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天使と悪魔の実験台  作者: 紅雪コウキ
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第1章3「告白」


「アンタの家族を殺したのって

アタシなんだよ♡」


突然の告白。


だがその告白は、あまりにも信じ難く、想像さえしなかったその事実は、ハイトの頭の中に混乱を呼び寄せた。


「……ぁ……ぇ……………?」


「━━━プッ!アッハハハハハハハハハ!!なんだよそのマヌケな面!ちょーウケるんですけどーー!!アハハハハハハハハハハハ!!!」


ありさは、現代の一部の女子が使う様な言葉を使い、悪魔の様な声で笑っていた。

今日のありさからは想像出来ないような姿だった。


俺は必死にその告白の意味を考え、理解した。だが理解はしたが、納得はしなかった。


(━━……どーせ俺の本性を知ってんだ。もう演じなくていいだろう。)


今の状況を見ている奴がいるかどうかが気になったが、今は気にしないようにした。


俺はこの時気づいていなかった。いつもなら聞こえてくるはずの運動部の叫ぶ声が。


そもそも、人の声が聞こえない。人が、いない。俺とありさしかいない。


「……なぁ火々里。どこで俺の過去を知ったか知らねぇが、そんなふざけた事を言ってると俺だって怒るぞ」


(そうだ、落ち着け、冷静になれ。)


(あれは事故だ、たった一人の人間の少女がどうこう出来る事じゃない。)


あの事故が起こったのは五年前で、俺とありさは中学一年生だったんだ。同い年のありさが何か出来るとは到底思わない。


「だいたいあれは事故だ。お前が殺したとは思えねぇ」


ありさは笑うのを止めて、俺の言葉を聞いていた。


そして、


「………あ〜そう判断したか……素直に信じるかと思ったけど………面倒臭いな〜…まぁいいや」


(………………?)


ありさは何かブツブツ言った後、こう言った。


「どうせ殺すし、冥土の土産ってやつを見せてやるよ。」


「………は?殺す?」


(え、なに今殺すっつったかこいつ…?)


俺が戸惑っていると、ありさがまるで魔法を唱える時の詠唱のようなものを唱えだした。


「”我、魔の力を解放せし者、封印を解き放て”」


詠唱を唱えると、ありさの足下に魔法陣が浮かび上がり、魔法陣からの光がありさを覆っていく。


(眩しい…一体何が起こってんだよ…!?)


光と魔法陣が消え、ようやく目が開けれるようになった俺は、目を開けると、目の前に人間とは思えない姿になったありさが立っていた。


その姿は、本などで見たことがあるように感じる。でも、そうとしか表現が出来ない。


だってありさのその姿は、


「━━あ……悪魔………?」


ありさの姿は制服じゃなくなっていて、黒の鎖の着いたショートパンツを履いていて、上はへその辺りと肩が剥き出しで、ありさのスレンダーな体を惜しげも無く現されている。


髪の先端が赤く染まっていて、そして悪魔らしい証拠とも言える二本のツノと羽が生えていて、ありさの背丈をも超える大鎌を持っていた。


(こ……殺される……!!)


そう感じさせる程の禍々しい殺気がありさから放たれていた。


殺気にやられたのか、俺の体から嫌な汗が吹き出してくる。気持ち悪い。体が、ありさを本能的に拒否しているのだ。


「あ〜やっぱりこの姿の方が落ち着くわ〜。人間の姿になる為に魔力を封印してたからねー。………さてと。」


(やばいやばいやばいやばい殺される…!!)


ありさは、悪魔の姿になったことを確認すると、俺に改めて自己紹介をし始めた。


「アタシの本当の名前はトレース・ギルティール。まぁトレースって呼ぶか、ありさって読んでくれても良いわよ。ありさってテキトーに付けた名前だけど、結構気に入ってるから。」


トレース・ギルティール。ありさの本当の名前。

だけど俺は、そんな事は聞いてなく、必死にこの状況からの脱出方法を探していた。


(くそ!なんで俺が!?天使と言われてた転校生は実は悪魔だったってそんなふざけた事があるか!くそどうする!?)


