二十一匹目 最低な貴方へ
どうも握州です。頑張って夏だしたくさん投稿できるかなって思ってたんですけどダメでした…ちょっとリアルでやばいことがあったのですよ…知るかさっさと続き書けって思ってくださる方、別に待ってないけど投稿されてるなら読んでやるよって方、あ、なんかあんじゃんって目を通してくれる方。いつもありがとうございます。ではでは生暖かい目でごゆっくり読んでいってくださいませ
「アベン…さん…」
「そんな殺気を向けないでくれ。怖くて漏らしちまう」
いつものように。なんら変わりなく。少年はふざけているのか真面目なのか言葉を発している。
私に気づいていない…?いや、もうどうでもいいだけか。他の人と同様に殺す対象なだけで。
「お前みたいなやつのせいで薬学魔法士や薬を扱うものが下に見られるんだ!」
「それは関係ないだろう。それに俺らを下に見んのは魔法学が発展した国の人間だ。そこの聖女とかな。魔法の恩恵等が得られない田舎に行ってみろ。金を貢がれるぞ?」
「…アベン。カルミア様に謝ってください。そうすればここでは見逃します。ですが…」
空間収納の魔法か?フレシアの手に杖が握られ魔力が高まっていく。
シクリィもアンナもいつでも戦えるのだろう。
「邪神崇拝の連中の頭なだけはあるな。気に食わないのは消すのか。そうやって他の宗教の司祭やらも殺して邪神崇拝が世界で一番信じられてる宗教になったのか?」
有無を言わずに魔法が放たれる。
手を見せない為か2号を使わずに体術だけで避けるがその先にはシクリィとアンナが待ち構えている
「麻痺瓶!」
「『蒸気爆弾』」
ポンッ‼︎
「こんな街中で食事中の方々に申し訳ないと思わないのか?」
投げられた瓶の液体を被ると動けなくなり次いで魔法による攻撃で内側から爆発が起きアベンの前面が吹き飛んだ。が、
「⁉︎どうなっているのですか!」
「全く、どれだけお前らは俺の内臓が好きなんだよ」
空いた穴からは色々な固形物が…それでも尚、アベンは死んでいない。いや、自分の知っているアベンなのかと思う。確かにどう見ても致命傷なのも1号が治してきた。だが、これは痛みに鈍いだとかの問題ではない。
「うっ…ゴボォエァ…」
周りにはもちろん人もいる。平和な街にいきなり前面が吹き飛んだ人間もいれば吐きたくなるだろう。びちゃびちゃと其処彼処から音が聞こえてくる。
貰いゲロしそうだ…
「さて、君がいますべき事は僕を殺す事より道行く人々の介抱じゃないかい?聖女君。まあ、これもそれも」
スッと手が傷口に触れると何事もなかったかのように全てが元に戻る。
「全部嘘だけどな」
「幻術⁉︎」
「そんな大層なもん使えてりゃ俺は楽に暮らせんだけどな。まあ、いいや」
彼自体も不気味だがそれよりも先程から一切動かずに棒立ちしているもう一人。
ゆっくりと顔を上げたソレは…
「ぎゅるるる…」
その不気味な眼光も開けられた口から広がる異臭も何もかも不快で目を逸らしたくなる。
「落ち着け。こんなところで暴れられたら俺が困る」
「カ……ミ……ロス…」
「ひっ!」
虚ろな眼光の少年はじっとこちらを見てくる。間違いなく自分を狙って…
「大老からの伝言だ『人間如き我が息吹で消し炭にしてくれるわ』だそうだ。まあ、1000年前みたく有能な勇者様でもいれば救われるかもな」
あからさまに街の門の方角を見ると彼の周りが霧で包まれていき…晴れるとそこには誰もいなくなっている。
ただ、彼らの残していった精神的苦痛等は未だ残っており苦悶の声をあげるものも多い。
「…カルミア様。あまり言いたくはないのですが、もし隠し事などありましたら包み隠さずお話しください」
「……」
街が不穏な空気で包まれる。
とりあえずはゼノンに報告をしないと門へ向かおうとすると視界の片隅にあるものが映り込む。
シクリィとアンナ。二人の男女はまるでまだそこにいるかの様にじっとアベンと謎の少年の消えた場所を凝視していた。
『〜♪』
不恰好な鼻歌が森に響く。それはかつて人間が歌っていたもの。自分自身を屠ったとされる英雄を讃える歌だ。もちろん一部分しか知らなく延々とその英雄の名と自分の名を交互に繰り返すだけ。
大老はそれを楽しげに歌いながら森の奥へ向かう。それは自分の寝床であり昼寝に最適の場所。ただ今日は酒樽を小さな手で持ちいつも以上に上機嫌にその場に丸くなる。
「5♪1¥・1=2-」
『……』
竜語で言葉を発しても返事が返ってこない。無視してるなと酒樽に入った樹の根元に流す。
勢いよく樹が吸い出していくのを楽しげにみていると
『寝起きの者に酒を飲ますな。それに我は竜であって竜でない。故に竜語ではなく人間の言葉にせよ』
『無視しとおいて随分な物言いじゃのう。ウィズ?わしの寝小便に感づくお主がわしが話しかけたのに気付かぬとはどういう案件じゃ?』
