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三十三匹目 アナグラの心

わーい、今月のアクセス数1000超えたー!え?低いって?いいんですよ、私にとっては嬉しい事なんですよ

そこは地下都市にある研究施設の一室。誰に見つかることもなくその部屋はある。

そしていつも通り時間になれば無機質な音が鳴る

〈おはようございますマスター 報告があります〉


「 ……………」

雑音にも聞こえる音が鳴るとそれに呼応するかの様に無機質な声が返答する。

〈了解 機械仕掛けの偽神(デウス=エクスマキナ)の脳への干渉を確認 干渉への対策を開始 完了 干渉主の解析を開始 完了 扇動の魔眼の反応及び周囲に複数の魔眼の反応を確認 報告 未確認種がリリウムから北上への移動を開始 〉


「………」


〈了解 機械仕掛けの偽神(デウス=エクスマキナ)への干渉の無効化を無効 機械仕掛けの偽神(デウス=エクスマキナ)の精神に異常発生 未確認種及び特異個体ノルドへの敵対を確認〉


「!……」


〈命令を確認 未確認種がリリウムへ進入時研究室への物質転移を行います 尚侵入確率は2%ほどです〉


「………」


〈了解 おやすみなさいマスター〉

真っ暗な研究室の中、雑音が響き渡る。モニターに映されたのは虚ろになった少女。洗脳下に置かれた彼女はやがて1人の男の元へ向かわされる。哀れで愚かだ。あんな奴に頼まなければよかった。

「ミ…シェ…リ…」

声の様な音が出た気がした。しかしそれは誰にも聞こえることはない。

静かに彼の命が尽きるまで誰にも…




「愚かな事だ。人間は何故争う?お前らの足掻きなど我らが王の前では児戯に等しい。なのに何故だ?何故滅びの運命から逃れる?」


「あ、あの…」


「我が契約者の如くあるがままに生き、死ぬその時まで己が道を進めば良いものを…嘆かわしい…」


「おーい、聞いてますかー?」


「しかし何故我が王は終焉の一撃を愚かな人間に放たないのか…我が能力である『影ヲ操リシ者ノ協奏曲』も使わせてもらえぬ。それに先月契約者が帰ってきた時も連絡をくれずに…」


「もしもーし」

気付くとカルミアは真っ黒な空間にいた。上か下かそもそも立っているのか座っているのかもわからない。

目の前の全身黒ずくめの…多分男は何やらポージングを決めながら話を続ける。

まずは状況の整理をしよう。白いローブの男性達が部屋に入って来ると私の眼を治すといってきた…が、実際はエマと目を合わせるとその瞳が輝きエマの目が虚ろになる。そして恐らくは一番偉いのだろう男が命令を下した。

「その女を殺しなさい。機械仕掛けの偽神(デウス=エクスマキナ)


