二十匹目 試験は唐突に
はい、握州です。台風がやばいですね。
夏休みなんで投稿ペースガンガン上げて投稿したいと思います…あと、探し物って探してる時見つからないけど掃除してると見つかりますよね。
じゃあ、今回も語彙力が台風に吹き飛ばされましたがごゆっくり見ていってください。ではでは、
「じゃあ、名前と職業を教えてくれるか?」
「はい、僕は薬学魔法士のシクリィ=ファレテンシア。18歳です。趣味等は特にありません。攻撃も補助もどちらも出来ますよ」
「私はアンナ=ファレテンシア。普通に魔法使いだ。よろしく頼む」
兄妹だろうか?金髪に革鎧を着た似た顔立ちの少年と少女を一方は笑顔で一方は無表情にこちらを見ている。
と言うのも確かに仲間は募った。多すぎてもいいが下手したら死ぬ様な場所だ。その為にもこうやって面接の様なものを行い。見極める。何人かに分けて行いやっとこの2人で最後だ。
「…薬学魔法士か。珍しいな」
「あの…ごめんなさい。薬学魔法士ってなんですか?」
「そっか、フレシアさんはずっと神殿で暮らしてきたから知らないのか。薬学魔法士は薬やアイテムを使って擬似的に魔法を起こす冒険職だよ。使う量や加減が難しくて使える人があまりいないからしょうがないな」
「ええ、僕は姉と違って不出来なもので」
ニコニコと表情を変えず笑顔で対応してくる。
貼り付けた笑顔がなんとなく不気味な気がするとカルミアは思ったが生憎とそんなこと言えば彼らが即退場にでもなってしまうだろう。
「シクリィは私が守るのだから無理しないで大人しくしてればいい」
「僕は姉さん1人に戦わせたくねえの!姉弟仲良く冒険者やって行こうってこの前決めたじゃんか!」
「ああ、わかったから…取り敢えず保留ね。ちょっと腕を見たいから一緒に軽いクエスト行くとしよう。他の保留になった人達も一緒だけどね」
「え?腕くらいここで見せますよ」
「見られて恥ずかしいものじゃないしな」
と2人は革鎧の袖を捲る。そういう意味で言ったんじゃないんだよ…
「あのですね、お二人がどれほど強いか見るという意味です。補助や回復なら私と攻撃なら3人のうち誰かと。竜と戦うんですからね?仮にも背中を預けるならその強さをこちらとしても知っておきたいのです」
「なんだそういう事か!」
「全くシクリィは…」
「姉さんも捲ってたじゃないか!」
五月蝿い姉弟だ。しかしこんな歳でも自分達の事を知っていてくれるとは有り難い。それに開口一番にあなた方の役に立ちたいので仲間にしてください!など言われれば良い気分にならない者もそういないだろう。
「しかし勇者様の一行だから筋肉で魔法を弾き返すくらいの肉体を持つ戦士とかいるイメージでしたがエルフとかいるんですね」
「僕がいて何か問題でもあるのか?」
「いえ!なんも問題ないです!むしろ弓の名手と謳われるエルフが仲間になどいれば安心して前線に出れるでしょうと思っただけです!」
「…」
「シクリィのいいところは笑顔で世辞が言えるところだ」
「ははは!姉さん!それ言ったら意味ないって!」
なんなんだこの姉弟…
「見ろよ姉さん!他にもたくさん人がいるぜ」
「保留組というやつだな。ここから選抜されていくのだろう」
街を出てすぐの拓けた荒野に何十人もの人々が集まっていた。
屈強な冒険者もいればローブや魔女帽子を被った者。老若男女問わず亜人もいる。
みな僕の英雄譚にもしくは憧れた勇者の力になろうとしているのだろう。
「姉さんもこれを機に旦那になりそうな人探してみれば?いい人いるかもよ?」
「余計なお世話だスカタン」
「あでっ!」
相変わらずこの姉弟が五月蝿いが無視して本題に入るとしよう。
「えー今から1時間この一帯で魔物狩りをしてもらいます。魔物のランク毎にポイントを決め上位のチームを選考します。ゲームの様ですが判断力、殲滅力等が必要ですので皆さん頑張ってください」