『万年を生きる竜が子が如く寝小便をし、剰え人間を子と称し加護を与える。我には理解できぬ』
ミシミシと樹の幹が割れだらんといくつもの顔が出てくる。
赤子や老人、中には竜や魔物の首が何十にも及ぶ顔が一斉に凝視してくる。
『万年生きようがわしの今の体は子供じゃ。人間で言えば腹から出て初めて呼吸したくらいの程度、わしの意思とは関係ないわい。それにアベンは人間に捨てられた。なら竜が育てても変わらんじゃろ。たった一年じゃが随分とここも賑やかになったからのう』
『理解できぬ…それに貴様は一年と言い彼奴も勘違いしてるが正確には3年だ…そして竜はなによりも己が名を誇り、戯れぬ。 。何故大老などと名を作り、他が竜にも名を作る。竜が誇りを失った汝らは何故人間を扱う』
『人間には発音できぬからな。その竜に近しい性質や色で名をつける。それにわしらの名はそれだけで力を持つ。仮の名ということじゃ』
『むう…』
『のうウィズ…いや、知恵の樹よ。お主とて気にかけておるのじゃろ?』
『我が魔を持ってしても彼奴に振り返る厄災を払うことは叶わぬ。それにだ、
。汝が一眠りしただけで次に会うは孫かひ孫か。愛玩動物が死に悲しむ様な汝ではないと思うが』
『言うたであろう。アベンは畜生ではない。わしの子じゃ。それに嫌と言えば無理強いはせぬのに、わしらの為にとまたあの街に行っておる。本当に愛い奴じゃ』
ウィズの顔は一斉に様々な方向に向き最後にもう一度大老を見ると樹の幹に戻りながら
『くだらぬことだ。霧を抜けられ再び纏め上げた竜が人を喰らわぬ様に祈っておけ』
そしてただの樹に戻ると辺りが静けさで包まれる。
『言われなくともわかっておるわい』
竜は人を喰らう。それは変えようのない事実でありアベンも知っているだろう。だが、アベンが子である以上は喰わない。気にするなと言っていたが絶対にだ。それが森の掟であり自分たちを繋ぎ止める。
『のう、アベンよ。わしは…わしらはお主がどんなになっても可愛い子じゃ。カルミアも…仲直りせぬかのう。幸せにならなくとも…そばに誰かいるだけで変わるものじゃ』
言葉は風に霧散していく。アベンが聞いていれば鼻で笑われたであろう言葉は絶対に届くことはないと理解してでも、ついつい出てしまった。
『竜王様、それは…?』
『ん?ああ、人間を拾った。捨てたものならわしが拾っても構わないだろう?』
真っ黒な鱗を持つ竜はその手に自身がほんの少しでも力を加えれば簡単に死ぬであろう命を持ち帰ってきた。
その部下である白い竜はそれを訝しげに見ながらも主人の気まぐれに胃を痛め、次に起こるであろう事に備えていた。
『い、いえ…正気ですか?』
『クエレベレ、お前はわしに指図できるほど強くなったのか?黒竜と白竜の戦いをもっかいやりたいってなら構わねえぞ?』
『…ファフニール様、今は寝ていますがおそらくその姿を見れば人間は泣くでしょう。それにそのように刺々しい体と肉を裂く爪…寝返り程度でその人間は簡単に死にます』
『い、いや。それはわかっている』
『飼育したいのであれば別の魔物等にしてください』
『人間はすーぐわしらを襲うから一から育ててみれば何かわかるかもしれないと思うたが…ダメか?』
『言っても無駄なのは知ってましたよ…お姿さえどうにかしてくれれば構いません。それと人間は霧から出さないでくださいね?バレますから』
『わーっとるわい』
最初は2匹と1人。霧の森の初めての住民たちだった。
『じゃあ、なんじゃあ?お主親に捨てられた挙句育ててくれた者まで殺されたというのか?』
「うん。けど、どっちも興味ないし。それにスラムで育ててくれた人もイライラしたらよく殴ってくるような奴だったから」
どうでもいい事だよと少年は最初自分を見た時と同じ様に表情を変えずこちらを見ている。
『そうか…まあ、これも縁だ。わしらだけの森じゃゆっくりしておれ』
「竜が人に優しくするだなんて変だね」
『たまには竜とて優しくするわい』
昼下がりの午後。木漏れ日の中1人と1匹は話している。
結局強くなり過ぎた為か体を縮める事は出来なかったので一回死に卵から孵った。そのせいか少年より少し小さいくらいのサイズになってしまった。威厳はあるからクエレベレは部下のままだし息吹も吐ける。
この子のために頑張らねば。
「まず前提条件として死んですぐ生き返るのがおかしい」
『まあ、わし?一応竜王だから神から色々贔屓してもらえるんじゃ。竜王やめるからお主と生きると決めたのじゃ』
「あんた阿呆だろ」
『そりゃあ金の為に勇者に負けたからのう。それに阿呆でも踊れば楽しくなるわい』
「勇者…?なにそれ」
『あーそこからか…』
スラムで監禁にも近い状態で過ごしていたらしく外のことは何も知らない。
いや、知っていたとしても知らないふりか?
