第1章5「まさかの転移」
━━━━学校の屋上。
「マスター、天童ハイトが天使のせいで逃げられたんだけど、どうすればいい?」
屋上で、ありさがテレパシーの魔法で誰かと話をしている。
ありさが殺そうとしたハイトは、鎌が当たる直前で光に包まれて消えたのだ。
『そうか、やはり動いたか。俺の予想通りだな。』
ありさの頭の中に直接声がかけられる。
「確かにマスターの予想通りだけど、天使の奴が出でこなかったらどうしてたの?下手すりゃ五年間の実験記録が無駄になるよ?」
『俺の予想が外れるわけがないだろう。あの天使が俺の実験体に手を出してたんだ。
俺がなにか仕掛けたら動くのは目に見えてる。』
「あー確かに」
『まぁいい、計画を進める。
トレース、こっちに戻ってこい。』
「りょーかいです。」
ありさが魔法を止めると、大規模の魔法陣の構築するための準備を始めた。
「ほら、さっさと始めるわよ。」
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「━━━ん…ここは…?」
ハイトが目を開けると、そこには見たことのない景色が広がっていた。
(いや、どっかでみたことがあるよーなないよーな…?)
目の前に広がっていたのは、石で出来た綺麗な建物が一列にずらりと並び、その建物の前にはたくさんの出店があり、沢山の人達がごった返していた。
「えー………まさかの異世界転移………」
期待はしていないと言えば嘘になるが、てっきり屋上に戻るかと思っていたのだ。
驚いているハイトの目の前で沢山の龍車や馬車が走っている。
「うわ!すげー竜だ!かっけぇー」
(さすが異世界。じゃなくて落ち着け俺。)
「えー…と、世界観は中世のヨーロッパ?みたいな感じか。中世のヨーロッパ見たことないけど。」
ハイトは周りの人達の話し声に耳を傾ける。
「言葉は通じるみたいだけど、字が読めねぇな。くそ、そこまでは流石に無理か…。」
ハイトが安心と残念な気持ちでいると、
「そこのおにーちゃん!新鮮な野菜があるよ!なんか買っていかない?」
と、たくさんの野菜らしき葉っぱや果実を売っている小太りのお決まりの様なおばちゃんが言ったきた。
(まぁとりあえず、情報収集でもしますか。)
「ごめんおばちゃん、今お金もってないんだ。あの一つ聞きたいんだけど、ここって何処ですか?」
異世界に来たらまずは知っておくべきであろう質問をした。
「なんだいおにーちゃん!ここが何処か分からないのにやってきたのかい?旅人かい?確かにここらでは見たことない顔だねぇ?」
「あ、あぁそんなとこだよ」
声がデカイ…
「ここはシルフィアス王国だよ。大陸一のでっかい国さ!人が多く集まるからね、商人にとっちゃ夢の様な場所さ!!」
「へ〜…そうなんだ。」
転移した所はまぁ良いほうだろう。
確かに見た所、沢山の店達の向こう側に城の様な建物が見えた。
「あれが、王様の城?」
「そうだよ、あそこに現国王が住んでるよ。まぁちょっと困った国王だけどね。」
「困った?」
「そうなんだよ。私達の前には滅多に顔を出さないのに、税金やら食料やら色んなものまでとっていっちまうんだ。」
「へ〜それは困った国王だな。」
(今の俺には関係ないか。今はあいつを倒す為にどうするかだが………ん?………いや、気のせいか…。)
向こうの店の角から騎士の様な男がこちらを見ていた気がするが、すぐにどっか行ったので、気にしないようにした。
「そうなんだよ、なんでも国王が部屋から出てこないって噂があるんだよ。」
「マジか、王様がヒキコモリってそれ以上の無いヒキコモリだな。」
おばちゃんと話をしていると、
「ごめんよ兄ちゃん、おばちゃんこれ三つくれ。」
「はいよ!おにーちゃんすまんね、忙しくなるからまたね!今度はなんか買っていってよ!」
「ああそうか、ごめんありがとうおばちゃん!今度はちゃんとお金持って来るよ。」
そう言うと、ハイトはおばちゃんの店から離れ、建物の隙間にある、路地裏に入ってった。
「うわ〜怖〜でも一度はこんな感じの裏路地に行ってみたかったんだよね〜。」
何故わざわざこんな裏路地に来たというと。
「騎士様がこそこそ尾行か?あんたになんか騎士道的な物は無いの?」
そうハイトが言った途端に裏路地の角から先程の騎士が現れた。
(うわーマジかホントに俺か。気のせいであって欲しかったぜ…。やっぱり怪しいよな俺。服も今気付いたけど制服のまんまだし。)
そんな事を思っていると、騎士が口を開いた。
「貴様が何者か知らんが拘束させてもらおう。」
「━━━は?」
6話です。