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十六匹目 商魂逞しき凡人

握州でーす☆はーい、なんかやる気がモリモリ出てたので書けました!書けましたよ!

いやー、また暑かったり寒かったりとヤベェイ天気ですが僕は元気です。はい、アベン君達が街へと入りました。相変わらずこいつ語彙力ねえなぁwww程度に生暖かい目で読んでくださると幸いです。

話変わりますけどトラとロックでベストマッチしたらアマゾン溶かす雨降りそうですよね?

『ほれ、わしが送れるのはここまでじゃ。気を付けよアベン?カルミアもじゃ。何かあったら森に逃げてくるとよい』


「はい!」


「胸はって言ってるが実際飛んでるのホワイトなんだよなぁ…」


『ふふ、大老。昨日の夜泣いてたんだからね?また、アベンが行っちゃうって用事済ませたら早く戻ってくるのよ?』


『こ、これ!言うでない!』


「はぁ…わかったよ。用事済ませたら暫くゆっくりさせてもらうよ」


『本当か?待っておるぞ?すぐに済ませるのじゃぞ!』

ホワイトの背中でぴょんぴょん跳ねながら嬉しそうにしているのを見ると本当に10000年も生きてるのかと思うが言わないことにしておこう。

「行ってきまーす!」

街まで多少距離はあるがそんなに時間がかかるわけではない。のんびり行くとしよう。




「検問とかないんですね」


「ここは、冒険者の始まりの街だ一々相手してりゃ日も暮れちまうからな。流石に露店を出すには許可が必要だからな」

街の中は活気は凄まじく始めて見る光景にカルミアは目を白黒させている。

さっさと売るもんだけ売ろうと冒険者ギルドを見つけ向かう。

「アベンさん!ここ、あれですよ!勇者の伝記の最初の街!ドラゴンステーキですよ!分厚いお肉に溢れ出る肉汁!凄いですよね…食べたいです!」


「期待の眼差しを向けてきて悪いがその金を誰が出すんだ?」


「え?でも…私お金持ってないし…私物も無いし…あ、あと服もその…下着も…アベンさん奢ってくれないかなぁ?って」


「そこの裏通りを行けば娼館あるから5.6人に抱かれれば暫く金には困らないと思うぞ?」


「いや、あの。本当にごめんなさい」

即座に謝ってくるが周りには人がいる。奥からひそひそと声も聞こえてくる。勘弁してほしい。

「お前も頑張って集めたんだ。金は渡すからその後にしてくれ。だから今すぐ頭を上げろ」


「!!アベンさん優しい!早く行きましょ!」


「わかったから白衣を引っ張るな。縫い合わせたばかりなのにまた縫うはめになる」

冒険者ギルドと看板に書いてあり、かなりの大きさの建物がある。

中に入ると街以上に活気…暑苦しいほどの熱気がある。

各々が自分の武器や防具を持ち、国から、或いは個人からの依頼をこなしていく。

依頼には難易度、冒険者にはランクがある。見習い、銅、青銅、銀、金、白金と順番にあり腕にそれぞれの印を持つ腕章を付けている。

奥の受付のところに行くと、愛想悪そうな男性がいる。主に冒険者の依頼や報酬の受け渡し、それに買取などを行なっている。

「魔法結晶売りたいんだが、いいか?」


「え…?ああ、はいはい。どうぞ。」


「これだ。よろしく頼む」


「…偽物じゃないんですか?こんな、色合いのやつ見たことありませんよ?」


「いいから鑑定メガネ使えよ。お前の目ん玉に聞いてんじゃねえんだよ、ブむぐ」


「アベンさん!まずいですって!」


「チッ…はいはい、わかりましたよ。えーと…ああ、これ偽物ですね。ったく時間使わせないで貰えませんかね。子供の遊びに付き合ってる暇はないんですよ。お次の方どうぞー」