「そのうち出て行くよ。種族だって違うしね。迷惑かけるし」
『何を言っておる。たかが人間1匹増えたところで何一つ迷惑などないわ』
「別に外で言いふらしたりしないよ」
『まあ、そこはおいおい決めることにして取り敢えずお主の名前じゃ。色々とかっこいいのを考えたんじゃぞ?』
「いらない」
キッパリと断られた。
「アベンだ。友人に付けてもらった名前だ。これ以外は嫌だ」
『むう…そうか。まあ、よいわ。わしは大老あの白いのはホワイト。よろしく頼むぞ』
「よろしく、大老さん」
『さん付けはやめぬか』
それから色々な事が起きて…家族が増え…楽しかった。竜王になってからつまらなく登った日と沈む日を見てただ過ごしてきただけだったのに…家族が増えたものだ。
「大老、じゃあ僕ちょっと街に出かけてくるね」
『大丈夫か?わしも付いて行こうかの?』
「買い物するだけだし、もう…あれ、何年経ったっけ?まあいいや。行ってきます」
『夕餉までには帰ってくるんじゃぞー』
『私も…行く…』
『お主が行ったら街のものが発狂するから駄目じゃ』
『しょぼーん…』
それは大切で長い長い道の中のほんの少しの暖かい記憶。これまでもこれからも…
そしてアベンが帰ってくることはなかった。
「「かんぱ〜い!!」」
夜になり全員が出揃ったところで始まった宴は何度めかの乾杯の音頭と共に再び騒音とも呼べるような音が辺りを包み込んでいく。
「いやー、あんたらも受かったなんてよかったな!」
「まあ、俺と姉さんにかかればデッドファングなんて余裕の与助だかんねぇ!」
「そいつは頼もしいぜ!ほら飲め飲め!」
「あまり羽目を外すなよシクリィ」
「姉さんこそ偶には飲めばいいじゃないか!」
と聞き覚えのある声も聞こえてくれば
「なんとか受かったぜ…」
「ああ。だが、これで俺らも勇者の英雄譚で語り継がれる!」
「母ちゃん泣いて喜ぶな」
との声も聞こえてくる。騒がしいのは嫌いじゃなくても流石にうるさい。
明日にはもう霧の森へ向かうらしい。果たしてどうなるのやら…
「カルミア様、ただいま戻りました」
「あら、フレシア。どこへ行ってたの?」
「テーラム商会です」
「そう…なにか言っていたかしら?」
「……」
「すまない、カルミアさん。少し彼女にはキツイことをね…僕が話すよ」
『遅くなりましたが礼を言わせてもらいます。この度はテーラム商会を救っていただきありがとうございました。病床の妻と子。それに商会の者全員の感謝の気持ち。代表して2代目レイズが感謝を申し上げます』
『そ、そこまで畏まらなくても…僕はゼノン。勇者です。それでお話の方をお聞きしたく今日は馳せ参じました』
『わざわざ足を運んでいただきありがとうございます。して、話とは?』
『アベンと言う薬師の事です。確か脅迫されていたと?』
ピクリとほんの少し眉が動くが直ぐに先ほど同様に人のいい笑顔を浮かべ
『ええ、妻と…それに子供を。どうやら彼が監禁していたようで…本当に…本当にあなた方には感謝してもしきれません…』
ポロポロと涙を流し感謝を乞う。その姿を見れば誰しもが彼が辛い思いをしてきたと思うだろう。ただ1人を除いては。
『…嘘ですよね。我々もこの街にいて憲兵もいた。いつでも彼のことを我々に話即座に対応できた。なのにしなかった』
『そ、それは!…監視されていて、それに妻と子がいつ殺されるかわからなく…それに人質はとっていたにしろ彼は…そこまでは…』
『フレシアさん流石にそれは横暴だよ…』
『勇者様は少し黙っていてください。それにです、貴方と彼が夜に話し合っているところを見た街の人間を複数います。それはどう説明するのですか?』
それはカルミアという信仰対象をこき使っていたことに対してか、アベンと言う最悪の男を庇った事かそれともどちらにもか怒りを露わにし質問する。
『……』
この場にダンとオルディナはいない。大丈夫だろうがもし襲ってきた場合は自分がフレシアを守らなければ。自ずと剣を持つ手に力が篭る。
『はあ…聖女に嘘つくなんて僕も落ちたものですね。まあ僕は無宗教なんで関係ありませんがね』
