異世界への扉
「こいつらがお前の仲間?」
「・・・」
公園へと着いた亮乃はそこにいた犬、鳥のぬいぐるみを見てそう言った。
それに気付いたのか、鳥ぬいぐるみは莉伽の手から降りた猫ぬいぐるみに向かって叫ぶ。
「っお前!何処行ってたんだよ、勝手にいなくなりやがって!一言声かけてけってんだよっ!」
鳥ぬいぐるみが騒ぐのをまぁまぁ落ち着いて、と莉伽がおさえるが怒りはおさまらないらしい。
「落ち着いていられるかぁ!!てめぇのかってな行動で仕事に支障が起きたらどーすんだ!」
「・・・」
なおも猫ぬいぐるみにつっかかろうとする鳥ぬいぐるみを亮乃がひょいっと持ち上げた。
「ふーん、変なぬいぐるみだなぁ。おもちゃか?」
「わっ、こら触るんじゃねぇー!」
亮乃は手の中で暴れる鳥ぬいぐるみをしきりに観察している。ひっくり返してみたり、引っ張ってみたり、スイッチがないかと探してみたり。
「で、君が呪文を唱えた人?」
それを冷静に傍観していた犬(めがね付)ぬいぐるみが亮乃に聞く。
「さぁ?」
「・・・・・・」
「さぁって何だよ。言ったか言ってねーかだけの話だろ!」
わめき散らす鳥ぬいぐるみに、呪文とやらは言ってないよーと笑顔で答えた亮乃。完全に面白がっている。
「言ってねーんじゃねぇか。じゃあそう言えよ紛らわしい!」
「この鳥のぬいぐるみはホントよく喋るなぁ」
「っ、おい!だから、触るなっていっへ、ぶっ、むぁ、の、うぃぁ」
じゃ君は本当に職務放棄って事だね、と犬ぬいぐるみは猫ぬいぐるみの方を見ながら言う。
「この事は上の人に報告させてもらう。それなりの処罰は覚悟するんだね」
「・・・!」
ちょ、ちょっと待ってよと言った莉伽の言葉とかぶさるように亮乃が、名前は?と言った。
「は?」
「お前等の名前。莉伽しってるか?」
「・・・知らないけど」
というか、関りたくもなかったし・・・。
「俺は亮乃で、そっちは莉伽。お前等は?」
「・・・ナルです」
やっと亮乃の手から解放された鳥ぬいぐるみが俺はサクだと言った。猫ぬいぐるみは喋らなかったのでかわりに犬ぬいぐるみがその子の名前はチリルですよ、確か。と答えてくれた。
「そうか、宜しくな。で、お前等の言う仕事って何なんだ?」
その問いに答えようとしたサク(鳥ぬいぐるみ)を止め、ナル(犬ぬいぐるみ)は説明するより見せてあげますよ、僕等の仕事と言った。
「はぁ?何言ってんだ、だってこいつら・・・」
「君達二人でこの人らを連れて行け。僕は後で行く」
「・・・・・・」
「・・・いいのかよ?規則違反じゃねーの?」
「君等が喋らなければ大丈夫。それに僕も早く仕事を終わらせて帰りたいんだよ。・・・チリル、それでいいよね?」
「・・・」
チリル(猫ぬいぐるみ)は不安そうにナルを見る。
「僕も適当に見つけて帰るから。行ってくれ」
チリルを安心させる様に殊更優しく言ってきかせる。
「じゃ、遠慮なく。おい、そこのリョーノとリカ、だったか。こっちきて目ぇつむれ」
若干会話から置いてきぼりをくらっていた亮乃と莉伽だったが、名前を呼ばれ手招きされる。
「何するんだ?」
「俺たちの仕事、見せてやるよ」
サク(鳥)はニヤリと笑う。
「私は別に見たくないんだけど・・・」
「そっちの女の方はお前がやれ。リョウノとか言う男は俺がやる」
「・・・」
嫌な予感がした莉伽だったが、今更後には引けない雰囲気のこの状況にただ黙って目をつぶった。
隣にいた亮乃も目をつむる。
「じゃあ行っっくぜぇーーー!!」
「・・・!」
サクのかけ声が公園をこだまする。風が吹き砂や木の葉が巻き上がり、そして静寂が訪れる。
そして二人は異世界へと飛ばされた・・・。
「さて、僕も適当に見つけようか」
静寂の広がる公園に残ったのはナル(犬)、そしてそれを見ていた、一人の少女だけだった。




