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二十四匹目 脅威

「手古摺らせやがって…飛び蜥蜴が…いや、今は肉の塊か?」


『アベ…ン…大老…』

全身に矢が刺さり辺りに紫色の血の様なものが飛び散っている。

図体がでかくなっただけでむしろ有利になった。的が自ら大きくなってくれたのだ有り難い。

「言い残すことはねえか?聞きゃしねえけどな」

剥ぎ取り用のナイフで何度も首筋を叩きつけられる。首を取るつもりなのだろう。

肉が裂けていく感覚とともに意識は過去へと流れていく。

一度だって見たことない。笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も。



『なに…?』


『見た目が気持ち悪い』


『殺されたいの…』

同い年ぐらいの友人を作らせてやると言われ否応に連れてこられた廃墟になった都市に来ると明らかに同い年…いや、化け物がいた。見てるだけで足が震えてくる。

『 …おやつでも自慢しにきたの…?』


『わしの子じゃ。それと大老(エルダー)。今はそう呼ぶといい』


『人間に…情?裏切り者…』

無言で背中から生えている腕に掴まれギリギリと首を絞められる。

相変わらず話のわからない奴だ。

『絞め殺すと色々なモノ出てくるから丸呑みにしといたほうがいいぞ』


『こんな皺々の…お婆ちゃん食べても…不味い…』


『なっ、わしまだピチピチの万代じゃ!』


『どこが?』


『 も…そう思うよ…』


『まあ、なんじゃ。わしが美竜だということは置いておいてお主は今日からミストじゃ。あと、ここをいい加減に捨てぬか』

ここは が…ミストが滅した城塞都市。お腹が空いたからという理由でだ。

『ミスト、これからアベンの友人として頼むぞ』


『んー…よろしく…人間…』


『よろしく化け物』


『殺す…!』



もう一度…話したかったな…




「チッ。無駄に硬いし汚い。だがまあ…俺の倒した証拠だ」

硬いモノを叩く音から水気のあるびちゃびちゃとした不快な音に変わりやがて


バツン!


「はははは!魔弓の射者!リーフスタニア=トランストラネス=オルディナ!竜が首をとったり!」

今だに滴り落ちる血を不快に思いながらも自分が殺した喜びに打ち震える。

「そうだ。こんなものじゃ足りない。どうせ何人も死んだだろうし、このまま他のも殺しに行くか」

トドメを付けた矢を引き抜き他の場所へと向かおうとする。

閃光と共に爆音が鳴り響き熱風がこちらへと向かってくる。見れば自分から見て右の方の森が真っ赤に焼けていた。

「次は…あそこだな」

ミストの首を乱暴に投げ捨てると次なる獲物を求めオルディナは駆ける。




「右斜め上段からの袈裟斬り」


「くっ!」


「後方に下がり牽制の蹴りからの零距離からの魔法」


「…落ち着け、ゼノン!」

奴が手にしているのはまさしく自分が持つ魔剣グラム。ハリボテかと思われたが違う。魔剣と自身の魔力を同調して放った一撃はありとあらゆる物を切断する。だが、それを防げるとしたら…

