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二十三匹目 苔頭の少年

どうもー握州でーす。

あれですよあれ。9月忙しくて…うん…

お前みたいなクソ野郎でも、暇つぶしに丁度いいんだからさっさと出せって思いますよね。はい。気を付けます。では、生暖かい目で今回もどうぞ〜

その一撃は確実にその竜を殺すのに十分なものだった。邪魔さえされなければ。

すんでのところで剣を弾いたのは体の節々が液状化している女性。

見覚えのある修道服を着ているが顔は…ほとんど溶けている為本人かどうかはわからない。

ソレはグレイの体を強引に掴んで後方へと投げると自分たちと竜の間に降り立つ。

「大だーサま…僕がセイじょノ魔ほうヲ解除スルよ。そうメイ令されタからね」


『お主なんじゃ…?森にいたかそんなドロドロ生物』


「フレシアさん…?」


「そうだけドちガウよ。本もののセイで上まク擬タイ出キないかラね」

ちぐはぐな喋り方をするその生物はおそらく笑っているのだろう。顔のあたりの粘性の液体を垂らしながら拾ってきたのか何処からか取り出した木の棒を地面に刺す。

『聖リィチュアリィ』(ホー界サンクう域)

聞き取れない音を発すると先ほど同様に辺りに魔力が溢れ今度は竜に流れ込んでいく。

「馬鹿な!まさかそれは『聖界領域』それはこの世界でフレシアさん以外使えない!なんでお前が…まさかフレシアさんを!」


「……」


「アー…あー。ああ、やっと本調子だよ。流石に僕といえど聖女の魔法射程内じゃ十分に発揮できないからね」

返答の代わりにその生物に変化が起こる。それは声や容姿はともかく魔力すらも全く一緒になっていた。

『ますます分からん。本当になんじゃあ?お主』


『大老様、詮索の前に御身体の確認を。私の能力等戻っています。大老様はどうでしょうか?』


『ん?おお、飛べる。土は冷やっこくて腹壊してしまうから大変だったのじゃ』

ふわりと大老が空へと浮かぶ。同時に辺りから尋常じゃない程の魔力や熱量。雷の柱のような物さえ建っている場所もある。

『ぐっ…何者かわからないが…助かった』


「感謝の言葉なんていらないよ。灰被りの竜が生きていたら助けて死んでたら放っておけと命令されからね。自分の運を誇るといいさ。『回復』(ヒール)それに年長者の意見は聞くものさ。さっさと飛びなよ。巻き込まれるよ?」


『…すまない』

グレイが一言漏らすと飛び上がり空へと消えていく。じゃなのが一人減った。


「…竜の傷を癒し、竜に力を与える…裏切ったかフレシア」


「ん?ああ、ダン=バネシアか。君は僕に余り好かれてないようだね。一方で勇者に対しては好感度が限界を超えている様だね。カルミア君みたいだ」

そのフレシアと話し方以外全く同じ生物は先程のドロドロした物から変化したとなると未知数の能力を持っている。何が条件かそれとも精神汚染や催眠魔法。それに寄生等考えられることは多数ある。

「さて、大老様。それにバグマザー殿。まずはご主人が世話になっていたことを遅れながら感謝するよ」


『うむ。なんだかわからぬがくるしゅうない』


『ええと…どういたしまして?』


「ご主人は口が悪く、粗暴も悪く、性格も悪く、挙句に犯罪者で屑で僕らの扱いも女性の扱いも雑だ。けれども感謝は一応しているらしい。この森で過ごした日々はご主人にとってかけがえのないものさ。後で言ってあげれば案外赤面でもするかもね?」

まるで理解出来ない。自分達の仲間である聖女と同じ姿形のソレが現れた瞬間に優勢だと思われていた自分達が同じ状態に…いや、劣勢になっている。

人の断末魔や肉を裂く音。或いは破裂したような音も…

「ああ、忘れていたよ。大老様達にも君らにも自己紹介を忘れていたね」

礼儀正しく一礼すると旅の道中何度か見た眩しいほどの笑顔でソレは正体を言い表す。

「僕は4号。主人アベンの半身で擬態を得意とするスライムさ。いつもいつもこういう役回り、楽しいからいいんだけどね」

一瞬何を言ってるのかわからなかった。元から口数の少ないダンは兎も角、敵である竜2匹さえポカンと口を開けている。

スライム?今スライムと言ったか?あのスライムの事であっているよな?

