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土御門ラヴァーズ2  作者: 猫又
第一章
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式神会議

「では1453回土御門十二神会議……おっと失礼、どこかの乱暴な赤い奴はクビになって後釜も決まらぬ今は、十一神会議じゃったな、を始める」

 と青帝が言った。

 ずらりと雁首を揃えて十一の式神が揃っている。

 この空間は異次元とでもいうか、妖には行き来自由だが人間には見えない空間だ。

 本日の議長は青帝大公、誰が作ったか知らないが大きなテーブルの両側に土御門十……神が揃っている。

「本日の欠席者は闘鬼どのだな」

「本日のって……闘鬼のだんなは一回も参加した事ないじゃないか」

 と言ったのは黄虎の頭の上の銀猫。

「まあ、そう言うな。で、本日の議題は?」

「御当主を怒らせたどこかの乱暴な野良狼を処刑する話し合いにょん」

 水色の大蛇が怒りのオーラを発しながら発言した。

 皆の視線が赤狼に集まる。無理矢理この場に引っ張り出された赤狼はふてくされた様子で机に顎をのせている。

「赤狼、土御門に危機が迫っている今この時に、どういうつもりの振る舞いだ? 美優どのが身体を乗っ取られ、加奈子と言う名の悪しき霊が御当主にどんな要求をするやもしれんのだぞ。あまつさえ千年続いた由緒ある土御門に憎き怨敵、賀茂の侵入を許すやもしれん! 我ら誇り高き土御門最高神十二神が賀茂に仕えるような事態になりかねんこの緊急事態に!!」

 赤狼は「けっ」と言う感じで目をむいた。

「何だい、その態度は!」

 と銀猫も怒って毛を立てている。

「知るか」

「あんたが余計な事言うから和泉ちゃんと御当主が喧嘩になって、和泉ちゃんも泣いちゃったにょん。あんた、和泉ちゃんを泣かして平気にょんか!」

 赤狼はぐるりと皆を見渡して、

「美優を加奈子もろとも殺してやれば解決だ」

 と言った。

「それが出来ないから、みんなで困ってるでやんすよ!」

 と茶蜘蛛。

「そうだよ。さすが野良に落ちるだけあって馬鹿狼にょん。美優を殺したら、今度は陸様と御当主の戦争なるにょん!」

「ケケケケエ」

「グエエエエエ」

 と白露と黒凱。

「土御門の千年を守る為ならば、兄弟の一人くらいは犠牲にしても仕方あるまい。土御門はそうやって生き残ってきた。違うか?」

 と赤狼が言った

「そういう時代もあったけどねぇ。今の御当主には無理だろうよ。陸様を失うなら土御門を捨てる、そういうお人だ。お前も知ってるだろう?」

「では捨てるがいい」

「赤狼!」

「では赤狼、お前が美優どのを殺すか? 出来るか? お前にも出来まい。美優どのを殺したら、お前は和泉どのを失う。永久にだ。来世で再び出会っても、和泉どのはお前を許しはしない。それはお前にも辛かろう? そういう事だ。だから誰も美優どのを殺せはしないのだ」

 と青帝が言った。

「困ったねぇ。美優ちゃんの身体から加奈子を追い出せればいいんだけどねぇ。誰か上手い手を知らないかい?」

「御当主ですら手の打ちようがないのに、あっしらにはとても」

 と茶蜘蛛。

「強引に皆で美優ちゃんの身体に乗り込んだらどうにょん? 加奈子一人の悪魂くらい追い出せられないにょん?」

「そこいらの浮遊霊を祓うのとは違うって御当主もおっしゃったじゃないか。霊能力が強い加奈子がしがみついて戦いになれば、美優ちゃんの身体がもたない。それこそ死んでしまうよ」

「それに美優どのの身体に悪しき霊を入れたのは賀茂の末裔。呪術も土御門の物とはやや異なる。術を施した者でなければ術を覆すのは難しいからな。仁様が今、賀茂の末裔を追っておられるが、どうなる事やら」

 青帝がふうと深いため息をついた。

 そこへ、

「相変わらず馬鹿馬鹿しい話し合いをしているな」

 と低い声が響いてきた。

「闘鬼のだんな!」

 と銀猫がにゃーんと叫んだ。

「珍しいにょん、鬼が参加するなんて」

 薄暗い空間に人型が浮かび上がり、金色の鬼が姿を表した。

「一体、どういう風の吹き回しだ?」

 と青帝が言い、自分の隣へ手招した。そこには一つの席が空いていたからだ。

 橙狐が鼻をひくひくとさせて、舌なめずりをした。

「ケーーーーーーーーン」と鳴く。

「おや、闘鬼のだんな、いい匂いをさせてるじゃないか」

「ずっるーいにょん。また和泉ちゃんのケーキを独り占めしたにょんか! 皆で分けるからいっつも一個か二個しかもらえないのに!」

 闘鬼は青帝の隣に腰をかけて、

「どこかの赤い乱暴者が当主に生意気を口をきいたと和泉が困ってたぞ」

 と赤狼を睨みながら言った。赤狼はふんと横をむく。

「美優と加奈子の姉妹の事も何か手立てはないかと和泉に相談された。この中で一番信用に足るのが誰か心得ているようだな、和泉は」

 式神達の中にむっとした空気が流れた。

「無駄に長生きだからだろう。若作りしているが、青帝よりも年寄りなのは知ってるぞ」

 と赤狼が言った。

「え、まじにょん? 青帝よりも老人なのか? すごい老人……」

 と水蛇が言いかけて、闘鬼がぎろっと睨んだので、

「……ナイスミドルにょん」

 と小さい声で言った。

「ケーーーーーーーン」

「で? だんなは和泉ちゃんの期待を裏切らない方法を知ってるんでやんすか?」

 闘鬼はうっすら笑みを浮かべて赤狼の方を見た。

「何だ?」

 意味ありげな闘鬼の視線に赤狼が顔を上げた。

「いいや、別に」

 銀猫がしびれをきらしたように、

「だんな、どうなんです? 何か手立てはあるんですか?」

 と言った。

「必要な事は和泉に伝えた。後はあの娘の才覚次第」

 と闘鬼は答えた。


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