「どうなっているんだ?くそ!」


「魔剣の能力を解放して攻撃」

それに先ほどから見えてるかのように全てをの攻撃も能力さえも真似してくる。

ありえない、自分は勇者だ。竜を殺すためにここにいるのに…

「…やはりか」


「1人でしたり顔して仲間を助けないのか?それともピエトロに負けたことでも思い出したか?」


『アベン!この性悪なガキめ!何度も言うておるだろう、人には言われたくないことの一つや二つあるのじゃ!』

またもや尻尾で叩かれる。

「…ゼノン。奴はお前の思考を読んでいるのではない」


「はあはぁ…なら、なんなんだ?一体これはどう言うことなんだ!」


「…それがわかれば楽な話だ」

今度はダンが斬り込んでくる。アベンの持つグラムはぐにゃぐにゃと形を変えダンの持つ武器へと変わる。

そしてやはり全く同じ動作で、資格外や不意の一撃ですら簡単に避けられ或いは相殺される。

『なんじゃお主。言うわりには強いではないか』


「あんたから見りゃ俺はいつまでも弱いまんまだよ。それともなんだ?珍しく疲れてると思ったが戦うか?」


『体は幼くとも心はもうなんか…あれじゃ、あれ』


「ボケたか」


『うるさいわい!』

余裕をかましている事にも余計に苛立ちを感じる。まるで今までの全てが無駄であったかのように。血の滲む努力もなんども潜り抜けた死線も…簡単に倒せるはずの白衣の少年は強敵にしか見えない。

「2人とも大丈夫ですか?今、回復魔法の方を…」


「…ゼノンの回復を頼む。俺は問題ない」


「…はい」

再び剣を構える。次こそは必ず殺さねば。自身の汚点を知っている人間をこれ以上増やしたくないのもあるが…何よりも不気味なのはアベンから感じるもの…歴戦の戦士や魔導師から感じる気迫はない。むしろ一般人…それよりも弱い感覚しかない。だが、

「そろそろ飽きてきた。さっさとその女寄越せよ。大老も今なら息吹一つで勘弁してくれるらしいからよ」

やはりと言うべきか自信と同じ太刀筋で攻撃を行ってくる。自分と戦ってる様だ。

戦闘中に…剣と剣がぶつかり合う最中、カルミアを指差して言う。能面のように張り付いたその表情…あの日自分見下した男に見えてくる…

しかし運がいいのか悪いのか後方にいた竜から声が発せられる。

『アベン!次はボルケノスのところじゃ!』


「わかった。すぐに行く」

あの日負けた男の様に…自身を眼中に捕らえていない。

しかし一瞬だがアベンの目が笑った気がした。

「………………だろ?剣闘鬼?」


「っ⁉︎」

発せられた言葉に一瞬動揺し、気を抜いてしまう。

そして眼だけは笑うと彼の持っていた剣は形を変えると腕に巻き付きまたもや違う武器に変化した。

蒸気突杭(スチームパイル)。よし、名前はそれにしよう」

避けようにも近距離まで接近され白衣の裾から植物のが生えてきて手足を絡め取られる。振り払おうにも動けなく完全に動きを封じられた。

そしてガントレットで殴るわけではなく腹部に押し当ててきて

「また会おう」


ズドンッ!

「ゴフッ!」

瞬間に強烈な勢いでガントレットから突き出された杭は腹部を容易に貫通しダンを後方へと吹き飛ばす。

あの夜戦ったアベンとは違う。一切容赦のない一撃はダンを簡単に死の淵まで追いやった。

『そんな物があるならどうしてさっさと使わぬのじゃ?』


「熱を扱うのはこいつらが苦手なんだよ」


「「ダン(さん)!」」

木をなぎ倒してダンが倒れる。腹部からは確かに血は流れているがこの程度の傷ならなんとか魔法で治せるだろうとフレシアが回復魔法をかけ始める。

「魔法で圧縮した蒸気の勢いで杭を発射する武器であり持ち運べる攻城兵器って名目で帝国の連中が作ったが…反動が強すぎるし蒸気が溜まるのが遅い、それに人間の使い捨てときた。まあ、俺には関係のない話だがな」

