12.救出作戦
男達が話している声が聞こえる。カーテンが閉まっているためこちらの姿はバレない。何を話しているかは聞き取りにくい。しかし、ある程度は雅樹は理解できた。
「たぶん、この学校は占拠された。そして人数確認の時に数が少なかったから、この教室に探しに来た。そんな風に聞こえた。」
ベランダの隣から小声でこちらを呼んでいるのに気づいた。零樹がいたのだ。車椅子に乗っているためか、かなり顔を下げないとバレるらしい。
「お前も行かなかったのか?怪しいと思って正解だったな。」
「そうですね。とりあえずみなさんを救出しましょう。」
そうして雅樹達は作戦を練った。しかし、そこである問題が起きた。そう、姫睦である。彼女は普通の人間であるため戦うことができない。それに放っておくことができない。そこで雅樹達は姫睦が隠れられる安全な場所を探すようにした。しかし、
「私もついていきます。」
「馬鹿かお前!死ぬぞ!」
「しかし、こんなところでじっとしておくわけにはいきません!」
「だから、場所を探そうって言ってんだよ!」
会話が一向に進まない。
「姫睦さん貴女の特技は何ですか?もしかしたら使えるかもしれません。」
「歌と踊りです。」
そこで良い考えが思いついた。
「それではこんなのはどうですか?まず、姫睦さんが体育館の天井で歌を歌って彼らを引きつけます。そして引きつけられている時に、僕と雅樹が殴り込みます。」
「いいですけど、どうやって天井に行くのですか?」
「まず、僕達が体育館の上まで連れて行って穴を開けます。そこから入ります。これで分かりましたか?」
他の2人がうなづく。
雅樹は指で体を弾き体育館の真上までジャンプした。その後、静かに穴を開けた。
「俺が連絡したら結構だ。」
そう言って雅樹は下に降りて行った。零樹は2階の窓の外にいた。車椅子は邪魔だったのでバレないように、ベランダに置いて来た。校門と反対方向なので見張りが少なかった。見張りに見つからないように慎重に待っていた。雅樹が着いた時、連絡をした。すると、館内からどよめきが聞こえた。それと同時に雅樹と零樹は窓を破って突撃した。館内は急に雅樹達が入って来て動揺している人が多かった。しかし、それ以上に姫睦の声に魅了されている人の方が多かった。雅樹と零樹は二手に分かれて敵を襲う。
「上にいるやつは気にするな!ガキ共を撃ち殺せ!」
リーダーらしき人物が指示を送る。だが時すでに遅し。雅樹達の攻撃は始まっていた。雅樹達に動揺しているやつらの攻撃は当たらない。たちまち彼らは気を失って行く。1発で1人を倒せる。彼らが誰かを人質に取ろうが関係ない。一気に加速して倒すまでだった。僅か2分足らずで全滅した。これで終わりかと思ったが最後の1人が銃を放った。しかし、標的は雅樹達ではなく、姫睦が乗っている足場だった。姫睦は急にバランスが崩れて落下して行った。
「キャァー!」
「姫睦ァ!」
雅樹が叫ぶ。雅樹は急いで姫睦の方向に行った。彼女が落下する前に跳び、空中で彼女を抱き抱えた。足はあまり強くない雅樹だが10メートルも跳んだ。雅樹の足には着地と同時に痛みが走る。だが、それにより、姫睦は無傷だった。そして怪我人は1人もいなかった。
警察の人が来ると彼らは捕まった。この日の授業は無くなり下校になった。この事件は高校にいる貴族達の身代金だった。これでこの事件は解決した。しかし、雅樹にはある疑問があった。それは零樹も同じだった。
「どうして姫睦さんの歌であんな沢山の人が魅力されたのででしょう?」
「ああ、俺もそう思っていた。いくら綺麗でも俺らが来たのに動揺しない人の方が少ないなんてありえない。姫睦もセカンドステージかもしれない。」
「確かにそう考えると通じるかもしれません。しかし、姫睦さんには、他のステージ達に共通してある、身体能力と学力がありません。」
結局この答えは出なかった。
後日、雅樹は王野家を訪れた。姫睦は何かの習い事でいなかった。雅樹は守に会って尋ねた。
「なぁ、姫睦はセカンドステージなのか?」
しかしながら守は言葉に詰まる。
「それは...僕にも分からない。妹の歌と踊りには何か特別な力があると思う。しかし、バディや他のステージ達の共通点は見つからない。」
守も考えていることは雅樹と同じだった。しかし、守は何かを思い出したようだ。
「雅樹、君にはある検査を受けて貰いたい。その結果によって今後の仕事内容が変わる。」
「いいけど、何の検査だ?」
「毒に強いかだ。」
そう言うと雅樹は研究室見たいな所に連れて行かれた。そこで雅樹は血を採取された。
「結果が出るまで3分ほど待ってくれ。」
3分後結果が出たらしい。守はとても驚いているように見える。
「すごい、こんなの初めてだ。毒に対して強すぎる。これなら、お酒をどれだけ飲んでも体に影響が出ず、覚せい剤などの薬物をいくら摂取しても全く効果がない。」
雅樹はどうでも良さそうに聞いていた。
「明日からは薬物を取り締まって貰う。完全に無くすために食べて貰うよ。」
「なんで食べるんだよ!警察に押収してもらえよ!」
「いや、警察は安心できない。それでは明日から頼むよ。」
「おい、待て!」
守は雅樹の反論を全く聞かずに雅樹を追い出した。雅樹は困った顔で家に帰った。