精神を病んでるのか?自身をスライムと言うなど。

『わしらが森の中に籠ってるうちに随分と凄くてやばいのが生まれてるのう…』


『落ち着いてください大老様。動揺するのはわかりますが言葉を覚えたての子竜の様になっています』


「……」


「はは!スライムか!あの薬師と名乗る底辺に相応しいな!余程自分に自信がないらしい!」

自身が剣を構えると呼応するの様にダンも剣先をフレシアに向ける。

擬態とは敵を欺くものだ。見た目だけどうにかした偽物など…どうとでもなる。

「行くぞ!」


「…応」


『スライムじゃ相手出来ぬだろう。わしが相手する。バグマザーは取り敢えず其奴を見張っておけ』


『かしこまりました』

ニコニコと笑顔を絶やさずにスライムは傍観している。まるで初めからそうなることがわかっていたかの様に。

「さあ、ご主人。僕と1は気が乗らないけどたっぷりと楽しんでくれたまえよ!」

戦いは本格的な始まりを告げる。




「はは…弱い弱い…」


「なんだこの女!攻撃が一切通用しねえ!」

数刻前と同じ魔法が発動し竜達の力が戻り目の前の女も本調子ということか。

剣で切ろうが、矢で射ようが、魔法で攻撃しようが全て体を貫通していく。

「無理だよ…ミストは霧…あなた達は霧を殺せる?」


「この!」

一定範囲を爆発させる魔法道具を使ってみるが結果は見えている。爆炎の中だろうと薄ら笑いを浮かべたままソレはその場にいる。

「大丈夫…大丈夫…みんな仲良く…なれるよ」


「い、息が…ガァッ!」


「この野郎!離しやがれ!」

理解が全くできない。首を抑えたと思ったら呼吸が出来なくなった。いや、胸のあたりがなんとなくふくらんでいくのがわかあ

「わけわかんねえよ!どうなってんだよ」


「ミストを吸ったら…内側から…パーン」


「逃げろ!勝つ負けるじゃねえ!一方的に殺される!」

突如人が破裂したり発狂したと思ったら先ほどの聖女の時と同じように味方が襲ってきたりと理解が追いつかない。

いや、この女は自身を霧と言っていた。ならばこの森の主人は…

「あの女だろ?ここで一番強いのは。霧の森なんて名前に霧を操る奴なんてよ」


「オルディナさん!」


「ったくよ〜。見た目に惑わされて手抜いてたんじゃねえだろうな?」


「い、いや…それは…」

嘆息しているオルディナを見るとなんだか無性に腹が立ってくる…が実際に一切のダメージを与えられていないのも事実だ。

その場で戦っていたものが憤りを感じているとオルディナが数本の矢を取り出す。

「いいか、見とけよ?」


「はは…無駄だって…耳長になっても…馬鹿だね?」

黒い鏃に赤い血管の様な模様か時折浮かび上がるその矢からは強い魔力を感じる。

「コイツを食らってからもう一度大口叩きやがれ飛び蜥蜴」

放たれた矢は一直線にその女へと吸い込まれていく。

直感的に察したのかギリギリで避けられてしまうが頰にかすり傷が出来ている。

「傷を付けた!凄えやオルディナさん!」


「タイミング…間違えた?」

今度は同時に5本の矢を射つ。先ほどの矢を警戒してか避けられてしまうが狙い通りだとオルディナはほくそ笑む。

「あばよ。下等生物」

放った矢はミストの眼球を貫き背後の木に縫い付けてしまう。

「おいおいおい!やっぱ凄えよ勇者のパーティー!俺らの敵わなかった野郎を秒で殺しやがった!」


「あの程度に遅れを取ってるようじゃ務まらねえよ。ほら、森の中央へ行くぞ」


「やべえよかっこよすぎるだろ!」


「俺一生オルディナさんに付いて行くわ」


「わかったからさっさとしろ」

一瞬の気の緩みが死へと繋がる。その言葉を忘れてしまっていた。

超高速で自身の横をなにかが横切り一人の冒険者が貫かれる。

「ゴフッ…あ、あれ…なんだこれ…?」


「ッ⁉︎全員気を抜くな!避けろ!」

咄嗟に避けた場所には自分の隣を歩いていた者の腹部を貫いた黒い塊…手が叩きつけられていた。

「………ない…」


