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十一匹目 疑心暗鬼

ハァーイ、握州でーす!

やっと新生活も落ち着いてきて月2頑張れそうです。いえ、頑張ります。はい。というわけで、あれです。戦闘パート其の弐です。

頑張りますた。相変わらずの語彙力ですが…まあ、生暖かい目で見てくださいまし!

あ、今回。僕の個人的なあの…えーと…そう!煽りとか意見があるので悪しからず!では、ごゆっくりお読みください。ペペン。

「ウルイ。いくら泣いたってヤルマは帰ってこない。辛いのはわかるがアーサーを追うぞ」


「はい…ヤルマ、仇は取ったからね…ゆっくり休んでね」

氷槍に貫かれ全身を氷漬けにされた病魔を招く者は先程砕いた。あれだけ騒がれていた犯罪者がこんなにも簡単に死ぬとはなんとも拍子抜けだ。いつもの偽物なのかもしれないがピエトロが言っていたとなると本物なのかもしれない。

「仇と言うのは僕に対してかい?それともご主人に対してかい?」


「ひっ!」

声の主は先程絶命したはず…なのに…

「どうなってんだ…?砕かれて顔半分で…」


「あれさ、スペックの違い?ってやつ?僕らは弱くても生命力は強いからね」


「…化け物め」


「違うさ。僕はスライム。君らが最弱と罵るスライムさ。まあ、その子は僕が殴ったら首が飛んだけどね」


「っ!!スライムが…スライムがそんな強いわけないでしょ!ヤルマを…ヤルマを殺して…ゆ、許さない!」


「許さなくたっていいさ。安心しなよ。ご主人の命令でもう殺したりはしないさ」


「なら、こいつはどうだよ!」


「君、加速系の固有技能だろ?加速する。それだけだ。どうやっても僕には勝てないよ」


「やってみなきゃわから…⁉︎」

加速からの一閃。魔法攻撃が駄目でも物理攻撃は…考えが甘かったようだ。首は撥ね飛ばした。それすら気にも止めずに今度はこちらへ腹部への一撃。

「ごふっ…」


「メ、メリダさん!」


「大丈夫だ…それよりも、構えろ!くるぞ!」


「は、はぃぃ!」


「さあ、頑張りたまえ!僕は少し加減して相手をするよ!」


「うぁぁぁ!!!」

ウルイの固有技能は洗脳までに時間もかかり戦闘には全くと言っていいほど役に立たない。しかし彼女の剣を握る手が痛いほどその柄を強く握る。

「お、おい!待てよ!ウルイ!俺だよ!」

魔法で距離を詰める。余裕をかましていたスライムは驚いたような表情をしている。だが、振り下ろした剣は止まってしまった。目前の敵はいつのまにか同僚へと姿を変えていた

「ウルイ!騙されんな!ヤルマはさっき死んだだろ!」


「あ…あう…」


「どうしたウルイ?ああ、入れ替わったんだよ。さっきな。アイツはも死んでるさ。お前、落ち着けよ。いつもそうだけどちゃんと確認をしろよ?な?」


「あ…うわぁぁん!ヤルマぁ!」


「くそッ!だから、反対してたんだよ!」

ウルイは騎士団の中でも仲間思いな方だ。別に他の連中が仲間を大切にしてないわけではない。ただ、誰かが傷つく度に涙を流す。仲間思いすぎるのだ。

腹部への痛みでダウンなどしてたまるかと歯を食いしばり能力を使う。ウルイが奴に触れる前に彼女を奴から離す

「落ち着けウルイ!見た目で判断されるな!遺体があんだろ!」


「で、でも!」


