5.新たなる世界を求めて
雅樹の前に紺の長袖長ズボンを着た黒髪の男が現れた。急に前に人が来ても雅樹は止まれない。
「やばっ!」
「ガンッ!」と、鈍い音がした。しかし、怪我をしたのは雅樹の方だった。
「痛!」
「急に前に出て来て、すまなかった。しかし、僕が硬すぎたようだったね。」
「雅樹、どうかしましたか?」
後ろにいた零樹が追いついて来た。
「君は、誰ですか?」
「そうだねぇ...ここでは“不滅”とでも、名乗っておこうか。さっきの君達の戦いはとても興味深かったよ。」
「それはどーも。本題は何ですか?」
「先日のことについてだよ。やっぱり来て欲しいなぁ。」
「貴方が彼らを送ったのですか!」
「まぁそうだねぇ。僕の目的は僕達の組織の勧誘かな。」
「それなら無理だ。さっきの話を聞いていたんだろう。」
「んー、残念ながらそういう訳にはいかないんだ。君達には入ってもらうよ。もし、断るのなら、君達の命は無い方がいい。雅樹、君なら分かるだろ?僕の硬さを。」
「ッ!でも、やってみなくちゃ分かんねぇ!俺達が協力すれば勝てる!」
「出来るだけ君達とは戦いたくないんだけどなぁ。取り敢えず組織には来てもらうよ!」
「クソッ!」
雅樹達は従はざるを得なかった。その後“不滅”に連れられ、ある場所へと向かった。
数十分で着いた。そこはとても豪華な所だった。「さぁ、入って。」
雅樹達はそのまま中へ進んだ。しばらく進み、会議室のような部屋の前に立ち止まった。
「さぁ、入って。」
彼らが入ると既にそこには4人の男がいた。その中には雅樹達が知っている者もいた。
「あーッ、来たんだ!てっきり死んだのかと思ったよ!」
「余計なお世話だよ。」
なんとそこには、雅樹達を襲った、剛田 剛志と 二峰 桐人もいたのだった。
「さぁ、早く座って。」
そこには7人分の椅子が用意されていた。雅樹達は警戒しながらも座った。
「取り敢えず自己紹介を始めよう。」
「おい!俺達はまだ入ってねぇぞ!」
「黙れ。」
“不滅”の声に周りは静かになる。
「それじゃぁ、下から頼むよ。」
「分かったー。僕は二峰 桐人 ステージネームは“剣魔”バディはシン。れーきは知らないから始めまして、だね。ヨロシクー。」
「宜しくお願いします。ところでステージネームとは何ですか?」
「ええっ!それも知らないの!困ったなぁー。“不滅”説明してー。」
「分かりました。ステージネームというのはセカンドステージ達につけられる、あだ名みたいなものです。まぁ、君達は2体バディを持っているからサードステージと呼びます。」
「ええっ!2体もいるのすごいなぁ。」
「口を挟むな。」
「ごめんなさーい。」
「取り敢えず続きを話しましょう。君達にはあらかじめ、“剣魔”達との試合を見て決めておきました。雅樹は“剛拳”零樹は“不屈”です。異論はありませんか?」
「異論しかねぇ!勝手に決めんなっ。」
「はぁ、こんなに怒ると殺したくなってしまいます。妹の悲しみ顔は見たくないので殺したくありませんが!」
「妹?誰の兄だ!」
「君達もよく知っている、王野 姫睦のですよ。先に紹介しておきます。僕の名前は王野 守、王野 姫睦の兄です。ステージネームは先程言った通り。バディはイージスです。」
「お前が姫睦の兄か。」
「姫睦と君達はとても仲がいいらしいね。それなら、もし、君達を失うとどれほど悲しむだろう。」
「分かって、入ればいいだろ...すまない零樹、お前も頼む。」
わかりました...」
「それでは続きを。」
「よし、俺は剛田 剛志だ。雅樹は初めてだな。よろしく頼むぜ!ステージネームは“金剛”バディは
ヘルマルだ。」
次は、着物を着た、がっちりとした体格の男だ。その見た目から江戸っ子とも取れる。
「おうおう、2人とも初めてだな。ワシは増山 泰器
ステージネームは“千手”バディはアーミダだ。おい、次はお前の番だ、ちゃんとやれよ。」
ムスッとしている男だった。髪は黄色でツンッとしている。服は沢山のポケットがある、コートでズボンも長く、沢山のポケットがある。しかし、泰器に呼ばれると笑顔になった。
「やっっと僕の番だ。もぉ待ちくたびれちゃったよ。あっ、自己紹介だね。僕は光川 瞬ステージネームは“雷神”バディはソラだよ。」
「これで自己紹介が終わりましたね。それでは今後のことについて話しましょう。雅樹と零樹には世界大会に出てもらいます。」
「えっ、いつですか!」
「日本時間でいうと8月1日です。しかし、それには準備が必要です。君達は強さはありますが、功績がありません。」
「世界は僕達が勝てるほど楽なものなのでしょうか?」
「楽ですよ。一応、雅樹が倒した、“剣魔”は世界ランク4位、零樹が倒した、“金剛”は世界ランク5位です。ちなみに、“千手”が3位、“雷神”が2位、そして、僕が1位です。心配には及びません。」
「じゃぁ、何で功績が必要何だよ。」
「それはですね、セカンドステージというのは国家機密なのですよ。だから、怪しい者を世界大会に出すわけにもいけません。」
「功績というのはどうやって作ればいいのですか?」
「それは、簡単です。各地で起こっている事件を防いだり、そして政府が悪とみなしている組織を潰したりすることです。君達なら簡単ですね。」
「学校にはちゃんと通えるのですか?」
「それについても大丈夫です。仕事は学校が終わってからや、休みの日に入れますので。仕事と言いましたが、給料は出ません。しかし、その代わりに、一兆円入ったカードを与えます。これで、説明は終わりです。異論はないですか?」
「俺は無い。」
「僕も無いです。」
「それでは明日から頑張って下さい。」
そういうと、彼らはそれぞれの家に帰った。しかし、帰る途中に雅樹は守るべきに近寄った。
「なぁ、今9時半なんだけどさぁ、家の人に怒られる。どうしたらいいか?」
「迷いますね。ここはシンプルに暴力団を潰していた、でどうでしょうか?」
「それのどこがシンプルだよ!てかっ、待てよ!」
守は雅樹の言葉を無視して帰った。
「零樹どうする...」
「遊んでた、と言いましょうか...」
「絶対小遣い減らされる。最悪だ...」
「一兆円カードがあるから大丈夫ですよ、たぶん。」
それから雅樹達は帰った。明日からの仕事に備えるために、そして理不尽から耐えるために。