第1章1「偽りの自分」
俺の名前は天童ハイト。高校二年生。
中学三年まで、叔母の所に住んでいたが、一年前に一人暮らしを始めた。
叔母も俺がいるのが迷惑だと思っていたと思う。
生活費などは払ってくれるらしく、学費は自分でバイトなどをして払っている。
最近の高校生にとっては、少し珍しいとは想う。
今は自分の高校に向かっている途中だ。
「ふわぁ………………………あぁ〜…ねむ……」
昨日は夜遅くまでバイトだったせいで、少し寝不足になっている。でも、これもいつもの事なので、気にはしない。
あくびをしてると、
「━━おはよ!ハイト!」
後ろから声が掛けられた。
女子の声で、大きな声だが、誰なのかはわかっている。振り向きつつ、声を掛けてきたそいつに、朝の挨拶をする。
「あぁ…おはよう」
「どうしたの?寝不足?」
「まぁそんな感じかな?」
「ちゃんと寝なきゃダメだよ〜!」
「分かってるよ」
この朝から元気いっぱいなこいつは弥生恵美。
俺の幼馴染みみたいなやつで、小四の時に転校してきてそこからの付き合いだ。中学も一緒。まさか家の事で遠くの学校に行った俺と同じ学校とはな。
受験の時にびっくりしたのを覚えている。
世間話をしながら(ほとんど恵美一人で喋っている)学校に着いて、靴箱に靴を入れ、上履きを出し、恵美とはクラスが違うので恵美と別れる。
「じゃあねハイト〜!」
「おう、じゃあまたな」
笑顔で手を振って別れた後、少し周りを見て、
「あぁ〜やっと静かになった…どんだけ喋んだよ…毎日毎日そんな話すことあるか?」
唐突だが、俺は猫被りだ。
自分が作り出した偽りの自分を演じている。
何故そんなストレスが溜まるようなことをしているのかというと、
その方が世の中上手くいくからである。
他の生徒達には、人当たりが良いから友達として、上手くいく。
先生には、友達が多くて、勉強も出来て、スポーツもそこそこ出来ていたら大事に扱われ、成績にも良い。
まぁ先生にとっては、めんどくさくないような生徒が一番がいいだけなんだけど。
自分の教室に着き、ドアを開けると『俺』の友達が、こちらに気付いて、朝の挨拶をしてくる。
「おはようハイト!」
朝からなんでそんなテンション高いんだよと思う様な挨拶が飛んでくる。
「おはよう」
と、『俺』は笑顔で返す。
「なぁ昨日の映画観たか!?すっげー面白くなかったか!?」
と、スポーツ体型の男子が興奮気味に言ってくる。
俺は「そうだね、面白すぎて最後まで観ちゃったよ。」
観てねーよ。あれのどこが面白いんだ。
俳優が可哀想だと思う。
「おはよう天童くん!今日転校生が来るらしいよ!楽しみだね!」
と、小柄で男子に人気のある女子が言ってくる。
「おはよう、それは楽しみだね。どんな人かな?」
興味ねぇんだけど、興味がある風に返す。
「おはよう!この前のテストに天童が教えてくれた所がでたよ!ありがとう!」
と、いかにもバカっぽい男子が言ってくる。
「おはよう、それは良かったね。どういたしまして。また分からないとこがあったら言って。」
先生がここテストに出る宣言したんだから、出るのはわかるだろ。それに、テスト範囲が狭いんだから簡単なはずなんだがな。
そんな感じで人当たりを良くしていたら、世の中上手くいくもんである。少なくとも学校では。
チャイムがなったと同時に、先生が教室に入ってきて、先生に気付いた生徒達が一斉に自分の席に座る。
ふと先生見ると、先生の横に見知らぬ女子が立っていた。
(あれが転校生か)
と、ぼ〜としてると、周りは「あの子が転校生…」「ちょー可愛くね!?」「天使降臨」「お前後で話しかけろよw」「は?w嫌だよ絶対嫌われるじゃんww」「キレイ〜」「髪の毛つやつや」「ライバルの予感…」
といろんな事を言っている。はっきり言えばうるさい。
「え〜静かに。皆も知っての通り今日からこのクラスで一緒に勉強する子が転校してきた。
はい、じゃあ自己紹介して」
「はい」
と、一歩前にでて、俺と目が合った。
すると、
ニコっと微笑んだ。
周りの男子は「おおぉぉぉぉ」と、ざわついているが、俺はなぜこちらを見て笑ったのか、少し考える。
(なんだ?誰だ?どっかで会ったか?)
てか、周りがウザイんだけど。
すると転校生は正面に向き、自己紹介を始めた。
「皆さん初めまして。」
「私の名前は火々里亜里沙です。
これから、よろしくお願いします。」
第二話です。
読んで頂きありがとうございます。
天童→てんどう
弥生恵美→やよい めぐみ
火々里亜里沙→かがり ありさ