適当に鑑定メガネをかけ見もせずにそう行ってくる。

思い切り机を叩きカルミアが睨みつける。一方の男性は詫びれた様子もなく次の人を読んでいる。

「何言ってるんですか!これは結晶むぐ!」


「邪魔したな。流石の王国の魔導師様でもその頭は直せないと思うぜ」


「ガキが遊びに来る場所じゃねえんだぞ?ほれ、邪魔だ帰れ帰れ!ぎゃはは!」


「泣いちまいますって!ふふっ」

後ろから来た2人組みに笑われてしまう。

腕の紋章は銅。大したことない連中に笑われてしまった。

「ほれ、行くぞ。時間の無駄だ」


「で、でも!」


「金のことなら心配するな。他に当てはある」

どちらにせよ居づらいから出るとしよう。

しかしどうしたものかと考えているとギルドを出てすぐに声をかけられる。

「よかったら私の所で貴方の商品を出しませんか?」

四十をすぎる年齢だろうか、スーツを着て身なりを整えた男性が話しかけてきた。人のいい笑みを浮かべているが…急になんだ?胡散臭すぎる。

「お前、ずっと見てたな?で、いいタイミングで話しかけてきて安く仕入れるつもりか?」


「い、いや!決してそういう訳ではないんだ!ただ、私も同じ商人として商品が無駄になるのはと思うと…」


「ああ、そうか。疑って悪かったな」


「アベンさん、言ってたのはこういう意味だったんですね!」


「嬉しい誤算ってやつだ。ああ、俺はアベンです。薬師で、こっちは弟子のカルミア」


「あ、よろしくおねがいします」


「よろしく頼むよ。僕はレイズ。レイズ=テーラムだ。テーラム商会の2代目さ」

男性はにこりとまた笑う。

悪い人間には見えないから、本心なのであろう。

「商会ってことは相当でかいとこなのか?」


「ああ、いや…まあ…あはは…」

お茶を濁すように目を逸らす。

2代目はダメなのかと思った。彼に言われ着いて行くと、街中にある巨大な建物に入っていく。

明らかに他より規模がでかいが、逆にほとんど客がいないのも奇妙なものだ。

中は階層ごとに分かれているらしく一階部分に食料品と奥に居住スペース、二階部分に武器や防具、日常品、三回部分にポーション等が置いてあるらしい。

「大きいですね」


「客がいないのは時間帯の問題か?」


「いやー…ちょっと事情がありまして…あはは」


「見てくださいアベンさん!林檎です!林檎があります!高級品ですよ!」


「わかってるならわざわざ持つな。落としたらどうすん…あっ」

言わんこっちゃない。落ちた林檎は案の定傷がついてしまう。

市場で確か銀貨60枚分だったか?