鉄の棺桶(アイアンメイデン)ならぬ肉の棺桶(ヒューマンメイデン)なんてどうかな?洒落てるだろ?」


「…わかったろ?お前がハグでもしようもんなら串刺しだ」

目の前にいたヤルマは体の前面から無数の針を突き出す。もしも自分があのまま抱き着いていたら…背筋に嫌な汗が一筋流れた。

「ウルイは…優しい奴なんだ…お前はそれを踏みにじって!仲間の皮を被って近づいて!絶対に許さねえ!」


「二度目かな?言ったろ?許さなくてもいいって。まあ、いいか」


「ふざけるな!」


「ははは!まあ、いいさ。改めて自己紹介させてもらうよ。僕は擬態のスライム、4号。いい名前だろ?ご主人がつけてくれたのさ。僕の能力は単純だ」

ずるりと先程と同じ。おそらく病魔を招く者だろう。白衣を着た少年へと姿が変わる。

「もちろん、姿形だけじゃない。魔力も固有技能もそして記憶さえも擬態する」

再びヤルマの姿になりにたりと口角を上げる。ウルイの方はと意気消沈していて時折なにかを呟いている

「彼は面白いね。女癖がとても悪い。そこの子を含めて9人もの女性と肉体関係を持っている。しかも、娼婦じゃなく普通の女性とだ。決め台詞は『平和にしたこの世界で俺と一緒に過ごさねえか?』ははは。いいねえ、気持ちよかったかい?ウルイ?君は彼の記憶だと…」


「黙れ!いい加減にしろ!」


「ははは、まあいいさ。頑張ってくださいよメリダ先輩。じゃないとまた妹さんを危険な目に遭わせちゃいますよ?」


「貴様ぁぁぁ!!!」

加速する。自分の固有技能はただ加速するだけだ。そんなことは知っている。まだだ筋繊維が悲鳴をあげる。それがどうした?もっと。もっとだ。バラバラにすれば炎魔法で簡単に処理できる。廊下で戦ったのが運の尽きだ。

「単調な攻撃じゃあ、僕は倒せない…⁉︎」


「その気になれば残像だって作れんだよ!」


「おいおい。スライムのシュラスコかい?切り刻まないでくれよ。僕は再生が苦手なんだ」


「だったら大人しく刻まれやがれ!」

ウルイも意図を汲んだのか炎魔法で次々と落ちた肉片?を燃やしていく。言葉通り回復が追い付いてないところを見ると本当のことらしい。スライムは距離を取ろうとするがそれよりも先に足の肉を削ぐ。詰みだ。あちらの攻撃より先に剣が肉を削いでいく、丁寧に…人間相手に使う技じゃないが相手がスライムなら…ましてや大切な後輩を殺した化け物だ。そう考える間もどんどん体を削っていく。

「おいおい、勘弁してくれたまえ」


「ッ⁉︎メリダさん!」

勝利を確信した。その一瞬の気の緩みで…処理損ねたのであろう肉片は針のように細く鋭く…体のあちこちへ刺さる。それだけならまだ大丈夫だったが毒でも塗ってあるのだろうか体から感覚が消えていく。

「惜しかったね。いや、とても惜しかったよ!本当にさぁ!でも詰めが甘いよ!」


「…ウル……イ」

急激に痛くなってきた頭と揺れる視界を見ながら動かなくなっていく体を嫌という程感じ、そこで意識は途絶えた。



「あ…あぁ…」

針はメリダの体から勝手に抜け落ちると小さなスライムになりやがて元に戻っていく。やがてはスライムの全身が元の状態へ…ヤルマの姿になる。メリダが付けた傷はもうほとんど消えて無くなっていた。私は馬鹿だ。スライムが再生するのが苦手だなんて言った。その言葉を信じていた。そんなわかりやすい嘘を。目の前のスライムはにこりと笑うとこちらへ向かってのんびりと歩いてくる。

