1.双子の超人兄弟
桜も散り始めたこの頃、学校が始まる時期である。
「おい、零樹そんな格好で寒くねーのかよ。いっつも半袖、半ズボンだよな入学式ぐらいちゃんとした服で来いよ。」
「ちゃんとした服装ですか。雅樹、君だけには言われたくないですね。いつも長袖長ズボン、手袋で。」
「はあ、この服と手袋は俺の大切なバディだ。お前の靴だってそうだろ。そもそもなんで双子なのに敬語で話すんだよ。」
「そんなことどうでもいいじゃないですか。この坂を登ると学校が見えますよ。」
雅樹はスピードを上げ一気に坂を駆け上った。
「僕も負けません。」
彼らは2017年4月から高校一年生である。
築百年の学校が見えてきた。朝6時なのか誰もいない。
「あー、早く来すぎましたね。しばらく待ちましょうか。」
「そうだな。」
しばらくしてから、高級な車が来た。貴族だろうか。
「ここが、私がなんだかボロそうね。山田どう思う?」
山田と呼ばれた男は答えた。
「確かにボロいですね、姫睦お嬢様には田舎の三重の学校は合わないでしょう。」
彼女たちは校門から学校に入っていった。執事の山田たちは近くにいた雅樹たちを侮るように見ている。雅樹が嫌気がさしたのか、
「おい、貴族のクソ野郎、執事はこの学校に入ったらいけないってのお知らねえのかよ。」
急に執事達がこちらに向かって来た。
「姫睦お嬢様になんて口を聞くんだ。今すぐ謝罪しなさい!」
「はあ、なんだっ」
「すみません!弟が失礼なことを言いました。」
急に零樹が大声で割り込んで来た。雅樹も山田達も一瞬ひるんだ。
「皆さん落ち着いて下さい。私たちは同じ薙高生ではありませんか。」
「まあ、そうですね。ところで貴女お名前はなんと申しますか?」
「王野 姫睦です。貴方達は?」
「僕は零樹です。そしてあの不良っぽいのが僕の双子の弟の雅樹です。」
「不良っぽい?てめえ後で覚えてておけよ。」
「はいはい。」
「山田下がっていただけませんか?」
「承知しました。」
その声と同時に沢山の生徒や親が校門から入ってきた。
「それではまた会いましょう。」と言って入学式が行われる体育館へ沢山の人が入っていった。
まだ4月なのか肌寒くコートを着ている人が多い。そんな中で半袖、半ズボンの零樹は目立つ。
「あら、雅樹君ではありませんか?またお会いしましたね。同じクラスですか。」
「げ、嫌な奴が来た。」
「嫌な奴とは失礼ですね。式がもうすぐ始まるので静かにしましょう。」
式が始まると少しは暖かくなったもののまだ少し寒い。
「皆さん薙高等学校に入学おめでとうございます。この学校は自主自律の精神の下教育を行っています。また、この学校は貴族に干渉されないことで有名です。つまり、生徒の皆さは平等に教育を受けることが出来ます。」
校長先生の長い話に雅樹がじっとしていられない。代表者の挨拶が来た。代表者として呼ばれたのは雅樹だった。跳び上がって校長先生のいる壇上まで一気にジャンプした。校長先生が驚いているまま代表野挨拶を読み上げる。
「俺たち360人は新しく入学式して来た。この学校がいいと思った奴もいるが、決してお前らに従うっていうわけではないからな。覚えておけ。まあっ、これから宜しく頼む。」
体育館全体からかなりのどよめきの声が上がり、雅樹に抗議の声が上がろうとした時だ。急に銃声が鳴り響き、男達が体育館に入って来た。
「おい、てめえら動くんじゃねえぞ。動くとぶっ殺す。」
悲鳴が鳴り響く中、男達が叫んでいる。
「静かにしろ!」
静かになったその時だ、
「王野 姫睦っていう奴はどいつだ。」
彼女に一斉に目線が向いた。男達が彼女に近づいていくと、
「おい、てめえ何者だ?ぶっ飛ばすぞ!」
銃を持った男が雅樹の声を無視して彼女に近づいた。彼女に銃を近づけ連れて行こうとしたその時、鈍い音がした。一瞬誰も原因が分からなかったが、雅樹が男を一発で殴り飛ばした音だった。
「てめえら...調子のんじゃねえぞ!零樹ぶっ飛ばすぞ。」
「勿論です!」
と、言うと、零樹が自分の席から跳んで来た。
男達が叫びながら銃を撃ちながら突っ込んでくる。しかし、雅樹が銃弾を掴み、零樹が一蹴りで吹っ飛ばした。
「なんなんだよ、お前らは!」
最後の男が怯えながら叫ぶ。
「セカンド ステージ」