『本性を現しましたね』
『違いますよ。私は迷惑な客に対して早急にお引き取り願いたいので本音を言うだけです』
苛立ちを隠さないその顔でこちらを睨みながら
『この商会を救ったのはあなた方じゃなくてアベン君じゃないですか』
『⁉︎』
『あなた方がしたのは瀕死のハームを自己満足の為に打ちのめし憲兵に突き出しただけ。違いますか?ハームの仲間もランパスもハーム自信も倒したのはアベン君だ。何もしてないくせに偉そうにしている君らじゃない。僕が本当に感謝してるのはアベン君たちだ。理解したならさっさと帰ってくれ邪魔だ』
キッパリと一言。確かにあの日自分たちがしたことは…
『わ、私たちに向かってなんて口の利き方を!』
『ああ、そうだ。フレシア君、カルミアちゃんに伝えといてくれないか?僕は人を見る目があるから言っておくがね。彼が君を許すことは絶望的にないってね』
自身の心にほんの少しの揺らぎを感じながらゼノンとフレシアは酒盛りの場へ向かう。一方は嫌悪をもう一方は怠惰を…
「……」
「彼とはアベンのことだろう?どういう意味か教えて欲しいのですが」
「あの人を裏切った私は絶対に許されず殺されてしまう…それだけの話です」
「カルミア様は殺させません!私が…私が絶対に!」
「あの人にとって命は薬や魔物と一緒。これと言って特筆するものじゃない。ただそこにあるだけのもの…」
「ご安心ください。僕たちが必ず彼を倒しますから」
その笑顔は何を考えるのか…よくはわからないが取り敢えず死にそうとだけは言いたい。
「姉さん手紙書いてるの?」
「ああ、母さんと父さんにな。勇者の仲間になれたぞって」
「そっか。書き終わったら言ってね。俺郵便屋まで持ってくから」
「そうか悪いな」
「そんくらいはやるって」
宴も終わり静かになった頃、とある宿の部屋で話し声が聞こえてくる。
何を思ったがふとカルミアが中を覗くとアンナが手紙をシクリィに渡しているところだった。
「姉さんも年頃の女なんだから早く寝ろよな。美容に悪いぜ」
「お前がさっさと自立すれば私も心身楽になるんだがな」
「姉さんこそ男見つけて落ち着きなよ」
「余計なお世話だ。おやすみシクリィ」
「おやすみ姉さん。また明日」
お互いに頬にキスをし合うとアンナはベットに向かう。
「…ごめんなさいね。中覗いてて」
「別に姉さんと仲良いだけだからこれと言って恥ずかしがることもねえよ。ノルド様もさっさと寝なよ。明日早いんだろ?」
「ええ…その前に聞きたいのだけれどこんな時間に営業してる郵便屋なんてあるの?」
「…疑ってるのだがなんだか知りませんがこれは誰にも届くことのない手紙ですよ?」
「両親宛でしょ?」
親に向けて手紙を書くなど死んでもごめんだと思うが本来は遠い故郷に残した家族を心配するものなのかもしれない。
ただ聞くと少し悲しそうな顔をしてから直ぐに先ほど同様に笑顔になり
「親は14年前死んだよ。村を襲ってきた竜に殺された。姉さんは14年経った今も受け止められなくてこうやって手紙を書くんだ」
魔法の火か薬か手紙は燃え尽きて無くなってしまう。
「これはきっと神様が俺たちにくれたチャンスなんだ。村を襲った竜を殺して…姉さんも現実を認めて幸せになって…すみません、ノルドにこんな事言っても羽虫の音程度ですよね」
「…私は別に構わないわ。貴方も早く寝なさい。明日は頼んだわよ」
「ありがとうございます!ノルド様!」
アベンさんなんかよりよっぽどわかりやすい人種だと思う。
昔読んでいた物語のいくつかにも「復讐なんて悲しいだけで何も生まない」だとか似たような台詞があったがそれはきっと、生まれた時から幸福な暮らしをしてきた者が汚泥に落とされた者に向けた無責任な言葉だと今は思える。
私はそれだけ心が汚れてしまったのだろう。
「最後に私の家族を殺しといてくださいって言ったら殺してくれるのかな?アベンさん優しいしやってくれるかもしれないや」
明日、やっと私は殺される。聖女の相手も人を見下した態度も面倒だし疲れる。さっさと死ねるのならさっくりぱっさりアベンさんに殺されたい。