「君が僕の欠片を燃やし損ねたから」


「⁉︎」


「君が殺したんだよ。ヤルマ君もメリダ君も」


「ち、違…」


「お前のせいだ。なんであの時俺を止めなかった」


「やめて…ヤルマの顔で!声で!こっちに来ないで!」

わかってる。これはあいつが擬態した姿だって。でも、心が。目が。目の前の化け物をヤルマと認識してしまう。

「なあ、どうして助けてくれなかったんだ?」


「ひっ!」

どろりと顔が溶けて今度はメリダの姿になる

「気を抜くなと言っただろ?お前がさっき、気を抜いたから俺は死んだ。なあ、わかるか?」


「違う!」

一歩また一歩と後ろへ歩が進む。そのうち床に転がっていたものにつまづいてしまう

「「全部お前のせいだ」」

転がったヤルマの首が、目の前の倒れたメリダが声を揃えて話す。

「あ…うわぁぁあぁァア!」

もう嫌だ。全部。全部私のせいだ。全部…ぜん…ぶ…



「はあ、全く。僕はあまり戦闘が好きじゃないんだからさ?勘弁してくれたまえよ」

誰に語るわけでもなく、ただその足取りはスキップでもしてるように軽やかにスライムは主人の元へと向かう。そろそろ時間切れである。自分の能力も彼女の寿命も。

「まあ、スライムの時の方がご主人の手の中に包まれられて気持ちいいけど…いや、やはりオリジナルの人間状態を作り頭を撫でてもらったり、もっと肉体的な接触を…うむむ…」

先の戦闘で気絶している2人はそのまま転がしてきた。本来なら3人のはずだが1人。話している時に攻撃してきた者にはついカッとなって頭を飛ばしてしまった。申し訳なさは残る。

「しかし、ご主人の記憶の中の騎士団は随分と手強さそうだったから念入りに準備をしたのに…まさかこんな初歩的な罠に引っかかるなんて…呆れて物も言えないよ」

服のポケット…正確には擬態した自分の体の一部から香炉を取り出し中の炭を溶かす。主人に無理を言って香炉を借りて香を焚いた。人の恐怖や不安を増幅させ幻覚を見せる。戦闘が苦手な自分にとってはありがたい話だがこれにすら気付かずに戦闘を行っていたのか、それとも主人の腕に磨きがかかったのか…ともかく国を守っていけるのかと敵ながらもキラレイスの国力に不安を感じる。


「いや…一人殺してしまったからかな?不安や恐怖や絶望。僕はあまり好きじゃないが…まあ、増幅させるだけで…はは、一人殴り氷槍で貫かれるだけの仕事か…勝手にお遊戯会を始めてくれたお陰で楽できたよ。精進してくれたまえ騎士団諸君」

彼らがどれほど強くなろうと自分の主人に勝つことは不可能であるが主人を楽しませることくらいは出来るだろう。正直そんなことはどうでもいいが。今は褒美の主人に撫でてもらうことしか頭の中にない。時間切れとなり元の藍色の手乗りスライムに戻るとぴょんぴょん跳ねて主人の元へと向かうのであった。




「はぁ…はぁ…」


「頑張れ頑張れ。これが終わればお前もマッチョの仲間入りだ」


「黙れ!」

近づけば距離を取られ遠距離から攻撃すれば黄色い壁に阻まれる。打つ手なしだ。どんどんスタミナは減っていく。一方のアベンはと言えば相変わらず眉一つ動かさないまま昼だなあなどと呟いている。

「こんなところで!くそっ!お前はなにがしたいだ!何が目的だ!」


「女が人質に取られてて、しょうがないから戦ってるんだ。理由なんてない」


「そんな戯言に騙されるか!」


「ほら、まただ。まるで悪者の話なんざ聞かねえ」


「貴様らは人間などではない、人の形をした獣だ。国を貪り、罪なき人々を犯し、殺す!そんな連中と対話など無意味だ!」


「必要悪だと思うぜ?だって、お前ら」

その表情は変わらないでも、その目には嬉しそうな色が少し浮かんでいる。

「人殺しじゃねえか?」


「なんだと…?」


「なあ、今まで何人殺した?そいつらに家族はいねえと思ったか?それとも、お前らはキャベツから産まれて俺らはみたいなのはレタスからでも産まれてると思ってんのか?まあ、俺レタス好きだからいいけど…あ、それじゃ共食いか」