「服脱いで娼館行ってこい。手前の責任は手前で償え」


「うう…ごめんなさい。ちゃんとお金払うので…アベンさんの商品は是非…」


「あ!だ、大丈夫ですよ!どちらにせよ、廃棄する一歩手前のものばかりだったので…」


「え?捨てるんならください!」


「お前…」


「構いませんよ。商品達が可哀想ですからね。嫌でなければ食べてあげてください」

よく見れば値段が相場と比べ異常なほど安い。

他の商品も似たような感じであり専門家ではないが色艶的にかなりイイものを仕入れているのだろう。値段もかなり妥当だ。

「売れないのですか?値段も庶民でも手の届く範囲。品質もいい。これで売れないってのはおかしいですよ」


「これ、私達の結晶とか売れなくないですか?」


「…露店許可書発行しにいくか…割と高いんだよな…しかも売上の四割寄越せって」


「ま、待ってください!まだ、話が!」


「おーい、邪魔するぜ〜」

期待外れだと店を出ようとした矢先にそこそこいい防具を着た男性とその連れの男たちが入ってくる。

恐らくは冒険者か、それと類似した事をしている連中か。

どちらにせよ意地汚い笑みを浮かべレイズの方へと歩いてくる時点でまあ、ガラの悪い連中なんだなと思う。

「よお、レイズさん。借金返してもらいに来たぜ」


「あ、ああどうも、ランパスさん…あのお金の方ですが…もう少し待っていただけないでしょうか…なにぶん客の入りが悪っ⁉︎」

おどおどと言い訳のように言っているのが気に食わなかったのか胸ぐらを掴み持ち上げる。

借金してまでここを営業するとは商魂はある奴なんだなと二人して見ている。

しかし聞き覚えのある声だと記憶の整理を始めるとだんだんとあちらもヒートアップして来たらしい。

「なあ?あんた俺らに金借りてよ?それで、このチンケな店やってたんだろ?そのくせして、金はねえだ?笑わせんなよなあ、おい?」


「で、ですから!必ず返すので!妻は寝込んでおり、息子も行方知らずのまま!これでは商売などやってられません!ましてや、従業員にすら給料を払えない始末です!どうか、もう少しだけお待ちください…」


「おい、お前よ?ランパスさんが優しく言ってやってるうちが一番だぜ?キレたらおっかねえぞ?それによ?仮に俺らの事を憲兵にでも突き出せば裏に誰いるかわかってんだろ?おい?聞いてんのかよ?」

ランパスに乱暴に離され呼吸を整えていたところに腹部に一発。

取り巻きの一人が蹴りを加えレイズが丸くなったところを周りの連中も集まり必要に蹴りを入れている。

「申し訳ありません、申し訳ありません」


「ああ、わかった。だが、俺たちも商売でやってるんだ。親切心なんかじゃなくてな?利子は倍にしとくから、来月には払ってくれよ?」


「…アベンさん、見てるだけでいいんですか?ぱぱぱっとかっこよく殺さないんですか?」


「俺は善人気取りでも自己満足の為に戦う英雄でもないんだ。面倒事に巻き込まれたくない」


「チッ…おいさっきから何見てやがんだお前ら見せもんじゃねえんだぞ」


「じゃあ店の外でやれよ。こっちは商品見てんだ」


「あ?おいお前、ランパスさんになんて口聞いてんだよ?ぶっ殺されてえのか?あぁん?」


「どけ、てめえら。おいガキ、口の聞き方がなってねえようだな。躾してやろうか?」

ランパスが先程レイズにしていた様に胸ぐらを掴んでくる。

しかし本当に聞き覚えのある声だ。

こんな感じで弱い奴に徹底的に強気でくるチンピラ。記憶の片隅に…

「…あっ、思い出した」


「は?」


「ここ、俺の捨てられてたスラムのあるところだ」


「えっ…それ、最初に気付きません?」


「気付かない。そうだそうだ、お前スラム街で媚びへつらってた、チンピラだろ?強者に縋って、弱者にはとことん糞みてえなことばっかして…痛い」

最後まで言う前に思い切り地面に叩きつけられる。

もったいない。せっかくの高級品がお前のせいで砕けちまったじゃないか。林檎なんて次いつ食べれるかわかったもんじゃないと言うのに。

「てめえ、調子こいてんじゃねえぞ?ここのスラム出身なら知ってんだろ?ハームさんのこと。スラム牛耳ってた方をな?そのハームさん直属の部下だぜ?俺はよ。しかし、スラム出身にしてはいい身なりしてんじゃねえか?ええ?それによ…」

ちらりとカルミアの方を向く。もうこいつ毎度犯されそうになったり変な目で見られるから一層のことここに捨てていこうかと思うが…愛着は若干沸いているためそれはやめておこう。