「ただの女だと思ってたが…ガワだけ良くても中身はそうとも限らないな…」


「逃さない…」

縫い付けられた女の背中からは真っ黒な腕が…それだけじゃない体が膨らんでいきそこに少女の面影など一切ない異形の竜がいた。

『死んで…』


「「ギャアァァァァ!竜をはだー!」」


『避けるな…耳長…』


「はっ!図体がでかくなっただけで随分な物言いだな飛び蜥蜴風情が!」

オルディナはひらりひらりと簡単に避けていくが普通の冒険者はそうはいかない。

一人、また一人と肉塊になっていく。

「オ、オルディナさん!助けてくれ!あの矢だ、あの矢を射って早くあいつを…」


「黙れ下等種。話しかけるな」


『エルフなんて…みんなそんな連中だよ…』

泣き叫ぼうが許しを請をおうが関係ない。

久しく感じてなかった喜びが…人を殺す楽しみが…

『アベン…褒めてくれるかな…たっくさん…沢山…』

にちゃあと音が聞こえてきそうだった。オルディナも一瞬その得体の知れない生物に対し生理的嫌悪感と恐怖を覚えた。

『殺せたよ…』

笑う異形の竜は文字通り血の池の上で狩りを楽しむかのように言葉を続ける。

『さっさと…死んで?耳長…』


「てめえが死にやがれクソ蜥蜴!」

さっさと殺してゼノン達に合流するとしよう。

俺は魔弓の射者。射った矢は必ず当たる。簡単だいつも通り…

「射殺すだけだ…」

1人と1匹もまた殺し合いを始める。




「はあっ…はあっ…」


『こりゃあ魂消た。本当に勇者の一族か?よっぽどそっちの方が強いわい』


「…」

殺そうと思えばいつでも殺せるとでも言えばよいのか。軽く尻尾で薙ぎ払われるだけで自身の剣より早く鋭い攻撃は一撃でも食らえば容易に戦闘不能になるだろう。

「なるほど。便利なものだね。僕も竜の擬態してみようかな?」


『でしたら私などはどうでしょうか?索敵に向いる能力です』


「索敵かい?うちにも小煩くて逃げ足の速いのがいるから遠慮しておくよ」


「舐めやがって…」


「…下がっていろゼノン」

一歩前にダンが進み出る。なるほどそうかと大老は内心に思った。

やはりこっちが本命か

「…ふんっ!」

怒涛の剣撃。人間なら簡単に細切れにされているだろう。

『ぬははは。そうでなくてはつまらぬからのう』


「……」


「ダン…お、俺は…」


「…お前が俺より弱いのは事実だ。無駄に時間を使わせる必要もなく無駄に話す時間もない」


『あの国も駄目だのう。一度滅んだらどうじゃ?ちとはマシになるかの?』


『所詮は堕落した勇者共の末裔。大老様、私が落とします』


『構わぬわ。バルロの血を継ぐ勇者。今の主はわしが手を下す必要もない。殺す価値など無いわ』

ダンの攻撃を軽くかわし再度こちらへと言葉をかけてくる。

無意味なことだと。

『安心せい、殺しはせぬ。魔王などと吐かしてる馬鹿を殺せるのはお主だけじゃ』

笑うその小さい竜は余計にゼノンを苛立たせる。

見下し、蔑む。勇者に負けた種族のくせに。人間以下の生物のくせに。

「ゼノンさん!大丈夫ですか?」


「フレシア…さん?」

ダンが竜から距離を取り即座にフレシアの喉元に剣を突き立てる。

フレシアは何が起こったかさっぱりわからない様子だ。突如仲間に剣を向けられればそうなるだろう。

「…本物か?」


「ダン、いくらなんでも失礼じゃないですか?」


「本当だよダン。私を信じて?ね?」

竜の後方から意地の悪い笑みを浮かべたもう1人のフレシアがこちらへと言葉を発する。

「私が2人?まさかアベン⁉︎」


「外れさ。僕はご主人じゃない。いや、違うな。ご主人であってご主人じゃない。また、君であって君じゃない。ねえ?カルミア君?」


「よーちゃん…」

フレシアは全く理解出来ていないだろうが読めてきた。要するに竜側にいるフレシアは同じ力を使える偽物。確か古代魔法に回数制限はあるが全く同じ能力を使えるようになる魔法があった筈だ。それの応用かなにかなのか?

