「お父さん、どいてー!!!」
なんとまあ、都合がいい。ちょうど距離が離れた時に上手い具合に準備が出来たらしい。
しかしあれはなんだ?彼女の義手が大砲の砲門の様になってるのはおそらく何かしらを撃ち出すのだと推測される。ただ、とても狭い。それこそ帝国の連中の使っている銃の様だ。そして肩から生えてるのはガラス瓶の様なもの。中には液体が入っている。まさか水鉄砲か?
「警告 機械仕掛けの偽神内部に超超超高魔力反応あり エラーエラーエラー 試験機アルファへのダメージは未知数 逃走を開始」
「あいつが逃げ出すってことは相当やばい代物らしいな」
「逃げなくても大丈夫ですかね?」
「逃げるに決まってんだろ」
普段は痛覚同様にうんともすんとも言わない直感が叫んでいる。逃げろと。あれを食らったら死ぬと。
カルミアを掴み大急ぎで距離を取る。水鉄砲一つでここまで逃げるとなると笑い話にしかならなそうだ。
「そこで止まって!」
エマがもう片方の手を突き出すと空中でアルファが氷漬けにされる。いや、空間ごと凍結されている。ちょうど天井に向け、エマは砲門も向ける。すると外骨格から鎖が射出され地面へと体を固定する。本気で嫌な予感がしてきた。
「あ、テルミュードさん!」
「放っておけ。死んだところで俺には関係ないことだ。それよりも逃げることを優先しろ」
「いえ、あの…私、抱き抱えられたまま
なので…」
「…まあ、お前の足じゃ遅いからいい。それよりも、だ。お前の眼で見てどう思う?あれは魔法か?」
ちらりと後方を見ればエマがいまだに構えたまま動こうとしない。魔力切れか?
しかし、遠く離れていた為に見えなかった。エマの肩のガラス瓶の中はすでに最後の一滴が義手の中に入っていたことに。
「多分、番外魔法の圧縮魔法と磁界魔法だと思います。ただ、その…」
「なんだ?」
「空気乾燥してません?」
「……おい、まさか」
「地下都市内の空気中の水分がほとんど無くなって…その、エマの肩のとこに魔法か何かで集められていまして…」
「そんな大規模魔法があるのかと聞きたいところだが…」
咄嗟に4号を擬態させ結界でも張らせようと思ったが遅かった様だ。
それは超圧縮され亜光速まで超加速された水鉄砲。魔力を帯びたせいか大気中の物質に左右されなくただ、ただ全てを崩壊させながら、進むだけの水。膨大な熱とプラズマを生み対象を必ず殺す、文字通りの必殺技とでも言うべきか。
「荷電粒子水砲ッ!!」
視界が白一色に染まる。アルファがどうなったのかは言うまでもない。しかし何をどうしたらあんな自己進化をするのか。その考えすらも閃光の前に消えて無くなった。




