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土御門ラヴァーズ2  作者: 猫又
第七章
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決起集会

 よく晴れた初夏の日、広大な安倍家の領地内での庭に一斉に集まった者達がいた。

 安倍家当主である、安倍泰親を始めとする陰陽師達である。

 泰親の子息達も、そしてその式神達もが神妙な顔をして白玉の砂利の庭に集まっていた。

 そこには泰成を名乗る賢と和泉もいた。和泉を守るように十二神達がぐるりと囲んで待機している。和泉は才の見鬼としてすでに安倍家のその能力を示し済みだった。

 攻撃の能力者が多い安倍家では和泉の癒やしの霊能力は泰親でさえ目を見張るものだった。 

 それに危機を感じた賢は和泉の守護を強化した。

 赤狼はもちろん、闘鬼を先頭に十二神全てを和泉につけた。

 もし安倍家が和泉の能力を欲しがったなら、千年後に戻ることを阻止されたら。

 自分はともかく、和泉だけは千年後に戻す。

 誰を犠牲にしても和泉だけは戻す、賢は十二神にそう命じていた。


「皆の者、ようく聞け。我らはこれから怨敵九尾の狐討伐に入る。四男、泰成の身体も完全に回復し、さらに、泰成の娶る娘が見事、再の見鬼の能力を示した。これぞ啓示に他ならぬ。今こそ仇敵を永遠に葬り去る絶好の時期じゃ! 今こそ心を一つにして、九尾の狐めを目に物を見せてやろうではないか!」


 泰親の決起の言葉に、その場にいた安倍の者や、それ以外の政府から派遣されている武士達がおーっと、声を上げた。

 総勢で二百名は超える人数である。 


とはいえ、京の都から那須の里の殺生石まで人の足で歩いて行かなければならない。

 その距離、現代の整備された道でも五百キロはある。

 それを山を超え、谷を越え、食料や生活道具を持っての大移動である。

 料理人や召使いまで引き連れての一大行事だ。


「いいか、和泉、俺達が那須へ出発してから十日遅れてお前は十二神と出発しろ。

赤狼に乗って飛んでこい。いいな」

「え? どうして?」

「赤狼に乗って十日ほど遅れて来れば俺達もちょうど那須につく頃だ。安倍の連中は信用ならない。お前の能力をえらく賞賛している。この時代でも和泉の能力は再生の見鬼の中ではトップクラスだ。どんな手を使って和泉をこの時代に残そうとしてくるか分からないからな」

「そうなの?」

「ああ、はっきりは言わないが俺達が平成に戻るのを阻止しようするのは間違いない。お前の能力があれば老いた泰親でもまだまだこの時代で敵なしだろうからな」

「うん……賢ちゃん、みんなで帰ろうね?」

「当たり前だ。誰が残るのも許さないぞ」


 賢は和泉に優しくそう言いそれから十二神に対しては密かに、、

「絶対に和泉は平成に連れて帰るんだ。例え、俺が残る様な事態になっても、和泉だけは連れて帰ってくれ。頼んだぞ」

 と言いつけた。

 水蛇や銀猫は不服そうな顔をした。

「若様だけ残るなんていやですよ」

「そうだにょん、そんな事できないにょん!」

「もちろん、みんなで帰るさ。だが優先順位は和泉を平成に戻すのが最優先だ。闘鬼、赤狼、頼んだぞ」


 決起の会と共に先発部隊とでも言うべき一団が出発した。

 泰親を始めとする主要人物達が馬に乗りカゴに乗り通る道のりを偵察がてら切り開き、身体を休める場所を確保する為の一団である。

 やがて能力者達がいくつかのグループに分かれ、時間差で出発する。

 それには検非違使という都を警備する役人達も同行し、安倍家の陰陽師達の盾になりながらも旅路に加わった。


 賢はその一行に加わった。

 泰親に次ぐ能力者であるので、安倍家の中でも権力的には認められている。

 誰もが泰成と名乗る賢に丁寧に接し持ち上げるが、賢が千年先から来た子孫というのも知られている。

 そして、安倍家の為にどうしてもその身体と能力を留めおきたいと彼らが望んでいるのは明白だった。


 十二神に和泉を守らせて賢は一足先に出発した。

 特に赤狼と闘鬼には何があっても和泉から目を離さないように命じてあるので、安倍の屋敷の和泉の部屋には右を見れば赤狼が左を見れば闘鬼がどんっと座っている。

 さらに十日後までは他にすることもない残り十神もその周囲に寝そべったり、毛繕いしたりとうろうろしている。


「そ、そんなにぎゅうぎゅうに……人口密度高すぎない?」

「何があるか油断ならないからね。まあ、この部屋の周囲には青帝が結界を張ってるから、どんな能力者でも入ってはこれないけどねぇ」

 和泉の膝の上で銀猫が丸くなりながら言った。


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