外れた肩を無理やりはめるとカルミアの元へ向かう。

「ッ⁉︎カルミア様こちらへ!」


「仲間の命と信仰対象どっちが大事だ?もちろん、仲間だよな?」


「くっ!」

ここで手を緩めれば確実にダンは死んでしまう。しかしカルミアも抵抗せずアベンに首を絞められている。元からこれを狙っていたのかもしれない。

「ア…ベン…さ…ん」


「よお、裏切り野郎。どうしてやろうか?」


『アベン、後にせぬか!』


「…だ、そうだ。後でたっぷりと嬲り殺してやるから待ってろ」

首を掴んだまま大老に向かって投げると大老もひょいと避けてしまい顔から地面に叩きつけられる。

「ちょっ、大老さん!」


『いや、流石にその大きさを受け止めるのは無理じゃ…すまんのう』


「鼻がー!」


「大老、場所は…いや、なんでもない。そいつのこと頼んだ」


『殺すでないぞ。一応勇者の仲間じゃ』


「ああ、殺しはしない」

そう言って再度炎の柱の立つ方へと歩いて行ってしまう。残されたカルミアは若干居心地は悪いがどうせすぐに終わる事だと勇者たちを見る。

「あの…」


『アベンが久しぶりに戻ってきたら女など連れて来おって…中々の上玉で中々に狂っておる』

ちらりとこちらを向く大老の顔は恐らく笑っているのだろう。

直ぐに勇者たちの方を向くとぽつりぽつりと言葉を繋げていく。

『最初いなくなった時は…やはり化け物に育てられるのが嫌になったと思ったが…戻って来てくれた。体がどうなっていようが、どんな汚名を着せられていようが…もう一度会えた。それだけで私は…いや、私たちは嬉しい』


「大老さん…」

こちらが本来の話し方なのか。その小さな体には似合わない威厳が見られる。

「でも…私は…」


『私たちからも言っておく。碌に人付き合いもしてこなかったのだろうから本人は人の心を見抜けていると思っていても三文芝居すら見破れない馬鹿者だ』


「酷いことも言いましたし」


『人間誰しも言う言葉だ。他人を見下し己を優位に立たせるのは種の特徴とも言える。それは万年前から変わらずにな』

言い終わると同時に空気が重くなる。見れば勇者一行の三人がこちらへ既に戦闘隊形になっていた。

「カルミア様!今助けます!もう少しの辛抱を!」


『ああやって誰からもちやほやされ蝶よ花よと育てられれば人を疑うことも知らぬか…呆れてモノも言えぬわ、戯け共が』


「アベンがどこに行ったが知らないがな!悪いが子供と言えどお前を殺させてもらう」


「……」


「私は!」

言葉を続ける前に尻尾で口を塞がれる。汚らわしいなどとフレシアが叫んでいるが案外もちもちしており触り心地が良い。

『今からわしが欠伸をするから耐えれば殺すなりなんなり好きにすればよい。もちろん攻撃して来ても構わんがな』


「精一杯の時間稼ぎか?第一欠伸で僕らが倒せるわけないだろ」


「…待てゼノン。あれを見よ」


「⁉︎そんな…嘘でしょ」

可愛らしく大きく口を開けた大老の口内に赤と黒の混ざった魔力の塊が生まれる。本来は属性と言う形で見えるはずの魔力がはっきりと視認できた。

『まあ、あれじゃ。聖女の全魔力を防御魔法に使えば片腕一本くらいで済むじゃろ』

その間にもどんどん溜まり地鳴りすら起き始めている。

勇者の伝説の本でも倒された邪竜の放った息吹は容易に山を三つ消しとばしその先の海を半分蒸発させたなどと書いてあったが嘘ではないらしい。魔法適性のないカルミアさえわかる。これはやばいと

『カルミア、しっかりわしの後ろにいるんじゃぞ?』


「ゼノンさん!ダン!私の後ろに!早く!!!!」


「くっ!…すまないフレシアさん。頼んだ」

攻撃を行う前に溜まってしまった。あの竜の細い首を切り落とせば簡単に終わっていたのに…悔やまれるが聖女の鉄壁の守りの前にはたかが息吹程度簡単に耐えれるだろう。

『ほれ、欠伸じゃ』


『聖護防壁』(ホーリーウォール)!!!!」

前方に幾重にも重なった魔法でできた盾が出現するとほぼ同時に大老から息吹が放たれる。しかしそれは言うほど大したことはなく第一門の『光の矢』程度の一撃…と思った。実際にそれが盾に当たった瞬間に…