「命令を確認 対象の殺害を開始」

義手が巨大な爪に変わる。

「エマ!やめて!お母さんだよ!」


「…対象の殺害 優先 おか…あ…さ… 魔眼による洗脳の耐性を確認 エラーエラーエラー 機能を停止します」


「おや、まだ完全に操れていなかったようですね」

やれやれと男が肩をすくめるとフードを脱ぐ。

フードの下にあったのは柔和な笑みを浮かべる好青年。そして綺麗な碧眼の片方が怪しく輝き紅く変色する。その瞳孔は蛇のように縦長に変化している。

魔眼。それは魔法でも固有技能でもない異能。視界に入るだけで攻撃を食らうこともあるが違うらしい。しかし何かしら攻撃は仕掛けて来るのはわかる。

男は口角を上げて口を開く。

「死見の魔眼」

ドクンと心臓が脈打つ。いや、それで全てが終わった。

死見の魔眼。それはかつていた魔眼の王が使っていた魔眼。視界に入れただけであらゆる生物を殺す魔眼。

「貴方に恨みはありませんが…ごめんなさい死んでもらいますね」

だんだんと視界が暗くなっていく…ああ、今回は本当に私酷い目にしかあってないな…


「それで確か私死んだはずじゃ…」


「死…それは常に我らが纏しもの。

だが、我の前ではその死すらも…くく…あーっはははは!等しく無価値なもの…アイダッ!」


『いつまでやっとるんじゃ戯けが!』


「王よ!何をするのですか!」


『やはり貴様に任せたわしが馬鹿じゃった!いつまでもくどくどと意味もない言葉を並べおって!話にならん!それとカルミアを早う出さぬか!』


「王よ…我が言葉確かに人間には理解できぬ。それこそ真理を極めし者以外はな…ふっ」


『おう、コラ。そろそろいい加減にしねえと消し炭にすんぞ』


「申し訳ありません」

大老さんの声が地の底から聞こえてくるような声になった…怖い…目の前の人凄い震えてるし。

闇が晴れていきやがて見知らぬ場所に着く。無駄にでかい部屋のような場所。竜が何匹か入りそうなくらい。そして真ん中に見知った顔の人もいた。

アナグラが全身ボロボロになって椅子に縛り付けられていた。

「カル…ミア…?」


「あ、ごめんなさい。正直な話、私アベンさんと竜以外はどうでもいいんで。あ、エマもです」


「おい、仮にも少しは一緒に行動した仲だろ!つか、アベンの野郎はどこだ!あの野郎、はめやがって!」


『彼奴ならとっくにこの町を出ておるぞ?』


「「え?」」


『なんじゃ、知らんのか?ヌシとエマ?を連中に売ったのも彼奴じゃ。流石にキツイ仕置きでもしてやらないとのう』

ああ、やっぱり私達は捨てられたのか…いや、売られてあの人の役に立てたのならそれでいいか。

しかし気に食わなかったのかアナグラが叫び始める。

「ふざけんじゃねぇ!なんでそうやって簡単に人を裏切るんだ!なんでお前はそれを怒らないんだ!」


「え?だって、私としては助けてもらった恩を返せたし別にいいので。確かにずっと一緒にいたかったのはそうなんですが…売ったってことはアベンさんがお金を貰ったってことですよね?」


「カルミア…お前、それでいいのかよ」


『ううむ…可哀想な奴じゃのう…』

二人ともが哀れみの目を向けてくる。どうして?私は別にいいのに。

「あんな奴じゃなくても、もっと他にいんだろ!」


「他にいるって?私を助けてくれたのはあの人です。どんなに世間から恨まれてようが、どんなに人を道具としてしか見てないでようが私はあの人に命を救われました。自由になりました。なら、私の命をどう扱おうが別にいいじゃないですか?」


「うっ…と、ともかくだ!俺はそんなこと認めねえぞ!」


「認めないって貴方何様ですか?ごっこ遊びなら終わってますよ?偉そうに綺麗事だけ並べるくらいなら、さっさとミストさんに内臓でも引きずり出されて死んでくださいよ」

心に冷たい感情が宿る。

どうせこいつは知らないんだ。家族に裏切られた気持ちも、いつ買われるかわからない恐怖も。

やっぱりあの人だけだ。哀れみの言葉も優しい心もいらない。

私を私として見てくれれば、それが観察対象だとしても実験体だとしても構わない。あの人の興味が少しでも私に向いていれば、それだけでいい。

「ミスト…共喰いはやだ…」


『別にしなくてもよいわ。まあ、カルミアの気持ちがわかるがの。此奴は殺すわけにはいかないのじゃよ』


「もしかして元竜の神様とか、そんな感じのですか?」

そう言って大老達を見ると首を横に振っている。違う?

アナグラを見ればバツの悪そうな顔をしている。

「あのう…何かあったんですか?」


『その前にの、ちと話をいいか?』


「あ、はい」


『竜はのう、真の名を持っておる。今わしらが名乗ってるのは偽名。それは知っておるな?』


「えーと…アベンさんも知らないんですよね?」


「ミスト…教えた…けど…多分覚えてない…」


『なぬ⁉︎まあ、良い。話は戻るが名は力じゃ。真名を知られたが最後、知った者が望むならば竜の力を自由に使えるようになる。もちろん奪うこともな?』


「ああ、我も教えようとしたが…あれ?我教えてないな。確か急に頭を殴られて…うん?どうしたミストなぜ我の頭を狙っ」

地面にめり込んだ黒ずくめの人は放っておいて話を続ける。

「じゃあ、アナグラさんは?」


『此奴は別じゃ。真名を知られるというのは結局どちらかが上に立つことになる。しかし此奴は平等に歩もうとした。そして、竜としての力を失い、こんなボロクソい男に成り下がりおった』


