第1章4「決意」
目を開けると、俺は光の中にいた。
(ん…………………ここは………どこだ…?)
白い光に包まれた、何も無い世界にぽつんと立っている。
なんで俺がこんな所にいるのかを考える。
そして思い出す。
(そうだ………めぐみが………)
めぐみを失ったショックは、思ったより大きかった。
頭の中で皮肉しか言ってなかった日常でも、楽しいと心の中では思っていたんだろう。
偽物の自分の幼馴染みだろ…?それは、幼馴染みでも、友達でもないんじゃないのか?
でも、それでも、偽物でも本物でも、めぐみを殺された事に、物凄い怒りを憶える。これが怒りなのか、殺意なのか、もうよく分からん。
偽物でも、楽しいと感じていた日常。
そんな楽しい日常を、壊した悪魔。
(火々里……ありさ………………!!)
火々里ありさ、本名トレース・ギルティール。
そのたった一人の悪魔に、
俺の家族、めぐみ、楽しい日常を奪われた。
俺の家族の時と、今回ので二度。
あの悪魔は、俺から二度も大切な人達を奪った。
絶対に許せない、許してはならない奴。
(あいつだけは…絶対に………!)
そんなハイトの耳に聞きなれない、だが温かく、優しい声が届いた。
『━━━天童ハイトさん』
「━━━!?誰だ!?」
するとハイトの目の前に、目を疑う程の美しさと、豊かな胸と白い大きな羽を持った、白いワンピースを着た女性が現れた。
その人は見た瞬間でわかった。
火々里ありさが悪魔であるトレース・ギルティールを見た時と同じ感覚。
この人は、
(━━天使…………………)
『━━あなたは、何を望みますか?』
「━は………?」
『私は、あなたの望みを叶える者。
あなたがあなたの家族に会いたければ死を。
あなたがやりたい事、成し遂げたい事が有れば、その事をサポートする力と知恵を与えます。』
「…………………………」
はは、全て奪う悪魔の次は、全てをくれる天使ってか?
もう驚くのも、めんどうになってきた。
望み?やりたい事や成し遂げたい事?
そんな事、あるに決まっている。
一瞬だけ、今楽に死んだら、会いたいけど会えない母や妹やめぐみに、会えるかも知れないと思った。
『ハイト』『お兄ちゃん』『ハイトくん』
だが、本当に家族やめぐみに会えるかもわからない様な賭けを選ぶより、今やりたい事をやって、死にたいと思った。
「━━━俺の望みを言う、天使様。」
今から言おうとしてる内容は、とても普段生活していたら望まないであろう内容だった。
「いくら人間離れしたって、俺にはやらなければならない事がある」
「俺は━━━復讐をしたい。」
「二度も俺の大切な人を殺したあの悪魔を、」
「この手で必ず復讐する。それが俺の望みだ。」
天童ハイトはこの瞬間、復讐を決意した。
殺さなくて良いのでは?
そんな事も思った。
でも、この殺意をどう治める?もう俺の心の奥から殺したいとしかおもえないようになってしまった。
殺したんだ。殺されるぐらい別にいいだろ?
俺の望みを聞いた天使は、
『それが、あなたの望みですか?』
「…はい」
『分かりました。
では、復讐をするチャンスと復讐をする為の力と知恵を与えます』
「ありがとうございます。」
『その望みを叶える為の道程は、決して楽なものではありません。また誰かが死んだり、辛い決断をする時が来ると思います。
「………………………………」
『ですが私は、あなたがそんな困難を乗り越えられると信じています』
「天使様…」
『それでは、あなたにチャンスと力と知恵を与えます』
天使がそう言った途端、俺の足下から魔法陣が現れ、魔法陣から出る光が俺を包み込んでいく。
(これで俺は━━━)
『最後に一つ言います』
「はい?」
『私の名前は、セルフィー・エルド・アフロディテといいます』
「セルフィー・エルド・アフロディテ…」
長い、けど、不思議と頭に中に刻まれた。
『セルフィーとお呼び下さい。
では、あなたの望みが叶うのと、また会えることを願って』
そう言うと、セルフィーは微笑んだ。
「━━━!…はい、ありがとうございます」
そう言うと、俺は完全に光に包まれていった。
5話です。
次から異世界です。