「なにが言いたいんだ!」


「別にー」

なにを考えているのか全くわからない。俺が殺人鬼だと?王国に仇なす敵を屠る俺が?馬鹿げている。目の前の敵は相変わらずこちらを観察でもしてるかのようにじっと見たと思えばふと窓の外を眺めて気が抜けきっている。かなり体力を使うが仕方がない。アーノルド男爵の安否が不安だ。

「悪いが、ここからは加減はなしだ」


「加減してくれたの?いやー、助かるわ。体力ないんだよね」


「減らず口もそこまでだ」

先ほどのように剣を大振りに薙ぎ払う。ただ、今度は違う。剣の能力じゃない。固有技能だ。

「同じ手を繰り返しても無駄だ」


「じぇ!じぇる⁉︎」


「え?無理?あちゃー」

黄色い壁は突破した。しかし軽く避けられてしまう。それは想定内だ。アベンも変化に気が付いたのだろう。しかしもう遅い。

「ッ⁉︎ゴボォッ…んだぁ、こりゃあ…」


「肺が破裂した。苦しいだろ?だがな…お前に殺された3万の罪なき人々は!もっと辛かった!お前にそれがわかるか!!」


「ゴホッ…口の中血の味しかしねえし、息苦しいし…酷い固有技能だな。人殺しにゴホッゴホッ…ぴったりだな」


「…最後まで減らず口が止まらないんだな。まあいい。死ね」

もう一度振り下ろす。確実に真っ二つになる。出来ればもっと苦しめて殺したかった。

「と。まあ、こんな感じで哀れな少女の命は尽きたのでした。おしまい」


「な⁉︎」


「よお、アーサー。俺だ」

吊り下げられていた女は気付くとアベンになっていた。「ハングドマーンだよ」などとほざいている。なにが起こったのかさっぱりわからない。今目の前で斬り伏せたのは確かに…

「ど、どうなってるんだ…」

両断された少女がいた。見覚えがある…確かに先ほど吊り下げられていた少女だった。

「その子はこのクソ長い廊下の持ち主?いや…んー…まあ、伸ばしてる奴。ちょっとお薬で自分はアベン。と思い込ませてたわけだ。安心しろって、そいつも盗賊だからさ」


「…仲間だろ!なんとも思わないのか!」


「思ったらなんなんだ?救われんのか?それともお前らの身勝手な正義の執行から逃れられんのか?」


「なんだと…?」


「正義ってさ、自分らの価値観の押し付け合いだろ?じゃあ、揺らいでんじゃねえよ。黙って目の前の敵を殺せ、潰せ。なあ、騎士団?」


「だ、黙れ!俺はお前を許すことはない!俺がお前を倒す!」

仮面越しに咆哮する。必ず、情の欠片も掛けずにここで殺す。味方すら利用してこの男は自分を嵌めようとしてきた。ピエトロが言ってきたのはこういうことなのかと今更理解した。表裏がない。悪感情がない。何を考えているのかさっぱりわからない。息をするように人を殺し。道端に落ちている石を見るが如く他人を見る。この男は嗤わない。人と同じ目線で物を見て…自分の意見が全て正しいが如く。淡々と。思った事を口にしてるだけこの男は笑わない。感情の起伏はなく、目の色が変わるだけで。喜ばない、悲しまない、苦しまない。


「勇ましいね。惚れちまいそうだよ」


「覚悟しろ!病魔を招く者!」

確実に!ここで奴に止めを刺

「ぐっ⁉︎な、なんだ⁉︎」


「ああ、おかえり。お疲れさん」

なにが起こったのかわからない。急に背中に衝撃が走った。そして、アベンの手になにかがいた。橙色の小さなスライムが手の上で跳ねている。そのスライムはアベンの手から離れると黄色い壁…黄色いスライムとじゃれ合い始める。