勇者がそう叫ぶとともに「オオオオォォッ!」と冒険者側からも雄叫びが上がる。
今は魔物の繁殖期であり下手したら生態系が根こそぎ失われる可能性もある。魔物と動物は別の生物であり魔物が動物を喰らっても動物は魔物を喰らわない。
故に動物の数だけが減っていく。無論動物が絶滅すれば次に狙われるのは人間である。彼らもお金を稼ぐことができ同時に依頼もこなす。いい手段だと我ながら自負してる。
「姉さん早く行かねえと今夜の飯は乾パンになっちまうよ!」
「急かすな。ほら、さっさと行くぞ」
あの姉弟も近くの林へと向かっていく。一応は銀以下の冒険者を保留にしている。おそらく今回の討伐に参加すればみな銀や金に余裕でなることも可能だろう。
「しかし聖女はノルドと会ってから随分と自由に動いてるじゃないか?ええ?いいのかよ」
「ああ、構わないさ。それにここに来る必要性もないからな」
「…」
フレシアはカルミアと街で買い物をするなどと言っていた。貴重な休みでもあるから好きにすればいいがカルミアの方がなんて言うのかは疑問に思う。
「ノルドなんか僕らに比べりゃクソの価値も無いくせにさ偉そうにしやがって。本当に腹立つ」
「まあ、そう言うなって。生きる魔法結晶だ。それに魔法の効果範囲拡大、強化。それがあれば霧の森内部にも侵入できる。それは事実だからな。ノルドの村に返すまでの辛抱だオルディナ。我慢しろ」
「へいへい、勇者様のお言葉に従うよ」
「シクリィ何を倒そうか?」
「グンタイウサギかメガトンボ辺りでいいんじゃないか?楽だし数がいるからな」
「質より量でか。まあ、いいだろう」
「姉さんもあんまし魔力使いたくねえべ?楽に行こうよ」
周りに何人か他の冒険者や魔法使い等もいるが何人かはこちらに視線を向けてくる。
獲物を掠め取ったとしても別に勇者が云々言っていたわけじゃないからいいのだろう。
正直そこまでして勇者の役に立ちたいとは思わないが。
「た、助けてくれー!」
「ん?」
「姉さん、あれデッドファングじゃね?」
「…そうだな」
男性が1人こちらに走ってきてその後ろから大きな牙を生やした虎の様な魔物が駆けてくる。
仰々しい名前の通り俊敏な動きに名前にもなってる鋭利な牙。青銅冒険者が束になって仮に勝ったとしても死傷者はかなりの数になる。それほど危険な魔物だ。
「どうする姉さん?逃げるか?」
「恩を売っておくのは後々いい事があるかもしれない。助けてやろう」
背負っていた杖を構えると分離した小さな魔法結晶が杖の先端で回り始める。同様にシクリィもフラスコやポーションを手に持つ。
「おいあんた!こっち来い!足止めしとくから勇者さんを呼んできてくれ!」
「あ、ああ。わかった!」
横を駆け抜けていく瞬間。その男が笑っような気がした。
直後に地面が沈み込む。否、目前に迫ったデッドファングとシクリィ。それに私を円で囲んだ様に窪みの様な場所に落とされる。
「『地盤沈下』。まんまと罠に嵌ったなぁ。お二人さん」
先ほど逃げた男。それに周りにいた数人も穴の中を覗いている。
「あんたらだけ異様に纏ってる雰囲気が違うんだ。そりゃ俺だってこんなことしたくない。だが、勇者の英雄譚に乗るためにはこうしなくちゃいけないんだ。悪いな。他の連中も直ぐにそっちに行くから指でも加えて待ってるんだな」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ他の連中共々何処かへ行ってしまう。
無論一緒に穴に落ちたデッドファング最初こそ急激に変わった地面に戸惑いの様なものを見せていたが目の前の私達…獲物を見て舌舐めずりをするとゆっくりと私達を中心に回り始める。
「どうする姉さん⁉︎このままじゃあ目的を果たせないまま死んじまうよ!」
「そんなことお前に言われなくてもわかってる。第一この狭いところで魔法なんて使ったら私らだって照り焼きになる。…ああ、詰みだな」
「そんなぁぁぁ!!」
