調査編(1)
警察が到着するまで、俺たちは甲斐の指示で彼と共にじっとしていた。校庭には生徒を誘導し終わった教師たちや、戻ってきた飯塚が待機している。
「まさか、こんなことになるとは……」
「甲斐さん、鍋の中の人物に心当たりは?」
「あるよ。何せ、君たちに依頼をする原因になった人間だからな。名前は、我妻清二だ」
つまり、今日来るはずだった人か。
まさか、誤っておでんの中に入ったとは考えられない。況してや、自殺とも言えるはずはないだろう。ならば、残された可能性は……
「殺人事件……?」
<数分後>
数台のパトカーと、1台の救急車が到着した。
パトカーからは、警察官だけではなく刑事らしき人物も降りてきた。
彼らが来た後、鍋の中から我妻という男性がブルーシートの上に引きおろされた。その腹部にはナイフが深く刺さっており、そこから出血している。
「これは、確実に殺しだな」
ブルーシートに入ってきた1人の刑事が呟く。その後、彼は鑑識や他の警察官に指示を出し始めた。
肩まであるストレートの黒髪、前髪も長く左目が隠れかかっている。右の方はしっかりと髪を耳にかけているため、隠れてはいない。
中肉中背、グレーのスーツを着たその刑事を俺は知っている。
「……真じゃないか!」
三笠真。俺の幼馴染だ。
真は俺に気付くと、驚いたように目を見開き、
「剣……か!? 何でテメエがここに?」
「仕事でな。にしても久しぶりだなぁ……2年ぶりか」
「あァ。だが、話してる暇はねェ。テメエも含めて、事情聴取をしなきゃならねェよォだからな」
まあ、殺人事件だから当然だろう。それに、俺の考えてる最悪の状況が実現してしまえば……俺は真と闘わなければならなくなる。
真は高校卒業後、ストレートで警察に入った。その後、あまりの優秀さに、たった2年で刑事になったらしい。幼馴染としては誇りに思えるのだが、何だろう、俺の知ってる真とは少し雰囲気が違うな。
「三笠さん、被害者の死亡推定時刻なのですが……」
「どォだッた?」
「鍋の中に入って茹でられていたため、正確な時刻は分かりませんでした。しかし、諸々の状況を合わせると、どうやら13時から14時頃の可能性が高いようです」
青い帽子を深くかぶった鑑識が真に報告をしている。今が午後2時40分だから……俺たちが準備しているときに殺されたのか。益々嫌な状況になっていくな。
死亡推定時刻を聞いた真は部下の刑事たちに関係者の事情聴取をしてくるように指示した。部下たちはそれぞれ教職員たちを学校の中に集めていく。
「なるほどなァ……おい剣、午後1時から2時ごろはどんな状況だッた?」
「今日のイベントの準備をしてたよ。みんなバタバタしてた」
「そォか。ん……後ろにいるのは未来かァ?」
「ああ、助手として一緒に来てたんだ」
未来は少し前に出てきて、真に軽く会釈をする。
「三笠先輩、お久しぶりです」
「あァ。未来も今年は受験生だなァ……頑張れよ」
「あ、ありがとうございます」
やはり、気のせいではない。真の様子が明らかにおかしい。
喋り方こそ昔と同じだが、その言葉に全く感情が篭っていないのだ。
「ん、未来……なんでエプロンを反対に着てるんだァ?」
「え……えっと、表に赤い絵の具みたいなのが付いてて」
「赤い……絵の具だァ?」
マズイ。着実に俺が予想してる展開に近づいてる。このままじゃ……!
