20.激怒
雅樹が攻撃を仕掛けようとすると、急に姫睦が出て来た。雅樹は急いで攻撃を止めた。
「危ねえだろ!何してんだよ!」
雅樹が問いかけるが、返事が無い。雅樹は困惑している。何故姫睦が急に前に立ったのか。しかし、雅樹はふと思い出した。
「笛吹き野郎、姫睦に何をした!」
「気づかれましたかー。簡単ですよ。私の笛で彼女を操っているのですよ。貴様を殺せという命令を出して。」
「このクソ野郎!」
雅樹は激怒した。再び攻撃しようとするが、姫睦が邪魔で攻撃できない。ロランはニタニタと笑っている。雅樹はなんとか隙を見つけようと見計らっているが、隙が見つからない。そうしているうちに、ロランが金属バットを持ってきて、それを姫睦に手渡した。すると、姫睦が雅樹に向かって攻撃し始めた。操られているせいか、動きが異常に速い。(普通の人間が金属バットを持ってこんな動きなんてできねえぞ。これは、長期戦は危険だ。姫睦の体がもたないかもしれねぇ。)そう思うと、雅樹は姫睦の方に向かっていった。姫睦はすかさず攻撃した。が、雅樹はそれを受け止めた。それと同時にバットを奪い、バットを折った。そして無防備な姫睦を掴んで投げ飛ばそうとした。
「少し痛いかもしれないが、文句言うなよ。」
雅樹がそう言って、手を離したが、姫睦が右腕を掴んでいたため、離れない。雅樹は剥がそうとするが、全く剥がれない。そうしていると、ロランが日本刀を持って近づいて来た。雅樹と姫睦を同時に刺そうとしているのだ。雅樹は引っ付いている姫睦と一緒に逃げる。
「そんな物どこから持って来たんだよ。普通ないだろ。」
と、独り言を言ったが聞こえていたらしい。
「日本土産としてちょっと盗んで来たんだよ。」
雅樹は無視して逃げ続ける。屋根はそこまで広くないため、追い詰められるのも時間の問題だ。しかし、仕掛けようと思っても姫睦が離れないため、攻撃できない。雅樹はかなり焦っている。
その頃、零樹は巨大羊と戦っていた。(雅樹は頑張っている。だから、僕も戦わないと!)零樹は人が邪魔で動きにくいため、頭の上に登った。羊と目があったらしく、突撃して来た。人が轢かれていくため、急いで対応した。勢いがついていなかったため、攻撃が軽かった。零樹はここでは戦いにくいと思い。全力で蹴り飛ばした。羊はかなり吹き飛んだ。零樹はそれを追う。零樹は何度も何度も攻撃を仕掛けた。そして、グラウンドの隅まで蹴り飛ばした。羊はかなり怒っているように見える。しかし、零樹は迷わず攻撃する。すると、羊の毛の色が薄い緑から赤に変わった。そして、突っ込んで来た。零樹は向かい撃とうと思い、全力で蹴りかかる。が、羊の方が強かった。零樹はそのまま飛ばされる。なんとか着地したものの、すぐに追い打ちを仕掛けてくる。零樹は耐えようと思い、必死に踏ん張る。始めは止まったものの、徐々に押されていく。このままでは人混みの中に一直線である。
零樹は踏ん張りながら作戦を考えていると、1つ思い浮かんだ。だが、それは危険で大勢の人が死ぬかもしれない。零樹は一か八かでかけてみた。零樹は踏ん張っているのを止め、急いで横に抜けた。勿論羊はそのまま突進する。零樹は通り過ぎる最中、羊の足を思いっきり蹴った。羊は悲鳴を上げて転倒した。羊は人混みの中に突っ込んで行ったが、零樹が急いで駆けつけて蹴り返した。そのまま羊は飛ばされた。すると、羊は体制が悪く、仰向けになってしまった。これはチャンスだと思い、一気に仕掛ける。零樹が腹を蹴ると、声も出ないほどの悲鳴が聞こえる。(ここが弱点ですか。動物にこのようなことをするのは気が引けますが、バディですから仕方がありません。)零樹は何度も蹴った。そうすると、羊は悲鳴を上げて消えた。もう、耐えられなかったのだろう。零樹は雅樹の元に駆け付けようとするが、体が動かない。それに、雅樹ならなんとかすると思っている。
その頃、雅樹はロランに追い詰められていた。端まで来たので逃げ場が無い。すると、ロランが何かに気付いた。そう、自分のバディが倒されていることに。雅樹は一瞬の隙を見て、左手でロランを攻撃した。利き手では無いものの、かなり強い。ロランは隙を突かれたため、飛ばされて、笛を落としてしまった。それと同時に、姫睦が腕から離れた。雅樹は急いで笛の元に駆け付けた。ロランよりも速く。雅樹はそれを掴んで投げようとしたが、笛から爆音が出てきたため耳を塞がなければならなかった。そして、笛を投げてしまい、それがロランに取られてしまった。雅樹はもう一度取り返そうとロランの方に向かう。
「私のバディを倒したからっていい気になるなよ!」
ロランの性格がガラッと変わった。かなり荒い。すると、ロランが大きく息を吸って笛を吹いた。リズムがとても速い。何故か日本刀が飛んで来た。それを弾き返して向かおうとしたが、包丁、箒などが飛んで来る。それを弾き返そうと立ち止まる。返しても返してもどんどん飛んで来る。それどころか背後からも飛んで来る。雅樹は姫睦の方に目をやった。姫睦の方にも箒などが飛んで来ていている。雅樹は姫睦を守ろうと必死になっている。姫睦は気を失っている。そのためなんともできない。ただ守っているだけだ。更にリズムが速くなる。更に学校中からバットや包丁、箒など様々なものが飛んできて、宙に浮いている。
「これが私を怒らせた罰だ!消え去れ!」