悲痛な叫びも獣には届かず、大きな牙で獲物を捕らえる。
穴の中に鮮血が舞った。
「まさかここまで作戦通りに行くとは思わなかったな」
「ま、俺らにかかればこんなもんだろ?次はどいつを潰す?」
「ロックもリムって同じく2人組みの冒険者がいますね。そっちも結構お人好しみたいなんで」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる数人の男達は断末魔の様な声が聞こえたのを確認すると次の獲物を探しに他の場所へ移す。
自身の名誉が欲しいが為にライバルは少ない方がいい。が、完璧かと思われた作戦はたった一回で音を立てて崩れた。
「ふいー、危ねえ危ねえ。頭から食べられるとこだった…」
「お前がさっさと下がればよかったんだ」
「姉さんの魔法は溜めの時間があるんだから俺が時間稼がなきゃダメだろ!」
先ほど穴に落とした2人は所々変色したデッドファングの死体を穴から引きずり出していた。
「な…っ⁉︎」
「ん?ああ、さっきの人たち。よくもやってくれたな」
「お前らの様なクズはそれ相応の罰を与えんとな」
「ま、待ってくれ!俺らが悪かった!頼む!許してくれ!」
「あ、ああ!すまなかった!」
全員が一斉に謝りだすと姉弟顔を見合わせて直ぐに「まあ、いいか」とさっさと行ってしまう。
「…チッ。なんであんな規格外な奴らいんだよ」
「知るかよ!デッドファング倒せりゃ余裕で勇者の仲間になれんだろ!おい、勝ち目がねえ!さっさとマトモに魔物狩るぞ!」
「はあ、僕たちは相当やばいのに手を出したみたいですね」
遠ざかっていく2人は相変わらず中良さげに話してるが同時に言葉に出来ない違和感の様なものも感じた。
得体の知れない…なにかを…
「2人で倒したのか?」
「シクリィが囮になって私がトドメをさした」
「俺だって少しは戦ったよ!」
デッモファングの死体を引きずりながら2人が戻ってきたときは驚いたが話によると相当弱っていたらしく簡単に倒せたらしい。
「しかし君らを嵌めようとした者たちだ、背中を預けるにはどうにも信用が足りない」
「どうせ弱いのは死ぬんですし回りくどいことしなくても肉壁にでもすればいいじゃないですか」
「シクリィ、いい案だが勇者には無理な行為だ」
「まあ、しょうがないか」
さらっととんでもない事を言ったがスルーし死んでいるデッドファングを見る。
よく見れば黒く変色した部分にはカビの様な生物が生え始め穴の空いた腹部も内側から強引に破裂された様になっている。
「因みにだけどさ、君らの使った魔法教えてくれない?僕もエルフの1人としては気になってね」
「さっすが森の守護者様。お目が高い。俺はこの特性カビ爆弾で」
「私は単に『蒸気爆弾』だ」
緑色の試験管を持ったシクリィが楽しそうに、杖を構えたアンナが誇らしげにポーズを決めている。
見ているだけでもう騒がしい。
「で、これで終わりでいいのか?」
「手負いとは言えど強かったし、それに色々消費して疲れましたから…姉さんも酒切れてイライラしてるし」
「おい、シクリィ。どういう意味だ」
「姉さんの酒癖のせいで何回店に迷惑料諸々払ったと思ってるんだよ…お陰で財布の中は素寒貧。めぼしい部位は剥ぎ取ったしギルドで鑑定して金にしようよ」
「ほう、お前の使い物にならない魔法アイテム収集癖もどうにかしたらどうだ?」
「泥をコーヒーに変換するのは姉さんだって使ってるじゃないか!」
「あの虫を食って魔物をおびき寄せるランタンや魔力を込めると柔らかくなるだけの杖はなんだ?どこに使い道がある?」
「それなら姉さんだって尻揉まれただけで減るもんでもないのに怒って店を半壊させたのはどうなのさ!」
「…五月蝿い」
「あー、もうわかったから。取り敢えずもう街に戻ってくれ頼むから。5日後、頼んだぞ」
「え?俺ら合格ですか?」
「まあ、私とシクリィのコンビだ。余裕だな」