「なんなんだ…そいつらは…?」


「見たまんまだよ。可愛らしい俺の半身達だ」


「「じぇる!」」


「は…ははは…あははははは!!そうか、社会のゴミと魔物の中の生態系の下の下。下の者どうし仲良くやってるのか!」


「流石、王国。いい教育してんじゃねえか。自分ら以外は格下か?なあなあ、母親の仇を取ったガキがいたらそいつも殺すのか?お前らの正義ってなんだ?」


「……」


「え?無視?悲しいなぁ」


「ふっ!」


「おわっ!危ねえ」


「避けるな!」

固定砲台の様に剣を振っているアーサーが叫ぶ。剣の振り方を見れば避けるのは容易だがこちらの体力が尽きるか相手の体力が尽きるか…そんなことを考えているうちに廊下に変化が起こる。

地面が揺れ始め、やがて奥の部屋が見えるほど廊下が縮む。そして元の長さに戻ると新たに3人倒れているものがいた。

「あ…4号…お前なに?一人殺してんの?面倒な唾棄なんざ生みたくねえからてめえに頼んだのによ…わかってんのか?」


「じぇ…じぇるぅ…」


「はーい、ご褒美なし」


「じぇ!じぇりる!!じぇるりじぇるる!」


「だめだ。飴と鞭はしっかりしないとな」


「おい!無視してんじゃねえ!」


「あ、ごめん。もう足止めする必要なくなった。ばいばい」


「は?」

下で戯れていた橙色のスライムが膨らんでいく。そして人ほどになると、どんどん分裂していく。

「あ、それとお前の固有技能はなんとなーーく理解したから安心して寝ててくれたまえ。気圧かー…もしくは真空状態を作り出す…まあ、いいや。じゃあな」


「っ‼︎」

目の前に気圧の壁を作り出す。内側へ力を寄せ無理矢理捻じ曲げる。スライム達が散弾の様にこちらへと飛んで

「がっ!ぐ、ばは、ら、ごはっ…」

ありえない速さでスライムが突っ込んでくる。何匹かは潰したりあるいは違う方向へ飛ばした。ただ、それだけだった。100は超えるであろうスライム達が自分の全身を砕く。アベンはと言うと興味が失せたのか奥の部屋へと向かっていく。遊ばれていた。こちらが有利だと…掌のうちだったのかもしれない…くそっ…くそ…




「あぁぁ、疲れた。2号、3号はご褒美ねー」


「「じぇる!」」


「…じぇる」


「…ああ、もう。わかったわかった。褒めてやっから。次頑張れ」

なんだかんだで許してしまう…どうしても甘やかしてご褒美…なのかはわからないが…まあ減るものじゃないからいいか。

3匹を手で包んで両手で握ってやると楽しそうに手の中で動いている。こそばゆい。我が半身ながらなにが楽しいのかはわからない。




「ゼラニウム。廊下の連中は片付けたぞ」


「おや?ありがとうございます」

部屋に入ると中に3人。ゼラニウムとそれから見覚えがないのが2人。こちらを睨みつけてくる。

「随分遅かったじゃねえかよ、病魔を招く者?名前負けしてんじゃねえのか?」


「おい、ゼラニウム。お前が居るのはわかるがなんで三下いるんだよ。」


「あ?調子こいてんじゃねえよ。やんのか?」


「1人でやってろ。おい、人質部屋って隣か?」


「…」


「なんか言えよ」


「ぎゃははは!あの女なら隣の部屋でおねんねしてるぜ?あー、早く犯してえ」


「アベン…」


「なんだよ…」

ニヤリと笑った。その見覚えのある顔は一瞬でも隙を作ってしまった。腹に縄鏢の先の紐が繋がっていた。どんな斬れ味なのかは知らないが腹を貫通して刃の部分が壁に突き刺さっていた。

