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土御門ラヴァーズ2  作者: 猫又
第六章
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式神達3

 式神達はどこででもその力を試すわけではない。

 乱暴者の式神達が集まって喧嘩をすれば人間界に影響がないはずがない。

 万が一それが土御門家に知れれば粛清されてしまう事は明かである。特に現当主の賢は妖達を好き勝手にさせておかなかった。

 そこで式神達が力自慢をする絶対結界を作り上げた。

 次元の狭間、異界と人界との隙間に作られたその空間は絶対に破る事が出来ない。

 式神達が戦う時、それを見物にやってくる妖達の数は千とも万とも言われる。見物客は見物料を支払わねばならない。それは絶対結界を作り上げる壁となる妖気。見物客達は壁の一部分となってその領域を作りあげる素材になる。

 結界は絶対に破られてはならない。

 破る者は粛清、それは絶対である。

 その空間を支配しているのが土御門総式神百神。

 人界をさまよっているような低級霊は近寄ることすら出来ない。

 自らのすべてを差し出しても見物料となる妖気すら支払えない妖は底辺以下だからだ。

 妖達の間で土御門の絶対結界に戦いの見物に出かけるのはむしろステータス。

 妖の中でも上級妖怪しか入れない最強の戦いの場である。

 

 修練をする、といえば聞こえはいいが要するに暇な妖達が集まって力試しをしているだけである。相手が死ねば自分が上級式神に入れるとなればどの式神も容赦なく攻撃をしかける。それは妖の中では自然の理だが、知能の高い妖は少しばかり考える。

 相手を殺すのは非常に楽しいが、例えば、現当主の奥さまの和泉の式神、赤狼を相手にする時。赤狼は必死でやってもかなわないほどの強豪だ。しかし万が一、赤狼を倒す事が出来たとすればそれは式神の中ではもの凄い栄誉だ。赤狼の死体を喰らえばその妖力も自らの物に出来る。赤狼ほどの力だ、格段に妖としての地位も上がる。

 しかしその瞬間に和泉には未来永劫嫌われる。和泉が嫌う式神を現当主が十二神に配置するかと考えれば無理な話だ。

 低脳な妖怪は力が全て、強い者が絶対であるが、人界に慣れてその暮らしにはまっている妖怪は違う。少しばかり人間の都合に合わせて暮らすのだ。

 そうでなければ人間の支配下で式神などをやろうとは思わないだろう。

 例え式神の誓いに縛られていても、嫌な物は嫌。それが妖。

 土御門家の式神は少しばかり知能が高く、そして結局人間には好意的である事は間違いない。


 イチローが次に姿を見せたのはそんな場所だった。

 空間内は縦にも横にも広く、無限だ。

 上下左右を囲っているのは妖達でできた壁。どんな攻撃も吸収してよそへ漏らさない。

 もちろん、壁を突き抜ける事はある。

 赤狼の炎や紅葉の電撃を受けた壁がもろく崩れる場合もある。

 その妖達の壁をさらに囲っているのが、壁男。

 すさまじく防御力の高い式神だ。

 万が一、妖の壁が崩れても壁男が止める様になっている。

 勝負には今まで負けた事がない。炎も電撃も通さない。

 ただし攻撃力は皆無。

 相手を攻撃する技はなくただただ身を守るだけだ。

 しかし絶対結界を守るには最高の式神だった。


「おいでなすったかい」

 シュラが結界の真ん中で座っている。

 ふさふさとした尾をどしんどしんと地面に叩きつける。

 その場に現れたイチローの身体から黒い炎がちらちらと上がる。

 目は金色に光り、爪も牙も十分すぎるほど尖っている。

「やる気は満々かい。位もないお前を殺ったところでなんの得にもなりゃしねえがな。まあ、お互い暇だ。遊ぼうぜ」

 シュラが腰を上げて、戦闘態勢を取った。

 シュラが強い事は周知の事実だ。

 燈狐がいなければシュラが十二神に入っていた事は間違いない。

 イチローは低く姿勢を取った。

 やっかいなのはあの五本の尾。

 太くふさふさしているが素晴らしく俊敏で力がある。

 シュラはその場に座ったままで、尾だけが敵を徹底的にたたきのめす場面をイチローは見た事がある。

 五本の尾はその先を十本にでも百本にでも変形させる。その一本一本が鋭く絡みつき、突き刺さり、ぴしりぴしりと相手を打つ。

 低い姿勢で唸るイチローへシュラの尾が四方から襲いかかってきた。


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