喧嘩してたと思ったら即座に仲直りしているのは劇場で喜劇でも見せられている様だ。
「ああ、そうだ。夜になったら冒険者ギルドに来てくれ。背中を預ける者同士だ、それに他のメンバーと顔を合わせて置かないと後々面倒につながる」
「姉さん、夜まで酒禁止な」
「お前も道具や寄るの禁止な」
仲がいいのか悪いのか…
「カルミア様!どうでしょうか⁉︎」
「ええ、いいのではないかしら」
「では、こちらはどうでしょうか!」
「貴方みたく清楚な感じね」
「!!照れます…」
昨日の怒涛の冒険者達との面接。それに現在進行系で聖女との買い物。幾らあの全てを包み込んでくれるような寝心地のベットで寝たとしてもだ…疲れる。
「カルミア様!よろしければこれもどうでしょうか⁉︎」
「あら、それは私より貴女に似合いそうね」
買い物に付き合わされている。いや、正確に言えば私の服選びらしい。というのも私が着ていたものはテッドさんの奥さんのお古を急遽私のサイズに合わせて手直ししてくれたもの。それと領主さんの娘さん…確かバーベラさん?の服をいくつか拝借したもの。別に服は着れればいいし下着だって10年近く履いてないから正直困っていなかった…
「ああ、カルミア様!素晴らしいです!天からの使いの如き神々しさ…はあ…旅に出てよかった…」
この聖女は私の格好があまり好きではなかったらしく現在に至る。
死ぬまでにもっと沢山の本を読んでおきたいと思ったが…
「フレシア、私ばかりではなく貴女も選びなさい。修道服ばかりではなくね?」
「い、いえ!私はその!」
「いいから、私が選んであげるわ。少し待ってなさい」
きっと…烏滸がましく反吐がでる様に気分が悪いが…こういうのが友達という者なのだろうか?
思えばノルドの村にいた頃、笑顔で楽しく遊んでいた同年代の子供が魔法が使えないとわかった時から自分のことを見る目が変わった。興味がなくなり、道端に落ちた石っころでも見る様な冷たく硬い目…
家の中で屑の書斎に篭り本を読み始めたのもその頃からだった。
「カルミア様?」
「ほら、貴女も元がいいんだから…洒落た服でも着れば勇者をイチコロよ?」
「ふぇっ⁉︎あああ、あの!そういうのじゃなくて!」
「店員さん、よろしければ髪の方もお願いね?」
「かしこまりました」
「カルミア様…こ、この様な格好は…その…」
白いワンピースに長い髪を三つ編みにした少女は可憐であり、その線の細さは思わず抱きしめたら折れてしまいそうでもあり…
「似合ってるじゃない。嫉妬しちゃうわ」
「で、でしたら直ぐに脱ぎますので!」
「いいわよ。ほら、貴女の行きたいところに行きましょ?貴重な休みなんでしょ?いつ死ぬか分からないのだから休暇は必要だわ」
実際に街に出てからフレシアは四方八方から声をかけられている。
まあ、確かに綺麗な金髪の少女を見惚れてしまってもしょうがないだろう。
「お、可愛いね。よかったら俺らと遊ばねえか?」
「いえ、あの…私はカルミア様と…」
「いいからいいから、凄ーく気持ちいいことだから直ぐになれるって」
強引に手首を掴まれ身動きが取れなくなり必至に抵抗するが全然意味もない様だ。
「婦女子相手に随分ね。汚い手でお願いだから私に触らないでくださる?もちろん、私の友人にもね?」
その言葉が頭にきたのか他の仲間にフレシアを突き飛ばしこちらへて向かってきて品定めでもするかの様にじっとジロジロと見てくる。
「あ?よく見りゃこっちもいい女じゃねえか…はは!オメエも俺たちと遊ぶか?」
「カルミア様に触るな下郎共が!」
暴れようとするが両手首を後ろで掴まれていてやはり身動きが取れないようだ。
「おお、怖い怖い」
しかし違和感を感じる。昼下がりだというのに人通りが少ない。いや、それにしたってこれだけ騒いでいれば誰かしら気付くだろう。
周りを歩く人々は見て見ぬ振りかさっさと横を歩いていく。
「誰か助けムグッ!」
