第5章 ふたりで選ぼう
「…いいの?」
少し不安げにレジの方を見る銀。
「…大丈夫。あの量なら会計に時間がかかるだろうし」
微笑んだ涼太に銀は少しだけ疲れを癒された。
「さ、どれがいい?」
行動力はないが優しい涼太を元気に先導して走り出す銀。
「これ!」
アルファベットの文字が描かれた白いTシャツを持ってきて満開の笑顔を見せる。
「よしわかった。それに合わせてコーディネートしよう」
涼太は短パンと下に着る黒の長袖を使ってレイヤードをつくった。
「あとは…」
青いジージャンを合わせて、狐のファーを着た時に使った黒のレギンスを合わせる。
「下はブーツかな」
もこもこ茶色のブーツを合わせてコーディネート終了。
「わぁ!かわ、いい!」
銀髪をさらりと揺らして、回ってみせた銀は気に入ったように服を引っ張った。
「むぅ…二人でイチャイチャしよって…」
戻ってきた明日菜が後ろで怒ったように手を腰に当てる明日菜。
銀は途端に涼太にしがみついて首を振った。
「?どうした…?銀…」
「…わたし…着たい…りょーたの…」
小さくなって強くしがみついた銀は上目遣いで明日菜を見た。
「…はは。負けちゃったなぁ…」
くしゃっと笑う明日菜は、側に控えさせている定員を呼んで、着て帰れるようにバーコードをよみこんで貰う。
(なんかもう…お得意様の接待みたいだなぁ…)
涼太は次元の違いに真顔になった。
会計が終わり、銀はご機嫌で涼太に言う。
「りょーた!かわいい?」
「うん。可愛いよ」
そう言うと、ふへへ〜と笑った。
それから色々と買ったり明日菜の爆買いを止めたりと時間は過ぎ、気づけば5時になっていた。
薄暗くなり始める外にでて、暁のグラデーションのかかる透き通った空が僕らを見下ろしている。
「は…」
白い息…寒いな…外…
「さて。服は買ったし、みんなで帰ろうか!」
明日菜は満足げにビニール袋を持ち上げた。
すでにマフラーと手袋は銀に装着されており、寒さは心配なさそうだ。
てかいつ買った。
「帰るって…どこにですか?」
聞くと、明日菜はニヤリと笑って言った。
「わたしの家だ」
えぇ〜と驚く涼太に、明日菜が「何か文句でもあるのか」と返しているのをみて、銀がくすくすと笑っていた。