視界は光によって何も見えなくなり盾が簡単に破壊されていく。

「全魔力、適用!!!『聖護防(ホーリーウォー)壁弐』(ルセカンド)はぁぁぁぁっ!」


「あわわわ…欠伸の意味知ってるんですか⁉︎」


『うむ。もちろんじゃ。気の抜けた一撃。故に欠伸じゃ。本気の1%出しておらん。わしはもっと凄いぞ』

全魔力を魔法に使用する最中聞こえてきた。まるで親しい友人と話すようなカルミアの声。思わず手を緩めそうになるが

「フレシアさん!僕の魔力も使ってくれ!」

肩に添えられた手からゼノンの暖かい魔力が伝わってくる。

そうだ私はカルミア様を救うんだ。あのアベンからも。そして竜たちからも。それにこれならなんとかなる!未だに光は収まらず目を瞑りたくなる。だが、一瞬でも気を抜けばみんな蒸発する。

理解できた。これは試練だ。主を信じればどんな攻撃も通すことはない。最強の盾。負けることなどあり得ないのだ。




『くっ…一体なんなんだぁお前?』

それは亀のように四足歩行ではあるが活火山のように溶岩を垂らす山を背負った竜。

オルディナからすれば動く山とも言えるがデカイだけの的にも思える。

溶岩息吹(マグマブレス)

開けられた口から膨大な熱とともにドロドロに溶けた岩が放たれる。無論その前に避けたが。こちらは身軽であるがあっちは逆に遅い。こいつも楽に殺せるだろう。

「お前を霧の竜とか言ってた化け物女見たく下等種共の皮は被らないのか?」


『答える義理はないぃ!』

自分の乗っていた木を焼き払うが既に遅い。ノロマな竜の後方に降り立つ時には既に攻撃は終わっている。

『ぐうぅっ⁉︎』


「硬そうな見た目してるわりには随分と柔らかいみたいだな。亀野郎」

首の裏に何本もの矢が刺さっている。ミストを殺したのと同じ矢は、かつて裏オークション会場を突き止めゼノン達と乗り込んだ時に押収したものの一つだ。

『大百足の矢…よもやこんなところで出会うとはぁ…』


「どうやら脳みその方はなんとか体の大きさと比例してるらしいな。だが、もう意味もない」

件の大百足の矢に魔力を流す。するとまるで生きてるかの様にぐねぐねと不気味に動き出し矢の先が二股に分かれ、まるで百足の顔の様になる。魔力を吸って体内を食い荒らし穿つ矢。それが本来の能力だ。

『呆れたことだぁ。それは本来人の手に収まるものではないのに…』


「遺言はそれでいいんだな?」


『お主は竜を…この森を舐めすぎだぁ」


「ああ、こんな楽な狩場。俺の住んでいた森にもなかったよ」

二体目だとほくそ笑み矢を放つ。しかしその矢はボルケノスを貫通することなく射線上に現れた者に止められる。いや、止めると言うよりは代わりに射抜かれた者に。

「痛えし、動くしなんだこの矢?」


『アベン、取り敢えず抜けぇ!』

体を貫通し体内を掻き毟られ食われているにも関わらずアベンの表情も声音も変わらない。

「貴様っ‼︎」


「ああ、エルフ…名前知らないがもう終わっていグフっ。少し待ってくれ、矢と一緒に色々とはみ出した」


「……」


「ふう、危ない危ない。確かにここ数日便秘だが何も肛門からじゃなく直接出すわけにもいかないしな」


「何者だお前。なぜ生きている。それは本来撃たれれば確実に殺せる矢。なのにお前は…」


「腹の中混ぜられるのは慣れてるから問題ないな」

小瓶から緑色のスライムが出てきてアベンの腹に張り付くと傷が治っていく。

こいつの相手をしているほど暇ないと判断し次の矢を構える。容赦などしない。下等種が何匹死のうが関係ない。そこいらに転がってるノロマな亀にやられた連中にもさっさとトドメを付けて次の獲物を探さねば。

