9.不覚に包まれ
守は外に出てある倉庫へと連れて行った。行く途中には誰もいなかった。その倉庫の前には瞬が立っていた。
「待ってたよー。」
「お待たせ。ところで中の状況は?」
「よく分からないけど、たぶんボコボコだね。もうすぐ終わるんじゃないかな。」
「そうか、ありがとう。」
倉庫の中では激しい音がしている。外からでも聞こえる程だ。
「お兄様、これは一体何をしているのでしょうか?」
「中で雅樹が戦っているんだ。」
しばらくすると、中から雅樹が出てきた。
「やっぱりお前ら居たのかよ。泰器が俺の場所分かったの瞬、お前のせいだろ。」
「バレちゃったか。まぁいいや。零樹の所急ぐよ。」
「おい、こいつらどうするんだよ。」
雅樹がそう言って瞬を止めようとした時、倉庫が電気の柵で囲まれた。
「なっ!」
「これで、いいでしょ。」
(すごい。あんな広範囲にしかも一瞬で電気を通すなんて。世界2位はダテじゃねぇな。)
雅樹達が着いた時、零樹はいなかった。
「瞬、ここであってんのかよ。いねぇーぞ。」
「変だなぁ、GPSはここを示しているのに。」
雅樹達が探すも零樹はいない。それどころか携帯すら見つからない。必死に呼ぶも何も聞こえない。
「くく、お前さんを呼んでるぜ。早く会わせてやんねぇとな。まぁ、死んでからだけどなぁ!」
長い爪を持った男が零樹に襲いかかる。零樹は見切って蹴りで返そうとする。しかし、
「幻影!」
男がそう言うと、零樹が蹴った物は霧となった。
「厄介です。早く攻略しないと。」
そう、零樹は幻影に閉じ込められているのだ。さらに、その中には零樹のクラスメイトもいる。
「さぁ、諦めるんだな!」
男はバディの大きなトラと一緒に連携攻撃を仕掛ける。トラの吐く霧でさらに見えない。零樹は相手の攻撃を見切ることすれできなくなった。
「さっさと負けを認めて楽になれよ。」
「僕は負けを認めません!僕が負ける時は、僕の心が死んだ時です。だからまだ、負けてなんかいません!」
「調子に乗りなぁ!」
男が零樹に襲いかかる。しかし、その攻撃は外れた。
「なに!」
バイクのエンジン音が高く響く。しかし、どこから鳴っているのか分からない。
「クソっ!どこにいる!」
男の背後から零樹が攻撃を仕掛けた。
「はぁ!」
鈍い音がして男は吹き飛ぶ。エンジン音は零樹の靴からだった。バディが仕掛けるも煙りと鳴って消えた。その直後背後から蹴る。これも命中した。
「クソッ、どうなってやがる!」
「簡単ですよ。バイクの音と煙りで場所をカモフラージュしているのだけです。これで決めます。」
そう言うと男達の視界から零樹が消えた。しかし、エンジン音は全方位から聞こえる。
「はぁぁ!」
最高速で男達を弾きまくる。体がでかいバディも速さで関係ない。何度も何度も仕掛ける。ついに彼らは倒れた。それと同時に零樹が一気に蹴り上げた。
「天まで届けぇ!」
「バッコォーン!」
かなりの大きな音だ。それと同時に幻影と霧が無くなった。
「零樹大丈夫か!」
「あはは、大丈夫ですよ。みんなそろっていますね。何があったんですか?」
「とりあえずみんな無事で何よりだ。」
すると、守が口を挟む。
「いろいろと話すことがあるかもしれませんが、もう出られるようになったので、そろそろ帰った方がよろしのではないですか?」
そう言うと既に6時だった。今から帰るとクレーマーの親なら絶対何か文句を言うだろう。先生達は早くバスに乗るように促す。だが、
「雅樹と零樹は残って。」
守がそう言った。
「お兄様どうしてですか?」
「君には関係無い。さぁ早く帰って。」
「そういう訳には行きません。私も残ります。」
「仕方ない。許可します。」
守は他の人達は帰らせるようにした。普通は子供を置いて帰ることなんて許されない。これも貴族の力なのか。
みんなが帰った後、瞬、守、泰器、雅樹、零樹、姫睦は集まった。
「ここでは話にくいから場所を変えよう。瞬頼むよ。」
そう言うと瞬のスマホが彼らを包み移動させた。
移動した先は大きな体育館だった。
「ここはどこですか?」
零樹が尋ねる。
「前、僕達が集まった所の一室さ。」
「お兄様、今から何をするのですか。」
姫睦が不安そうに尋ねる。
「雅樹と零樹に戦ってもらうんだよ。」