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十九匹目 水と油

どうも握州でーす。なんかこう…はい、カシラがかっこよすぎて辛い今日この頃皆様はどうお過ごしでしょうか?私は元気です。はい、意外と早く書けたので。え?あんまり期待してない?じゃあ、夏休み暇なんだしスマフォやpcじゃなくて紙媒体の本も読みましょうや、暇な時にでも僕の拙い文章読んでくださるとありがたいなぁ。

今回もまあ、語彙力無いんで皆様の読解力だよりですはい。生暖かい目で見守ってくださいましぃ。

「…そういう事があってな。取り敢えずレイズさんとこにも来る可能性がある」


「…そうかい。いい子だと思っていたがね」


「俺もすっかり騙されたよ。ほとぼりが冷めたくらいにまた来ることにする。これ、一応迷惑料で」

事の顛末を伝えさっさと出て行くことにする。大老のとこに暫く身を隠すことにしよう。

特大の卵の殻…魔法結晶を渡しテーラム商会を出よう。色々と準備をしていた為か深夜になってしまっていた。

見つかる可能性が少なくなるから都合もいい。

「嫁さんと子供、大切にしろよ。捨てたりなんかしたら俺みたいなのが増える。それに子供の方もさっさと学園に通われせるなり冒険者ギルドに入れるなりして守ってやれ。ハームみたいな野郎はどこにだっているからな」


「…ああ、大丈夫。僕はこんなんでも男だ。ちゃんと守る…いや絶対に大切にする。約束をするよ、それに言ってなかったけど推薦で王都の学園に来年入学が決まってるんだ」


「将来有望だな。もう1人くらい作っとけ」


街の中は暗く出歩いているものも殆どいない。

そして街の門をくぐる直前に面倒な者に会った。

バルバトスの剣闘士…ダン=バネシア。

「ああ、思い出した。闘技場の鬼。8年間一度も攻撃を食らわずに全勝。出禁くらった剣闘士だったよな?」


「…」

勇者の仲間の1人。簡素な鎧に剣だけを用いて闘う武人。東洋のサムライにも似た連中。違いと言えば盾を持つか持たないか。前者が剣闘士、後者がサムライ。どちらにせよ命知らずの連中だ。

そんな男が目の前で先ほど同様に無言で睨みつけてきている。

「剣を抜け…見極める」


「は?」


「…ゼノン殿が無礼を行った、フレシア殿も嘘をついているとは思わぬ。あのノルドも同様だ。オルディナ殿はよくはわからない。情けをかける。剣を抜け、立ち向かってくるがいい」

何言ってんだこいつ。

スラリと剣を抜く。おそらくは武器に魔法等の付与はされてないだろう。元よりそういうのが嫌いな連中が集まったのが闘技場だしな。最近は違うらしいが。

「前から疑問に思っていたんだが正義の味方ぶって楽しいのか?人殺しでも英雄になれるのか?」


「…」


「贖罪のつもりで闘うならいいぜ。同じ様に俺も殺せばいいじゃないか?それとも剣を持った相手にしか手を出せないわけじゃないんだろ?」

地面を蹴りこちらへと剣を振り下ろしてくる。こいつを4号に擬態させて内部事情を知ることにしよう。

「…弱い」


「怖い怖い」

振り下ろされた剣を危なげに避けるとそれを見極めていたかの様に剣を持たない手で顔面に一発。モロに食らった挙句、変に体を沿った所為で受け身も取れずに地面に叩きつけられる。