「この距離ならお前の心臓を撃ち抜ける。それともあの時みたく惨めに貼り付けにして竜共を目の前で殺してやろうか?そこの連中ごとな」


「なんだ、仲間だろ?そいつら」


「仲間?馬鹿言うかよ。俺が認めてるのはあの三人だけさ。他はただの下等種。もちろん、あの女もだ。ノルド如きが俺を見下しやがってよ。本当に腹が立つ」

エルフと人間の関係は良好。そんな話も聞いたことあるが中にはこういう連中もいるのか。

どうした事かと行動を移すより先に


ドカァァァァッン


「なんだ⁉︎」


『大老の…息吹だぁ』


「とんでもねえな」

森の中心…勇者たちと大老のいる辺りで極大とも言える爆発が起きる。

『アベン、こっち来い。飛ばされっどぉ』


「すまないボルケノス助かった」


「待て!ぐっ!」

細い木をなぎ倒しながら暴風が起きる。咄嗟にボルケノスに捕まったアベンはともかくオルディナは吹き飛ばされてしまう。

「逃すかよ!このっ!」

矢を放つが暴風の中真っ直ぐ飛ぶはずもなくあらぬ方向へと矢が逸れる。

背中を強打しつつもなんとか立ち前方を向く。

「ボルケノス。中央に転がってる連中回収して連れてっといてくれ。転移魔法で街に戻すらしい」


『わかったぁ。アベン気を付けろよ』

既にアベンは眼前にいた。避けることもできなく顔面に一撃、蹴りを受けてしまう。暴風のせいで余計にダメージも大きく後方に吹き飛ばされる。

「下等種風情がァァァァ!!!」


「大事な大事な御尊顔に傷を付けてしまったの悪いと思ってるよ。いや、本当にさ」

白衣の腕に紐が巻き付いていく。

「さて、ゼラニウム。頑張ろうか」

縄鏢を構える男を睨みつけながら背中の矢筒から矢を取り出す。

遠距離と中距離。どちらが有利かなどは考えるまでもない。

「そのお粗末な脳にどちらが上か教えてやるよ、下等種」

さっさと殺し竜狩りの続きをしよう。





「リム!おい、起きろ!」


「すまねえアニキ…」


『あら、もう終わりかしら?残念ね』

ロックとリム幾人かの冒険者たちの戦っていたのは白い美しい竜。しかし透き通るような羽は、陽光を受け輝く鱗は天から天使が迎えに来たようにも見えた。

『あとは貴方達2人…いえ、1人ね。もうそっちのは死にかけてるし』


「くそっ!おい、しっかりしろ!今聖女のとこに!」


「アニキ…俺は馬鹿だが自分の蝋燭の長さくらいは…ガハッ…わかんぜ」

リムの腹部からはありえないほどの血が流れている。もう助からないとわかる。だが認められない。ずっと共に戦ってきたのに…

「置いていけるかよ!」


『そうよ、まだ終わってないのだから』


「竜が魔法なんて卑怯だろうが!」


『あら?いいじゃない別に』

手すら翳さずにロックとリムの周りに魔法が…魔法陣が出来る。

『ねえ、私も本当は殺すの好きじゃないのよ?せっかくアベンも帰ってきたのだから静かに過ごしたいの。なのに…あーあ…私もアベンと話したいのにな』

氷で出来た無数の槍が自分達の周りに浮かぶ。第五門の『氷刃の槍』だろう。確かに人間にも使いこなし似たことが出来るものもいる。しかし規模が明らかに違いすぎる。

『ごめんなさいね』

無数の槍が自分を、リムを貫く。

「ゴフッ…来るんじゃなかっ…た…」

それはロックとリムの運命の分かれ道だった。

死んだことを確認すると他に残ってる冒険者の元へと向かおうとする。

ドクン

『あら?まだ生きてる子がいるのかしら?ん…アベン?』


「ガハッ…なんだこりゃ?」