「おおっと、幾ら認識阻害の魔法がかかっててもだ。流石にそこまで大声出されちゃ気付かれちまうな…まあ、どうせ今から大声出すことになるけどな!ギャハハ!」
周りの男達もそれにつられ笑っている。フレシアはもう何をされるのか悟ったのか顔が真っ青になって涙を流している。
正直自分は別にどうなろうが構わないが…やっぱり殺される前に穢されるのはアベンさんに失礼だと思う。
「さーて、大人しく俺らの泊まってる宿までくけぁ!」
変な悲鳴をあげた男は股間を蹴り上げたことによる痛みかよろよろ股間を抑えフレシアを掴んでいた手を離す。
「カルミア様!」
「このクソアマ!」
目の前に杖が構えられる。第一門ならともかく犯すべき対象に反撃を食らったのだ。怒りで最大級の魔法を撃つだろう。
こんな名前も知らない三流に殺されるなんて本当に産まれてから死ぬまでつまらない人生だった。
「『豪えぐぎゃあ!」
「んだ、てめえ⁉︎」
「五月蝿え!見て見ぬ振りなんかしたら飯が不味くなんだよ!」
魔法を撃とうとした者を殴り飛ばし、更にもう1人に回し蹴り。一切の容赦のない動きは…
「おい、大丈夫か?怪我とかしてねえか?してたら姉さんに言ってくれ。治してくれっから」
「!…人間がノルドを助けるのは当たり前のことでしょう。早くそのゴミを殺しなさい」
「初対面の相手に感謝もなしかよ。いい性格してるなノルドってのは。あと絡まれただけで殺す訳ねえだろ。憲兵につき出すんだから」
「はぁ…はぁ…おい、シクリィ急に走っていくな。お前と違って私は体力が無いんだ」
「シクリィとそれにアンナ…確か昨日の…」
ほんの一瞬アベンの陰を見たその少年はシクリィ=ファレテンシア。
そしてもう1人の息を切らして走ってきた方がアンナ=ファレテンシア。
「この…‼︎殺っちまえ!」
「調子のんなクソガキが!」
「見ろ姉さん、まるで裏でも合わせたかの様に三流らしい言葉だ」
「ああ、全くだ。私と同じくか弱き乙女を狙うとは許されないな」
「か弱き…?すまねえ姉さん。どうやら俺の読んだ本と姉さんの読んだ本は作られた時代が違うようだ」
「…お前には後でたっぷりと話がある」
会話をしながらも魔法と、それに…薬⁉︎いや、似ているが戦闘スタイルが違う。そしてあっという間にその男達は地に伏していた。
「よーし、後は憲兵に任せて飯食おうぜ姉さん」
「頑張った愚弟には最高に美味い私の飯を進呈しよう」
「はは、今度は何日腹下すだろ」
アベンと違い誰一人殺さずに全員を気絶か戦闘不能にした。そもそも人を一人殺しただけで留置所送りに普通にされる。彼と数ヶ月間行動しただけで大分毒されていたらしい。
「シクリィ、アンナ。ありがとうございます」
「ん?んんんん?あれ、よく見たら聖女様だ。こりゃあこいつらにしつこく絡まれてもしょうがねえな」
「人形の様じゃないかフレシア殿。それにカルミア殿もまたいつもと違う装いで」
「世辞はいらないわ」
ゴマスリでもしてるのかと思ったがどちらも本心からの言葉なのだろうか真摯な目をしてこちらを見てくる。
「よろしければお礼をさせていただけないでしょうか?不肖、私も勇者の仲間として無様を晒しました。助けていただいたので是非」
「ああ、口封じだいっ!」
「お前は一言二言…いや、たまに四言くらい多いんだ。黙ってろ」
「……」
怪しい訳ではないが信用できる訳でもない。だが、取り敢えずフレシア一人にして私が帰るというわけにはいかないだろう。
しょうがないからついて行くことにした。
「薬学魔法士は要するに魔法の使えない人間を擬似的に魔法使いにすることなんですよ。アイテムや薬、それに様々な生物の生成物とかね」
「お前、世界一魔法を卓越した種族に対して薬を説くとか我が弟ながら恐ろしいよ」
「照れるぜ」
「薬学魔法士…なるほど。改めてみれば疑似的とはいえ魔法の知識だけでなく他の知識も必要となる。確かに冒険職としてはかなりマイナーですね…はっ!いえ、カルミア様。魔法が決してダメだとかそう言うのではなくてですね!」