「酷い話だよな。俺は単に逃げてただけなのによ。しつこく追ってくるから…顔を思い出せないが悪いことしたな冒険者諸々」


「ッ‼︎アベン…!」


「勇者一行…ああ、エルフいないな。亜人差別とかはしないが俺アイツ嫌いだ。どうでもいいことだけどな」


『…どこで育て方を間違ったかのう』


「安心しろよ。俺はあんたらから平等さ、巻き込んだあの2人からは…話が逸れた。兎に角、大老に誓って無意味な殺生はしてねえよ」

気付くとアベンがいた。偽物のフレシアの隣に当たり前のように。その男はいた。

「よお、カルミア。お前の介錯しにきたぜ。なるべく無残に惨たらしく殺してやるよ」


「はい!お願いしますアベンさん!あっ…」

つい本音が出てしまった。

「おのれアベン!カルミア様になんてことを!」


「フレシアさん、カルミアさん下がってここは僕とダンが!」


「よかったじゃないか。汚ねえ中身が飛び出てもお前を仲間だと信じてくれる連中でよ」


「…ゼノン。いい、この程度の相手俺が」


「お前の相手は手が折れる。ああ、物理的には跳ね飛ぶってのが正解か?だからすまんな。言わせてもらう。8年前。闘技場最強と謳われた剣闘士ダン=バネシア。彼がなぜ闘技場から消えたか?」


「…何が言いたい」


「なんだ急に?」


「ある男が私用でバルバトスに訪れていた。無名で無能な彼の名は覚えているか?剣闘鬼?」


「おい、お前!過去がどうとか関係ない!俺は今のダンの仲間だ!訳のわからないことを…」


「酒の勢いか?自分の実力に自惚れてか?無名で無能な男に決闘を申し込み返り討ちにあったよな?」


「…やめろ」


「その後。国王に呼び出された。自ら国に対し弱味を作るなんてな?マニア向けの娼館にでも言ったらどうだ?」


「…黙れ!」


「お前が負けた者の名はピエトロ。ピエトロ=アウナレス。王国騎士団副団長。血の覚醒者。今の奴に負けたならともかくお前は無名で無能な頃のピエトロに負けた。プライドなんてあるのか知らないがな、言わせてもらうぜ?」

ああ、アベンさんだ。相手の嫌がかることをする。でもあの人は嗤っているわけではない。単に思ったことを疑問に思ったことを調べただけなのだから。どんな小物だろうと目をつけられたら最後。2号と4号が必ず見つけてくる。

「貴方程度は話になりませんよ。井の中の蛙、大海を知らず。次はもっと強くなってから戦いましょうね?一応言っとくが口下手なアイツの事だから…多分頑張れって事だよ。うん。きっとそうだ」


「黙れ!」

剣を構え吼える。酔っていたから、闘技場で闘った後だから周りから言われた言葉は全て侮辱にしか聞こえなかった。

「ああ、なんて弱い奴なんだ!大海を知らぬ蛙は!無様にも負けた君は!精一杯の言い訳をしましたね!私は一瞬でも思ってしまったよ!この国のレベルはこの程度かってね」

気付くとそこにはダンとカルミアとアベン以外は見知らぬ男性が1人。長身で細身の軽鎧を着た口元を露出した道化師の仮面。

『これ、いい加減にせぬか!』


「「ごふっ!」」

尻尾で頭部を強打されピエロ仮面の男とアベンが地面に顔を強打する。

『のう、バグマザー。完全に育て方間違えたのう。やっぱ霧の中より空中都市とか新しく村でも作って陽の下で暮らされた方が良かったのう。こんなに陰湿に育って…髪に苔まで生えておるしのう…』


「苔じゃねえって言ってんだろ。俺はあんたらと違って弱いんだから俺なりの戦い方してんだよ」


『人の心の傷ネチネチほじくるでないわ。戯けが』


「全くだよ。戦う気がないなら僕が代わるっていつも言ってるだろ?」


「緊張感のない連中め…お前らは今から死ぬんだぞ!」

劇でもしてるかのように次々と言葉を続けていく自分達の敵を見て憐れみが浮かんでくる。ダンに任せてばかりいられない。自分も戦わねば。

「死ぬ?今から死ぬのは裏切り者の奴隷女だけだ。お前らに用はない。大老に遊んでてもらえ」

白衣の裾から黒い粘性の液体が溢れ出てくる。

固有技能?それとも魔法?カルミアの言っていた「よーちゃん」と呼ばれるフレシアそっくりの古代魔法を使う者がいるとなるとアベンも似たような魔法を使ってくる可能性もある。