「ひひ、そうだ。ランパスさんこいつ貰っていきましょうや」


「ああ、そうだな。久しぶりに上玉だ。レイズ、運が良かったなこの女のお陰でてめえの客の粗相と借金少し軽くなったんだからよ」


「待っ、待ってください!その子は何も関係なガハッ」


「誰が意見していいって言った?お前この街で俺らに逆らって生きていけると思ってるのか?」

ああ、なるほど。このチンピラ達はどうやら上司の威を借りているらしい。

ゼラニウムも似た様な事してたなと考えるが優先事項はカルミアのことである。

別にどこで孕んでこようと勝手だが、出来れば状態のいいままの方がありがたい。

「なあ、ミア。こんな時ってどんなこと言えばいいんだ?」


「やはり王道の俺の女に手を出すな!がいいと思います!寧ろそれがいいです!」


「OK。お前に聞いた俺が馬鹿だった」

もっとこう挑発的な言葉を求めていたが解釈違いをしたらしい。

アベンさん話してるだけで相手を煽ってますよとこちらの意図を汲んだらしく目で訴えかけてくるが無視をする。

「は?お前さ…」


「その言葉聞き飽きた」

ランパスの左右を何かが通り抜ける。

振り返るより早く後ろの取り巻き達が泡を吹き、或いは全身を小刻みに震わせながら倒れる。

倒れた全員の首筋に深々と注射器が刺さっている。中身は空のため薬液が体内に注入されたのだろう。

「レイズさん、借金無くなって、息子が帰ってきて、嫁さん元気になって、商売が昔の様に繁盛する作戦あるけど乗る?」


「あ…ああ!だが、大丈夫なのか?そいつらは本当にヤバい奴と繋がってるんだ…アベン君、誰でも知っていると思うがね」

レイズの言葉に被せる様にランパスが芝居掛かった口調で言葉を紡ぐ。

「病魔を招く者が俺たちのバックにいる。ひゃは、ひゃははははは!てめえはもう終わりだよ!病魔を招く者の部下に手ェ出した!その時点でてめえの人生終わってんだよ!その女を差し出して、許しを乞え。土下座してな?惨めったらしく頭を地面に擦り付けろよ!」

暫く静寂が店の中を包む。

カルミアが必死こいて笑いを堪えているのがわかるが頼むから笑わないでくれ。一方のレイズは顔を真っ青にして「もうだめだ…神様」と、ランパスは勝ち誇ったかの様ににたにたと笑っている。どうすればいいのだろうか?とりあえず怖がっておけばいいのか?

「わ、わー…怖いよー助けてー」


「ぶっふぅー!アベンさんやめ!我慢してたのに!あはははは!」


「お、お前ら頭おかしいのか?病魔を招く者だぞ⁉︎そいつにこれから先狙われって⁉︎イ、ギャァァァァ!腕が!俺の腕がァァァァ!」

5号が鉈に擬態し、思い切り振り被り鉈で切りつける。一撃で容易に鎧を切断し肩から腕を切り落とした。

擬態と言っても硬度や切れ味は5号のさじ加減のためか予想以上に切れ味がよくて思わず店の床に深々と刺さってしまう。

「はぁ!はぁ!なんなんだよお前ら!こんな事してただで済むと思ってんのか⁉︎」


「その、お前らの裏にいる病魔を招く者が本物って保証はどこにあんだ?名前語ってるだけの三流だろ?」

自分が本物と言い切りたいが最近、偽物や名を借りて悪さしてる奴らが大勢いるため本当は自分もそいつらの同類じゃないか、自分を病魔を招く者だと思い込んでる一般薬師なのではと思う。

どちらにせよ最低な人間であることには変わりないが。

「ああ、ああ。レイズさんすみません。店汚くして。すぐゴミ掃除するんで」


白衣の裾から2号が今か今かと待ち構えている。

情報はどちらにせよ4号に喋らせればいいか。

「お、おい待て!俺はこの街を仕切る男で!裏にスラムを牛耳るハームさん、それに病魔を招く者も…おい、やめろ来るな!こっちに来るな!嫌だ!頼む命だけは!」


「そこはまず金ならいくらでもやるーとか謝罪が先だろ」

頭から一気に両断された表情は驚くほど絶望に染まっている。他の連中に比べれば楽に死ねただろうにと思う。

無論、他の連中はまだ生きている。

餌は新鮮な方がいいからな。




「ほ、本当に大丈夫なのですか?」


「ん?ああ、安心しろってこいつらは別に襲ってきたりはしない。それに血の匂いも汚れも一切残さずに綺麗に食べてくれるからな。俺も腹減ったから、廃棄する物教えてくれ、ミアが味のする炭を作る」