「ちょッと見せてみろ」
真がそう言うと、未来は素直にエプロンを脱いで真に手渡した。幸い、彼女の制服には赤い絵の具は付いていないようだ。制服に付くと、明日着れなくなるしな。
だが、問題はそこじゃない。
「おい鑑識、これ調べてくれ」
「了解しました!」
先ほどの鑑識が駆け寄ってきて、エプロンを受け取って再び走り去っていった。
「先輩、どういうことなんですか……?」
「多分、真はあれが『血』じゃないかと疑ってるんだ。そして、もしあれが被害者の血液と一致したら……」
「え、もしかして、私が……!?」
「…………」
念のために、と真は俺に自分のエプロンを渡すことを要求してきた。俺がエプロンを脱いで渡すと、彼は全面を確認し、俺に返した。
「さァて、一応アリバイを聞いとこォか」
「真、俺たちを疑ってるのか?」
「悪ィな。刑事は疑うのが仕事なんだよ」
俺と未来は死亡推定時刻の行動を真に説明した。
整理しておこうか。
12時40分ごろ、俺たちは床野中学に到着した。それから給食室に向かい、12時50分ごろに校長室に到着。そこで飯塚と会話した。そして、1時頃から校長先生と会話。1時10分ごろに給食室に戻る。そして、2時ごろまで準備をしていた。
「確認しておくが、問題の鍋を運んだのはどッちだ?」
「わ、私です。かなり重かったので、あそこの凸凹の道は辛いと思って、甲斐さんに教えてもらった給食室の裏道を通ってきたんです」
「裏道は最近整備されたらしくて、道が滑らかなんだよ。俺も確認した」
説明していると、遠くから鑑識の人が走ってくるのが見えた。彼は、未来のエプロンを透明のビニール袋に入れて持ってきた。
とても嫌な予感がする。
「検査が終わりました」
「ほォ、それで?」
「実は……」
鑑識は真に耳打ちをした。それを聞いた真は、未来に近づき、彼女の両手を掴むと……
「夜明未来、我妻清二殺害容疑で逮捕する」
「え……えぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええ!? ちょっと待ってください、三笠先輩! わ、私じゃないです!!」
「残念だが、テメエのエプロンから被害者の血液反応が出た。詳しいことは後で聞く」
「おい待てよ真! お前は、本当に未来が人を殺すと思ってるのか!?」
真は俺の方を向くと、冷たい目で睨んできた。
「いいか。事件に私情は挟めねェ。心配するな……まだ容疑者の段階だからな」
「三笠刑事、報告があります!」
真が未来を強引に連れて行こうとしていた時、他の警察官が駆け寄ってきた。彼はメモ帳を片手に真に話をしている。その内容は俺には聞こえない。
「――以上です」
「ご苦労。おい剣、悪い知らせだァ」
真は今度は俺の方を見ない。学校の入り口に停めてあるパトカーの方を向いたまま、抑揚の無い喋り方で、
「他の職員のアリバイが確定した。誰にも見られていない時間があるのは未来だけだァ」
「なっ……!! そんなはずは……!!」
「先輩、助けてください!!」
マズイ。マズイマズイマズイ!!
このままじゃ未来が連れて行かれてしまう。しかも、状況からして彼女が犯人と言うことになってしまう!
未来のアリバイが不明確な時間……多分、給食室の裏道を通った時だ。あの時、俺は通常の道を通ってたし、2つ目の鍋を運ぶために1度給食室に戻っている。ああクソ、俺じゃ弁明出来ない!!
「反論はねェみたいだな。未来、まだテメエには正当防衛の可能性が残ッてる。安心しろ」
真は完全に未来を犯人だと決め付けてる。いや、状況証拠がそう示しているのだから仕方ないのかもしれないが……!
未来は必死に抵抗しているが、それを煩わしく思った真に遂に手錠をかけられてしまった。その事実に、彼女の思考が停止した。
「え、え、え。み……三笠……先輩……」
未来の目に薄っすらと涙が浮かんでいる。
「し、信じてくださいよ……私じゃないんです」
「口でならいくらでも言える。俺たちが信頼するのは、証拠だけだ」
信頼するのは証拠だけ? だったら、未来が犯人ではありえないという証拠があればいいのか……?
それなら!