と、雅樹と零樹は呟くように言った。そして、最後の一人を殴り飛ばした。館内がざわめき警察が駆けつける中、
「準備運動ぐらいにはなったかな。」
「弱すぎて、つまらなかったですけど。」
と、ゆっくり会話しながら自分達の席に戻った。雅樹は戻る途中で、姫睦に話しかけた。
「お前気が強いんだな。」
「私は貴族故に妬まれたり、誘拐されそうになります。気が強くないとやっていけません。」
その後、式はすぐに終わりそれぞれの教室に向かった。雅樹と姫睦は6組に、零樹は5組に向かった。
「俺が6組の担任の植村星矢だ。一年間この41人でやっていくぞ。」
「なんだこの生意気な奴」と、雅樹が心の中で思う。「早速だが事前に連絡した提出物を集める。後ろの人から前の人に回してこい。」
と、提出物を集めている。
同じ頃5組では、
「5組の担任の佐藤 涼太です。宜しくお願いします。」
「良い先生だ」と、零樹が心の中で思う。5組でも提出物を集めている。その後学校は解散になった。
雅樹が帰ろうとしたその時、
「ねえ、セカンド ステージって何かしら?」
「お前には関係ねえ。」
「ねえ、ちゃんと答えてよ。」
雅樹は無視して帰っていった。帰る途中、零樹と合流した。
「ねえ、みんなに僕達のことバレてませんよね?」
「当たり前だ。」そう言って家まで3キロの道を7分半で帰って行った。
両親は仕事で家にいなかった。
「ジョーカー、ヘマすんなよ。」
「分かってますよ〜〜。」
ジョーカーと呼ばれたのは、雅樹の手袋から出てきた、手袋と帽子、仮面、服、マント、からなるマジシャンのようなものだった。
「チェイサーもですよ。」
「分かってるって。」
チェイサーと呼ばれたのは、零樹の靴から出てきた、バイクに機械のような人が乗り、ヘルメットをかぶったようなものだった。
「今日みたいなことがあるかもしれないが絶対にでんじゃねえぞ。」
「ハイハイ。」
同じような返事を全員がした。
次の日、学校で、
「これから、クラス役員を決めるぞ。」
植村先生が役員を順に説明して行った。そして、最後に、
「スーパーサブというのは、他の係を手伝うものである。実際いなくても良いんだが。」
それを聞いた雅樹が、「すっっげー俺に向いてる。」
と思った。そして、係を順に決めていった。
室長に、春菜 明里、副室長に王野 姫睦、勿論雅樹はスーパーサブ。
5組では、磯野 優也が室長に、佐野 裕美が副室長に、零樹もスーパーサブになった。その後諸連絡の後は部活紹介になった。
部活紹介の後は部活見学がある。零樹は雅樹と合流し
「バドミントン面白そうですね。入りましょう。」
「またお前変えるのかよ。小学校のときはサッカー、中学校のときは剣道、いろいろやるなぁ。」
「しょうがないじゃないですか。僕に合わなっかたんですし。君は?」
「外部でボクシング。」
「小学校のときから変わりませんね。あっ、それでは、体育館に行ってきます。」
「お前に向いているといいな。」
その日以降、配り物を配るために彼らは学校に1番始めに着き、配り物をするようになった。
一週間後、
「雅樹、僕、バド部に入ります!」
「頑張れ。」
「何ですか?その気の無い返事は。」
「そりゃ俺に関係ないからな。」
「まあそうですね。それでは行ってきます。」
教室にいくと45人ほどの人がいた。
一年生が20人、2年生が15人、3年生が10人ほどいる。順に自己紹介をしていく。零樹の番が来た。
「神崎 零樹です。宜しくお願いします。出身は二江崎中学校です。中学校では剣道をしていました。」
その後自己紹介が続き、最後に近づいた時
「こんなどうでもいい奴の自己紹介なんて聞きたくもない。早く終わらせろよ!」
と、誰かが言った。その時、零樹が怒った。
「自己紹介ぐらいちゃんと聞いたらどうなんですか?貴方何なんですか?」
「俺は、金山 欽二 。平民ごときが貴族様にそんな口を聞いていいと思っているのかよ!」
「勿論です。貴方が誰であろうと関係ありません!」
「はあ、ならバドミントンで勝ったらその言葉許してやろう。もし負けたら、命はないと思え。もちろんやるよなぁ。」
「その勝負受けて立ちます!」
しかし、欽二の顔には笑みが浮かんでいた。何故なら欽二は、中学校のとき、バドミントンで個人で全国大会に出場したからだ。それに、欽二にはある秘策があったのだった...
