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くたばれっ! ヤブ医者  作者: 山目 広介
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くたばれっ! ヤブ医者 ◇◆◇ 形成外科編 ◇◆◇

◇◆◇ 形成外科編 ◇◆◇


 仕事で手首を痛めた時だった。

 しかも右。利き手だ。

 しかし器用だった私は左でも箸が扱えたりする。

 右手の代わりに左手を使用した。

 が、そもそもある程度は両手で扱っていたものだ。

 負荷が二倍。元の蓄積もあったのだ。

 つまり左手は即座にぶっ壊れたのだった。

 両手がダメになったのに休みをすぐにくれない会社。

 三日が経ってやっと午前中だけ医者へ行って良いと許可が出る。


 初診のとき、確認するために動かすのは分からなくもない。

 だが、痛い。

 あまりの痛みに(うずくま)ってしまわなければ。左手が使えれば。

 ぶっ飛ばしてやりたかった。

 骨には異常はないと診断して念のためとレントゲン撮影をする。

 利益供与というやつだ。腹が立つ。

 結果、湿布を渡すだけ。


 そして一月後、再診でまたやりやがった。

 少しはマシになったというに悪化させやがった。

 血流が、脈拍が、ズキンズキンと痛みを訴える。

 ただでさえ、歯磨きや洗顔、髪を洗ったりと日常の動作でもダメージを喰らうというのに。

 本を読むのでさえ、手首に負担が掛かるのに。

 何やってくれてんだよ!

 あまりの痛さに痛み止めに頼る。こんなのじゃ仕事に支障が出てしまう。

 飲んでもすぐには効果はない。出てもそこまで効果はなく、やはり痛いものは痛い。

 多用して薬が効かなくなることを恐れて、朝だけしか飲まなかった。

 しかし切れたのは分かった。仕事中に。

 4時半。午後の。

 急に痛みが増したのだ。

 翌日も時間が分かるところにいた。

 4時20分。

 10分短い。

 同じ時間に起床してたため、飯も同じ時間だ。

 でも誤差ということもある。

 次の日薬が切れたときにすぐに時間が知れない場所だった。

 が、すぐに戻ると4時10分を回っていた。

 さらに次の日は見る時間がなかった。

 そしてまた次の日。

 薬が切れた時間は3時50分。日を追うごとに10分づつ短くなっている!

 痛みが長引いて仕事に支障が出るのが怖かったため、その次の仕事から昼にも薬を飲んだ。


 月が替わると再診を要求されたため、市販薬に変えた。

 負荷を極力掛けないようにしてるのに、少し良くなってもまた悪化させられても困る。

 だからその形成外科には行かないことにしました。

 医者のくせに悪化させる、絶対ヤブだよね。






 それは仕事で肩を痛めたときだった。

 そのときの仕事は入荷処理だった。

 運送の会社の人からの情報により、ある拠点を経由するためこれからは入荷が遅くなると聞いて上司にもその情報は伝えていた。

 にもかかわらずに、バカだから残業するなと言ってきた。残業させてる人がいるのに。

 出荷して利益を出さないといけないから入荷しないといけないにもかかわらずにだよ。

 入荷処理をこれからしようという山の前で言ってやりました。


 「私がこの後どうなっても良いというならいいですけど(・・)……」


 しかしその上司には反語というものの意味が分からなかったようです。


 「どうなってもいい」


 あんたが断言しますか?! 私の体のこと全く考慮しないとは!

 意味が分かりません。

 しかし私にも言った責任があります。

 分かりました、と返事をします。

 入荷処理を後日に回すということは出来ませんでした。

 理由は部品の発注がその上司の手違いにより足りないからです。

 入荷しないと出荷の必要数に達しないため、せざるを得ない。

 その日の入荷は90台、普段ならば早くても3時間で熟す仕事量です。

 他にも仕事を掛け持ちしてるため、入荷だけに時間を掛けれません。

 しかし入荷が遅れた分は先に他を片すことで時間を費やしたため問題ありません。

 定時まで残り100分。

 全力を出す。

 しかし100分も全力は持たない。

 ではどうするか。


 そのために「磯笛」もどきを使う。

 口笛のように細く息を吐く。要はそれだけ。

 肺壁に空気圧をより掛けるように。


 息を吐くということは、肺内部よりも、外の空気圧が低いから漏れるように、吐くことができる。

 逆に吸うときは肺内部の空気の圧力より、外の空気の圧力が高いため、中に入って来る。

 このように呼吸を圧力という観点で見る。


 つまり外の空気圧を基準にすると吐いているときの方が、肺の内壁に圧力を掛けていることになる。

 それで口を細くし吐くときの抵抗を増やし、また時間的に長く吐くことができるために、肺壁に掛かる圧力が増し、また圧力が掛かる時間も長くなるということ。

 これは血液に酸素を取り込みやすいということ。


 山など高所では大気圧が低い。

 山で酸素が薄くて動くにも困るように、逆に酸素を沢山取り込めればどうなるか。


 これによって全力が定時まで持ち、且つ、普段の1.8倍の速度で作業を終わらせた。

 そして翌日、当然ながら無理が祟り、全身筋肉痛と両肩を痛めている結果になりました。

 その後、休出を断って医者に行こうとしたわけだが、その上司はさらに上に休出断る協調性がないと報告。そもそも休日には入荷はないというのにだよ。

 そのため診断書が必要になった。

 どうなってもいいと上司から言質は取ったのに、そのバカには言った記憶がないという……

 くたばれっ! 上司。あっ、趣旨が変わっている。仕事の愚痴に。



 そして形成外科へ行くことになりました。

 家から最も近く、通院する場合、定時に帰ってギリギリ受付に間に合うとこが、そこだけだったから仕方ない。両肩負傷とか運転とか危険でしょ。自転車とかも。


 そして医者に診察される。

 私は言う。両肩が痛い、と。

 医者は、肩上げて、と言う。

 上げる肩。私は他の人よりも肩の柔軟性があるため、上まで上がります。

 それを見た医者は後ろを見ろという。

 そして従うと腰をぐいっ。痛っ。

 全身に負荷が掛ったため、当然腰にもダメージがあります。

 それから念のためレントゲン撮影をするという。

 レントゲン写真の撮影。正面と側面。

 技士の人曰く、奇麗な骨格だねぇ。

 そりゃそうだ。肩が痛いと来て、何故に腰の撮影をするのか?

 そして診断書くれというと、利益供与しろよ、リハビリに毎日来い、と言う医師。


 ちなみにその診断書には短い文の中に複数の誤字が。

 例えば、汚い字を解読したら、『通院を要する』って書きたかったかも知れないが『通』が『道』になってるよ。

 これで利益供与欲しいとは……


 数か月後。

 月替わりで再診を受ける。

 そしてこのセリフ。


「まだ治ってないの?」


 カチンときた。

 いいかげん殺意を覚えてもいいと思う。

 絶対ヤブだよ。

 なぜ初診で肩を痛いと言ってるのに一切触りもしないの?

 そして利益供与を強要する発言。


 そして翌月には、仕事を辞めた。

 リハビリしても治らないと見切りをつけました。


 それから半年経って、スーツを着るのに肩が痛まないようになる。

 さらに一年三か月、発症から二年以上経って漸く風呂場で浴槽で腕を背中に回し、浴槽の縁に手を掛けストレッチできるようになった。


 くたばれっ!ヤブ医者ども。




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