「未来! 俺の目を見ろ!!」
「先輩……?」
未来は顔だけをこちらに向けて、俺の目を見る。それを見て、真は舌打ちしながら彼女ごとこちらを振り返った。
「お前は、やってないんだな?」
「やってません。私じゃありません!!」
やっぱりだ。
未来は、『嘘をついていない』!!
「あのなァ、剣にそれを言ッたところで何の意味もねェんだよ。そォいうのは弁護士に……」
「真、未来は嘘をついてない。お前ならこの意味が分かるだろ」
そう、真は俺の力を知っている。幼馴染、ということもあるが、在学中にあいつの前で力を見せ付けたことがある。そう、俺の力こそが未来がやってないという証拠だ!!
「……はァ。お気楽でいいよなァ、テメエは」
真は大きなため息を吐いて、後頭部を掻き毟りながら言った。
「いいか。確かにテメエの力を俺は知ッてる。だがよォ、そんなものが証拠になるわけがねェだろ」
「……どういうことだよ」
「そォだな。例えば、未来を庇いたくてテメエが嘘を言ッていると言われたらどォする?」
「そ、それは……」
俺の力を示すことは誰が相手でも可能だ。つまり、どんな状況であれ、俺が人の嘘を暴くことは不可能ではない。
しかし……俺自身の言葉の真否を証明することは出来ない。
「そォいうことだ。テメエの力は客観的には何の意味も持たねェんだよ。残念だッたな」
「そんな……!」
「さッきから言ッてるだろ。俺たちが求めてるのは証拠だ。それも、誰の目にも見えるものなんだよ」
どうすればいい! どうすれば未来を救い出せる!?
「……なあ真。お前は、未来がどうやって被害者を殺したって主張するんだ」
「あァ? なんでそんなことを話さなきゃならねェんだ」
「証拠を示せっつってんるんだよ。お前が俺に要求したように」
「応じると思ッてんのかァ? まァ、いい。幼馴染のよしみだ。聞かせてやろう」
良かった。ここであいつが無視してしまったら、いよいよ俺に打つ手はない。
あいつの推理を聞いて、未来が犯人じゃないってことを証明するんだ。それしか、方法はない。全く、皮肉なもんだな……高校時代にもこんな経験がある。その場に真もいた。
「まず、未来は給食室の裏口に鍋を運んだ。そこで、被害者と出くわしたんだろォよ。そして被害者を殺した。その場に死体を残すとテメエや甲斐信三が来る可能性があるからな。発見を遅らせるために、被害者を鍋の中に入れたんだ。このエプロンに付いてる血は、被害者を殺したときの返り血……以上だ」
……筋は通ってる。鍋の中に入れた理由も最もだ。実際、俺と甲斐は未来が心配で彼女の所に駆けつけたからな。あの時は校庭から未来の場所に行ったが、もしかしたら反対側から未来のいる場所に向かったかもしれない。
これ、崩せる……のか? いや、この推理を崩さなければ未来が犯人になってしまう!
考えろ。何かおかしな所は無かったか!?