「一々言わなくてもわかるわ。それで?それって薬師となにが違うのかしら?」
「えーと…僕は一応少しは魔法が使えるので…多分魔法が使えるか使えないかじゃないですかね?」
指先に小さな日が灯る。第一門の種火【マッチ】だ。それすら自分は扱えないが…
「なんなら姉さん魔法教えて貰えば?」
「ちょっ!いいですか、ここに居ますはノルド!魔法の始祖たる始まりの魔神様の子孫ですよ!不敬です!」
「ええそうよ。それに仮に教えたとしても貴女程度で扱える魔法を生憎私は覚えてないから」
なにも使えないのですがね。
「おい、シクリィ。私こいつ嫌いだ」
「なっ⁉︎」
「姉さん、オブラートに包もうぜ。それじゃあ悪口だ」
「なに?お前だって思ったこと口にするだろ。全く誰に似たんだが…」
「姉さんもだろ!」
姉弟喧嘩が始まるのを無視して魔法を使えって言われたらどうしようかと考えているとフレシアが服の裾を摘みじっとこちら見つめてくる。
「…言いたいことがあるなら言いなさい」
「あ、あの!先ほどカルミア様が私を…その…友人だと…」
誰が考えてもあの場しのぎの嘘を信じ込むとは流石聖女とでも言うべきか…
「ええ、貴女は話のわかる人間ですからね。対等では無いですが友人になってあげましょう」
「!!ありがとうございます!ありがとうございます!ああ、三神様の祝福がここに!」
手を合わせ天に祈りを捧げる。
しかしこの少女はなんで三神崇教などに入ったのだろうか?別に批判する訳でもなんでもないが、あまりいい噂を聞く訳でも無いので多少心配にはなる。
「姉さん、泥コーヒーより店の方が美味いぞ」
「当たり前だ。黙って飲んでろ」
どうやらこちらの姉弟喧嘩も終わったらしく泥コーヒーなるもの話になっている。
「そう言えばノルドさんはなんで奴隷なんかになってたんだ?」
「え?」
「いや、魔法に優れた種族なんなら簡単に牢からでもなんでも出れただろ?なんでだろうなって思ってな」
「…皮肉な話ですが幾ら魔法を択一しあらゆる種の頂点に立とうとも魔力が切れれば人間よ。そこを運悪く捕まった訳。それであの男に買われ投薬されて魔法が使えなかった。今もね」
我ながら最高な言い訳だ。
「カルミア様⁉︎貴女はたとえ魔法が使えなくなろうともノルドです!その様なことをお言いにならないでください!」
「投薬…?ちょっと待て、それじゃあそのあんたを買った男ってのは薬師かなんかってのか?」
「ええ、薬師です。それもとびっきり外道のね。自身の作った劇薬をなんの罪の意識もなく他人に飲ませ、家族の愛と実験を称し妻の頭を夫の前に転がしたり」
あの人の普段のことを言ってる筈だが全部悪口になっていく気がする…
「薬師…ああ、そういえばここに来る途中にフードを被った二人組みの一人が凄い薬草臭かったな…」
「…おい、シクリィ。それどこでだ?」
「テーラム商会のとこだよ。え?姉さんどうかしたの?」
「話の流れ的にそいつだろうが!この阿保!」
「ご、ごめんよ!姉さん!」
急いでテーラム商会まで行くと確かに二人組みが商会から出てきた。
フードを深く被り顔は見えない。だが片方の…背の小さい方からはとても嫌な感じがする。
「ああ、あいつらだ!背の高い方が薬草臭い!」
「大声で言うな馬鹿者」
「…わかりました。お二人はいつでも戦闘が出来る準備を…もしもの時は私ごと攻撃を開始してください。カルミア様は後ろへお下がりください。巻き込まれては大変です」
ゆっくりとその二人へ近づいていく。
それは運命の悪戯かはたまた、別の何かか…
「…ん?ああ、邪神崇拝の聖女か」
「っ⁉︎アベン!」
「姉さん、魔法撃ってくれ!」
「お前も薬で牽制しろ!」
相変わらずなにを考えているのか、この状況下でも眉一つ動かさずにただ、ただつまらなそうにこちらを見ている緑髪の少年がいた。