「ぐっ…超痛い」


「相変わらずだなぁ!なあ!気抜くなよ!なんだ?雑魚ども相手に勝ち星上げて調子乗ったか?3年前の続きと洒落込もうじゃねえかよ!病魔を招く者ァァァ!!」


「あ、記憶あんのかよ。初めましてだとかですよね?だとかてっきり別人か怒ったら記憶なくなるんですー系の精神イかれた奴になったかと思ったじゃねえか」


「おい見ろよ。団長、人が変わってるじゃねえか」


「馬鹿!あれが本性だよ。ほら、俺らもやっちまおうぜ」

取り巻きの2人も投げナイフ、ブロードソードを構える。

「あ?あー…なんだよ、騙されてんのかと思ったが…勘のいいガキだな」


「勘とかの問題じゃねえだろ。なんだよ実力者しか開けられない鉄の扉ってよ。こんな田舎の貴族もどきの家になんでそんなもんあるんだよ。前提がおかしいんだよ阿保。盗賊やめて大道芸でもやったらどうだよ」


「腹の穴からてめえの薄汚え贓物でも一緒に出てくりゃ…その減らず口も聞き流せただろうがよ…あーあ、本当にぶっ殺してえよ…なあ!」

もう一本今度は左肩を貫通して壁に刺さる。両腕に2本ずつ計4本…その内の2本が既に自分の体に刺さり標本にでもされた気分になる。

「とりあえず抜いてくんない?凄い痛いんだけど」


「おい見ろよ。あの野郎頭だけじゃなくて感覚までイかれてやがる!団長、団長…あの女連れてきていいっすよね?そしたらあの女の四肢でも切断してこいつの前に転がして…ひひ…いひゃひゃひゃひゃ!」


「ああ、賛成だなぁ!もうさっきからよ我慢できなくてよぉ!ぎゃはははたまんねえぜ!」


「うわー…悪趣味ー。…あれ?もしかしてこれってあれ?復讐?お前の奥さん殺したことまだ怒ってんの?しつこいと嫌われゴホッ…あ、待って待って本格的にやばいから抜いて。止血したい」


「多少名を馳せていた盗賊が再結成。そりゃあ行き場のねえ屑どもが集まる集まる。あとは騎士団と殺りあわせて、俺はお前を殺す。そしたら改めて陽炎盗賊団結成だ。病魔を招く者を殺したって墨付きでなあ?」

白衣が赤衣と呼ばれてもおかしくないことになってきている。血は洗濯も大変だし空いた穴を裁縫するのは苦手なんだ…勘弁してくれ。

「ほら、馬鹿だ。まだ全員でかかってくれば勝てる見込みがあったのに意味もなく大ごとにして騎士団招く…俺のこと殺したきゃ暗殺なり、なんなりすればいいのによ。あの…なんだっけお前んとこの売女の名前。まあ、いいや。あれいないと本当になんも出来ないな。無能ゼラニウム君?あの時一緒に死んどけばよかったね」


「ひぁは…はははははははははははは!!!本っ当に頭にくる野郎だ!血管が何本あっても足んねえよ!殺す殺す殺す殺す!絶対殺す!もう関係ねえ!眼球を抉り出せ!内臓をぶち撒けろ!てめえら、あの女はあとだ。このクソ野郎を産まれてきた事を後悔させながら。じわじわと嬲り殺すぞ!脳症撒き散らしてクソ田舎に花咲かせてやれェ!」


「ぎゃははは!了解」


「調子乗った後輩にゃあ、仕置が必要だよなぁ?」

腹に紐がある以上スライムで治せない。流石に紐が腹から出てたらなんとも言えないしな。

狂喜を孕んだゼラニウムは人生で一番とも言える笑顔を目の前の屑に向けて笑う。


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