「黙れ!俺は後悔なんてしてねえ!俺は人としてアイツと生きた!今更出てきてグダグダ言ってんじゃねえよ、邪竜どもが!俺はお前らとは違う!」

過去に何かあったのか、アナグラは明らかな敵意を向けて大老達を睨む。

しかし大老が合図をするとミストに殴られてしまう。どっちみち縛られてまともに動けないのにミストの馬鹿力で頭から床に叩きつけられる。

『のう、お主がやったことはの。わしらを裏切った事はもちろん。ヌシの友人もその子さえも未だ苦しめておる。わかっているのか?』


「な、何言ってやがる⁉︎」


『カルミア、先ほど死んだな?実感はあるかの?』


「確かに私はさっき…死にました。でも、なんでか生きて真っ黒い方の影の中にいました」


『それが此奴の持つ能力じゃ』

大老が尻尾をうまく使いアナグラを起こす。

アナグラもずっと大老を睨んだままだ。

睨み合いを続けたところで何も話は進まないが有無を言わせぬ状態でとてもじゃないが割り込めない。

そしてアナグラが静かに口を開ける。

「俺の能力は可能性の書き換えとでも言えばいいのか…お前は死にかけたが運良く魔眼の能力が弱まりギリギリ生きながらえた。その可能性を選んだ結果だ」


「な、なんですかそれ⁉︎神様みたいじゃないですか!」


『まあ、あながち間違いではないから面倒なのじゃ…とにかく人に…特に大切な物を奪われた直後の人間に与える様な能力ではない』


「俺は俺だ!あんたらの事情を押し付けてきたところで俺の考えは変わらねえからな!」


『別に構わぬよ。もうどうせヌシはわしらの仲間じゃないからのう。どうなってるか心配だから見に来たが…時間の無駄じゃったわ。クロウ適当に放り出しておけ』


「御意」

クロウと呼ばれた全身黒づくめの男は地面から頭を引き抜くと自分の影から大量のカラスを召喚し一斉にアナグラに向けて放つ。

そしてアナグラの陰にカラス達が入り込むと同じように陰に引きずり込まれていく。

「俺は…俺は絶対にお前らのような血も涙もねえ連中を許さねえ!次会った時は覚えてやがれ!」


『早う去ね』

影に引きずり込まれながろも最後まで呪詛の言葉を叫び続ける。なんだか大老さん達も少しだけ悲しそうな顔をしていた。

なんとも言えない気分だ。

「カルミア…気にしなくていい…これはミスト達と…あいつの問題…」


『見苦しい物を見せたのう。さて、ヌシはどうする?娘を助けに行くか?それとも逃げた馬鹿を捕まえに行くか?』


「私は…」

言葉が出ない。正直あの人から見れば私は用済みだ。邪魔なだけの存在でありろくに目も視えない。肉盾くらいにはなるかもしれないがかえって邪魔な死体が増えるだけだ。

「カルミア…悲しそう…」


『言われなくともわかってるわい。ほれ、話してみい。少しは楽になるじゃろ』

促されるまま話し始める。捕まった事、殺されかけた事。視力の超低下。

それに今回何故か私だけ酷い目にあっている。気付いたら後半は愚痴のようになっていた。

でも、大老さんもミストさんも最後まで聞いてくれた…ミストさんは若干うとうとしてたけど。

『ふむ。昔はもうちっと人に優しかったが随分と様変わりしてからに…まあ、よい。眼なら治してやるわ』


「え?」


『わしは竜王じゃぞ?目ん玉の一つや二つ簡単に治せるわ』


「痛いけどねー…」


「うっ…痛いのはちょっと…」


『なっさけないのう。とりあえず軽く加護くらいはかけといてやるわい。で?どうするんじゃ?』

助けてくださいと言われれば霧の森全勢力を持って囚われた娘の救出も帝国も世界の眼も滅ぼせる。しかしカルミアは首を横にふる。真っ直ぐと大老を見て少しだけ口ごもるが決意を固めた眼で話し出す。

「私が弱いからアベンさんは私を見捨てて行きました…だから、一人でエマを助けて、そのあと目も治してもらって…アベンさんに追いついて…私が隣にいてもいい、そんな証明をしたいんです!」