「あれ、俺…生きてる?」


『あら?アベン?でも、さっき殺した子達よね?あら?あら?どうなってるのかしら?』

確実に死んだ。それはホワイトもそしてロックとリムの2人も理解した。が、確かに今生きている。傷も塞がっていく。

『うーん、貴方達…匂いがアベンなのにアベンじゃないのよね?どういうことな?』


「い、いや…俺らが聞きたい…だって今あんたの魔法で全身刺されたのによ!」


「俺なんか死んだ婆ちゃんが呼んでたぜ。傷も治ってそれどころか全快状態だ」


「おい、もしかしてこれのお陰じゃねえか?」

懐からロックが取り出したのは一本の小瓶。見覚えのあるそれは。


『オリジナルポーションですので、まあ気休め程度に…死にかけた時に是非飲んでください。体に害は無いので』

そう言って渡された真っ黒なポーション。御守り代わりに懐に入れておいたがどうやら先ほどの攻撃で割れて中身が傷口から入ってきたらしい。

『あら?それよそれ。それからアベンと同じ匂いがするわ』

顔を近づけてきて割れた小瓶の匂いを嗅ぐホワイト。とてもじゃないが恐ろしさしか感じない。

「これはアベンから貰ったポーションだ。なるほど、死にかけてたのに回復するとは…とんでもねえ代物だ」


「これ、相当高く売れましたよね。今度もう一本もらっときます?アベンから」


『あら?なによ、もしかしてアベンのお友達?悪い事したわね』


「あ、いや俺らは…」


「一回だけ一緒に酒を飲んだだけで…」

急に銭湯意欲が無くなったようだ。確かにアベンが竜と組んでいると聞いていたが…まさか友人と勘違いされるとは…

『そういう事は先に言いなさいよ。全く…何人か殺しちゃったじゃない』


「あ、いやこいつらはアベン…君を馬鹿にしてた奴らなのでその…いいんじゃないですか?」

無言でリムも首を上下に振っている。

『そう?ならいいかしらね。ごめんね痛かったでしょ?』


「…どうなってんすか?」


「わからん。だが、無闇矢鱈に命に散らすくらいなら生き延びるぞ」


「うっす」


『ああ、そうだわ。さっきバグから連絡が来てね貴方達を街に転送するらしいのよ。中央はわかるかしら?先に行っててもらえる?』


「あっ、えっと…場所は…」

どこですか?の言葉は爆音に掻き消された。後方を見るととてつもない魔力を感じる。

『あら目印があるわね。あそこよ』


「「…あっはい」」


『これからもアベンと仲良くしてあげてね?』

そう言い残し白竜は森の奥へと消えていく。

「「助かった〜」」


「アニキ、俺ら女神様に好かれてますね!」


「あ、ああ。流石に今回はマジで死んだと思ったぜ…よし、中央に向かうぞ。多分あの白竜の言葉通りなら俺らはころされずに街に帰れるはずだ」


「信じてもいいんすかね?こんだけ殺して…」


「アイツには俺らを殺す理由があるのにわざわざ逃した。なら信じるしかねえだろ。それにこいつらは…」

倒れている男達を見る。あまりいい噂を聞かない連中で、最近もシクリィとアンナ2人の冒険者をデッドファングの餌食にしようとしたなんて聞いた。

「…報いだろうよ。ほら、行くぞ」


「そっすね…」

この後2人は世界に数えるしかいない白金ランクの冒険者になる。だが、それはまた違う話であり関係のない話だが、同時に二つ名の様に「半覚醒者」とも呼ばれる様になる。


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