「絶賛お料理練習中です!目指せアベンさんの褒め言葉!」

今さっき人を殺したとは思えないほど気楽に話をしている。

自分など先ほどの光景を思い出しただけで胃の中身が口から溢れそうになるというのに…

とりあえず林檎は潰れたのを含めて貰っていいだろうと手に沢山抱えている。

「い、いや…僕は食事はいいよ…うっぷ…奥の台所を好きに使ってくれて構わない…店も暫くは閉めないといけないな…並んでる商品は悪くならないうちに使ってしまってくれ、僕は奥に避難してた従業員達に帰っていいよと伝えて来るから…」

子供か?もう従業員などとっくに逃げ出しているだろうに。

それでもとりあえずこの場から離れたい。

べっとりと床や壁に付着した血。両断されたランパスの遺体に生きたまま溶かされていく男たち…

彼らは決して良い人間ではなかったが…これではどちらが悪者かわかったもんじゃない。

いいことと言うべきか悪いことと言うべきか、客などは来ないからこの惨状を目撃されることはないが…

「そうか…まあ、あんたが俺らに対してどんな感情を持っているか大体予想はつくからこれだけは言わせてもらうよ。あんただって運が良かっただけでこちら側の人間の可能性もあったからな?」

感情の籠らない冷たい目でこちらを睨んでくる。

一瞬心臓でも止まるかと思ったが…深呼吸をして落ち着こう。

「アベンさん、海鮮パスタとグラタンとアップルパイと!それから何にしましょう⁉︎」


「炭じゃなきゃなんでもいい」


「大丈夫です!なんだか今日は行ける気がします!」


「頼むからマトモな物を作ってくれ」

僕は…僕は一体なにを取引しようと思って彼らに声をかけたのだろうか…




「見た目だけはいいな。見た目だけは」


「それでも頑張っ方ですよ⁉︎こないだに比べたらいいじゃないですか!」


「あの殺人スープ?2号が身体中の水分が脱水して大変だったからな」


「そりゃあ…申し訳ないと思ってます…にーちゃん…」


「じぇりっぷぅ…じぇりる!」


「腹一杯だから気分悪くさせる様な事言うなだとよ」


「絶対違いますよね⁉︎」

少し気分が落ち着いて台所兼リビングへ来ると2人が食事を開始したところだった。

鼻孔をくすぐる美味しそうな香りと脳裏に焼き付いた鮮血のせいで頭の中がよくわからない状態になってはいるが、とりあえず話だけはと席に座る。

「あ、レイズさんも食べます?今回は中々にいい出来ですよ‼︎都市魔力でしたっけ?地下に通ってるの?あれのお陰で簡単に火もつくし、お風呂も沸かせたりライトを灯せるんですよね?凄いですね!画期的です!」


「あ、ああそうだね」


「よく考えてみたら、こんな店で商品出しても金にならないが。まあ、あんたのとこの商会に活気が戻ることを祈ってるよ」

ズルズルと汚らしい音を立ててパスタを食べているアベンはそんな事を言っているが実際やる気があるのかどうかはわからない。

一方のカルミアの方はと一応はマナー良く食べているが…まあ、なんとも言えない。

そんなことを考えてないと思考がまとまらない。

「それで、一体どんな作戦なんですか?」


「ん?ああ。ハーム殺して終わり」

思った以上に物騒な考えだった。もっと、街の人々と地道に信頼を戻していくとか他にあるだろう。そんなことを考えているのを見透かされたの一言なのか

「聞いてなかったが、もしあんたの息子と売り上げが下がり始めたのが同じくらいの時期なら俺が言いたい事は理解できるだろ?その通りなら今更街の人間に話したところで客なんか来ないよ」