「真、未来が給食室の裏口で被害者を殺したのなら、そこに血液反応があるはずだ! 何せ返り血を浴びてるんだからな!」
「捜査中だ。それに、もし血液反応が出なかッたとしても、コイツの容疑が晴れるわけじゃねェ。たまたま地面に被害者の血が落ちなかったって可能性もあるからなァ」
「うっ……」
「もォいいか? 裏付け捜査を進めるから、そろそろ行くぞ」
「……くそ!!」
俺はこちらを睨みつけている真の顔が見れず、今にも泣き出しそうな未来のほうに視線を移した。今の俺は、情けない顔をしているだろう。額から嫌な汗が流れてくるのが分かる。
遂に未来の目から涙が零れ始めた。その涙は、制服の白シャツの上に落ちる。
……ちょっと待て。
「さ、行くぞ未来。正当防衛か否か、聞くのはそこだけだがなァ」
「せ、先輩……!」
未来は必死に俺の方に手錠のかかった両手を伸ばしたが、真がそれを制してしまった。そして、彼は強引に未来を歩かせる。
「ちょっと待て真!!」
「……なんだ。まだ何かあるのか」
「お前の推理では、未来は被害者を殺したときに返り血を浴びたんだよな」
「あァ、エプロンを着てたから制服には全くかかッてねェみてェだがな」
真は未来の制服に目をやりながらそう言った。
俺はその未来の制服を指差しながら、こう叫んだ。
「それだ! それなんだよ真!!」
「あァ?」
「思い出してみろ。未来はエプロンを表裏逆に着てただろ」
「確かになァ。そりゃ、返り血を隠すためだろ」
「問題はそこじゃない。制服だよ」
真は怪訝な顔をする。ようやくあいつの顔をしっかりと見ることが出来た。
「どうして未来の制服に血が付いてないんだ」
「エプロンがガードになッたッてさッき言ッたよなァ?」
「いや、付いてなきゃおかしいんだよ。だって、未来は血の付いた部分を裏にしてエプロンを着てたんだからな!!」
そう、給食室の裏道で被害者を殺したのならば、殺してからさほど時間は経っていない。それに、俺と甲斐が未来の所に行った時には返り血は見当たらなかった。
真の推理が正しいとするならば、未来は返り血を浴びた直後にエプロンを裏返したことになるのだ。ならば、血の付いた面が接触した部分……つまり、彼女の制服には返り血が付いていなければおかしいのだ。まだ血は乾いていなかったはずだから。
「……真、やっぱり未来が犯人じゃありえないんだよ!!」
「何……だとォッ!?」
「お前の推理は間違ってた。それを、お前の大好きな証拠が示してるんだよ」
「た、確かに……だが、この返り血は確かに被害者のものだぞ?」
鑑識がそういう結論を出したのだから間違いはないだろう。
……そう言えば、未来は最初からエプロンを裏返してたよな。ならば。形式上の答えとしては……
「最初にエプロンを渡された時、未来はエプロンに赤いものが付いていることに気付いた。だから裏返して着ていたんだ。つまり、その血は……俺と未来がこの学校に来る前に付いたとしか考えられないんじゃないのか?」
「……ふざけるな。それならば、死亡推定時刻との矛盾が起こるだろォが」
そうなんだよな。死亡推定時刻は午後1時から2時の間。だったら、俺たちが来る前からエプロンに被害者の血が付いていたはずがないんだ。
「まあとにかく、未来が犯人のはずはない。解放してやってくれないか」
「……テメエは昔から変わらねェなァ。目の前の人間を救いさえすればいいと思ッてやがる」
真はため息を吐きながら、肩を落として首を横に振る。
「どういうことだ……?」
「いいか。重要なのは『犯人は誰なのか』ッてことだ。『こいつが犯人なのかどうか』じゃねェんだよ。確かに、さッきよりも未来への疑いは小さくなッた……けどよォ、コイツが1番怪しいことに変わりはねェんだよ」
「でも、未来には犯行が不可能だったことは証明されただろ!」
「いや、犯行時コイツの側には高温の鍋があッた。しかも、火が付いたままだッた……ならば、返り血がすぐに乾いちまッたと考えることも出来る。こう考えれば、未来の制服に血が付いていないのも納得できるだろ」
真の様子がおかしい。自分でも気付いてるはずだぞ。真が言う通り考えれば納得は行くが、その理論はあまりにも……!
「暴論だ。そんなの、こじつけでしかないだろ!!」
「可能性はゼロじゃねェ。それで十分だ」
「でも……!!」
「だからテメエは変わッてねェんだよ。あの時の事件と一緒だ。テメエが証明したのは、あくまでコイツが犯人じゃねェという『可能性』だ。『真犯人』がいることを証明してはねェんだよ」
真の目には、何の感情も宿っていない。これは……淡々と職務をこなしているだけの人間の目だ。まさか、さっきの言葉の真意は!