こんな時に限って、頭がパニックを起こし、どうでもいいことだけが思い出してくる。


「てなわけで、アタシがアンタの家族が殺したってわかったでしょ?」


「━━━━!」


そうだ。


人間のありさならともかく、悪魔のトレース・ギルティールとしてのありさだったら、さっきみたいな魔法でトラックを操るなり、なんとか意図的に動かして事故を起こさせたのなら、それは殺人になる。


「じゃあ…お前が……本当に…俺の家族を、母さんと………妹を……殺したってのか…?」


信じられない。だってそうだろう?なんで悪魔が俺の家族を殺す必要があるのか、到底信じられない。何故だ。なんで。


「だからそう言ってんじゃん」


だが、ありさの口から出るのは、ありさがハイトの家族を殺したという残酷な肯定しかでない。


「━━━━━ふざけんじゃねーぞ!!」


何が何だかわからないが、とにかくこいつをどうにかしたい。そんな気持ちでいっぱいで、まともに体がうごかない。


「おーおー怖!そう殺気立たないでよ。すぐにアンタの家族に合わせてあげるからさ」


そう言うとありさは、大鎌を構え、人間とは思えない、否、まず人間には出来ない程の速さで、俺の方に走り込んでくる。


(くそ!くそ!!俺はここで死ぬのか!!?折角家族を殺したやつが現れたのに俺は!!?)


逃げられない。無理だ。


そう判断し、もうほとんど諦めるが、鎌が目の前に来た瞬間に、俺の目の端から誰かがやってきて、叫びながら前を塞いだ。



「だめーーーーーーーーーーーー!!!!」


(!?)


「━━━━━!」


ズバッンッ!!


肉と骨が切れる音がしたあと、俺は不思議な程冷静な頭で、何が起きたのかを理解した。


「め、めぐみ…!!!?」


「━━!…………………ぁ……………………………」


ハイトを庇ったのは、弥生めぐみ。


お人好しで、人懐っこくて、ハイトの昔からの友人。そのめぐみが、ありさとハイトの間に入ってハイトを庇ったのだ。


「お、おい!めぐみ!な、なんでお前!?」


倒れためぐみに抱き抱え、ハイトは必死にめぐみに呼びかける。俺の手に、めぐみの血がつたってくる。


「ぅッ!ゴホッ!ゲホッ!……ハァ…ハァ……え…へへ…へ…へ………だ…大丈夫…?ハイトぉ……」


「俺は大丈夫だ…!だけどおいめぐみ!しっかりしろよ…!めぐみ!!」


ハイトを庇っためぐみは右肩から左腰の辺りまで裂けていて、もうとても間に合わないようにしか思えない。


「めぐみ…!めぐみ……!」


「え…へへ……ちょっと……やばいなぁ……ハァ…ハァ…ハイトぉ……ちょっと………最後っぽい…ので…………言っとくね………ゲホッ……」


めぐみの口から血が大量に溢れてくる。血を流しすぎたのだろう。めぐみの目の焦点が合っていない。


「そんな事言うなよめぐみ…!俺が……!」


━━俺が?…何をだよ……。


「ハイト……聞いて…?ハァ…ハァ………今まで………ずっと………ゲホッ……………好き…だった…………よ………」


「━━━━━━!!」


「━━━━━━━」


「…おい……めぐみ………おいって………めぐみぃ……」


めぐみが死んだ。なんでだ。なんで…


(俺はまた、失うのか………大切な人を………。)


俺は二回目も大切な人を失った。それも、同じ人間によって。いや、悪魔によって殺された。


その悪魔というと、


「あ〜やってしまった。どーしよ……まぁいっか」


想定外だとでもいうように、頭を掻きながら俺と、めぐみを見ている。


まぁいっかってどういう事だ…。これ以上何をするつもりだ…。


「それじゃあ…じゃあね〜ハイトくん♡

天国でお母さんと妹さんと、今行っためぐみちゃんによろしくね。」


そう言って、大切な人を失ったショックで動けずにいるハイトに、大鎌を振り下ろした。




4話です。

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