『面倒くさがりも大概にせい。殺さずに戦闘不能にするなど骨が折れるわ』


「ホワイトに集団転移任せりゃいいだけだ。カルミアだけ攫ったら後は厳しいお説教でもしてやれよ。俺みたいな野郎は失禁でもして気絶するくらいにな」


『アベン。私が伝えておきますので貴方はミストの所へ…彼女は…』


「死んだか?煩い女が減って丁度いい。後はカルミアを殺せば静かになる」

黒い粘性の液体は彼の手に集まっていき武器へと姿を変える。

「縄鏢?そんな得物でまともに戦えると思ってるのか?」


「勇者なんかとまともに戦う訳ないだろ?狙いはそっちだ」

投擲された刃は一直線にカルミアへと向かう。それを合図にダンとゼノンは剣を構えアベンに斬りかかる。

『魔法盾』(マジックシールド)!」


「はあっ!」


「…」

剣は捉えた。獲物を、斬るべき相手を。

「ゴフッ…」


「アベン、お前仲間を!」


「肉盾使って何が悪い。ああ、それとも俺の方が良かったか?」

アベンが投擲した縄鏢は難なく魔法で作られた盾により弾かれた。

横にいた仲間をなんの躊躇もなく盾にした。二人とも確かに斬った。その謎の能力を持つ人物を。

「ご主人酷いじゃないか!半身を肉盾だなんて言い方!僕らは唯一無二であり君自身でもあるのに!」


「くそっ化け物かよ!グラム、魔力を解放しろ」

距離を取ると同時に魔剣に眩いほどの光が灯る。思っても見れば元からドロドロした者からフレシア、謎の人物と変わっていったのだからあの程度の傷大したことないのだろう。

「お前が俺自身なら同じ肉の塊だ。肉壁となんら変わりない。もういい4号。後は俺がやる」


「まったく…ああ、カルミア君。君のことはコピーしてないから名残惜しいが…死ぬ前にサヨナラを言わせてもらおうかな」

笑顔で手を振ると見覚えのある藍色のスライムに変化していく。

フレシアに勇者とそのツレ。アベンの所には簡単には行けそうにない。

「行くぞグラム!天を滅し、地を裂く!我が怒りを喰らいて呼び覚ませ!界断剣!」


「何あれ」


『勇者はやっぱり必殺技のセリフがかっこいいのう。何度か見かけたがどいつもこいつもよう考えつくわい。お主もなんかないのか?呪文とか、必殺技とか』


「ねえよ耄碌」


『なんじゃとこの苔頭が!わしはお主をそんな風に育てた覚えないぞ!』


「ふざけるのもいい加減にしろ!」

魔力により剣撃を飛ばす。王国にも剣撃を飛ばす能力を持つ者がいるがあれと違う。こんなものは単に剣を降っただけだ。空間ごと削り取るだけだ界断剣は。

『今のわし脱皮したての蜥蜴よりやっこいんじゃ!お主どうにかせい!』


「うるせえ。俺だってあんなの当たれば綺麗に中身が見えちまうよ」


「本当に緊張感のない連中ですね。もう終わりのようですが…」

フレシアがカルミアの目を覆い隠す。せめて惨めに言い争っている屑どもが1秒でも早く視界から消えるように。

「チェックメイトだ」

直撃し辺りを空間ごと斬り刻む。拍子抜けするほど弱い相手だ。後は四方に散った竜を殺せば終わりだ。

「おい、クソババア。お前俺より強いくせして俺を盾にするたぁどんな了見だ」


『その口縫い合わせてやるわい。それに大丈夫じゃ、わしはお主なら出来ると信じておったぞ。うむうむ。成長したのう』

土煙の中から声が聞こえてくる。あり得ない。あり得るはずがない。いくら一端の能力と言えど人が元に食らって生きてるはずがない。

「大老、あんたの言う通り、陰湿な卑怯者に俺はなった。まあ、安心してくれよ。あんたらのせいじゃない。それだけは言っておく」

土煙の中アベンが剣を薙ぎ払うと辺りの木々が騒めき落ち葉や小石が集まっていきアベンの前で吸い込まれ消えていく。

「痛い目見たくなけりゃカルミアを渡してもらおうか?勇者一行」

その手には自分と同じ魔剣が握られていた。

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