第1章7「気配」
「私の名前は、エリス。魔術師だ。」
エリスと名乗る赤髪の女性が近づいてきた。
エリスは、綺麗な真っ赤な髪のロングヘアーで、魅力的なドレスの様な服を着ているが、どこか動きやすそうな格好をしていた。
「魔術師…?」
「ああそうだ。どちらかと言えば魔法師なんだが…今はまぁいい。それで、君の名前は?」
(魔術師も魔法師も一緒だろ………。)
魔術師、魔法師と名乗るという事は、あの悪魔と同じ魔法を操ると言うことだろう。
何故ハイトに接触してきたのかは、ハイトは分からなかった。
「…僕はハイト、天童ハイトです…。」
「テンドウ…ハイト…。変わった名前だな。」
(ほっとけ)
そりゃそうだろう。
なんてったってエリスからしたらハイトは異世界人なんだから。
「それで、エリス…さんは、僕に何か…?」
「ふむ…そうだな。では、単刀直入に言おう。」
エリスは少しそのルビーの様な眼を細めて、まるで頭の中まで見透かすような感じで言った。
「君は、一体何者だ?
騎士兵を殴り飛ばした時や、騎士兵から逃げてる最中に凄まじいジャンプ力で家の屋根に登ったりした時も、私はずっと見ていた。とても普通の人間とは思えない。」
(━━━見られてたのかよ…、どうしよ…誤魔化すか…?)
「先に言っておこう、私に嘘は効かん。
もう一度言う。君は、一体何者だ?」
(━━━!うえ〜なんか考えてる事まで見られてる気がする………………。はぁ、正直に言おか…。えーと確か、こんな感じに言えば…━━━━。)
「僕は只の一般人ですよ。一番東にある島から旅に来ただけですよ。」
そうハイトが答えると、エリスは少し考えた後、意味がわからない事を言ってきた。
「━━━そうか、只の一般人…か。
では、何故君から悪魔の気配が感じる?」
「━━━━━━━━━━━え?」
(━━━は?あ、悪魔の気配って…?は?)
「…え…と、そ…それは、どういう事で……?」
「そのまんまの意味だ。君から悪魔の気配がする。
私が裏路地で君を見ていたのは、突如この街に悪魔の気配がしたからだ。それで、気配のする方へ行ってみたら君がいたと言うわけさ。」
「━━━俺から、悪魔の気配が…?いやいやそんな理由ないでしょ…!?俺は人間ですよ!?」
「私は嘘は吐かん。
仮定を言うとすれば、君が悪魔で、人間の姿に化けてこの街で何か企んでる………とか?」
「俺は人間だ!!!なんで俺から悪魔の気配がするんだよ!!?そんな会って数分の奴の言った事を信じられる訳がないだろう!!」
知らない奴が急に現れて、あなたから悪魔の気配がしますって言われても信じる信じないの話じゃなく、馬鹿げている。
「それに、悪魔と一緒にすんな…あんなバケモノと一緒にされちゃあ反吐が出る。」
ハイトの言葉を聞いたエリスは手を顎に添えて
納得した表情で、
「ふむ、自覚は無かったか。そうか、ならいい。」
「何がだよ?」
「いや、気にするな。ハイト、私に付いて来い。」
「…は?」
そう言うと、エリスはさっさと裏路地の奥に歩いていった。
「………なんなんだよ一体…。」
特にこれからどうするかも決めていなかったので、
「…仕方ねぇ、付いて行ってみるか…。」
まだ、エリスの事を疑いつつも、慎重に付いて行った。
8話です。