11.闘争の果てに
お互い力はあまり残っていない。つまり、勝負は先に流れを掴んだ方が有利だ。雅樹が体を弾いて殴り込む。零樹はそれを足で返す。力が残っていなくてもかなりの衝撃だ。
「クソッ、何で耐えてんだよ!」
「簡単には負けられません。」
雅樹が高速でパンチを仕掛ける。しかし、零樹はそれを蹴りで返す。雅樹が一旦退がる。(らちがあかねぇ。手袋使ってワープするか?だけど、片手が使えないのは厳しい。)雅樹はかなり焦ってる。しかし、零樹も同じだ。零樹は先の攻撃がかなり効いている。(どうします。こっちの体力は限界です。長期戦では勝てない。なら...)零樹が一気に襲いかかる。雅樹はそれを避けようとする。しかし、零樹は雅樹が避け、ちょうど真横に来た時に、足を着き回し蹴りをした。
「はぁっ!」
「クッ!重い!」
雅樹は飛ばされずにその場で耐えた。そして殴り込んだ。
「予想通りです。」
零樹は雅樹の攻撃を体で受け止め、自分の攻撃を雅樹に当てた。
「テメェ、捨て身かよ!」
「僕の体力では長期戦はできません。だから、一気にケリをつけます!」
雅樹と零樹は攻撃し合う。お互い防御を無視して攻撃する。
「吹っ飛べぇ!」
雅樹の強烈な一撃が炸裂する。お互いもうふらふらだ。
「これが最後ですね。」
「そのようだな。」
お互い力を込める。そして、お互いの攻撃が直撃する。それぞれが吹っ飛んだ。両者立たない。
「ああっ、どうしましょう。今すぐ助けないと。」
「いや、大丈夫だ。これは先に立った方の勝ちだ。」
姫睦が2人に声援を送る。
「頑張って下さい!」
雅樹と零樹は頑張って立とうとしている。しかし、どちら立てない。お互い力が入らないからだ。しかし、這いつくばって近づく。
「お兄様、やめさせて下さい!もうどちらも立てません!」
「いや、僕はやめさせない。」
「そんな、貴方達はどうなのですか。」
「わしもやめさせない。」
「僕もだね。」
「私がやめさせます。」
そう言うと、姫睦は雅樹達に近づいた。
「お疲れ様です。」
そう言って彼らの手を掴んだ。彼らは満足した顔で気を失っていた。この勝負はこれで終わった。
雅樹と零樹が目を覚ますとベッドの上にいた。そこには、戦いを見ていた全員がいた。
「素晴らしい勝負だったね。まさか、あれほどだったとは。」
「お世辞はいい。本当は何か他にあるんだろぅ。」
「そりゃあるよ。君達は強かった。でも、泰器には勝てない。」
雅樹と零樹は言葉を失った。まさか、あれほどでも勝てないなんて。しかも、こちらはサードステージだ。雅樹達が落ち込んでいるのを瞬がカバーする。
「まあまあ、いい戦いだったよ。それに、奈良のことであまり頑張らなくても出場できるし。」
そんなことはあまり励ましにはならない。だか、ここで守が口を挟む。
「いや、そう言うわけにはいかない。世界大会をするには治安維持が不可欠だ。僕達は貴族だから。仕事を親がやらせてくれない。だから、君達が頑張らないといけない。これまでよりももっと増やすから覚悟しておいて。」
「お前らやりたくないだけだろ。」
「バレちゃったかぁ。」
重い空気も笑いに変わった。だが、零樹はすぐに大事なことを思い出した。
「今何時ですか?明日平日だから学校があるんですけど...」
「今は日付けが変わって1時だ。」
「まじかよ。寝れねえな。」
そう言うと、雅樹達は急いで帰った。
翌日、彼らは眠そうだが学校に来れた。そこで雅樹は姫睦に感謝を言った。
「昨日俺達の戦いやめさせてくれてありがとな。でも、あんな遅くまで起きていて大丈夫か?」
「大丈夫ではありません。いつも、10時には寝ていますから。」
話していると予鈴が鳴った。早く席に着かないといけない。
その後、朝のSHRが始まる。
「最近、この学校付近で不審者が出ている、みんな気をつけるように。」
(最近、事件が多いなぁ。何かあるのか?)その直後、急に、
「緊急で集会を始めます。皆さん体育館に集まって下さい。」
と、放送が鳴った。
「先生、何かあるんですか?」
室長の春菜 明里が聞いた。しかし、先生は何も分からない。(何か怪しい。とりあえず待っておくか。)先生が出て行ったらすぐに雅樹が、
「行かなくていいだろう。何か怪しいし。ここで待っておけば。」
「そう言うわけにはいきません。どんなことであれ行かなければいけないと思います。」
「真面目だね、室長は俺は待っておくよ。」
すると、クラスの人は体育館に行った。しかし、姫睦が残っていた。
「何で残ってるんだよ。」
「貴方が怪しいと言ったので。」
「信じてくれたのか。」
そう会話していると、廊下から足音が聞こえた。しかも複数人の。さらにその足音は大人の足音のようだ。(おかしい。全員集合のはずだ。)
雅樹は小声で言った。
「音を立てずにベランダに出るから声出すな。」
「どうしてですか?」
「たぶんこれは先生の足音じゃない。揃いすぎている。」
そう言うと雅樹は姫睦を抱えた。
「ちょっと何してるんですか!」
「静かにしろ。」
そして静かベランダに出た。すると、雅樹達の教室の中に複数の男が入って来た。