なるほど鬼だ。

追撃での蹴りをなんとか避けるが足の腱を斬られ転んでしまう。

スライムを使わなければ…

「…舐めるな。ガキが」


「これは出禁貰ってもしょうがないな。ずば抜けた観察眼に剣の腕。ピエトロみたいだ」


「ッ‼︎…奴の名を口に出すな!」


「怒るなよ。ピエトロに何かされたか?あっ」

鏑蟹で動きを止め逃げようとしたが腕を刎ね飛ばされる。

痛みは無いが自分で腕を落とすのと他人に落とされるのとは違う。

そして鼻先に剣が突きつけられる。流石に避けたら今度は足も斬られるかもしれない。

それに痛みはほとんど無いにしろ血は流れ出る。このまま行けば血の池で溺れ死にそうだ。

「…勝負ありだ」


『うむ、弱者を痛めつけ愉悦に浸るとはなんともお粗末な人間じゃ』


「ッ!」

咄嗟にガードするが人間の筋力如きでは耐えられるわけもなく後方に吹き飛ばされる。

『のう、アベンよ。危なくなったら呼べと言うたろうに』


「仮にもこの街で世話になった奴がいるんだ。焦土になんてされたらよ、たまったもんじゃねえよ」

黒い鱗のせいか月が出るまでいることに気が付かなかった。一応は飛べるらしく自分とダンの前に飛んでいる。

「…竜?何故こんなところに…」


『人間に見つかるほどわしらもバカではないわ。ところでアベン。夜逃げでもされたか?カルミアはどうしたんじゃ?』


「知るかよ。本性だがなんだか知らねえが殺す事にした。内臓喰いの竜いたよな?後であいつに喰わせる」


『そうか…いや、話は後じゃ。さっさと逃げる事にするかの』

起き上がったダンがこちらへと走ってくる。

とそこへ巨大な影が月明かりに…透き通る様な白い鱗に月の光で虹色に輝く白竜…ホワイトが暴風を撒き散らしながら静かに降り立つ。

「…何匹いやがる?」


「数えてみれば?」

ホワイトの背中に腕と鏑蟹を回収し乗る。

どっちも無事のようだ。

流石に剣闘士ナンバーワンと言えどこの風圧の中は来れないらしい。

「じゃあな。剣闘鬼(コロッセオオーガ)。ミアによろしく頼むぜ。すぐに殺しに行くから」


「…待て!」

羽ばたきとともに超高速で飛び立つ。魔法か何か使っているのか背中に乗っていても特にこれといって支障はない。

『ほっほー良い月じゃ。たまには人間態にでもなって酒でも飲むかのう』


「俺はとりあえず寝たい」


『寝る子は育つからね。でも、その前にアベン。お客様よ?あなたもよく知ってるね?』


『ああ、そうじゃった。それで呼びに来たんじゃった。怒っておるぞ〜』

竜の客で思い当たるのが1人しかいないのが辛い。




「竜が襲ってきた?」


「…ああ、薬師を連れて逃げたがな。運がいいのか悪いのか…」


「僕の先祖が殺した奴とは別個体だろうね…どちらにせよ僕の敵ではないかな」


「へえ、飛び蜥蜴ね。あいつら見下してくるから嫌いだな。どこかのノルドサマみたくね。我々が種の頂点だとでも言いたげな顔はいつ見てもムカつくよ」


「ノルド様をバカにしないでください。貴方と言えど許しませんよ」


「はいはい」

夜中に起こされ何事かと思ったが…竜。運がいいな。初代勇者。バルロ=ディロイもまた最初の強敵は竜だった。

やはりそうだ。何代にも渡って魔王を倒しその都度新たな魔王が生まれてくる。

遂には勇者が名声のためにわざと魔王を生かしているとまで言われ始めた。それももう終わりだ。そして何よりも…僕の魔剣の力は初代の使っていた物と比べものにならないほど強い。正直初代の数十倍にも…いや数百倍にすら匹敵すると自負してる。

「わかった。取り敢えず明日、街長に聞いてみよう。今日は遅いからね。寝るとしようか」

こうして深夜の会議は終わった。

フレシアが集中もせず何度もノルドの部屋を見ていたが叱責はしないでおこう。神と崇める存在が目の前にいればそうなる。自分だって初代がいたとしたらとてもじゃないが話になんて集中できない。そして今の自分は人生の中でも特に最高の時だ。件のノルドが仲間になり、街を襲った竜の出現。初代はともかくもっと近い時代の勇者達の周りからの扱われよう…それも全部自分が変える。そうだ、魔王を倒し僕は初代同様に後世まで語り継がれるのだ。