早速体育館に行こうとしたが、
「ラケットが家にあるので取りに行って来ます。20分ぐらい待ってくれませんか?」
「いいだろう。許可してやる。お前はバトミントンをやっていたのか?」
「いえ、弟と一緒に遊び程度にやっていただけです。」
そう言い零樹は急いでラケットを取りに行った。
20分後零樹は戻ってきた。
「逃げずに来たのか。少しだけ、練習をしてやろう。」
互いに打ち始めた。(やっぱり上手いです。これは、本気でやらないといけませんね。)
「ラブオールプレイ!」
その一言で始まった。しかし、欽二はなぜか凍りついている。零樹は今まさに走り出しそうなフォーム両手を床に付けて、左手にラケットを持っていた。
「お前やる気あんのかよ!」
「本気だからこそこの構えなんですよ。早く打って下さいよ。」
欽二は頭に血が上った。しかし、欽二は直ぐに落ち着きショートサーブを打った。羽根がネットを越えたその時、巨大な踏み込みの音と共に羽根が床に落下した。
「なに!」
「遅すぎますね。あくびが出てしまいそうですよ。」
今度は零樹のサーブである。欽二が返す。しかし、零樹も返す。零樹は攻められているが、全く羽根を落とさない。その後零樹が連続で10点を取った。館内が騒めく中で欽二が叫んだ。
「あいつを撃ち殺せ。」
その声と同時に零樹に銃弾が当たった。館内は一気に静かになった。しかし、血が大量に出ているが、零樹には全く聞いていないようだ。その後さらに1点を取りコートが変わった。
「欽二君、残念ですが、さっきの銃弾は全く効いていません。後何発撃たれてようと僕は屈しません!」
「なら、全員撃ちまくれぇぇ!」
その後、試合中も何発も銃弾が当たったが零樹は全く怯まない。そして、21点目を取り零樹は勝った。
「21対0 僕の圧倒的勝利ですね。」
「くそぉぉ!何で負けたんだぁ!何で銃弾が全く効いていないんだよぉ!」
「貴方が負けた理由は圧倒的な才能の差ですね。僕の体は銃弾ごときでは落とせませんよ。そして、貴方は貴族の力を使いました。これは校則違反です。」
欽二は悔しくてその場から出て行った。その後は練習を行い帰宅した。
しかし、4月30日ある事件が起こった。姫睦が誘拐されたのである。目的は身代金だ。姫睦の家族は日本の貴族の中では、10番目ぐらいに権力がある。そのためか身代金の額は1兆円である。王野家なら余裕で払える額だが、姫睦の父親の管助は払おうとしない。そこに雅樹が来た。
「何してんだよ!早く助けに行けよ!」
「私もそうしたい、しかし、彼らは世界各国で誘拐、暗殺を行っている。レイドスターだ。警察も動いてくれない。ところで君は誰なんだ。」
「俺は姫睦のクラスメイトの神崎 雅樹だ。警察が動かないなら俺たちが動く!姫睦はどこにいる!」
「北山村にある、廃倉庫だ。そこは今では住民が居らず交通が整備されていない。本当に行けるのかね?」
「うるっせぇ!そんなの関係ねぇ!零樹いくぞ!」
「分かりました!」
彼らはその後直ぐに校門を出て向かった。校門を出て直ぐに、零樹の靴からタイヤが出てもの凄い速さで向かっていった。雅樹はそれを追いかけるように、獣のような走り方で走った。どちらも、速く電車よりも速く走っている。
その後廃倉庫に着いた。
「雅樹、どうやって中に入りますか?」
「ドアをぶっ壊して一気に殴り込む!」
「はあっ!アホなんですか!そんなことしたら、姫睦さんが殺されてしまいます。もっと慎重にいきませんか?」
「俺だって考えているんだよ!ドアをぶっ飛ばして、敵が慌てているときに一気に殴り込む!それで勝てる!」
「はぁ、相変わらずですね。しかし、それが楽そうですね。やりましょう!」
「ボンッ!!」という音と同時に雅樹達が中に入った。男達が銃口を姫睦に向ける前に付近の男が達をを吹っ飛ばした。銃を乱射しながら、近づいてくる。しかし、雅樹は銃弾を掴み、零樹は避けて男達を倒していった。すぐに全滅した。姫睦は気絶していた。
「おい、起きろ。警察呼んでおいたぞ。」
「うーん...あれ、誘拐犯達は?」
「ああ、俺達がぶっ倒した。帰るぞ。」
「警察が来る前に帰りますよ。来るとめんどくさいことになりますから。」
「分かってるって。いくぞ。」
「うん...」
雅樹が姫睦を背負い、彼らは走って帰った。
「ねえ、雅樹、どうして来てくれたの?お父さんに頼まれたから?」
「そんな訳ねぇだろ。お前は俺のクラスメイト、つまり、俺の仲間だ。仲間を助けるのは当然だ。」
そう答えると、姫睦は寝ていった。
「おい、零樹スピード上げるぞ。」
「起こさない程度にですね。」
その後、彼らは学校に戻って姫睦を管助の元に渡した。
「本当にありがとう!このお礼はどうして返そうかと。」
「礼なんていらねえよ。当たり前のことをしたまでだ。零樹さっさと帰るぞ。」
「無理ですよ。」
「何でだよ?」
「表に警察がいっぱいいて事情聴取を受けなければいけません。」
「はぁ、めんどくせえな。ちゃっちゃと終わらすぞ。」
その時、警察官の一人が来た。
「神崎 零樹と雅樹はいるか?」