思わず大老も目をぱちくりとした。

思った以上に芯の強い女だったらしい。ならば自分たちが手を出すのは無粋だろう。

ミストもわかってるよと言いたげにこちらを見てくる。

『そうか…では、娘に一言言っておくことがある』

アベンにしたようにカルミアの顔にも大老は張り付いてくる。

もっと大きければ優しく抱擁をしてくれていたのだろう。しかし今は幼い竜。こうして体全体で抱きついてくるのか。

『死ぬでないぞ。悪いがこれ以上家族を失いたくはない。手出しはせぬ…が、頑張ってこい。しっかりと娘を守れ。そしてあのバカを見返してやれ!』


「はい!!」

いつもアベンに向けているような満面の笑みで返事をする。

ホワイトを呼び地下都市への転移を始める。心から願う。無事でいてほしいものだ。

「頑張って来ます!」

転移の光に飲まれるとその場からカルミアが消える。

しばらくするとホワイトも戻ってきた、

一応死にそうな時はわかるように魔法はかけておいた。

『じゃあ、わしらも帰るとするかの』


「大丈夫…なんだかんだで…アベンはアベンだから…」


『誰かに言いくるめられれば助けに行く。ということか?』


「うん…」


「一応我の眷属をアベンの影に潜らせているが町に戻りそうな気配はないぞ」


『何を言っておる。わざわざ近くに捨ててきおって』


「アリグナクは…おかしくなった…人を…知って…感情を…知って…」


『彼奴は元々土着信仰の対象だったくせに人間に甘いからのう…まあ、まさか人間になっているとは思わなかったが…奴は奴じゃ。放っておこう』


「はーい…」


「御意にございます」


『んー?あらー、話は終わったかしら?それじゃあ転移するわよーみんな魔法陣に入ってねー』

ホワイトが手に魔法陣を作り出すと大きかった部屋もだんだんと縮んでいく。

そして転移魔法の光が消えた後は元の宿の一室に戻っていた。




竜は気まぐれだ。その力を振るい天災になる者もいれば逆に富や名誉を与える者もいる。

地竜アリグナクは後者であり大昔から讃えられてきた。

人間達とも仲良く暮らし貢ぎ物を献上される代わり可能性を弄り彼らの住む地を豊穣へと変えてきた。

人に感謝されるのは気持ちがいいことだ。壊すだけの邪竜とは違う。人間という種が好きだったからこそ、なにかを与え残していくことが生きがいになっていた。

「おお、我らが神よ。この地を豊穣へと誘ってくれたこと感謝します」


「「「感謝します」」」

今日も彼らは自分を崇める。洞窟の奥に身を隠し寝ているとそんな声が聞こえてきた。

毎日毎日、感謝されて貢ぎ物を置いていく。自分は少し可能性を弄ればいい。いい関係だと思う。しかしその日はいつもと違かった。司祭の老人がいつものように祈りの言葉を捧げ終わるとさらに口を開き言葉を続けた。

「しかし、神よ。この地は十分に緑豊かな場所になりました。我らの事は心配いりませぬ。我らは貴方様にいただいたこの地を発展させていきます。どうか我ら以外にもその素晴らしきお力を使い加護をお与えください」

どうやら、近くに村があるらしくそこの村に頼まれたそうだ。ここからでも十分に能力は届くが久しぶりに外に出るのも悪くない。洞窟の反対側から出ると久しぶりの陽の光に目を窄める。何百年振りだろうか。彼らは大丈夫だと言っていたししばらく世界を見て回るのも悪くないかもしれない。

「アー…あっあ…ううん。声の出し方ってこれで大丈夫だよな?」

怖がらせてはまずいと人型になる。ガッチリとした体型に褐色の肌の男性になると村まで歩く。自分の力のおかげとはいえ元々木はおろか草も生えていない場所だった。なんでこんなところに村なんて作るんだと思ったが中々に楽しめた。また帰ってくることにしよう。そんなことを考えながら村へ向かう。



「おい、いいのか?追っ払っちまってよ」


「構わねえよ。あんな化け物いたんじゃ赤ん坊が寝付けねえ。それに見ろ。わしらが必死に頑張ったからこそこうしてここは緑豊かな場所になった。化け物の気分取りも面倒だ。他の場所に行ってもらおう」


「んだな」



地竜アリグナクは人の悪意を知らない。それから彼は人の姿のまま村々を救ったが影では化け物呼ばわりされていた。そんな事も露知らずに彼は今日も村々を救う。それは今から500年前。初めて友と呼べるものが現れるまで…


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