『あらまあ、そんな事があったのね。人間はすぐに裏切るから嫌いよ』


『ねー、その癖して私達を見つけたら一致団結してー我先に殺しにくるのよー?嫌になっちゃうわよー』


『あ、勿論アベンちゃんは別よ?こんな可愛い子はおばさん守りたくなっちゃうもん』


『霧の森のマスコットよねー。今度うちの子とも遊んでねー?』

竜の種類的にも夜行性の種もおり、タイミングよく狩り帰りに遭遇し、空中で奥様方の井戸端会議が始まっていた。

昼間は旦那、夜は奥さんと狩りの分担はされているらしい。

『ほれ、お主ら。子が腹を空かせて待っておるわい。さっさと行かぬか』


『『はーい』』


「夜行性っていいよな。夜眠くなんなくて」


『その代わり昼間は眠いからのう。子との時間も合わぬこともある。逆に一家全員夜行性、もしくは昼行性の場合もあるからのう。大変じゃ』


「どうでもいいから顔見知りなお客様のところへ連れてってくれ。眠いんだ」


『昔から夜はすぐに眠くなるからどれだけ育ったかと思ったが存外育たんな。アベンは』

あんたにだけは言われたくない。

静かに森の中へ降り立つと件のお客様…8年前に世話になった竜がいる。

『アベン…連絡くれないの…なんで?』


「魔法の使えない奴がここに連絡する方法なんてないだろ」

右に二つ。左に三つ、真っ赤に発光する眼球に触手のような何かが絡み合ったような顔の形…いや実際口のあたりは触手のようなものが動いている。翼…というよりは鉤爪の様な形をした腕に近しい器官に、挙句は体を覆う真っ黒な霧。竜と言うよりは異形が竜に近しい姿になったと言った方がいい生物。

『ミスト待ってたのに…アベン返ってこない…どうして?』


「8年なんてお前らからすれば一瞬だ?で、だ。なにか用か?」


『人間の寿命短い…アベン大きくなった…ミスト変わらない』

可愛らしく首を傾げるがもしこれが仮にも少女の姿だとしよう。朧月夜に佇む幻想的で儚げな存在になっていただろう。少女だったら。異形の竜が首を可愛らしく?傾げたところでどうやって獲物をどう殺すかと考えてるようにしか見えない。

「そりゃあ竜から見たならな。これでも多少は成長してるんだよ」

ベロン。

なんの脈絡もなく唐突に絡み合った触手に切り込みが入り次いで隙間から紫色の発行する舌を出したと思ったら自分の体全体を舐める。

ザラザラしてるのにしっとり滑らか…もうなんなんだこいつの舌。勘弁してくれ。

『んー…むつかしい…でも考えてるのわかった…』

身体中がぐにゅぐにゅと脈打ち変容していく。やがて所々から触手のような物が出ている異様な肉の塊が目の前で蠢いていた。

「俺、こいつといると精神が削られていくんだが」


『奇遇じゃのう。わしもじゃ』

やがて肉塊が人の形になり…眼と同じ様に二つ、三つと髪留めを留め、ダボダボのシャツと短パンを着た少女…ん?

「じゃーん…ミスト人間形態…どう?」


「…人間態って上位の竜の特権じゃないのか?」


『やろうと思えば誰でもできるわい。しかしめんこいのう。どうじゃ?この期にわしかホワイト辺り…ミストでもよいぞ?嫁に取らぬか?』

その微妙なセクシーポーズ的なのをやめろ。

あと大老が体をくねらせた所で蛇が踊っているようにしか見えない。

「誰が悲しくて蜥蜴人間(リザードマン)量産プラントになんかなるかよベッ」

思い切り尻尾で頭を叩かれた。加減を知らないのかこいつら。頭蓋が割れた。

「アベン…生意気なのと笑わないの…変わらない」


「ところでさっき舐めてきたのはなんなんだ?」

もうそろそろ限界だ。いい加減眠らせてほしい。

狩りかなにかのつもりなのかだんだんとミストが両腕を掲げこちらに近づいてくる。いや大老も足に尻尾引っ掛けて動けなくしてくる。

「特に意味は…ない…捕まえたアベン夜行性じゃない…寝よう」


『わしもやっぱ眠いからの、寝る。ホワイトすまんが明日、朝一で起こしてくれまいか?やる事思い出しての』


『あら、私もアベンと寝たいのに…まあ今度にしときましょうかしら。おやすみアベン。ゆっくり寝るのよ?ふふ』

強制連行された挙句に霧を体内に入れられろくに身動きも取れないまま人肌…竜肌の温もりを感じ草のベッドで寝る。8年前もこうして…次第に意識は遠のいていく…明日はいつもよりマシな日でありますようにと願いながら…




「…どうも領主様。勇者ゼノン=ディロイです。本日の案件は聞いていますよね?」


「あ、ああ…」

少し苛立ちながらゼノンが自己紹介をしている。というのも朝一で来たというのに領主に面会出来たのはお昼過ぎだからだ。

私も結局本の山の中で寝ていてあのベッドを使えてない。何度か思うが私がくる必要性はあるのか?出来れば七つの海を航海し様々な魔法武器や防具を手に入れた老人の話の続きを読みたい。それにあの沈み込むようなベッドを今日こそは使いたいものだ。