「街の人たちも脅されてるとしてたら楽で、簡単ですよね。大衆は愚かですから、そこに真実があろうが無かろうが関係なく信じ込みますし」


「裏に病魔を招く者がいる。人質は街であり、家族であり、友でもある。別に今降りるってならいいよ、他に当てもあるし」


「……」

彼の言う通りだ。息子が行方不明になり、そのせいか妻が寝込んだ。畳み掛ける様に従業員達がやめ、食材や防具を仕入れて居た問屋からも急に契約を切られた。

そんな時に彼が…ランパスが甘言の様に言葉巧みに丸め込み金を借りることになって…それから…

「まあ、結局の話。ハームの野郎はあんたの事が気に食わないから潰しにかかってきたのだろうよ。あとは連中の好きな様にすればいいからな。さっさと決めた方がいいよ。さっきみたく流れでじゃなくてしっかりとな。ランパスが死んだのがバレれば今はまだ生きている息子も死ぬことになる」


「っ‼︎一つだけ聞かせてくれないか…やり方や言動は危険そのものだが…どちらにせよ僕を助けてくれる…それはなんでだ?」

食べ終わった食器を流しで洗い流しているアベンは考えもなしに「商品売る為」とキッパリ言っている。

「私はアベンさんについて行きますよ!なんてったって弟子なんですからね!大丈夫です!もしもの時は私ごと殺っちゃってください!」


「元からそのつもりだから。死んだら塩漬けにして大切に保存しとるよ。大老が」


「アベンさんが大切にしてくださいよ!」

この2人はなんなのだと再三思う。

「君たちは本当に何者なんだ?」


「ん?旅の薬師」


「その弟子です!」

変わらない返答にまたもや思考が混沌と化す。

言ってはいないがランパスは冒険者としてもそこそこ有名であり彼の持つ鎧はミスリル合金である。

それすら難なく両断した彼の鉈…いや、そもそも彼はいつ鉈など取り出したのだろうか?それに黄色いスライムが店にいた取り巻きを生きたまま溶かしていた。あれも見ているだけで気分が悪くなってきたが、そもそもの話だ。あのスライムはなんだ?

不安は残るばかりだが…きっと…きっと息子が帰ってくる。妻も戻る。父が残してくれた商会も昔の様に…否、昔以上に活気を帯びるようにする。その為になら、多少手を汚しても構わない。

ああ、だからか。私も根っからの商人気質だから彼らを見据えたのか。

「ところでミア、オーブンの中身どうした?」


「あっ…」

本当に大丈夫なのだろうか?




『ランパスか。どうした?』


「ハームさんですか、いやー参りましたよ。ほんの少し…手こずりましたね。危うく死ぬところでしたよ。まあ、大丈夫そうですがね。それで、レイズの野郎まだ金が返せないなんて言ってくるんですぜ?」

『通話』で声を聞いた限りだと笑ってる様に聞こえる。

とても楽しそうに。だが、同時に怒気を孕んでもいるような、そんな声の主が…ハームが

『俺たちが街の奴らを脅してるなんて知らないだろうよ。さっさと店を開け渡せばいいものをな。おい、ランパス』


「なんでしょうか?」


『殺せ。そうだなぁ…嫁の介護に疲れて首括った様に見せかけておけ。遺書でも書かせて一家心中したみたいにな』


「ガキの方はどうしますか?」


『俺が売りに行く。あの馬鹿が憲兵に俺らをつき出した時ように生かしといたが利用価値はもう無くなるからな』


「流石ハームさん!強いだけじゃなくてあたままで良いなんてよ!俺は本当にあんたの部下でよかったぜ!」


『くく…世辞はよせ。決行は今夜だ。しくじるなよ?ランパス?』


「勿論ですよ!期待しててくださいねハームさん!」

そこで『通話』が切れる。

さて、主人に伝えに行くとしよう。主人の記憶の中にあるハームという男は、主人的にはどうでもいいらしいが少しだけ因縁があるらしい。どちらにせよ話し方からしても品のない奴そうだと4号は内心北叟笑みながら主人の待つ家へと戻るのであった。

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