第1章8「魔法師」
エリスとハイトが数歩下がって歩いていると、エリスがこの街の事を教えてくれた。
「この街の名はラキシュ。この国、ラキシュ王国で一番大きな街だ。」
(ラキシュ…)
「この街、裏路地が多いだろう?
この街は、一見活気づいてるが、実は裏方の人間の方が多い。」
「……なんでなんだ?」
「この国はほんの数十年前まで戦争をしていたんだよ。」
「戦争?他の国とか?」
「ああ、そしてこのラキシュはこの国の王が住んでるが故に、ラキシュは物資の調達や戦争に送る戦士達を集めるのにも適していたんだ。」
「………なるほど…。」
「そして、物資などが集まるから、密輸や薬の販売などをする輩が増えてな、それでこのざまだ。」
「……………。個人的にはそんな話より、戦争の方が詳しく知りたいんだが…。」
「ん?そうか?では数十年前に起きた戦争、ジガルスタ戦争の話をしようか。
ジガルスタとは、国の名前でな。結構大きな国で大陸の内陸にある国なんだが、突如周りの国に戦争を吹っ掛けた事が原因だ。何故そのような事をしたのかは未だわからない。
そしてその戦争は、ラキシュ王国まで火の粉がかかってきた。」
(目的が分からないほど意味の無い戦争はないって、なんか世界史の先生が言ってたな……。)
「━━━ん?あぁもうすぐ着くから短く言うと、その戦争を終わりに導いたのが各国の魔法師だったんだ。
当時、魔法師はとても少なかったんだ。そして魔法師の影響力は凄まじく、ジガルスタを降伏するまで追い詰めた。」
「………魔法師ってスゲーんだな…。」
「そうだろう?だけど、私達からしたら問題はこの後だ。当時のラキシュ王国国王がその凄まじい戦力の魔法師に怯え、ラキシュにいた魔法師達を次々と追放していったんだ。」
「なんでだ?魔法師達をこの国に留めておけばこの国の戦力が上がる筈だろう?」
「そうだと私も思うんだがな、その出来事は数多くの国でも多発していたらしい。
そして、魔法師はこの世界からほとんど姿を現さなくなった。」
「戦争を終わらした英雄を、ねぇ…。じゃああんたも隠れて生活しているのか?」
「あぁそうだ。そして今、他の魔法師達の所に向かっている。」
「━━は?なんで。」
「言っただろう?見せたいものがあるって。」
「言ってねーよ。」
「そうか、それはすまん。」
エリスに付いて行き、路地裏に沿ってしばらく歩いていると、一見何も変哲もない扉の前で立ち止まった。
「ここだ。」
「…?ここ?………あんたの家か?」
「いや、私の家ではない。入ったらわかる。」
エリスが扉のドアノブに手をかけようとしたら、
「━━━━あれ?今帰りっすか師匠…って、どなたっすか?」
前の道の角から、買った物を入れる紙袋を持った茶髪の女の子が話しかけにきた。
「あぁマリルか、ちょっとさっき会ってな、紹介は中でしよう。入れ。」
扉を開けて中に入っていくエリス。
「お先に自己紹介しておくっすね。私はマリル・ウェルディっす。以後よろしくっす。そちらは?」
マリルが自己紹介してきたのでハイトも、
「あぁえっと、僕は天童ハイトです。以後よろしくお願いします。師匠って事は君も?」
「ええそうっすよ、私も魔法師なんすよこう見えて。ところで変な名前っすね。」
「あはは…。」
(師弟揃って似たもの同士か…)
「まぁとりあえず入りましょうか。」
マリルが中に入っていったので、ハイトも扉をくぐり、中に入っていった。
9話です。