「俺たち警察が見つけなきゃいけねェのは犯人だ。高校のときの事件みたいに、犯人が分からねェ状態じゃ終われねェんだよ」
「待てよ真。お前はこう言いたいのか? 未来だけが犯行を行える状況だから、彼女を犯人にする……と」
「そォだ。未来以外に犯人の可能性が無い以上、そういう結論にならざるを得ねェんだ」
「ふざけるな! それじゃあ冤罪になっちまうぞ!!」
「……それが、現実なんだよ。今度裁判でも見に行ッてみるんだな。どれだけありえない結論でも、証拠と主張の筋が通ッてさえいれば、検察の主張が勝ッちまうんだよ」
聞いたことがある。今や、無罪判決が出ることはありえないらしい。それはつまり、逮捕されればたとえ冤罪だったとしても、犯人にされてしまうってことだ。
でも、そんなのおかしすぎるだろ。
「俺も、最初はテメエと同じ思いだッた。けどよォ、綺麗ごとだけじゃ世の中渡ッていけねェんだよ」
そうか、そんな現実を見てしまったから真の雰囲気がおかしかったんだ。俺の知ってる真は、名前の通り真実を追い求める人間だった。それが、こんなにも変わってしまうのか。
「じゃあ、行くぞ未来。恨むなら、世の中を恨みなァ」
「え……でも、私は!」
「いい加減にしやがれ!! これ以上反抗するんなら、俺も容赦は出来なくなる。テメエの正当防衛も絶対に成り立たなくなるぞ!!」
「う、うぅ……そんなの、酷すぎます……」
くそっ! あいつの推理は崩したはずなのに……! どうする。どうすればいい!!
あいつが求めてるのは、『犯人は誰なのか』ということだ。じゃあ、真を納得させるためには、真犯人を見つけるしかない!!
「待てよ真」
「まだ何かあんのか」
「俺が真犯人を見つけてやる」
「……どォやッて。まさか、テメエが事件を捜査するとでも言う気か?」
「この場でのトップは真なんだろ? 頼む、許可してくれ」
ダメ元なのは分かってる。もし許可されなければ、俺は強引にでも調査するつもりだ。
真は顎に手を当てて少し考えて、俺の顔に視線を移した。そして、低い声で、
「分かッた。特別に許可してやる」
「……え」
「テメエも事件の当事者だ。それに、『犯人が誰なのか』が分かるならそれでいいんだよ。まァ、後は……幼馴染のよしみだ」
さっき、捜査に私情は挟まないって言ってなかったっけ。心なしか、真の目が優しくなっている。
やっぱり、根は変わってないのだろうか。
「いいか、これは超特別な措置だ。テメエの使命は犯人を見つけること。それも、確実な犯人だ。見つけられなければ、未来を連れて行く」
「……分かった。絶対に見つけてみせる」
「未来は現状、解放出来ねェ。パトカーの中に押し込んどくぞ」
押し込むって……
「つまり、捜査はテメエ1人でやッてもらう。もちろん、俺たちは俺たちで捜査を進める。まァ、未来が犯人であること前提の捜査だから、大した情報は得られねェかもな」
なんだ? メチャクチャ説明してくるぞ。
「……今、自由な発想が出来るのはテメエだけだ。頼んだぞ」
最後の言葉はかなり小さな声だった。周りにいた警察官たちには聞こえていないだろう。もしかして、真は――
「じゃァな。頑張れよ」
そう言って、真は未来を連れてパトカーの方へ向かっていった。未来は抵抗せずに歩いていく。歩き始める前、未来は一瞬俺の方を見た。その目にはもう涙は浮かんでいなかった。
俺を、信じてくれているのだろう。
やるしかない。俺が未来の無実を証明して、真犯人を見つけるんだ!
こうして、1人残された俺は初めての捜査を開始した。
未来の運命は、俺にかかっている――。