「とりあえずなぜ我々がこれほどまで待たされたのか理由を教えていただきたいのですが?よろしいでしょうか?」


「それはですね…」

少し気まずそうな顔をしながら隣の秘書らしき女性と顔を見合わせる。

だが、すぐさまにこちらに顔を向ける。

「…先月に辺境のロベリア領でとある事件が発生しました。 かの悪逆非道な病魔を招く者(ペストウォーカー)が領主アーノルドの家に盗賊を連れ攻め込んだのです」


「待ってください!では、我々は怪しまれてたのですか!」


「申し訳ありません…ですが、彼は3年もの間捕まらず…先月の事件の際も盗賊は全滅しましたが、かの血濡れのピエロからも逃げました…」

ピクリと剣闘士の眉が動いた。アベンさんもそうだがピエトロさんも中々に恨まれているらしい。

「話に割り込んで申し訳ありません。質問の方よろしいでしょうか?」

フレシアがずいと身を乗り出し、興味深げに一つの質問をする。それは私も気になっていたことだ。

「なぜピエトロ=アウナレスや…キラレイス王国は彼の情報を公開しないのですか?そうすれば直ぐにでも情報が出て捕縛されるのではないですか?」


「…王の考えに私がどうこう言うつもりはありませんが…彼の起こした事件の数々は一重に謎の能力が関係しています。それに名を語り悪事を働くものも多く判別が出来ないのです。それにいつ発動するか、魔法なのか?固有技能なのか?それとも他の何かがあるのか?まあ名前に病魔なんて付いてるから病魔魔法なんて番外魔法を作り出したのか…仮にそうだとして一つの街を即座に滅ぼす力…」


「……。」


「わかりますか?今、街の中を奴がなんの罪の心も感じずに闊歩してる。気分でこの街が滅ぶかもしれない。ああ、もちろん本人がここにいるとは限りませんがね?彼の情報が公開されれば英雄に憧れる者や裏の者、それに能力目当てに接触する者もいるでしょう。まあ私が病魔を招く者だったらたまったもんじゃ無いですよね。その能力を街中だろうが王都だろうが使いますよ」

怖いですよねと一言。フレシアも思わず黙ってしまう。

アベンさんが…あの人が本物なのか偽物なのかそんなことどうでもいい。

ただ、この人の言うようにスライム達か…もしくは私の知らない能力なのかとにかくあの人は息をするかのように人を殺すし罪悪感など一切感じない。そんな人だ。だから私はきっとあの人に殺される。裏切った私を…あの盗賊の様に惨たらしく。

「カルミア様…?」


「…なんでもないわ」


「すみません、暗い話をしてしまって。ああ、そうだ竜の話でしたね。たしかにここは貴方の先祖の倒した竜が襲った村だった場所です。復讐かはたまた別の何かか…わかりませんが任せてもいいのですね?」


「ええ、もちろんです」


「なあ、領主さん。安心してくれ俺達ゃ強い。そんじょそこらの冒険者よりな。あんな飛び蜥蜴簡単に殺してくるからよ。あんたはいつも通りにしてりゃいい」


「ありがとうございます。ですが万が一…億が一にも何かあるかもしれません。もしよろしければ冒険者ギルドの方で仮のメンバーを募ってみてはどうでしょう?新たな同士が見つかるか、見つからなくとも広く貴方方のご活躍は広がりますので」


「…そうだな。よし!そうしよう。時間を取らせてしまってすまなかった。1週間後。霧の森探索及び竜討伐を行いたいと思う」


「ええ、わかりました。よろしくお願いします」

固く握手を結ぶ2人を横目に何人の死亡者が出るかと考える。最悪勇者も死ぬだろう。

その前に私は殺される。少しでも楽しかったんだ。檻から抜け出して少しでも外の世界を見れたんだ…悔いはない。

「カルミア様…あの…お体の方が優れないのですか?顔色の方が…」


「問題ないと言っているでしょう。フレシア、貴方も勇者の一行なら私ではなくそこの耳長を含めた連中と話しなさい」


「も、申し訳ありません!」

街長の家を出て、冒険者ギルドに向かう最中にテーラム商会が視界の片隅に映る。

今日も繁盛しているらしく次々とお客さんが出てきている。私達がいなくてもきっと大丈夫だろう。

「さて…ゴホン!私はバルバトスから来た勇者ゼノン=ディロイだ!これから1週間仲間を募る!竜狩りだ!力を誉れと思う戦士達よ!僕の英雄譚に名を刻む同士とし迎え入れよう!」

ギルドに入り開口一番に大声で叫ぶ。

一瞬静まり返ったが直後に大嵐でも来たかのように雄叫びや歓声が其処彼処から聞こえてくる。

ああ…殺されるまでつまらないなぁ。


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